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2019-07

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蒼と紅の狭間の先に

なのヴィ祭り第二弾!
こちら睦月様より頂きました。

想いは繋がり、だけれどもまっすぐに気持ちをぶつけられないヴィータ。
甘味の中にほんの少し混ざった苦味がいい感じです。ビタースウィートってこんな感じなのでしょうか。

それでは続きよりどうぞ。


蒼と紅の狭間の先に


息も出来ない口付けをして。
夢さえ見ないほど溺れさせて。
ねえ、いつかこの身が朽ち果てるまで、愛していると囁いて。



少し冷たいシーツの温度を頬に感じる。無造作に散らされた自身の髪を、隣で同じように寝そべりながら触れてくるなのはへとヴィータはちらりと視線を投じた。
まだ、朝というには若干早い。ぼんやりとされるがままに目の前の端整な顔を見つめていれば、それに気付いたのかはにかむように微笑む。思わず返す表情が分からなくて、結局はいつものように視線を逸らすだけに終わってしまう。けれど気にした様子もなく依然として紅い髪を撫でるなのはは、今だ微笑を崩さなくて。
柔らかな手の感触を振り払うことも出来ずに、ただヴィータは瞼を閉じる。こういう時、何と声を掛ければいいのか分からない。フェイトのように、素直に気持ちを表現でも出来ればきっと可愛げもあるのだろうか。知らず比べてしまう金色に、自己嫌悪が浮かぶ。

「ヴィータちゃんの髪、綺麗だよね」
「…そうか?お前だって長くて綺麗じゃんか」

彼女は、こんな自分を好きだと言ってくれている。
信じていないわけではない。なのはは大切なものはそれこそ多いけれど、そう容易く愛を囁く人間ではないと、分かっている。けれどなのはは優しくて、優しくて、だからこそその優しさが時に酷くヴィータを怖がらせる。

「うーん、そうかなぁ。フェイトちゃんとかもそう言ってくれるけど、自分じゃ今一よく分からないんだよねー」
「…まあ、あいつはなのはに対しては全肯定みたいなもんだからな」
「え?そんなことはないと思うけど」
「あー…うん、知らなくていいけどな」
「?」

気付かないならばそれで良かった。知らないでいてくれるならば、それだけで救われた。だっていつだって本当は、奪われてしまうんじゃないかって不安で仕方がない。彼女を求める人は多過ぎて、自分の気持ちが負けているなんて欠片も思ってはいないけど、彼女が自分だけを見ていてくれることが不思議でたまらないのも事実だった。

―――なのは。

幾度、心の中でそう呼んだか分からない。普段口をつくことのないくらいに優しく、求めるように欲して、ただ彼女を構成する名前を呼ぶ。もしもそれが音にさえなっていたのなら、もっと彼女の笑顔が見られたのだろうか。今だって絶やすこと無く微笑んでくれる優しさに、少しでも何かを返すことが出来たのだろうか。
臆病な指先は、触れることすら出来ずに届かない。抱き締められてばかりで、握り締められてばかりで、触れられてばかりで。
どんな時も惜しみなく与えてくれるなのはが、もう好きでたまらないのに。


「うーん、もうすぐ起きる時間だね。ヴィータちゃん」
「おー、もうそんな時間か」
「私はそろそろ戻らないと。あ、フェイトちゃんも起こさなきゃ」
「…ああ、そうだな」

背伸びをするように起き上がって腕を伸ばす姿を見つめる。解かれた亜麻色の髪がさらさらと零れる。触れようとしてまた躊躇したのは、なのはの口から放たれた金色の名のせい。誰に憚ることなく愛おしげに深紅の瞳をやわらげて、なのはと呼ぶ姿が浮かんで。そこに込められた意味を、ヴィータのほうが痛いほど良く知っていた。
唇を噛む。そうやって呼べない自分に苛立つ。そして、そうやって呼べるフェイトに、また嫉妬する。


「じゃあ、ヴィータちゃん…。また後でね」
「おう」

離れていく温もりが、更にシーツを冷たくさせていくような気がした。立ち上がったなのはは今だ寝ているヴィータへと視線を投じ、眉を寄せて笑う。心のこもっていない生返事に呆れさせてしまったのだろうかと不安になったが、続くようにぎしっとベッドに膝を乗せヴィータの頬に手を滑らせるその表情に、今度はヴィータが乱された。
覆い被さるように口付けられて視界を奪われる。少しいつもより激しいそれに、なのはと紡ごうとした声すら抑え込まれて。かすかに離れた合間に薄っすらと瞼を開けば、熱の籠もった蒼い瞳と交じり合う。それだけで、もう全部持っていかれそうだった。

「何考えてるの?」
「っ…ん、…なのはっ」
「ヴィータちゃんはいつもそう。全部隠しちゃって、私には何も教えてくれない」
「っそんなこと、ねえよ…っ」
「うそつき、だね。もー」

困ったように微笑む表情は、それでもどこか寂しさを滲ませて。それにずきっと胸が疼く。いやな顔だった。ヴィータの嫌いな、なのはの顔。好きだけど嫌いな、して欲しくない表情。耐え忍ぶことに人一倍平気な顔をして笑うなのはだからこそ、二人でいる時にそんな哀しい顔をさせたくはなかったのに。
答えないヴィータを諦めたように見やって、なのははそっと触れていた手を離す。ただ一度、優しく紅い髪を撫でると背を向けてベッドから降りる。


「っ、なのはっ」
「?どうしたの、ヴィータちゃん」

思わず呼び止めても、告げられる言葉なんてありはしなかった。喉が渇いたようにからからと上手く動かなくて、伸ばす指先すら満足に思い通りにはならなかった。不思議そうな表情でこちらを見てくるなのはを、ただ同じように見つめることしか出来ない。
情けない。馬鹿みたいだ、こんなの。
広がる沈黙に、なのはの戸惑う気配がする。困らせたいわけじゃないのに、いつも上手く伝えられない。

「ヴィータちゃん」

静かな澄んだ音。咎めることもせず、嫌な顔一つせずに佇むそのひとに、ヴィータの焦燥はただ募って。恐る恐る、子供みたいになのはの服の裾を掴む。その指先がかすかに震えていることに気付いても、なのはは何も言わなくて。ヴィータが言葉を紡ぐのを待つ。
口を開きかけては戸惑うように言いよどむ小さな背を引き寄せて、なのはは抱き締める。肩口に顔を埋める形となったヴィータは、表情が見えないことで何とか声を発することが出来た。それがなのはの優しさだと知っているからこそ、余計に胸が軋む。


「…なのは」
「うん、何かな?」
「…っ、……なよ…」
「え…?」
「―――行くなよ、なのは…っ」

一言それを吐き出せば、後はもう流れ出る水のように押し寄せてくる。

行くな。どこにも行くな。
あいつのところになんか、帰るな。
例えなのは自身が意識していなくても、その笑みは容易く人を堕とすから。


「もうちょっとでいいから、ここにいろよっ…」
「…ヴィータちゃん」

縋るように亜麻色の髪が揺れる背にまわした指先に力を込める。鬱陶しく思われていないか、拒絶されてしまわないかだけが、ただ、とても怖い。
驚いたような声が耳元をくすぐって、瞼をぎゅっとヴィータは伏せた。



「―――行かないよ」
「…っ」

やけに凛とした声が鼓膜を震わせる。反射的に顔を上げたヴィータから少し距離をとって、なのはは蒼い眼差しを緩く細めながら見つめ返す。固い表情を浮かべる頬にそっと手を添え、触れるだけの口付けを落として。
ゆっくり、笑う。

「ヴィータちゃんがそう言うなら、私はどこにも行かない」
「な、のは…」
「うん。そう言ってくれるなら、ずっと傍にいるよ」
「…っ、何だよ、それ。そんなこと言っていいのかよ…」
「いいよ。ヴィータちゃんになら、全部あげる」

再び優しく包み込まれる腕の中で、安心させるように紡がれる言葉が心を揺さぶる。

ねえ、好き。
ああ、好きなんだ。
苦しさに痛むこれがその代償だというのなら、喜んで全て捧げたっていいぐらいに代わりになるものなんかもう何も無かった。


「…その言葉、忘れたらしょーちしねえかんなっ」
「うん」


抱き締めて。抱き締めて。
心ごと全部、もうあなたにあげるから。


二人一緒に倒れこんだシーツの海に、もう冷たさは感じなかった。

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