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2019-07

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秋が、本当に死んでしまったのかもしれない

Christmas企画もあと残り一つとなりました。はやて×なのは。
いや、カップリングと呼べば語弊が生まれてしまうんですが。
今回はちょっと変わった感じで、なのはが猫になってます。人から猫にというのではなく、最初から猫という設定。
ただ『猫なのは』でありながら萌えではないかな。

そんなにゃのは視点で進む、とある物語。
もしよろしければ、続きよりどうぞ。



 秋が、本当に死んでしまったのかもしれない


 今年の夏は特別に蒸し暑かった。それこそ日陰を必死に探し歩き疲れ果てたものだ。
 ただ餌を探すのにはそれほどの苦労はなかった。とある豪邸に忍び込めば、そこは猫の楽園が広がっている。気の良い仲間たちがいることもそうであるが、清楚な佇まいをした少女が優しくしてくれた。そっと餌を差し出してもくれた。頭を撫でられそうになった時は思わず逃げてしまったけれど、とても優しい少女だった。
 名前は知らない。そもそも自分にとって名前というのはどうでもよく、ただ個を判別するための記号に過ぎない。自分たちにとってはにおいや鳴き声で容易に判別できるもの。だからその少女の名前など知ろうとしなかった。ただ一面に広がる菫を思わせる長く綺麗な髪に、ほのかな恋心を寄せていたことがあっただけ。
 だけれどもその少女は、夏の終わり頃になると忽然と姿を消してしまった。行き先など分からない。私は漠然と、二度とその優しき少女とは会えないのだと悟ってしまう。
 夏が終わり、冬が訪れた。秋というものが実際にはあったのかもしれないが、自分には感じられなかった。身を焼くような灼熱が引き、熱量が薄まったかと思えば、一転して冷たい風が吹きつけるようになる。餌の確保にも困った。例年よりも短かった夏は、生物の繁殖にも影響を及ぼしていた。雨の日は特に厳しかった。屋根がある場所は、それだけ自分のような野良猫が集まり、自分はその中にもぐりこむ勇気さえない。寒さに震えつつも、にゃあと鳴いてみては気を紛らわした。それでもどうにか生き延びてきた。
 路地裏で細い長方形に切り取られた空を見上げながら、ぼんやりと顔面で雨を受け止める。鼻先を掠める良い香りと、鼓膜を震わせる軽快なメロディー。帳が下りているにもかかわらず、街は光であふれている。
 今日はクリスマスらしい。通り過ぎる飼い猫が、これから鳥肉を貰うのだと自慢していったのを思い出す。そして去っていく。雨が打ちつけていく。
 どうも少し疲れてしまったように思う。
 反芻するのは夏の日。黄色い花が咲き乱れる庭の隅で、あの少女が微笑みながら頭を撫でてくれた日々。ここのところそんな夢ばかり見ていた。
 もういいような気もした。自分は独りきりで、護るべき家族もいない。否、作らなかったというべきだろう。自分の前から大切な誰かがいなくなってしまうなんていうのは二度と経験したくもないこと。あの夏の出来事は自身の心に赤黒い傷を残していた。そうして臆病ものになってしまった自分。そう、私は独りなんだ。だからいつ死のうと迷惑にはならないはずだ。それどころか餌の食いぶちが減って、周りに潜む猫たちは喜びさえするだろう。
 屋根はもう要らなかった。
 長いヒゲを激しい雨が打ち抜き、大きく跳ねる。身を覆う毛もずぶ濡れで、体温を逃がさないどころか逆に奪っていっている。お腹も空いたし、それになにより寒い。息が次第と荒くなっていく。力が抜けていく。
 寒い。
 このまま寝てしまおうと私は瞼を落した。段々と遠ざかっていく雨音を背景に、身を横たえる。だがふっと体に触れる感覚があった。引っ掻いて逃げようと瞼を持ち上げたが、それだけで、体は意思に逆らい、動こうとはしない。
「大丈夫か? 今暖かい所に連れてってあげるからな」
 そのまま体が持ち上げられ、腕の中に収まる。
「心配せんでええんよ、もう大丈夫」
 気付けば雨はもう身体を打ってはいなかった。優しい体温に包まれている。自身があれほど避け続けていたものが、今は酷く心地よかった。

 目を覚ませば、私は暖のある室内に運び込まれていた。
 毛に沁みた水分をふき取られてから、どこから持ってきたのか段ボール箱に白いタオルを敷いた場所に寝かされる。顎を持ち上げ、何とか室内を見回すと、数人の顔が見られた。その中には、私を抱え上げた人の顔もあった。肩につくかつかないかの長さに切られた髪に、群青の瞳をした人。他の人に比べたらすこしおかしな喋り方をする人だった。
「はやて、この子どうしたの」
 隣ではやてと呼ばれた彼女よりも小さな女の子が服の裾を引っ張って訪ねていた。赤髪を二つに結い、三つ編みにした少女が、彼女を不安げに見上げている。
「ちょっとそこで拾うてきたんよ。雨にぬれてたからな、あのままじゃ死んでしまうし」
「すごく寒そう……、大丈夫なの?」
「帰りにちょっと獣医さんのとこ寄ったら、大分衰弱しとるみたいで、注射を打ってもらったんよ。あとはミルク飲ませて休ませれば大丈夫やって。まあ後日また来てくださいとは言われたんやけど」
 少女はほっとしたようだった。
「あっ、そういえばこの子の名前は決めた?」
「せやなあ、飼うんなら決めてあげんとな。ヴィータは何がいい」
「え、あたしが決めるの? う、うーん。ちょっと思いつかない。そうだ、はやてが決めなよ、その子にとっても、きっとそのほうがいいと思うし」
「そか? ん、ほな……」
 群青の瞳がこちらに向く。身を竦めるような真っ直ぐな視線。彼女はふっと口元を崩した。
「なのは、とかどやろ」
「えっと、なにゅ、にゃにょ、……なにょは?」
「ふふ、言い難いか」
「うん……。あ、でもあたしはいい名前だと思うぞ! 名前だって、きっとそのうち呼べるようになるって」
「そか。ほななのはちゃんにしようかな」
「うん! なにょは、お前はなにょはだぞ!」
 がしがしと頭をなでられる。痛みを感じるけれど、抵抗する気力はない。
「ヴィータ、なのはやって。それにあんまし乱暴にはせんときや」
「う、ごめんはやて」
 身を竦めた後、ヴィータと呼ばれる少女は、じっとこちらを見詰めてくる。私は特に逸らすことなく、そのまま視線を交わす。先に視線をそらしたのは少女の方だった。若干照れくさそうな少女の様子に、はやてと呼ばれた彼女は笑って「もう寝とき、あとは私がやっておくよ」と頭を撫でた。少女はしぶしぶといった風に頷いた。
 背を向けた後、どこか名残惜しそうに少女が振り向くが、私はすでに俯いてしまっていたから、その視線には気づかなかった。
 さて、とはやてと呼ばれた人が近寄ってくる。その手にはいつの間にか小皿があり、白い液体が揺れていた。目の前に置かれて、私は鼻を近づける。どうやらミルクのよう。熱そうでもないし、特別おかしな匂いもしない。恐る恐る舌ですくった。その一舐めとちょうどいい温さが、空いた腹に刺激をもたらした。私はゆっくりではあるが、ペロペロと舐めてはミルクを嚥下していった。彼女は膝を折ってその様子を満足下に眺めていた。
 容器が空っぽになると、敷かれたタオルの上に伏せる。限界である。
 どうしてこうなってしまったのだろうと考えた。
 ふと見上げれば、そこに優しげな微笑を浮かべる彼女の姿。それは夏の日に見た、あの少女の笑顔が重なった。懐かしい、それでいて苦い記憶。あの記憶がなければ、今頃はどこかの小道に身を潜め、じっと雨をやり過ごしていたことだろう。活気づく街の片隅で、飼い猫からの自慢話を避けるように、ひっそりと生きていたはずだった。祝福に満ちた日に、きっと何も変わらぬ一日を送っていたにすぎない。
 大事なものなど要らない、と達観したように目を細めて生きていくはずだった。すべてのものに背を向けて、命が尽きるのを待つのが正しいのだと。
「なのはちゃん」
 傷を労わる様な優しい声が降ってくる。何故だか心が軋む。
「これからずっと一緒に過ごそう。寒い日も暑い日も」
 だから眠ったふりをする。おろしたばかりであろう真新しいタオルに鼻先を埋めて、顔を隠して。耳を伏せても、彼女の言葉はそれでも聞こえてくると知っていた。
「もう今日からなのはちゃんは私の、うちの家族やからね」
 優しくて。温かすぎる声が、ただ痛い。どう表現すればいいのだろう。だって私は、その日まで嬉しいという感情を知らなかったから。
「私は八神はやて。よろしくな、なのはちゃん」
 行き場のない想いを発散させることなく、内側に溜め込むように彼女の声を聞いていた。そうして私は、正体不明の甘い胸の痛みを抱えながら訪れる微睡みに身を任せる。
 その夜。精神を蝕むあの夢を、私が見ることはなかった。




× あとがき ×
最初に出てくる優しい少女というのは、ご察しの通りすずかです。
中途半端な優しさは、その人(動物)にとっては毒にしかならないという。
はやなの、というよりは、はやてとにゃのはの家族愛みたいなもの。唐突にそんな話が書きたくなってしまったので。普通のはやなの期待してくれた方はすみません。
でもそうですね、恋が生まれるかはまた……この後の展開次第かな。
ただ書いている方は結構楽しかった。若干自己満足のようなものがあるかもしれない。
『猫なのは』、どうだっただろう。少しでも楽しめていることを願いつつ。

● COMMENT FORM ●

あ、これ大好きですwww
お持ち帰りします。

あれ?なんか体が凍り始めてる・・・
あれ?窓の外で雷が・・・

きっと、これからなのはは本当にはやての心の支えになっていくんだろうな・・・
ちなみに私はこの後、偶然知り合ったフェイトとなのはを取り合う状況を妄想しました(笑)

可愛い猫なのは♪良いですわね。
この発想は珍しくてとても面白かったです☆
これからの一人と一匹がどうやって過ごしていくのかが楽しみですね。
ほんのりと照らす光を…温かさを大切に――

猫なのはに爆殺されました……やばいです、可愛いです。
本当にいたらお持ち帰り~ですよ! 
なにはともあれ、今回ハッピーに終われてよかったです。これからも暖かい八神ファミリーに囲まれて幸せになってほしいです。

>KANTANAさん
ありがとうございますm(_ _)m
でもお持ち帰りはできません、だってにゃのははうちの……あれ、なんか鉄球とかとんできt
お、足が、これは石化――
はやてがなのはの心を癒した。だからこれからなのはははやてを癒していくのだろうと思います。
ヴィータとか、八神家のみんなもね。
この世界にはフェイトさんがいるので、この後、たまたま八神家に遊びに来たフェイトさんがにゃのはを見つけて惨劇が起こる予定。もちろんにゃのはの飼い主件争奪(でもなのはははやて一筋w

>月夜さん
猫ななのはは可愛くて堪らないと思います。だってなのはだから!
発想としては結構ありそうな気もしますが、今のところ読んだことはなかったので、よいかなと。
八神家とにゃのははきっと末永く暮らしていきます。
そして猫であるならなのはが寿命とかで死にそうになったら、使い魔にするという手もあるのですが、それはまた別の話ですね。

>垂れ坊さん
爆殺ですかwでもなのはかわいいよなのは。
お持ち帰りしようとしたら雷とか氷とか鉄球とか飛んできますが、さて耐えられるか!
何気にこの続編みたいなのをかきたいなあと思っていたりします。
その際はフェイトさん乱入させて(笑


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