その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
命を吹き込まれた落葉 2007/11/27
どうしても書きあげなきゃならん時が西野加奈にはあるのだ!
さて、なのティアです。
自分なりの、ティアナが幸せな話をどうにか書いてみました。
浮気もしない、ティアナ一筋ななのはさんです。((とここまで書くと、普段すごく浮気したりふらふらしてるみたいですね、、そんなことないよ!なのはさんはそんなことないよ!うん。本編のなのはさんは。
ところでティアナとなのはでは、ティアナの方が身長が高い、でいいんですよね。
それでは続きよりどうぞ。
命を吹き込まれた落葉
人ごみの中、胸をときめかせて相手を待つ。
そんなありふれた光景に、まさか自分が身を置くことになろうとは思いもよらない。人生というものはえてして深い。……十六年程しか生きていない自分が言うのもなんだけど。
鉄筋の柱に背を凭れて白い息を吐く。凍えるように冷えた外気に身を縮め、上着のポケットに両手を突っ込みながら空を見上げた。白く、決して届くことのない高い空を見上げながら、足で落葉を蹴った。色のない空でも、なのはさんを思い浮かべることが出来る。遠く近く、目の前を通り過ぎていく人をぼんやりと眺めながら、彼女に似た人を探す。僅かでも似た髪形があれば、これから彼女に会えるのだという期待が高まった。
腕時計を見ると約束の時間までまだ三十分ある。だが溜息は出ない。ただ待ち焦がれている。
待っている時間が、私には会っている時間よりも幸せだった。だって会っている間はずっと時間が削られていくのだ。当り前のことだけれど、一時間一緒にいれば、一時間いられる時間が少なくなる。話をするのは楽しいし、手を繋げば嬉しくなる。彼女のどこか男前で精悍な(実際にはとても可愛らしく美麗である)顔つきを見ると、頬が染まるくらい。でもそれは最初だけ。時間が経てば経つほど、私は残り時間を気に留め過ぎて彼女との逢瀬に集中できなくなっていく。別れ際に溶けるようなキスを交わして部屋に戻った時などには、どうしようもない悲愁に捉われた。六課の時と違って、気分を紛らわせてくれるスバルもいない。――独りで。なのはさんと過ごした時間を巻き戻し反芻する。
だから自分には、なのはさんが遅れてくるくらいがちょうど良い。
それにしても早く来すぎたことは分かっていたが、呑気に部屋で寝ているわけにもいかなかったのも事実。せっかく上官二人に工面して頂いた休日だっただった。今待っている人の為に作った休日。フェイトさんと八神二佐には感謝をしなければならない。
しばしの時が経って。からからと風に煽がれた落葉が地面を転がった。合図のように、秋空の澄んだ空気に包まれながら、待ち人が姿を見せた。一分の遅刻もないのに焦ったように駆けてくるのはいかにも彼女らしく、つい口元が弛んでしまった。
「お待たせ、ティアナ」
待ってませんよ、と腕にはめた時計を彼女のほうに向けながら答えると、「だってそう言ったほうがデートらしいから」なんて照れくさい言葉を口にされた。彼女はそのまま傍寄ってきて、私の腕に彼女自身の腕を絡める。自分よりも若干小さな背丈のなのはさんは、年上とは思えないほど可愛らしい顔で見上げてき、えへへと笑って、腕にしがみつくように歩き始めた。引っ張られるようにして私も歩く。
きっと周りからすれば微笑ましくなるほどのやりとりは、彼女の言うデートに見えただろう。そうだといいな、と思う。もしそう見えているなら、彼女は絶対に喜ぶだろうから。そのためなら自分が少々恥ずかしいくらい、どうということはなかった。
そもそもお互いの休日がこの日に重なったのは偶然ではない。自分などは置いておいても、局内でも特別多忙であるだろうなのはさんが、予定した日に休みを取れるなどそうはない。先ほど名前を挙げフェイトさんや八神二佐から力を借りたから出来た事だ。
まず私がフェイトさんに掛け合い、フェイトさんが八神二佐に掛け合ってなのはさんの空白を調整、予定の変更をし、ようやく私となのはさんの休日が重なった。二人とも多忙な毎日であったから、それは大変だったと聞く。二人はなのはさんの為あらば全力で動いてくれる人だ。多少の不純には気づかないふりをしておいても、まあいい。ただなのはさんに手を出したときは許せないけれど。どちらにせよ、後で何かを要求されそうだ、なのはさんの写真とか。
さてどうしようかと考えつつも、腕に感じる胸の感触に言い表せない至福が湧き上がってきているのだから、自分こそ不純なのかもしれないな、などと思いつつ、目的もなく街を歩く。デートといっても昼間は特に予定を決めていない。思いついたまま、思いついた店に入り思いついた食事を摂った。その方がお互いに楽しめるのだと。
ただその分、日が暮れるのは早い。
短すぎる一日、だけど楽しい一日は早くも終わりかけていた。冬であることも手伝って、既に辺りは仄暗くなっていた。
「夢を見ていたんです」
ふと今朝の目覚めた直後の、何とも云えない気だるいさを思い返した。そうして、目の前に広がる景色の壮大さに飲み込まれて失っていた言葉を取り戻す。紅過ぎる夕日が急速に沈んでいって、やがてぽっかりと闇が落ちてくる。今浴びているのは残光である。
独り言にも似た呟きは、しかし確かに相手に向けたもので、なのはさんはそんな自分の心境を読み取って相槌を打ってくれる。
「なのはさんに飼われる夢を、見ました」
「飼う?」
オウム返しに彼女は問った。
漠然とした単語は、自分でもわからぬままそうとしか言えなくて、頷いてみせた。
「ペットでも奴隷でもないんだけど、なのはさんの家に置いてもらうんです」
「同棲……、いや、ヴィヴィオもいるし、同居かな」
「いえそういうんじゃなくて、本当に」
「よく解らないな」
もっともな彼女の意見に返そうとして、今朝の気だるい、あのどうにも言葉にし難い嫌な感情の正体が甦ってくる。一呼吸して、それから私は言った。
「夢の中でなのはさんはフェイトさんと付き合っていたんです」
吐き出した途端、酷く気分が悪くなった。所詮夢だとわかっているのに、それでも夢と割り切れないような――否、現実と混同しているわけでもない、それなのにこの気持ち悪さは、例え夢とはいえなのはさんが自分以外を見ているということを思い描くのが嫌な所為だ。言葉にするだけで一呼吸を必要とするようなものを、映像で見て覚えてしまっている。
「なんとかして振り向いてほしくて、だけど告白する勇気さえなかったあたしは、何の気まぐれか解らないけれど毎晩部屋に忍び込んできてくれるなのはさんを待つしかなかった。しばらくして来てくれなくなった時、偶然管理局でなのはさんを見かけるんです。その時点では自身の尊厳とかどうでもよくなっていて、寂しいって泣きついて、そんなあたしを憐れんでくれたのか、飼ってあげるよ、って言ってくれたんです。嬉しかったな。それから管理局も止めて、ヴィヴィオと暮らしながら毎晩なのはさんを待つようになりました。でもそのうちなのはさんは部屋にも来てくれなくなりました。どこか別の人の所に行っているみたいで、夜一人でなのはさんに頂いた首輪をつけたままベッドの上で待ちぼうけの日々を過ごして。それからー―」
「それは夢だよ、ティアナ」
淡々と夢の出来事を語りながら、頬に触れる彼女の暖かな掌を涙で濡らしていた。
「だからね、泣かないでいいんだよ」
腕の下に手が差し込まれ、抱き締められる。ぎゅうっときついくらいの抱擁が、夢を泡沫の向こうに弾けさせ、ここにいるなのはさんこそが本物なのだと教えられる。今自分を抱き締めている彼女こそが本当のなのはさん。
「大好きだよ」
尚更に力が込められる。呼吸が苦しいくらい、だけど凄く心地良くて。
冷たい風が吹いていて寒いせいだろうか。涙で頬を冷やしてしまったせいだろうか。
きっと違う。
「ティアナのこと大好きだから。ティアナといる時は他の人なんて目に入らないくらい好き。そのくらい分かって欲しいな。でないと私の独り善がりみたいで、一方通行で、……やっぱり悲しいよ」
なのはさんが、暖かいんだ。なのはさんの気持ちが、心に触れているんだ。
普段態度には表わしてもあまり言ってくれない“好き”という言葉が、すとんと胸の中に落ちてくる。好きと言ってくれないのは不安でもあるが、だからこそこういう時に一番の効力があるのかもしれない。
「それにティアナはちゃんと好きって言ってくれたよ。告白してくれた。本物のティアナはこんなにも勇気のある女の子なんだから、不安にならなくてもいいんだよ」
「ごめん、なさい……」
「謝らなくても、ね。ああもう、可愛いな。そんな可愛い顔で泣いていると、お持ち帰りしちゃうよ」
「……」
いや、構わないんですけど、でも一応離れておく。冬の空気に悴んでいた雰囲気がなのはさんの言葉でほぐれたような気がした。
いつだって救われるのはあたしだった。私は受け取るだけでちっとも返せていない。
六課に加入してからすぐの、気ばかりが焦っていて無謀に突き進み暴走した私を止めてくれたのはなのはさん。訓練をつけてくれて、自信と大切な人を護れる力をくれたなのはさんに何かしてあげたい。好きと言ってくれるなのはさんに、私なりの幸せをあげたいのだ。
以前そう言うと、なのはさんは「そんなこと別にいいんだよ、ティアナがいてくれるだけで私は幸せになれるんだから」と嬉しすぎる言葉を返してくれた。
だから私は今日という日、なのはさんをデートに誘った。
今日だけは忙しくしてほしくなかったから。なのはさんはきっと、言われなければこの大切な日にも仕事で埋めてしまうだろうから。
「なのはさん」
滲んだ瞳をごしごしと擦ると、真っ直ぐに彼女の顔を見た。同様になのはさんも視線を返してくれ、お互いに見つめ合う格好になる。時間が止まったようにも思えて居心地は良かったけれど、だけど言わなければならない。今日、なぜなのはさんを誘ったのか、その理由を。
「誕生日、おめでとうございます」
「……、これ」
「以前フェイトさんから聞いたんです。小さい頃にリボンを交換したって。対抗ってわけじゃないんですけど、これはなのはさんに持っていて欲しくて」
ネクタイのような、黒い生地に白十字が描かれたシンプルなリボンを、そう言ってなのはさんに差し出す。バリアジャケットのイメージの元にもなったこのリボンは、兄さんにプレゼントしてもらったもの。本体は大切に大切に。宝物をしまうように、写真と玩具の銃と共に閉じ込めていた。
だけどそれを引っ張り出した。リボンに触れた時、自らの心が震えたのがわかったけれど、それ以上に強硬な想いに突き動かされるようにして、次の瞬間には掴んでいた。
そして今、誰よりも愛しい人の前に差し出している。大切な人からもらった大切なものを、愛しい彼女へ差し出している。
「なのはさんに持っていて欲しいです。今日貴女がこの世に生を受けたことの僥倖を覚えていて欲しい。なのはさんは自分の命を顧みないことがあるから、これを見て、少しは気にしてほしいなって」
「私は……」
「否定なんてさせませんよ。JS事件でブラスターモードを、しかも3まで使ったって聞きましたから」
「う……、聞いたんだ」
「ええ、まあ。フェイトさんから話のネタで」
「フェイトちゃん、一体何喋ってるの……」
「ふふ、なのはさんの事が心配でたまらないみたいですよ」
「うう……」
「もちろんあたしも心配しているんですけどね。いえ、だからこそ渡しました。……受け取ってくれますか」
未だ伸ばしたままの手を、引くことなくなのはさんの方に向ける。握った手は気付かないうちに震えていた。口では強がってみせながら、やはり自分は弱い。なのはさんが絡むと特に弱くなる。
そして強くもなれる。
「当り前だよ、ティアナ」
ありがとう、と。
なのはさんはリボンを手に掴む。胸元にもっていき、ぎゅっと両手で握り締め、はにかみながら笑った。――その彼女の笑顔に、自分こそが幸せにさせられていた。私は笑顔を見て自分が幸せになりたかったのだと気付く。
まったく敵わない。肩に手をかけ、そのまま彼女の体を抱き込んだ。二人の間に一切の風を通さないように、しっかりと抱く。
「今はこのリボンで我慢してください」
やっぱり私は空を飛びたいと思った。
彼女のいる空を自由に飛びたい。
「いつかあたし自身がなのはさんと同じ空に上がって、そこで貴女を護れるようになります」
彼女は、誰が何を言おうときっと無茶をしてしまうから。それがなのはさんだから。今の私に出来る事は、か細い力で服の裾を引っ張るくらいのもので、いざ空に上がられてしまえば何も出来ない。
だから空に上がりたい。なのはさんと同じ空に。
「そうなったら、もう無茶はさせませんよ」
フェイトさんでさえ出来なかったことを、私なんかが出来ないだろうと云われてしまえばそれまでなのかもしれない。そう、以前の自分ならばそれで納得をし、諦めただろう。だけどもう違う。彼女に勇気と自信を貰った、何より、大切ななのはさんという存在を得た。
もっと強くなるという誓いを込めて、その額に柔らかな口付けを落とす。
「時間はかかるかもしれない。それでも待っていてくれますか?」
力強く頷いてくれる彼女の、今度は唇にキスをして。
――必ず強くなってみせる。
なのはさんの笑顔を見続けるために。何も出来ない私がなのはさんの支えに、せめてなれるように。私は遠すぎる空に手を伸ばした。
◇
枯れて地に伏す落葉が、命を吹き込まれたように色づいたのは何故か。
光を注がれた葉は、尽きるまで枯れることはなかった。水々しく潤った深緑の葉をその細枝に実らせながら、その力で空に枝を伸ばす。届けとそれだけを願いながら、そうして届くはずのない枝が空を突き抜けた時、太陽が顔を覗かせる。
少し時間はかかってしまったけれど。そう私は彼女に笑った。
「来てくれたんだね、やっと」
「だって誓いましたから」
同じ空で、私はなのはさんを――。
× あとがき ×
11月27日にあげられてよかったとただそれだけを思う現在。
なのはキャラの誕生日って公開されないんだろうか。決めていないのかあえて決めないのか。うむむ。
そして、途中のティアナの夢は「貴方の血の味すら」→「失われた部分と残された部分」です。違う世界、でも本質は同じで、ただなのはさんがティアナ一筋ということだけが違う。あれをなのはさんが正常な世界で見る凄く異質な夢なんだろうな。それこそ一晩中抱きしめて好きだよって言われてようやく納まるくらいの。尤も、なのはさんはたった一言で安心させましたが。
なのはさんは何となく「好き」って言葉をあまり言わないような気がする。本当にここ!って時にしか言わないような、そんな。
そして、うちのなのはさんはいつだって護られてばかりだ。ティアナとヴィータ、フェイトでは意味合いが違うんだろうけれどね。
さて、なのティアです。
自分なりの、ティアナが幸せな話をどうにか書いてみました。
浮気もしない、ティアナ一筋ななのはさんです。((とここまで書くと、普段すごく浮気したりふらふらしてるみたいですね、、そんなことないよ!なのはさんはそんなことないよ!うん。本編のなのはさんは。
ところでティアナとなのはでは、ティアナの方が身長が高い、でいいんですよね。
それでは続きよりどうぞ。
命を吹き込まれた落葉
人ごみの中、胸をときめかせて相手を待つ。
そんなありふれた光景に、まさか自分が身を置くことになろうとは思いもよらない。人生というものはえてして深い。……十六年程しか生きていない自分が言うのもなんだけど。
鉄筋の柱に背を凭れて白い息を吐く。凍えるように冷えた外気に身を縮め、上着のポケットに両手を突っ込みながら空を見上げた。白く、決して届くことのない高い空を見上げながら、足で落葉を蹴った。色のない空でも、なのはさんを思い浮かべることが出来る。遠く近く、目の前を通り過ぎていく人をぼんやりと眺めながら、彼女に似た人を探す。僅かでも似た髪形があれば、これから彼女に会えるのだという期待が高まった。
腕時計を見ると約束の時間までまだ三十分ある。だが溜息は出ない。ただ待ち焦がれている。
待っている時間が、私には会っている時間よりも幸せだった。だって会っている間はずっと時間が削られていくのだ。当り前のことだけれど、一時間一緒にいれば、一時間いられる時間が少なくなる。話をするのは楽しいし、手を繋げば嬉しくなる。彼女のどこか男前で精悍な(実際にはとても可愛らしく美麗である)顔つきを見ると、頬が染まるくらい。でもそれは最初だけ。時間が経てば経つほど、私は残り時間を気に留め過ぎて彼女との逢瀬に集中できなくなっていく。別れ際に溶けるようなキスを交わして部屋に戻った時などには、どうしようもない悲愁に捉われた。六課の時と違って、気分を紛らわせてくれるスバルもいない。――独りで。なのはさんと過ごした時間を巻き戻し反芻する。
だから自分には、なのはさんが遅れてくるくらいがちょうど良い。
それにしても早く来すぎたことは分かっていたが、呑気に部屋で寝ているわけにもいかなかったのも事実。せっかく上官二人に工面して頂いた休日だっただった。今待っている人の為に作った休日。フェイトさんと八神二佐には感謝をしなければならない。
しばしの時が経って。からからと風に煽がれた落葉が地面を転がった。合図のように、秋空の澄んだ空気に包まれながら、待ち人が姿を見せた。一分の遅刻もないのに焦ったように駆けてくるのはいかにも彼女らしく、つい口元が弛んでしまった。
「お待たせ、ティアナ」
待ってませんよ、と腕にはめた時計を彼女のほうに向けながら答えると、「だってそう言ったほうがデートらしいから」なんて照れくさい言葉を口にされた。彼女はそのまま傍寄ってきて、私の腕に彼女自身の腕を絡める。自分よりも若干小さな背丈のなのはさんは、年上とは思えないほど可愛らしい顔で見上げてき、えへへと笑って、腕にしがみつくように歩き始めた。引っ張られるようにして私も歩く。
きっと周りからすれば微笑ましくなるほどのやりとりは、彼女の言うデートに見えただろう。そうだといいな、と思う。もしそう見えているなら、彼女は絶対に喜ぶだろうから。そのためなら自分が少々恥ずかしいくらい、どうということはなかった。
そもそもお互いの休日がこの日に重なったのは偶然ではない。自分などは置いておいても、局内でも特別多忙であるだろうなのはさんが、予定した日に休みを取れるなどそうはない。先ほど名前を挙げフェイトさんや八神二佐から力を借りたから出来た事だ。
まず私がフェイトさんに掛け合い、フェイトさんが八神二佐に掛け合ってなのはさんの空白を調整、予定の変更をし、ようやく私となのはさんの休日が重なった。二人とも多忙な毎日であったから、それは大変だったと聞く。二人はなのはさんの為あらば全力で動いてくれる人だ。多少の不純には気づかないふりをしておいても、まあいい。ただなのはさんに手を出したときは許せないけれど。どちらにせよ、後で何かを要求されそうだ、なのはさんの写真とか。
さてどうしようかと考えつつも、腕に感じる胸の感触に言い表せない至福が湧き上がってきているのだから、自分こそ不純なのかもしれないな、などと思いつつ、目的もなく街を歩く。デートといっても昼間は特に予定を決めていない。思いついたまま、思いついた店に入り思いついた食事を摂った。その方がお互いに楽しめるのだと。
ただその分、日が暮れるのは早い。
短すぎる一日、だけど楽しい一日は早くも終わりかけていた。冬であることも手伝って、既に辺りは仄暗くなっていた。
「夢を見ていたんです」
ふと今朝の目覚めた直後の、何とも云えない気だるいさを思い返した。そうして、目の前に広がる景色の壮大さに飲み込まれて失っていた言葉を取り戻す。紅過ぎる夕日が急速に沈んでいって、やがてぽっかりと闇が落ちてくる。今浴びているのは残光である。
独り言にも似た呟きは、しかし確かに相手に向けたもので、なのはさんはそんな自分の心境を読み取って相槌を打ってくれる。
「なのはさんに飼われる夢を、見ました」
「飼う?」
オウム返しに彼女は問った。
漠然とした単語は、自分でもわからぬままそうとしか言えなくて、頷いてみせた。
「ペットでも奴隷でもないんだけど、なのはさんの家に置いてもらうんです」
「同棲……、いや、ヴィヴィオもいるし、同居かな」
「いえそういうんじゃなくて、本当に」
「よく解らないな」
もっともな彼女の意見に返そうとして、今朝の気だるい、あのどうにも言葉にし難い嫌な感情の正体が甦ってくる。一呼吸して、それから私は言った。
「夢の中でなのはさんはフェイトさんと付き合っていたんです」
吐き出した途端、酷く気分が悪くなった。所詮夢だとわかっているのに、それでも夢と割り切れないような――否、現実と混同しているわけでもない、それなのにこの気持ち悪さは、例え夢とはいえなのはさんが自分以外を見ているということを思い描くのが嫌な所為だ。言葉にするだけで一呼吸を必要とするようなものを、映像で見て覚えてしまっている。
「なんとかして振り向いてほしくて、だけど告白する勇気さえなかったあたしは、何の気まぐれか解らないけれど毎晩部屋に忍び込んできてくれるなのはさんを待つしかなかった。しばらくして来てくれなくなった時、偶然管理局でなのはさんを見かけるんです。その時点では自身の尊厳とかどうでもよくなっていて、寂しいって泣きついて、そんなあたしを憐れんでくれたのか、飼ってあげるよ、って言ってくれたんです。嬉しかったな。それから管理局も止めて、ヴィヴィオと暮らしながら毎晩なのはさんを待つようになりました。でもそのうちなのはさんは部屋にも来てくれなくなりました。どこか別の人の所に行っているみたいで、夜一人でなのはさんに頂いた首輪をつけたままベッドの上で待ちぼうけの日々を過ごして。それからー―」
「それは夢だよ、ティアナ」
淡々と夢の出来事を語りながら、頬に触れる彼女の暖かな掌を涙で濡らしていた。
「だからね、泣かないでいいんだよ」
腕の下に手が差し込まれ、抱き締められる。ぎゅうっときついくらいの抱擁が、夢を泡沫の向こうに弾けさせ、ここにいるなのはさんこそが本物なのだと教えられる。今自分を抱き締めている彼女こそが本当のなのはさん。
「大好きだよ」
尚更に力が込められる。呼吸が苦しいくらい、だけど凄く心地良くて。
冷たい風が吹いていて寒いせいだろうか。涙で頬を冷やしてしまったせいだろうか。
きっと違う。
「ティアナのこと大好きだから。ティアナといる時は他の人なんて目に入らないくらい好き。そのくらい分かって欲しいな。でないと私の独り善がりみたいで、一方通行で、……やっぱり悲しいよ」
なのはさんが、暖かいんだ。なのはさんの気持ちが、心に触れているんだ。
普段態度には表わしてもあまり言ってくれない“好き”という言葉が、すとんと胸の中に落ちてくる。好きと言ってくれないのは不安でもあるが、だからこそこういう時に一番の効力があるのかもしれない。
「それにティアナはちゃんと好きって言ってくれたよ。告白してくれた。本物のティアナはこんなにも勇気のある女の子なんだから、不安にならなくてもいいんだよ」
「ごめん、なさい……」
「謝らなくても、ね。ああもう、可愛いな。そんな可愛い顔で泣いていると、お持ち帰りしちゃうよ」
「……」
いや、構わないんですけど、でも一応離れておく。冬の空気に悴んでいた雰囲気がなのはさんの言葉でほぐれたような気がした。
いつだって救われるのはあたしだった。私は受け取るだけでちっとも返せていない。
六課に加入してからすぐの、気ばかりが焦っていて無謀に突き進み暴走した私を止めてくれたのはなのはさん。訓練をつけてくれて、自信と大切な人を護れる力をくれたなのはさんに何かしてあげたい。好きと言ってくれるなのはさんに、私なりの幸せをあげたいのだ。
以前そう言うと、なのはさんは「そんなこと別にいいんだよ、ティアナがいてくれるだけで私は幸せになれるんだから」と嬉しすぎる言葉を返してくれた。
だから私は今日という日、なのはさんをデートに誘った。
今日だけは忙しくしてほしくなかったから。なのはさんはきっと、言われなければこの大切な日にも仕事で埋めてしまうだろうから。
「なのはさん」
滲んだ瞳をごしごしと擦ると、真っ直ぐに彼女の顔を見た。同様になのはさんも視線を返してくれ、お互いに見つめ合う格好になる。時間が止まったようにも思えて居心地は良かったけれど、だけど言わなければならない。今日、なぜなのはさんを誘ったのか、その理由を。
「誕生日、おめでとうございます」
「……、これ」
「以前フェイトさんから聞いたんです。小さい頃にリボンを交換したって。対抗ってわけじゃないんですけど、これはなのはさんに持っていて欲しくて」
ネクタイのような、黒い生地に白十字が描かれたシンプルなリボンを、そう言ってなのはさんに差し出す。バリアジャケットのイメージの元にもなったこのリボンは、兄さんにプレゼントしてもらったもの。本体は大切に大切に。宝物をしまうように、写真と玩具の銃と共に閉じ込めていた。
だけどそれを引っ張り出した。リボンに触れた時、自らの心が震えたのがわかったけれど、それ以上に強硬な想いに突き動かされるようにして、次の瞬間には掴んでいた。
そして今、誰よりも愛しい人の前に差し出している。大切な人からもらった大切なものを、愛しい彼女へ差し出している。
「なのはさんに持っていて欲しいです。今日貴女がこの世に生を受けたことの僥倖を覚えていて欲しい。なのはさんは自分の命を顧みないことがあるから、これを見て、少しは気にしてほしいなって」
「私は……」
「否定なんてさせませんよ。JS事件でブラスターモードを、しかも3まで使ったって聞きましたから」
「う……、聞いたんだ」
「ええ、まあ。フェイトさんから話のネタで」
「フェイトちゃん、一体何喋ってるの……」
「ふふ、なのはさんの事が心配でたまらないみたいですよ」
「うう……」
「もちろんあたしも心配しているんですけどね。いえ、だからこそ渡しました。……受け取ってくれますか」
未だ伸ばしたままの手を、引くことなくなのはさんの方に向ける。握った手は気付かないうちに震えていた。口では強がってみせながら、やはり自分は弱い。なのはさんが絡むと特に弱くなる。
そして強くもなれる。
「当り前だよ、ティアナ」
ありがとう、と。
なのはさんはリボンを手に掴む。胸元にもっていき、ぎゅっと両手で握り締め、はにかみながら笑った。――その彼女の笑顔に、自分こそが幸せにさせられていた。私は笑顔を見て自分が幸せになりたかったのだと気付く。
まったく敵わない。肩に手をかけ、そのまま彼女の体を抱き込んだ。二人の間に一切の風を通さないように、しっかりと抱く。
「今はこのリボンで我慢してください」
やっぱり私は空を飛びたいと思った。
彼女のいる空を自由に飛びたい。
「いつかあたし自身がなのはさんと同じ空に上がって、そこで貴女を護れるようになります」
彼女は、誰が何を言おうときっと無茶をしてしまうから。それがなのはさんだから。今の私に出来る事は、か細い力で服の裾を引っ張るくらいのもので、いざ空に上がられてしまえば何も出来ない。
だから空に上がりたい。なのはさんと同じ空に。
「そうなったら、もう無茶はさせませんよ」
フェイトさんでさえ出来なかったことを、私なんかが出来ないだろうと云われてしまえばそれまでなのかもしれない。そう、以前の自分ならばそれで納得をし、諦めただろう。だけどもう違う。彼女に勇気と自信を貰った、何より、大切ななのはさんという存在を得た。
もっと強くなるという誓いを込めて、その額に柔らかな口付けを落とす。
「時間はかかるかもしれない。それでも待っていてくれますか?」
力強く頷いてくれる彼女の、今度は唇にキスをして。
――必ず強くなってみせる。
なのはさんの笑顔を見続けるために。何も出来ない私がなのはさんの支えに、せめてなれるように。私は遠すぎる空に手を伸ばした。
◇
枯れて地に伏す落葉が、命を吹き込まれたように色づいたのは何故か。
光を注がれた葉は、尽きるまで枯れることはなかった。水々しく潤った深緑の葉をその細枝に実らせながら、その力で空に枝を伸ばす。届けとそれだけを願いながら、そうして届くはずのない枝が空を突き抜けた時、太陽が顔を覗かせる。
少し時間はかかってしまったけれど。そう私は彼女に笑った。
「来てくれたんだね、やっと」
「だって誓いましたから」
同じ空で、私はなのはさんを――。
× あとがき ×
11月27日にあげられてよかったとただそれだけを思う現在。
なのはキャラの誕生日って公開されないんだろうか。決めていないのかあえて決めないのか。うむむ。
そして、途中のティアナの夢は「貴方の血の味すら」→「失われた部分と残された部分」です。違う世界、でも本質は同じで、ただなのはさんがティアナ一筋ということだけが違う。あれをなのはさんが正常な世界で見る凄く異質な夢なんだろうな。それこそ一晩中抱きしめて好きだよって言われてようやく納まるくらいの。尤も、なのはさんはたった一言で安心させましたが。
なのはさんは何となく「好き」って言葉をあまり言わないような気がする。本当にここ!って時にしか言わないような、そんな。
そして、うちのなのはさんはいつだって護られてばかりだ。ティアナとヴィータ、フェイトでは意味合いが違うんだろうけれどね。
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アリサ×なのは

comments
すみません。最近なのティアが凄く好きなCPなんです・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・
2人のラブラブぶりが溜まりません( ̄▽ ̄;)
西野さんの書くSS大好きです!!
次のSSも期待してま〜す☆
久々に小説見さしてもらいました。良い感じにティアナとなのはの関係。いいなああ==
そういえば前のときはヴィヴィオと空飛んでましたねwこれでティアナも仲間入りなのかな?−−
これからは寒さを感じず三人で暮らせそう。
フェ、フェイトさんいつから後ろに…ガハッ。
なのティアはいい、心が洗われます。
ラブラブに見えてよかったです(p_;)一応甘い話なつもりで書き始めたので、そう捉えられるか少し不安でしたw
ありがとうございます!これからも一心不乱に(ちょっと違う)がんばっていきます!
>zeroさん
ぐは。どもです。。大丈夫になりました。
なのはとティアナが幸せな小説だって、ひとつくらいあってもいいじゃないですか、という脳内の囁きでもって書きました。
ヴィヴィオのときとは心持ちがちがうのであります。ティアナはきっと空を飛べるとおもいますよ。
>ユリかもめさん
なのはの幸せ者…むしろなのはさんに受け入れてもらえたティアナが(がふっ吐
冬、またやすみがとれたら、ヴィヴィオとティアナがこたつにはいって、なのはさんがお茶をいれて、それを三人で飲む、なんて光景があるかもしれませんね。
フェイトさんは……、うん、ってあれなんだか雷が鳴っt(ry
お大事にしてくださいね。治りかけがまたかかりやすいそうなので。
てかティアナ!!ティアナかわいい!!
しかもなのはさんが黒くない(喜)こんな幸せなのも良いですね〜♪
心配をおかけしました((ペコ
なおりかけというのは確かに油断なりませんよね。。治ってはかかかり、を繰り返した苦い記憶がw
ティアナは可愛いですよ♪
なんたってなのはさんが惚れたティアナですから!
こういう幸せなのも、偶にはよいものですw
読むのが遅れてしまったけれど…読んでいてすぅっと引き込まれる感じでした☆
夢の話も前に出ていた物ですし、続くって良いです♪
ティアナも飛んだら次は誰なのかしら(笑)
ありがとうございますです((ペコリ
完全な続きではなく、ほんの一部だけのリンクというのは読むの好きです。書いたのは初めてですが(笑
ううん。はやては一緒に空を飛ぼうというかんじではないから、やはりヴィヴィオ・ティアナ・ヴィータの三人で。
フェイトさんは……なのはが飛んでいるのを遠目に眺めている。まぶしいなって。そんな印象が。
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