その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
みぎては手袋、ひだりてはあなた 2007/12/25
Christmas企画SSです。
なのは×リインフォースII。
でもはやてが影の主役。雪のような話。
よければ続きよりどうぞ。
みぎては手袋、ひだりてはあなた
デバイスが恋をするなんてあるんでしょうか。
私の問いかけに貴女が無言で頭を撫でてくれた数分間に、全ての幸せが詰まっていた。
白に反射して、眩しいまでに輝く空を、窓からぼんやりと見上げていた。
こんな日にも、いやこんな日だからこそマイスターは仕事に追われていて、そのお手伝いを自分はしていた。いないよりは役に立つだろう。それに一人にしておくにはあまりにも心細い。
十年前のこの日、あの人は別の世界、だけど同じ空に溶けたのだと。
不安が出てしまっていたのか、マイスターがこちらを見ていた。私はとっさに視線を逸らす。優しい瞳が逆に寂しくて、やりきれない。あの人がいないから私がいる。だけど私があの人の代わりになることはできない。私は誰の心の支えになることもできない。
いつの間にか顔が俯いている。リイン、とマイスターが私を呼ぶ。振り向けばそこに、マイスターの苦笑があった。その手には見慣れた服と手袋が。
「行きたいんやろ」
アウトフレーム、フルサイズ時の自身の服。書類を払った卓上に着替えをのせたマイスターが言う。反射的に頷きかけて、私はだけど静止する。
行けない。主がこんな顔をしているのに、どうして一人だけ幸せになれるだろう。
首を横に振ると、マイスターの表情は優しく、だが次の瞬間には厳しくなった。
「だめです、こんな日になんて」
「こんな日だからこそ、や。それにそないな悲しい顔して、説得力ないで」
「それは、マイスターも同じ顔してるです」
「……マイスターって」
「仕事中ですから」
「ほんま強情やな」
「主が主ですし」
「酷い言われようや、まあほんなら私も強情にいかんとな」
言いつつ立ち上がって私の分の書類を片し、自身の机に運ぶ。あ、と腕を伸ばしたときにはもう遅かった。
「今日はもう上がりや。リインは仕事禁止」
「はやてちゃん!?」
「なあ、自分と同じ想いをしている人がいるとは考えんの? これはリインの為だけやない、あの子の、“こんな日”にも仕事をしているあの子の為でもあるんや。お願いやから、あの子を悲しませんとって」
それは苦しいほどの切望。自分を殺すような抑制。一人で全てを背負おうとするマイスターの心情を読み取ることすらしなかった自分が酷く愚かしく思える。これ以上はマイスターの心を更に傷つけるだけのような気がした。気遣えば気遣うほど相手が傷ついてしまう、そんなこともあるのだ。ならば込み上げる涙は場違いでしかない。私は無言で頷いて、その部屋を出るだけ。
ぽつぽつと灯された外灯を通り過ぎながら主のことを想った。主は、そして主である前に家族の一員である自分を、どんな気持ちで送り出してくれたのだろう。自身の幸せも省みず、背中を押してくれたマイスター、……はやてちゃんのことを考えるたびに胸が震える。気管が上手く作動しない。呼吸さえも満足にできなくなる。
だけれども歩かなければ。
歩いて、足を進めて。せめて自分がいることで笑顔をプレゼントしてあげる人の元に辿り着かなければ。
義務だった。嬉しすぎる義務。これがはやてちゃんがくれたクリスマスプレゼントなのかもしれない。そう思う度に、我慢してきた涙が喉を走り、しょっぱさが舌に絡まる。袖で拭わなければ、こんどはあの人を心配させてしまう。力任せに擦ってから私は走った。
そして私は辿り着く。
小さな灯りを灯したままの玄関で迎えてくれたあの人は一瞬だけ驚いて見せたけれど、すぐに笑顔に変わった。なのはさんの何もかも知りつくしたような笑顔が、胸に心地よく広がっていく。彼女の微笑が目に沁みたように、再び涙が溢れ出てしまった。そんな私の頭を、彼女は子供をあやす様に頭を撫でてくれる。不快な感じはしない。その行為は紛れもなく私を安心させてくれたのだから。
「じゃあ、行こうか」
幾分落ち着いた後、彼女が私の左手を取る。そのままジャケットについたポケットに誘われ、大きな右手に冷えた左手が温かく包まれる。悲しみが全てそこに溶けていく。十年前のこの日起きた出来事は無視できないことだけれど、それでも私たちは生きてその上に立っている。乗り越えるまでにはまだ心が弱いけれど、彼女の笑顔があればきっとできる。ただ一人部外者の自分が、いつか今度は大切な人たちを包み込めるように。
彼女は私に強い心をくれている。だから。いつの日か返せるように、成長していく。私の周りには優しすぎる人が多いから。
彼女が私の顔を覗き込んでいる。私は背伸びをし、微かに不安げに揺れる頬にそっと手を伸ばして触れる。思わぬ冷たさに息を呑んだ。――悲しいのは自分だけじゃない。
「なのはさんは」
先程はやてちゃんに言われたばかりではないか、自分と同じ想いをしている人がいるとは考えないのか、と。ああ、彼女も悲しいのかもしれない。だけど理由が分からずに問いかける。
「なのはさんは、どうしてそんな悲しい顔をするですか?」
「リインが悲しい顔をしているから」
凍える頬に手を当てたまま蒼い瞳を見詰める。右手に彼女の左手が添えられ、二人の間でしばし時間が滞る。優しい沈黙が耳を撫でる。癒しの風が、白い雪とともに通り抜けていく。その中で彼女は私の手を自分の口元に持って行き、手の甲に口付けた。答えるように、私は腰を折らせた彼女の瞼に、憧憬の念を込めて唇で触れる。
お互いに唇は不相応だと分かっているのだ。この時間、二人にとってはおそらくそれが精一杯の触れ合いだった。
だから彼女は言う。
「リインの笑顔が見たいな」
寂しがりやなのは自分だけでなく彼女もなのだと、その言葉で知る。はやてちゃんのあの言葉はきっとこれを示していたんだろう。重ねた年月が違うとはいえ、自分よりも余程彼女のことを分かっていてあげられるはやてちゃんにほんの少しの嫉妬と、気づかせてくれた事に感謝をしながら、私はあらためて彼女に向き直る。
なのはさんは形のいい唇を結んだままこちらをじっと見てくれている。
応えたい、と思った。せめて。
「はいです……、っ」
声が震えないよう、そして崩れた笑みでないことを願いながら、力いっぱい彼女の腰に抱きつく。肩に添えられた両手は温かく、冷えた心に浸透する。
せめて。せめてなのはさんの寂しさが埋まるようにと祈りながら。
撫でてくれた彼女の手はやはり優しかった。
×あとがき×
微妙にはやて→なのは←リインII。
でもどろどろって感じではなく、お互いがお互いを大事にしあうような関係。
仕事が残っているのに、それを言うことなく悟らせることなく付き合うなのはさんにカンパイ。
はやてを絡めたギャグというのはよく見ますが、自分はどうにもはやてをギャグにする気にはなれません。読むのはすごく楽しいのですが。
リリカルなのはという作品にある人物は皆、心の底が見えないほど深い。
なのはもそうですが、はやても自己犠牲が酷いと思って書きました。自分の幸せなど、大切な人の二の次でしかない。それは悲しいことだけど、大切な人が幸せならそれでもいいと思えるその心が、はやての心を安らげることもあるのではないか。ちょっとした矛盾ですけどね。大切にする気持は帰ってきますから。
……ってこれなのリインなんだけどなあ(笑 はやて話であとがきを埋めてしまったよ。
なのは×リインフォースII。
でもはやてが影の主役。雪のような話。
よければ続きよりどうぞ。
みぎては手袋、ひだりてはあなた
デバイスが恋をするなんてあるんでしょうか。
私の問いかけに貴女が無言で頭を撫でてくれた数分間に、全ての幸せが詰まっていた。
白に反射して、眩しいまでに輝く空を、窓からぼんやりと見上げていた。
こんな日にも、いやこんな日だからこそマイスターは仕事に追われていて、そのお手伝いを自分はしていた。いないよりは役に立つだろう。それに一人にしておくにはあまりにも心細い。
十年前のこの日、あの人は別の世界、だけど同じ空に溶けたのだと。
不安が出てしまっていたのか、マイスターがこちらを見ていた。私はとっさに視線を逸らす。優しい瞳が逆に寂しくて、やりきれない。あの人がいないから私がいる。だけど私があの人の代わりになることはできない。私は誰の心の支えになることもできない。
いつの間にか顔が俯いている。リイン、とマイスターが私を呼ぶ。振り向けばそこに、マイスターの苦笑があった。その手には見慣れた服と手袋が。
「行きたいんやろ」
アウトフレーム、フルサイズ時の自身の服。書類を払った卓上に着替えをのせたマイスターが言う。反射的に頷きかけて、私はだけど静止する。
行けない。主がこんな顔をしているのに、どうして一人だけ幸せになれるだろう。
首を横に振ると、マイスターの表情は優しく、だが次の瞬間には厳しくなった。
「だめです、こんな日になんて」
「こんな日だからこそ、や。それにそないな悲しい顔して、説得力ないで」
「それは、マイスターも同じ顔してるです」
「……マイスターって」
「仕事中ですから」
「ほんま強情やな」
「主が主ですし」
「酷い言われようや、まあほんなら私も強情にいかんとな」
言いつつ立ち上がって私の分の書類を片し、自身の机に運ぶ。あ、と腕を伸ばしたときにはもう遅かった。
「今日はもう上がりや。リインは仕事禁止」
「はやてちゃん!?」
「なあ、自分と同じ想いをしている人がいるとは考えんの? これはリインの為だけやない、あの子の、“こんな日”にも仕事をしているあの子の為でもあるんや。お願いやから、あの子を悲しませんとって」
それは苦しいほどの切望。自分を殺すような抑制。一人で全てを背負おうとするマイスターの心情を読み取ることすらしなかった自分が酷く愚かしく思える。これ以上はマイスターの心を更に傷つけるだけのような気がした。気遣えば気遣うほど相手が傷ついてしまう、そんなこともあるのだ。ならば込み上げる涙は場違いでしかない。私は無言で頷いて、その部屋を出るだけ。
ぽつぽつと灯された外灯を通り過ぎながら主のことを想った。主は、そして主である前に家族の一員である自分を、どんな気持ちで送り出してくれたのだろう。自身の幸せも省みず、背中を押してくれたマイスター、……はやてちゃんのことを考えるたびに胸が震える。気管が上手く作動しない。呼吸さえも満足にできなくなる。
だけれども歩かなければ。
歩いて、足を進めて。せめて自分がいることで笑顔をプレゼントしてあげる人の元に辿り着かなければ。
義務だった。嬉しすぎる義務。これがはやてちゃんがくれたクリスマスプレゼントなのかもしれない。そう思う度に、我慢してきた涙が喉を走り、しょっぱさが舌に絡まる。袖で拭わなければ、こんどはあの人を心配させてしまう。力任せに擦ってから私は走った。
そして私は辿り着く。
小さな灯りを灯したままの玄関で迎えてくれたあの人は一瞬だけ驚いて見せたけれど、すぐに笑顔に変わった。なのはさんの何もかも知りつくしたような笑顔が、胸に心地よく広がっていく。彼女の微笑が目に沁みたように、再び涙が溢れ出てしまった。そんな私の頭を、彼女は子供をあやす様に頭を撫でてくれる。不快な感じはしない。その行為は紛れもなく私を安心させてくれたのだから。
「じゃあ、行こうか」
幾分落ち着いた後、彼女が私の左手を取る。そのままジャケットについたポケットに誘われ、大きな右手に冷えた左手が温かく包まれる。悲しみが全てそこに溶けていく。十年前のこの日起きた出来事は無視できないことだけれど、それでも私たちは生きてその上に立っている。乗り越えるまでにはまだ心が弱いけれど、彼女の笑顔があればきっとできる。ただ一人部外者の自分が、いつか今度は大切な人たちを包み込めるように。
彼女は私に強い心をくれている。だから。いつの日か返せるように、成長していく。私の周りには優しすぎる人が多いから。
彼女が私の顔を覗き込んでいる。私は背伸びをし、微かに不安げに揺れる頬にそっと手を伸ばして触れる。思わぬ冷たさに息を呑んだ。――悲しいのは自分だけじゃない。
「なのはさんは」
先程はやてちゃんに言われたばかりではないか、自分と同じ想いをしている人がいるとは考えないのか、と。ああ、彼女も悲しいのかもしれない。だけど理由が分からずに問いかける。
「なのはさんは、どうしてそんな悲しい顔をするですか?」
「リインが悲しい顔をしているから」
凍える頬に手を当てたまま蒼い瞳を見詰める。右手に彼女の左手が添えられ、二人の間でしばし時間が滞る。優しい沈黙が耳を撫でる。癒しの風が、白い雪とともに通り抜けていく。その中で彼女は私の手を自分の口元に持って行き、手の甲に口付けた。答えるように、私は腰を折らせた彼女の瞼に、憧憬の念を込めて唇で触れる。
お互いに唇は不相応だと分かっているのだ。この時間、二人にとってはおそらくそれが精一杯の触れ合いだった。
だから彼女は言う。
「リインの笑顔が見たいな」
寂しがりやなのは自分だけでなく彼女もなのだと、その言葉で知る。はやてちゃんのあの言葉はきっとこれを示していたんだろう。重ねた年月が違うとはいえ、自分よりも余程彼女のことを分かっていてあげられるはやてちゃんにほんの少しの嫉妬と、気づかせてくれた事に感謝をしながら、私はあらためて彼女に向き直る。
なのはさんは形のいい唇を結んだままこちらをじっと見てくれている。
応えたい、と思った。せめて。
「はいです……、っ」
声が震えないよう、そして崩れた笑みでないことを願いながら、力いっぱい彼女の腰に抱きつく。肩に添えられた両手は温かく、冷えた心に浸透する。
せめて。せめてなのはさんの寂しさが埋まるようにと祈りながら。
撫でてくれた彼女の手はやはり優しかった。
×あとがき×
微妙にはやて→なのは←リインII。
でもどろどろって感じではなく、お互いがお互いを大事にしあうような関係。
仕事が残っているのに、それを言うことなく悟らせることなく付き合うなのはさんにカンパイ。
はやてを絡めたギャグというのはよく見ますが、自分はどうにもはやてをギャグにする気にはなれません。読むのはすごく楽しいのですが。
リリカルなのはという作品にある人物は皆、心の底が見えないほど深い。
なのはもそうですが、はやても自己犠牲が酷いと思って書きました。自分の幸せなど、大切な人の二の次でしかない。それは悲しいことだけど、大切な人が幸せならそれでもいいと思えるその心が、はやての心を安らげることもあるのではないか。ちょっとした矛盾ですけどね。大切にする気持は帰ってきますから。
……ってこれなのリインなんだけどなあ(笑 はやて話であとがきを埋めてしまったよ。
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アリサ×なのは

comments
はやては良い人だし、リインは優しいし、読んでて癒されました。
コメント返信おそくなってすみませんm(_ _)m
最近なの受けの良さに気付いて、総受けになりつつあるうちのサイトであります・・・(笑
この話はやさしい人でいっぱいです。はやてもだし、リインもやさしいです。でも一番優しいのは実はなのはかもしれません。。
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