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2019-07

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平行線だったふたつの足跡が重なるところ

Christmas企画SSです。
段々と開き直ってきました。クリスマスの意味殆どないけど気にしないで。
ティアナ×なのはです。
前回のアンハッピーな話の分を、少しは挽回出来ていることを願いつつ。
最初「僕」とありますが、ティアナとなのはしかでてきませんので、特に気にせず読み進めても問題はありません。

やっぱり普通に普通の長さになってしまった。
それでは続きよりどうぞ。



 平行線だったふたつの足跡が重なるところ


 ――世界を敵にまわして。
 たった一人で、僕は生きていけるだろうか。
 貴女だけを護るのだと、豪語することが僕には出来ない。
 そんな自分でも、貴女は優しく笑ってくれるんだ。
 だけど僕は貴方を護り切る自信がない。独りで、生きていく自信がないんだ。
 胸に幾つもの傷ができたって、体がぼろぼろになったって貴方を護る自信はあるけれど、皆がいなくなって、貴女が去って行ってしまったら、きっと僕はうつ伏せになったまま立ち上がることさえできないだろう。
 孤独には慣れていた。そうしないと、小さい頃は笑って生きていけなかった。両親は家にいなくて、兄も「お前はしっかりしているから大丈夫だよな」って頭を撫でてくれるだけで、見向きもしてくれない。
 暗い部屋で蹲りながら、明日笑顔で学校に行く為の練習をしていた。鏡の前でごく自然な表情を作ってみる。笑ってみる。それから就寝。
 貴女は笑ってしまうかな。いいや、貴女はきっと笑わないんだろう。
 そんな貴女だから、僕は怖いんだ。孤独が怖いものになってしまった。
 この弱さは、貴女が与えたんだよ。僕の周りには沢山の人がいてくれるけれど、孤独を癒してくれたのは貴女だけだった。貴方の、たまに見せてくれる笑顔はどんな言葉よりも僕を癒してくれたんだ。
 そうしたら、もう一人になることが怖くなった。
 独りでいることが耐えられなくなったんだ。ああ、なんて酷い。貴女は僕に沢山の温かなものを与えてくれたけど、それ以上に大きなものを奪っていってしまった。いっそ現れなければよかったのに、と僕は何度も思った――。
「何をしているんですか?」
「ティアナ」
 フェンスに凭れていたの女性は声をかけられて振り向く。長い髪を片側で結った綺麗な女性は高町なのは。待ち人の登場に、表情を凍らせていたなのはの端正な顔立ちがわずかに綻んだ。
「本だよ」
「本?」
「そう、本を読んでいたの」
「何でまた、こんな寒空の下で」
「暇つぶし。ティアナ、なかなか来てくれないから」
「……すみません」
 会釈する、こちらは橙の髪の少女。ティアナ・ランスターのそうした姿に、なのははくすりと微笑を溢した。
「いいよ」
 それでも尚、罰の悪そうに佇むティアナの頭を撫でる。ティアナはその人を見上げる。綺麗な微笑である。嬉しさと恥ずかしさが綯い交ぜになって襲ってき、ティアナは頬を染めながら俯いた
「そ、それより本当にこんな所で良かったんですか。なのはさんが希望してくれていたら、もっと良い場所を手配できましたよ」
 なのははそっと、手を引いた。ティアナはなのはの顔を見上げ、反対に冷えた頬に手を宛がう。ほら、こんなにも冷えてしまってます。そう言いながら。
「なにもこんな寒くて寂れた場所じゃなくても、暖房設備が整っているレストランやホテルなんていくらでもあったのに」
「そうだね」
「もう、そうやって何でもいいみたいな返事しないでください」
「にゃはは、ごめんね」
「……いいですけど」
 なのはが再び笑うと、ティアナは尚更朱く頬を染め、顔を背けた。
 はあ、と二人は白い息を吐き出す。互いに意味の違う溜息は、澄んだ夜空に溶けていく。
 この場所に屋根はなく、暖房設備などもちろんない。凄く寒くて、だけれども空は綺麗だった。本当なら人工光の多さに星達は皆隠れてしまっている日なのに、周りはほとんど暗いまま。ぽつぽつと、幾つかの家庭に申し訳程度に灯されているくらいだ。
「ここに何かあるんですか?」
 何気ない装いでティアナが問いかける。
 少女の眼前に広がるのは、月光を浴びて静かに輝く海原。なのはの故郷であるこの場所を、今日という日の逢瀬の場所に選んだ真意が知りたかったのだ。
 何も、となのはは呟く。ならば何故この場所を選んだのだろう。ティアナはただ首を傾げるばかりだ。
 なのはがその理由を言えるはずがなかった。自分に向けて笑ってくれている少女に、どうして言えるだろう。ここが、自身の孤独を埋めてくれた少女との始まりの場所だなんて、言えるわけがない。こう見えてティアナは嫉妬深いとなのはは認識していた。本人は隠しているつもりなのだろうが、洞察力の鋭いなのはからすれば見えすぎていた、だからこそ。
 ――嫌われたく、ないよ。
 誰よりもこの少女に、なのはは嫌われたくなかった。ティアナがいなくなれば、なのはは独りになるのだと思っていた。実際にはそんなことはないのだろう、なのはの周りには多くの人がいてくれている。だがなのは自身がそう感じているかといえば、それは。
「貴女はやっぱり、何も言ってくれないんですね」
 ティアナはぽつねんと呟いて、フェンスに肘をかけた。潮風が髪を梳いては流れる。普段は二つに結っているティアナの髪だが、今日は真っ直ぐにおろしていた。すっと肩まで伸びた髪を彼女自身の手櫛で梳く。綺麗だとなのははしばし見惚れるが、決して表情に出すことはしない。
「そんなことはないよ」
 そしてなのはの表情を崩せないことに、ティアナは自身に憤りを感じていることなど気づかない。
 ここはなのはの故郷である海鳴。意味がないはずもないのに、なのはは何も言わない。自分など彼女にとってはやはりちっぽけな存在でしかないのだろうか、とティアナは苦笑した。
「もういいです。それよりも、今日ずっとここにいるんですか。風邪引いてしまいますよ」
「ティアナ」
「はい」
「これから実家に行こうと思ってる。ついて来てくれるかな」
 なのはのまっすぐな視線を受ける。ティアナは凭れていたフェンスから体を離した。
「本当にあたしでいいんですか」
「今日のティアナは、なんだか尋ねてばかりだね」
「なのはさんが何も言ってくれないのが悪いんです」
「ふふ、そっか。ごめんね」
 また笑顔だ。いつも彼女の笑顔に誤魔化されている。ティアナは頭を振って、自身のマフラーを彼女の首にかけた。先ほどから何かと寒そうな彼女は見るに堪えなかった。
 また彼女はさらりと笑って返すのだろうと思っていた。だけど。
「ありが、とう」
「――っ」
 気のせいだろうか、今なのはの頬が赤く染まっているのは。
 気のせいだろう。ティアナは寒さの所為と決めつけて、視線を逸らした。例え寒さの所為であっても、今のなのはの表情を直視するにはまだ少し耐性が足りなかった。
 可愛すぎて。年上と思えないほど幼く微笑まれて、もうじき苗字が同じになる関係だというのに照れくさくてたまらない。自制心の強いティアナでなければ口元を手の平で抑え、身悶えをしているところだ。そのティアナであっても、数回の深呼吸を要した。
 白い息が再び空中を漂う。その向こう側に、星影が散らばるように広がっていた。
 そうだ、星みたいなんだ。
 ティアナは冷静になろうとする挟間に考える。なのはは星に似ている。機動六課にいた頃は太陽や夏の花みたいだと思っていたけれど、今こうして見れば星の輝きに近かったのだ。そもそも彼女の分隊の名前はスターズと冠されていたではないか。そう、彼女の光はまるで明星――。ただ儚げな光が付き纏っている。それが何より、ティアナを惹きつけていた。
 つとなのはの視線を感じ、ティアナは言葉を返した。
「別に、お礼を言われるようなことじゃありません。管理局のエースオブエースに風邪を引かれたら困りますから」
 ティアナの相変わらず素直でない物言いに、なのははくすりと笑う。
「何ですか」
「別に?」
「なのはさん、意地悪です」
「今更だよ」
「そうですね」
「うわ、酷いなあ」
 そんな芝居じみた遣り取りを交わしながら、一歩さえ動くことはない。二人身体を冬の冷風に固められたみたいに動かずにいる。
 行こうか、の一言が切り出せないのだ。なのはの実家にティアナが挨拶に行くということ、イコール、ティアナの人生をなのはが貰い受けるということ。なのはには自信がなかった。これからのティアナの人生に幸せの砂をまいてあげる自信がどうしても湧かなかった。ティアナのことが好き、言葉で尽くせないほど愛している。だけれどもティアナを護り切る自信がなかった。管理局ではエースオブエースと呼ばれていても、好きな人一人護ることもできずにどうしよう。
 だけれども数週間前、ティアナに結婚を申し込まれた時。なのはは迷うことなく頷いていた。
 ――本当にあたしでいいんですか。
 いいに決まっている。なのにその問いに答えられずにいるのは、ティアナを幸せにする自信がないからだ。自分が空の人間だということもあるだろう、またティアナ自身を危険から必ずしも護れる位置にいられるとは限らないという現実が見えてしまっていることもあるだろう。
「なのはさん?」
 首を傾げる、愛しい彼女。髪に触れようとなのはは手を伸ばしかけ、すぐに引き下げる。見慣れぬスカートに薄いストールを羽織り、普段は下さぬ髪をおろしているティアナ。自惚れでなければ、ティアナは今日のため、自分のために着飾ってくれている。強い決意さえ滲んだ表情は強張っていて、容易に触れていいものと思わせない。
「ごめん、何でもないから」
 誤魔化すしかないのだ。逃げて逃げ続けて。これからもずっとそうしていくに違いない。
 でも今日くらいは勇気を出して、彼女に触れてみるのもいいかとなのはは笑った。半ば諦めのような想い。なのはは再びティアナの顔に手を伸ばす。
 その手を引かれ、なのははふっと抱き締められた。背中に腕が回る。自身も腕を回した。六課に入った当時はなのはの方が上だった背丈は、今ではティアナに越されていた。
 ずるいなあ。そんな風に漏らしてしまったのは、仕方のないことなのかもしれない。
「どうしたんですか。今日は甘えん坊ですね」
「ん、なんとなく」
「……身体、凄く冷えてます。そろそろいきませんか」
「もう少しだけいいかな」
「なのはさん」
「お願い」
 懇願に近かった。
 ティアナの腕の中、なのはは胸に鼻先を埋める。くすぐったさも感じながら、ただ抱き締める力は弱めなかった。
「本当に、仕方ない人です」
 好きだという気持ちは、偽りなくこの胸にあるというのに、どうして、いっそもどかしいほどに伝わらない。体に触れ合って、温度を確かめるくらいでしか安心できない。
 こんな関係を幸せと呼ぶ人はいないかもしれない。だけれどもなのはにとってティアナは必要な存在だった。その逆もまた然り。離れるなどあり得ない。まずお互いの薬指に戒めを括りつけた。それから誓約を結んだ。二人にとって制約でも、世の中にとってそれは祝福されるべき『誓』。結婚という祝い事を汚い感情全てに覆い被せ、隠蔽する。
 寒さに凍え死にしそうでも、相手の体温で生き延びていけるほどだというのに、そうしなければ一緒に居ることさえ困難だった。
 薬指を冷やす指輪をお互いにそっと触れ合い、確かめてからなのははティアナと手を繋ぐ。
「なのはさんのこと、愛しています」
 ティアナから、手首にキスをされる。藍の瞳に見つめられ、彼女の唇が薄く微笑む。そのどこか泣きそうな顔に、なのはの心が揺らぐ。
「あたしが貴女を幸せにしますから」
 自分からは到底言えないその言葉。ティアナの体温が残るマフラーに手を添えながら、なのはもゆったりと微笑む。
 今はただ、その言葉が嬉しかった。




× あとがき ×
ほのぼの……の、つもりさ。
互いにどうしようもないほど相手を想っているのに、不安でしかたない。自制心の塊みたいなティアナ。怖がりのなのは。そんな二人は確かなつながりが欲しかった。ただ歪んでいるようで、その実、真っ直ぐ過ぎる愛情を二人は持て余してしまったのがこの話。
何ででしょうね、ティアナとなのははお互い愛し合っていたとしても、平常の幸せなど望めないような気がしてならない。
普段はこの二人、周りにいる人(例えばフェイトやヴィータ)が呆れるほどいちゃついてます。主になのはさんが抱きついて、恥ずかしいけど断われないティアナ。でもに二人きりになったらティアナがなのはに恥ずかしくなるような台詞を言って、なのはの頬を赤らめさせるとか。でも二人の心にはずっと上のような想いが潜んでいて。
この二人はそれでも、二人なりに幸せなんだ。きっとね。

● COMMENT FORM ●

方や不屈のエースオブエース、方や元自分の部下…
そんな関係でしかなかった二人は、今やどちらか一方が欠けてしまったら空に飛び立つ事も…大事な気持ちを残したまま足が地から離れられなくなってしまう――
そんなにも二人は…脆くも、美しい。

ごめんなさい、感想載せる前にやってしまいました///恥
今回の話はなのは、ティアナ共にハッピーエンドであり、抜け出せない逃避行みたい。
彼女達はもう二人で一人、傍から見ればいかにもなのはが強く見えてしまうものですけれど…実際はどちらも弱々しくて、だから愛していても不安になってしまう。
愛は安心や安らぎを与えてくれますけど、同時に不安や寂しさ、孤独も背負わなければならない宿命であり、運命ですね♪
とても面白かったです。次も頑張って下さいね☆

>月夜さん
なのティア、またはティアなのの魅力はそこだと思います。
脆さが醸し出す美しさ。それに惹かれてしまうのです。たぶん、少なくとも私は。
幸せな話や、幸せな終わりというのも大好きで、読んだあとは気分の良いものです。かくいう自分も、ハッピーエンドな話は好きです。
この話もハッピーエンドに分類してもいいと思っています。
ただ幸せなだけの物語ではなく、二人の心の距離はどうしようもなく近づいて、離れている。矛盾を抱えたまま繋がるしかないなのはとティアナ。
互いに幸せだと思っているし、実際に相手がいないと幸せになれないとも思ってる。でも自分の弱さ故に相手を幸せにする自信のないなのはは不安であり、不安ななのはさんを抱擁しきれるだけの強さが自分にあるとは思えない、それでも手を伸ばさずにはいられないティアナは、それでも一緒に居ることを選んだのだから、幸せだとやっぱり思っていいんじゃないかな、なんて自分で考えてみます。

と、長々とすみません。
コメントありがとうございましたm(_ _)m


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