その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
いくつもの星に惹かれて街をさまよう 2007/12/24
Christmas企画SSまずは一発目。
なのは×ティアナです。
ハッピーではありません、注意。
よろしければ続きよりどうぞ。
いくつもの星に惹かれて街をさまよう
いくら待とうと変化などないと分かっていて立ち尽くす。
一点の捨てきれない望みがないといえば嘘だった。
瞼に痛いほどの装飾が施されたモミの木の下で私はジャンクフードにかぶりついた。風情など元からないこの場所で、次々と流れていく恋人たちを視界にとどめながら、普遍的な味ばかりの食料を口に投げ込む。空腹を満たすばかりの行為、味など求めない。噛み締めることなくジュースと一緒に飲み込むと、包装紙にくるみトラッシュボックスへと投げ入れた。
路上は滞ることなく流れる。白濁した息は夜とは思えぬほど眩い空と織り交ざって消えた。
私は待っている。手がかじかむほどにずっと、待っている。あの綺麗で強い人を、来ないと分かっていて待っている。
一つの約束をしていた。
約束とも呼べぬほどの、一方的なものだったけれども。私にとってそれは紛れもない約束だったのだ。
――十二月二四日、九時にこの場所で。
想いがこの息と一緒に溶けてしまえばいいのに。ただ胸を痛めつけるだけの想いなんてなくなってしまえばいいと思った。
確実にあるだろう夜空を見上げても星と呼べるだけの灯火はなく、次の瞬間には駆けだしていた。唐突に生まれた衝動が、街明かりから出来るだけ自分を遠ざけるかの如く足を走らせる。辿り着いたのははたして、地の果てだったのかもしれない。
三十分も走っていただろうか。もう周囲に人一人いないほど辺境な場所に来てしまっていた。
昼と見間違うくらいに明るい、ここは星が降り注ぐ丘。
私は膝に両手を着き、息を整える。せっかく整えてきた身嗜みが崩れてしまっていたけれど構わない。見てくれる人はいない。でも。
「訓練しておけばよかったかな」
こんな時、空が飛べないのが悔しい。
あの人みたいに、この大きな空を飛びたい。少しだけ前に行って、あの人のことを護りたい。実際にはそんなことできはしない。いつまでたっても私は教え子でしかなく、実力だって足元にも及ばない。陸戦魔導師ランクAAを取得はしたけれど、それだってあの人には敵わない。
「悔しい、な」
空はこんなにも大きい。街中の夜空にあるものとは比べるのもおこがましいほど、星が明滅を繰り返しては胸に飛び込んでくる。無償に心が動く。激しい動悸ともつかぬ鼓動の高鳴り。
もうずっと会えていないなのはさんを想っては、願望を抑え込んでいた。
約束をしていた。
私は逃げてきてしまっていたけれど、それは多忙な彼女に押しつけた自分のたった一つの我が侭だったのだ。受け入れて貰えなければこの関係が終わるだけ。それならばいっそ、切ってしまえばいいと。
誰よりも悪いのは彼女ではなく、彼女を信じられない自分に違いない。自分がいなくなることで彼女の負担が減るならば、それが一番の報いなのではないだろうか。ここまで強くしてもらった、支えてもらった、恋を教えてもらったあの人へ返せるただ一つの事とさえ思う。
だからか、頭上で高く輝くあの星がなのはさんに重なるのは。
そうして独り、街の見渡せる丘に腰掛けて夜を明かした。
空が徐々に炙られていく。穏やかな風と頬を柔らかく撫でる。ビルの谷間から上りゆく淡い陽の光が目に沁みる。私はすっかりと冷えてしまった己の肩を抱き、うずくまった。空では他の星たちに護られるようにして、明星が瞬いていた。
私は何をしているのだろう。服は皺だらけで、その上地面に座って汚れた裾を見下ろして俯く。だがそれ以外の変化はない。
涙はなかった。ただ、終わったのだと知っただけ。
今にも肩を優しく叩いて、振り向けばそこに彼女の、少し困ったような笑顔がありそうで、だけどそれはただの幻想と知ってしまった。
私は立ち上がり、ついていた土埃を払う。
――あたし、大丈夫?
――当然。
確かめるよう自身に問いかけ、また自身が頷く。それから来た時はなかった霜の感触を足の裏で感じながら、足早に丘を降りる。道に出る前に今一度振り返ると、そこには依然として白い空があった。いつまでも手の届かない、空が。
◇
無人の丘に今日二人目の客が現れた。
これほど短時間に二人の人間が現れるとは、なんと珍しいことだろうとこの丘の主である鳥は軽い衝撃を覚える。その視界には長い髪の女性が映る。凛々しく綺麗な女性だ。ただ完璧に見えるその女性の息は切れていて、どこかしら危うさを含んでもいた。
半ば祖雑でありながらも十分な時間辺りを見回した後、彼女は目見えて落胆し、項垂れた。同時にサイドで一纏めにした髪も揺れる。
「ティアナ……」
蒼い眼をした女性は何者かの名前をぼぞりと漏らすと、しばらくその場から動かずに数分が経過する。だが何を思ったのか、あるいはなにも考えていないままなのか、彼女は丘の切り口に乗り出し、縮小された街を見下ろした。
その蒼に映しているものは何なのだろう。何となく興味をそそられた鳥は覗き込もうとして、しかしぎりぎりの部分で遮られ、目にすることはできない。端正な顔は今は横髪に隠れてしまった。
彼女はしばらくそうしたあと、来た時と同じように霜を踏みしめて丘を降りていく。背中から漂う哀愁がやけに胸を引っ掻かれ。彼女が立ち去った後、木の枝に足をしがみ付かせたまま、鳥はただ一声鳴いた。
× あとがき ×
余韻を楽しんでいただければ……と。
クリスマスイブだからこそ書きたかった話です。なのティア枠もうひとつあるので、幸せな話はそちらで、ということで許してやってください。というよりあとは全部幸せなエンドのはずですので。
誰でもいいように思えますが、自分のなかではこれは相手がティアナ以外だと成り立たなかった。フェイトだと約束を無理強いしない。ヴィータなら乗り込んでいってでも休ませる。はやてならそもそもなのはに手を伸ばさないだろう。だからこれはティアナだけ。
相手が忙しいのが分かっていてイブにデートを求めたティアナ。大切な人に寂しい思いをさせているとわかって仕事に妥協せず、相手の優しさや我慢に甘えたなのは。
どちらが悪かったわけじゃなく。きっと両方なんだろうと。
なのは×ティアナです。
ハッピーではありません、注意。
よろしければ続きよりどうぞ。
いくつもの星に惹かれて街をさまよう
いくら待とうと変化などないと分かっていて立ち尽くす。
一点の捨てきれない望みがないといえば嘘だった。
瞼に痛いほどの装飾が施されたモミの木の下で私はジャンクフードにかぶりついた。風情など元からないこの場所で、次々と流れていく恋人たちを視界にとどめながら、普遍的な味ばかりの食料を口に投げ込む。空腹を満たすばかりの行為、味など求めない。噛み締めることなくジュースと一緒に飲み込むと、包装紙にくるみトラッシュボックスへと投げ入れた。
路上は滞ることなく流れる。白濁した息は夜とは思えぬほど眩い空と織り交ざって消えた。
私は待っている。手がかじかむほどにずっと、待っている。あの綺麗で強い人を、来ないと分かっていて待っている。
一つの約束をしていた。
約束とも呼べぬほどの、一方的なものだったけれども。私にとってそれは紛れもない約束だったのだ。
――十二月二四日、九時にこの場所で。
想いがこの息と一緒に溶けてしまえばいいのに。ただ胸を痛めつけるだけの想いなんてなくなってしまえばいいと思った。
確実にあるだろう夜空を見上げても星と呼べるだけの灯火はなく、次の瞬間には駆けだしていた。唐突に生まれた衝動が、街明かりから出来るだけ自分を遠ざけるかの如く足を走らせる。辿り着いたのははたして、地の果てだったのかもしれない。
三十分も走っていただろうか。もう周囲に人一人いないほど辺境な場所に来てしまっていた。
昼と見間違うくらいに明るい、ここは星が降り注ぐ丘。
私は膝に両手を着き、息を整える。せっかく整えてきた身嗜みが崩れてしまっていたけれど構わない。見てくれる人はいない。でも。
「訓練しておけばよかったかな」
こんな時、空が飛べないのが悔しい。
あの人みたいに、この大きな空を飛びたい。少しだけ前に行って、あの人のことを護りたい。実際にはそんなことできはしない。いつまでたっても私は教え子でしかなく、実力だって足元にも及ばない。陸戦魔導師ランクAAを取得はしたけれど、それだってあの人には敵わない。
「悔しい、な」
空はこんなにも大きい。街中の夜空にあるものとは比べるのもおこがましいほど、星が明滅を繰り返しては胸に飛び込んでくる。無償に心が動く。激しい動悸ともつかぬ鼓動の高鳴り。
もうずっと会えていないなのはさんを想っては、願望を抑え込んでいた。
約束をしていた。
私は逃げてきてしまっていたけれど、それは多忙な彼女に押しつけた自分のたった一つの我が侭だったのだ。受け入れて貰えなければこの関係が終わるだけ。それならばいっそ、切ってしまえばいいと。
誰よりも悪いのは彼女ではなく、彼女を信じられない自分に違いない。自分がいなくなることで彼女の負担が減るならば、それが一番の報いなのではないだろうか。ここまで強くしてもらった、支えてもらった、恋を教えてもらったあの人へ返せるただ一つの事とさえ思う。
だからか、頭上で高く輝くあの星がなのはさんに重なるのは。
そうして独り、街の見渡せる丘に腰掛けて夜を明かした。
空が徐々に炙られていく。穏やかな風と頬を柔らかく撫でる。ビルの谷間から上りゆく淡い陽の光が目に沁みる。私はすっかりと冷えてしまった己の肩を抱き、うずくまった。空では他の星たちに護られるようにして、明星が瞬いていた。
私は何をしているのだろう。服は皺だらけで、その上地面に座って汚れた裾を見下ろして俯く。だがそれ以外の変化はない。
涙はなかった。ただ、終わったのだと知っただけ。
今にも肩を優しく叩いて、振り向けばそこに彼女の、少し困ったような笑顔がありそうで、だけどそれはただの幻想と知ってしまった。
私は立ち上がり、ついていた土埃を払う。
――あたし、大丈夫?
――当然。
確かめるよう自身に問いかけ、また自身が頷く。それから来た時はなかった霜の感触を足の裏で感じながら、足早に丘を降りる。道に出る前に今一度振り返ると、そこには依然として白い空があった。いつまでも手の届かない、空が。
◇
無人の丘に今日二人目の客が現れた。
これほど短時間に二人の人間が現れるとは、なんと珍しいことだろうとこの丘の主である鳥は軽い衝撃を覚える。その視界には長い髪の女性が映る。凛々しく綺麗な女性だ。ただ完璧に見えるその女性の息は切れていて、どこかしら危うさを含んでもいた。
半ば祖雑でありながらも十分な時間辺りを見回した後、彼女は目見えて落胆し、項垂れた。同時にサイドで一纏めにした髪も揺れる。
「ティアナ……」
蒼い眼をした女性は何者かの名前をぼぞりと漏らすと、しばらくその場から動かずに数分が経過する。だが何を思ったのか、あるいはなにも考えていないままなのか、彼女は丘の切り口に乗り出し、縮小された街を見下ろした。
その蒼に映しているものは何なのだろう。何となく興味をそそられた鳥は覗き込もうとして、しかしぎりぎりの部分で遮られ、目にすることはできない。端正な顔は今は横髪に隠れてしまった。
彼女はしばらくそうしたあと、来た時と同じように霜を踏みしめて丘を降りていく。背中から漂う哀愁がやけに胸を引っ掻かれ。彼女が立ち去った後、木の枝に足をしがみ付かせたまま、鳥はただ一声鳴いた。
× あとがき ×
余韻を楽しんでいただければ……と。
クリスマスイブだからこそ書きたかった話です。なのティア枠もうひとつあるので、幸せな話はそちらで、ということで許してやってください。というよりあとは全部幸せなエンドのはずですので。
誰でもいいように思えますが、自分のなかではこれは相手がティアナ以外だと成り立たなかった。フェイトだと約束を無理強いしない。ヴィータなら乗り込んでいってでも休ませる。はやてならそもそもなのはに手を伸ばさないだろう。だからこれはティアナだけ。
相手が忙しいのが分かっていてイブにデートを求めたティアナ。大切な人に寂しい思いをさせているとわかって仕事に妥協せず、相手の優しさや我慢に甘えたなのは。
どちらが悪かったわけじゃなく。きっと両方なんだろうと。
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アリサ×なのは

comments
寂しいのか…寂しくないのか…
遅かったのか…間に合ったのか…
全ては星の下に……―――
悲しいけれど、バットではない感じが良かったです。
次も楽しみにしています、頑張ってね♪
そんな感想を大仰な身振りで叫んだ垂れ坊です。
う〜ん、確かにこれはティアナだから成り立ったような気がするのもわかる気がします。
わかるんですけど、もう、切ない!
最後の辺り(夜明け辺り)の、「今にも肩を優しく叩いて、振り向けばそこに彼女の、少し困ったような笑顔がありそうで、だけどそれはただの幻想と知ってしまった。」で、思わず「自己完結させるなよちくしょう! 幻想じゃねえよ、もうちょい頑張れよ!」って言っちゃったり、それから少ししてからやってきたなのはに「あとちょっと……あとちょっとだったのによぉ!」 と悔しがったりと、読みながら、傍目からはやばい人にしか見えない奇行に走ってる自分がいました。それくらい、切なく、悔しい終わり方でした。
今度はハッピーエンドということですので、どうかこの二人を幸せにしてやってください!では!
受けてがどう感じるかは、様々でしょうね。
自分もただ単純なバッドにはしたくなかったので。単純なバッドなら簡単だから。
そういえばこの話を考えている時に思いついたこと。
ティアナの二つ名に「星」が組み込まれているんですが、あの二人をつなぐのは星なのかもしれない。ということで。
ティアナとなのはを書く上で、星と空はきっても切り離せない関係なのでしょうな。
読んでいただいてありがとうございます。がんばりますね!
>垂れ坊さん
すれ違いって素敵ですよね。実際にはすれ違いは多いようで少ない気がします。
そしてこの話、バッドエンドと捉えてくれましたか。うん、それもいいです。
そこまで感情移入して読んでいただけるなら、書いた方としてもこれ以上になく幸せであります。
ティアナは……、これまでさんざん思い悩んで、考えて、なのはさんのことで頭いっぱいにして疲れたんですよ。なかなか会えない人を待っているのはつらい。その人の周りに魅力的で、その人を想う人がいるなら尚更に。
あとティアナ自身、すぐに諦めるような気がします。肝心な部分で。一度決めたらまっすぐに進み、何があってもへこたれずに頑張ることはゆるぎないでしょうが、一方で簡単にあきらめてしまえる部分があるような。
あくまでも自分は、ですが。
次は幸せにしてあげようとおもいます。がんばれティアナ!そしてなのはさん。ティアナを幸せにしてやって。
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