その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
君が居ない夜はどこにいても寒いや 2008/01/04
Christmas企画SSです。
年明けにクリスマスって突っ込みは、うん、やめておいていただけるとありがたいかなw
新年の始め、何を書こうかと考えたのですが、自分がリリカルなのはの深みに足を乗せてしまったのは、一話〜三話の流れ(「――友達だ」から仮眠室での抱擁)、なのはをまるでヒーローのごとく助けるフェイトに背を押されてからです。
なのでここはフェイト×なのはでいこうかと。
少しパラレル気味です。もしも闇の書事件が起きなかったら。
フェイトの身柄の拘束が溶けて初めてのクリスマス。
よろしければ続きよりどうぞ。
君が居ない夜はどこにいても寒いや
会いたいという一言に、ただ頷いてくれればよかった。
なのはに会えない。
買ってもらったばかりの携帯を閉じる。小さな窓に記された日付は12/24。白いライトが宵に溶けることなく発光する。自身の醜い、最後の抵抗のように思えて、フェイトは手の平で覆い隠した。
ベッドの中、枕に鼻を埋めている。リボンをほどいた金髪は広がって、シーツの上に綺麗な波を打っていた。ただ宵が邪魔して目にすることはできない。
フェイトは盛大な溜息をついた。カーテンを引けばすぐにでも明かりが零れてくるだろうに、フェイトはたったの指一本さえ動かすことはできない。その明りがフェイトには耐えがたいものであったのだ。こんな陰鬱な気分にさせている原因が、まさにそれであった。
なのはに会えない。
家業の準備や後始末に追われたなのはは、今日自身が提案した誘いに乗ってくれなかった。毎年のことなんだ、と片眉を下げながら謝罪し、フェイトちゃんと初めてのクリスマスイブ一緒に過ごしたかったな、と悔しげに呟くなのはを前にして強引に約束を取り付ける勇気がフェイトにはなかった。だから一度だけメールで誘ったのだ。
『少しだけでもいい、会えないかな』
我侭を言えるほどの身分ではないと認識していたにもかかわらずだ。いや、だからこそ今こんなにも無気力であるのかもしれない。半年ほど前は明確な自意識というものすら朧げであったというのに、一体どうしてしまったのか。
フェイトは悩んだ。この日の意味を聞いた時から。
フェイトは悩んだ。一人の人に会えないというだけで、何故自分はこれほど落ち込んでいるのだろうと。
フェイトは悩んだ。胸に潜む、なのはへ決して伝えることのないこの想いの正体を理解した瞬間に。
いっそ聞かなければよかったのに。いっそ誘わなければよかったのに。いっそ気付かなければよかったのに。今夜幾度考えたかわからない。悔恨に圧されるようにしてフェイトはベッドに寝そべる。
仮面を被るのは得意だった。夕食の席ではどうにか笑顔を取り繕い、平常を装うことはできたが、それで限界である。――仮面はひどく脆い。なのはの所為にするつもりはないけれど、やはり紛れもなくなのはの所為だったのだ。
無音であった。だからフェイトは窓の方でしたコンという小さな音に気づいた。
どうやら風も自分を嘲笑っているようだ。
フェイトは尚更布団を深く被った。頭から覆い隠してしまえば、ほら、もう聞こえない。風のささやかな嘲笑など届きはしない。そう思っていたのに、窓を叩く音はだんだんと大きくなっているようだった。風にしてはいささか音が大きいように思う。ガラスを雪でも叩いているのか。
ふとフェイトは立ち上がった。もしそうなら、雪が見てみたくなったのだ。重たい体を起こし、窓際に足を寄せる。カーテンの向こうに白い雪がせめて降っていてくれればいいのにと小さく祈りながら。
祈りは、だけど届かなかった。窓の外に雪などなかった。変わらない宵が立ち込めていたにすぎない。だがもうフェイトはベッドに戻ろうとはしなかった。それどころか窓の鍵を開けた。
「えへへ、こんばんは」
其処には雪よりも尚素晴らしい光景があったのだ。
雪もない。華やぐライトもない。――会いたかった人の笑顔、それだけ。だがそれだけを望んでいたフェイトは、胸を掻き乱される。デバイスがないことなどすっかり失念していたフェイトは、窓枠に足をかけ、勢いよく踏み切った。
バルディッシュの無いフェイトは当然浮力を得ることはなく、白い防護服に支えられた。桜色の魔法光にフェイトは抱かれる。上着も羽織らずに夜風に当てられているのに、温かささえ感じる。
「大丈夫、フェイトちゃん」
「……うん、なのは」
もしもこの温かさを知らなければ、今より楽であったかもしれない。感情を交わさぬまま、やり過ごしてきたのなら。離れていた半年の間、まったく連絡を取らずにいたのならば自分はこれほどの寂寥感を感じることはなかったのではないかと考えた。それはこの瞬間にも変わらない、だけれども今は忘れていよう。そしてこの子は忘れさせてくれる。フェイトはなのはの細い胴に腕を回しながら思っていた。
忙しいといったなのはがどうして来てくれたのか、その理由などフェイトにとってどうでもいいことだった。この日、会えたことが重要だった。だから尋ねることはない。会えた喜びを全身で感受するだけ。
「いきなり飛び出してくるから、びっくりしちゃった」
なのはが軽口を漏らすが、雰囲気まで軽くなることはない。
二人の間で熱を帯びた視線が交わされる。実際になのはのほうが熱い視線を向けてくれていたのかは当然フェイトの知るところではないが、フェイトにはそう感じられた。なのはの瑠璃色の瞳が醸し出す視線に突き刺されて、身が溶けていくような感覚に陥る。ひたすらに甘い。
誘われるように、フェイトはなのはの頬に唇を寄せた。彼女の頬は冷たかった。フェイトは少しなのはから体を離し、反対側の頬を掌で包んだ。先ほど携帯のライトを覆い隠していた手の平ではもうない。
なのはもフェイトの手にのせるよう、首を傾ける。
「本当は私、抜け出して来てるんだ」
開いた方の腕で、彼女の体を自身の胸に掻き寄せる。隙間が憎い。
「だから早く帰らないといけないんだけど」
「……うん」
「でもあと五分くらいはいいよね」
フェイトは答えない。頬に当てていた腕も背に回した。なのはの腕も自身の肩を包む。
とてつもなく永い時間。フェイトは幸せだった。
翌朝目を覚ましてみれば、フェイトは変わらず携帯を握り締めて眠っていた。昨夜のあれはもしかして聖夜に見た夢だったのかもしれないとも考えた。手に入らないものを幻想したにすぎないのではないか、と。携帯は光を失っているし、布団からはみ出た頬は冷たいまま。
だけれどもあれが幻想でないことは自分が一番よく分かっていた。フェイトは確かに覚えている。彼女に触れた時の冷たさを。包まれた時の温かさを、そして包んだ時の心地よさを誰よりもフェイト自身がよく覚えていた。
階下からリンディの声が聞こえる。フェイトは起き上がった。カーテンを引けば快晴で、未だ眼に馴染まぬ強い光を真っ直ぐ見据えたまま、フェイトは居然として蒼を見ていた。しばらくして大きな欠伸を零す。
フェイトはそれから、食卓に足を向けた。
× あとがき ×
食卓は幸せを共有する場所。だからフェイトは、昨晩の出来事が嘘でなかったことの証明に、そこに向かった。なのはと分け合った温度を確かめながら。
と自身の力量不足ゆえ、あとがきをかりて解説してみました。
フェイトとなのはは友達同士、だからお互い唇に触れられない。だけど頬になら許される。そう二人の間では暗黙のうちにそんな取り決めがされていたのかもしれない。
布に意味なんてない。ただ相手の温度だけが自分を温めてくれるんだと、フェイトは考えていた。だからなのはの姿を見た瞬間、考えることなく飛び降りたのだろう。なのはがフェイトの気持ちにどれだけ気づいているか、それは推し量ることができないけれど、フェイトにはそれだけ強くなのはを想う心があるのだと。
そんなフェイトとなのはの関係、いかがだったでしょう。それにしてもこの二人は、少し劇的にしたくなっていけませんね。
年明けにクリスマスって突っ込みは、うん、やめておいていただけるとありがたいかなw
新年の始め、何を書こうかと考えたのですが、自分がリリカルなのはの深みに足を乗せてしまったのは、一話〜三話の流れ(「――友達だ」から仮眠室での抱擁)、なのはをまるでヒーローのごとく助けるフェイトに背を押されてからです。
なのでここはフェイト×なのはでいこうかと。
少しパラレル気味です。もしも闇の書事件が起きなかったら。
フェイトの身柄の拘束が溶けて初めてのクリスマス。
よろしければ続きよりどうぞ。
君が居ない夜はどこにいても寒いや
会いたいという一言に、ただ頷いてくれればよかった。
なのはに会えない。
買ってもらったばかりの携帯を閉じる。小さな窓に記された日付は12/24。白いライトが宵に溶けることなく発光する。自身の醜い、最後の抵抗のように思えて、フェイトは手の平で覆い隠した。
ベッドの中、枕に鼻を埋めている。リボンをほどいた金髪は広がって、シーツの上に綺麗な波を打っていた。ただ宵が邪魔して目にすることはできない。
フェイトは盛大な溜息をついた。カーテンを引けばすぐにでも明かりが零れてくるだろうに、フェイトはたったの指一本さえ動かすことはできない。その明りがフェイトには耐えがたいものであったのだ。こんな陰鬱な気分にさせている原因が、まさにそれであった。
なのはに会えない。
家業の準備や後始末に追われたなのはは、今日自身が提案した誘いに乗ってくれなかった。毎年のことなんだ、と片眉を下げながら謝罪し、フェイトちゃんと初めてのクリスマスイブ一緒に過ごしたかったな、と悔しげに呟くなのはを前にして強引に約束を取り付ける勇気がフェイトにはなかった。だから一度だけメールで誘ったのだ。
『少しだけでもいい、会えないかな』
我侭を言えるほどの身分ではないと認識していたにもかかわらずだ。いや、だからこそ今こんなにも無気力であるのかもしれない。半年ほど前は明確な自意識というものすら朧げであったというのに、一体どうしてしまったのか。
フェイトは悩んだ。この日の意味を聞いた時から。
フェイトは悩んだ。一人の人に会えないというだけで、何故自分はこれほど落ち込んでいるのだろうと。
フェイトは悩んだ。胸に潜む、なのはへ決して伝えることのないこの想いの正体を理解した瞬間に。
いっそ聞かなければよかったのに。いっそ誘わなければよかったのに。いっそ気付かなければよかったのに。今夜幾度考えたかわからない。悔恨に圧されるようにしてフェイトはベッドに寝そべる。
仮面を被るのは得意だった。夕食の席ではどうにか笑顔を取り繕い、平常を装うことはできたが、それで限界である。――仮面はひどく脆い。なのはの所為にするつもりはないけれど、やはり紛れもなくなのはの所為だったのだ。
無音であった。だからフェイトは窓の方でしたコンという小さな音に気づいた。
どうやら風も自分を嘲笑っているようだ。
フェイトは尚更布団を深く被った。頭から覆い隠してしまえば、ほら、もう聞こえない。風のささやかな嘲笑など届きはしない。そう思っていたのに、窓を叩く音はだんだんと大きくなっているようだった。風にしてはいささか音が大きいように思う。ガラスを雪でも叩いているのか。
ふとフェイトは立ち上がった。もしそうなら、雪が見てみたくなったのだ。重たい体を起こし、窓際に足を寄せる。カーテンの向こうに白い雪がせめて降っていてくれればいいのにと小さく祈りながら。
祈りは、だけど届かなかった。窓の外に雪などなかった。変わらない宵が立ち込めていたにすぎない。だがもうフェイトはベッドに戻ろうとはしなかった。それどころか窓の鍵を開けた。
「えへへ、こんばんは」
其処には雪よりも尚素晴らしい光景があったのだ。
雪もない。華やぐライトもない。――会いたかった人の笑顔、それだけ。だがそれだけを望んでいたフェイトは、胸を掻き乱される。デバイスがないことなどすっかり失念していたフェイトは、窓枠に足をかけ、勢いよく踏み切った。
バルディッシュの無いフェイトは当然浮力を得ることはなく、白い防護服に支えられた。桜色の魔法光にフェイトは抱かれる。上着も羽織らずに夜風に当てられているのに、温かささえ感じる。
「大丈夫、フェイトちゃん」
「……うん、なのは」
もしもこの温かさを知らなければ、今より楽であったかもしれない。感情を交わさぬまま、やり過ごしてきたのなら。離れていた半年の間、まったく連絡を取らずにいたのならば自分はこれほどの寂寥感を感じることはなかったのではないかと考えた。それはこの瞬間にも変わらない、だけれども今は忘れていよう。そしてこの子は忘れさせてくれる。フェイトはなのはの細い胴に腕を回しながら思っていた。
忙しいといったなのはがどうして来てくれたのか、その理由などフェイトにとってどうでもいいことだった。この日、会えたことが重要だった。だから尋ねることはない。会えた喜びを全身で感受するだけ。
「いきなり飛び出してくるから、びっくりしちゃった」
なのはが軽口を漏らすが、雰囲気まで軽くなることはない。
二人の間で熱を帯びた視線が交わされる。実際になのはのほうが熱い視線を向けてくれていたのかは当然フェイトの知るところではないが、フェイトにはそう感じられた。なのはの瑠璃色の瞳が醸し出す視線に突き刺されて、身が溶けていくような感覚に陥る。ひたすらに甘い。
誘われるように、フェイトはなのはの頬に唇を寄せた。彼女の頬は冷たかった。フェイトは少しなのはから体を離し、反対側の頬を掌で包んだ。先ほど携帯のライトを覆い隠していた手の平ではもうない。
なのはもフェイトの手にのせるよう、首を傾ける。
「本当は私、抜け出して来てるんだ」
開いた方の腕で、彼女の体を自身の胸に掻き寄せる。隙間が憎い。
「だから早く帰らないといけないんだけど」
「……うん」
「でもあと五分くらいはいいよね」
フェイトは答えない。頬に当てていた腕も背に回した。なのはの腕も自身の肩を包む。
とてつもなく永い時間。フェイトは幸せだった。
翌朝目を覚ましてみれば、フェイトは変わらず携帯を握り締めて眠っていた。昨夜のあれはもしかして聖夜に見た夢だったのかもしれないとも考えた。手に入らないものを幻想したにすぎないのではないか、と。携帯は光を失っているし、布団からはみ出た頬は冷たいまま。
だけれどもあれが幻想でないことは自分が一番よく分かっていた。フェイトは確かに覚えている。彼女に触れた時の冷たさを。包まれた時の温かさを、そして包んだ時の心地よさを誰よりもフェイト自身がよく覚えていた。
階下からリンディの声が聞こえる。フェイトは起き上がった。カーテンを引けば快晴で、未だ眼に馴染まぬ強い光を真っ直ぐ見据えたまま、フェイトは居然として蒼を見ていた。しばらくして大きな欠伸を零す。
フェイトはそれから、食卓に足を向けた。
× あとがき ×
食卓は幸せを共有する場所。だからフェイトは、昨晩の出来事が嘘でなかったことの証明に、そこに向かった。なのはと分け合った温度を確かめながら。
と自身の力量不足ゆえ、あとがきをかりて解説してみました。
フェイトとなのはは友達同士、だからお互い唇に触れられない。だけど頬になら許される。そう二人の間では暗黙のうちにそんな取り決めがされていたのかもしれない。
布に意味なんてない。ただ相手の温度だけが自分を温めてくれるんだと、フェイトは考えていた。だからなのはの姿を見た瞬間、考えることなく飛び降りたのだろう。なのはがフェイトの気持ちにどれだけ気づいているか、それは推し量ることができないけれど、フェイトにはそれだけ強くなのはを想う心があるのだと。
そんなフェイトとなのはの関係、いかがだったでしょう。それにしてもこの二人は、少し劇的にしたくなっていけませんね。
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アリサ×なのは

comments
何故かいつもと違う気がして、ふと気軽に尋ねてみると、彼女は当たり前のように言った
「昨日はクリスマスだよ♪」
驚いた。つい昨日までは悲しさで曇らせていた顔を満面の笑みで覆っているのだから。
「…そうよね♪」
何となくだけど、昨日の晩に何があったかは大体予想が付いた。
伊達に彼女たち二人を見てきた私じゃない、と言い聞かせてみたものの、何だかくやしくなって…
「私も頑張らなくちゃ!」
そんな他愛も無い日々が過ぎてゆく―――
エイミィ・リミエッタが母親代わりだったら、リンディが出かけていて彼女が食卓の作り手だったら、みたいな気持ちで書いてみました。
彼女が幸せを手にするのは随分後の話ですけど、先を越された気持ちが彼女に火を付けた感じですわ♪
今回も色々な幻想…思い…境界がありましたけど、この後どうなるかが見てみたいですね。叶わぬ夢だとしても――ね?
次も頑張って下さい☆
食卓はたぶんそれぞれの幸せが集まるところだと思うのです。
リンディさん、クロノ、エイミイとくれば、料理を作っているのは必然的にエイミイになりますね。A'sでもつくっていましたし。
となるときっかけは案外エイミイさんかもしれません。
う〜ん、軽い競争心みたいなものはありそうです。
なのはとフェイトは友人のままでも十分いちゃいちゃしているので、たとえばなのはが他の人とむすばれることがあっても、それに当てられて、というのはあるかもしれませんねw
そしてなのは関連でうれしいことがあったら、フェイトが顔にでることは間違いない(笑
応援ありがとうございます。次も頑張りますね!
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