その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
涸れた土 2008/03/04
ティアナ×なのはです。
長編がうまくいかないので、少し寄り道をしてみたり。
ティアナが何かふつふつと考えてます。
その「何か」というのは決して明るくないです。むしろ虚空の穴の中にまっしぐら?
タイトルで察してくだされ。
よろしければ、続きよりどうぞ。
涸れた土
――もう何度目の逢瀬になるだろう。
なのはの手に触れながら、ティアナは考えた。
冬の寒い日だった。雪こそ降っていないが、太陽は雲に隠れているし、隙間から差し込む僅かばかりの光など気休めにもならない。寒いのは嫌いだ。手が凍えて動かない。だから寒いのは大嫌い。
だってあの人に触れる口実ができてしまう――。
寒い日でも強張らない彼女の笑顔に、ティアナは目元を歪めて笑う。彼女の前だと、ティアナは上手く笑えない。あの親友の前なら何も考えずに文句を言ったり、殴ったりできるのに、彼女に対してだとうんざりするほど臆病になってしまう。それが彼女には分かっているのか、いつも手を繋ぐのは彼女からだ。
柔和な微笑みがティアナに向けられる。恥ずかしくて、ティアナはふいと顔を背ける。しかしティアナの赤く染まった耳は、手を繋いで歩くこの人にはばれてしまう。彼女は握る手に力を込めてくれる。
胸が温かくなった、――だが一方で、ティアナは喉が凍りつくのを感じる。
ティアナは自身の胸に浮かび上がる想いを、はっきりと言葉にできなかった。『大好きだ』という言葉さえこの想いには当てはまらない気がして、彼女といるとどうしても無口になった。しかし何も話さないでいると彼女は心配する。当然だろう。だからその度にティアナは虚空に腕を突っ込み、何か適当な言葉を探る。手に掴んだ言葉には大抵、埃が付いていて、ティアナはそれを払ってから彼女に見せる。笑ってくれる。ほっとする。
ほっとするのに、ティアナはいつも泣きたくなった。
もう何度目だろう。彼女と会うのは何度目になるのか。もう、何度こうして……。
ティアナは考えて、彼女と会った回数を追えないことに気付いた。数え切れない程の逢瀬を重ねているのに、未だに好きだと言っていない。もちろんそれで彼女が今更不安になったりしないだろう。お互いの気持ちは分かりきっている。それだけの時間を重ねたし、触れ合いがあった。それでも彼女がその言葉を求めているのは、前に進みたいと思っているからだ。
二人の間には大切な言葉だけが欠けていた。腕を穴の中に突っ込んでも、その言葉だけは掴むことを許されていない。そこにあるのだというのは分かるのに、ティアナには指を近づけることさえできなかった。
好きだと言い、彼女の笑顔を見たいという気持ちは嘘ではない。だけどそれを上回る恐怖がティアナの中にある。
怖かった。進みたいというのと同時に、ティアナは怖いと感じていた。自分の中に蠢く感情が、自分の手を離れてどこかへ行ってしまいそうだと思った。今はまだ制御できているが、言葉にした瞬間、それは高い空の向こうに飛んでいき、雲の裏側にまで潜っていきそうな気がするのだ。そこまで逃げられてしまうと、空の飛べない自分ではどうしようもない。飛び去っていく様を茫然と見上げるしかできなくなるだろう。ティアナにはそれらを鮮明に描けた。
好きだという想いが強過ぎて、その想いは長い間胸に巣食っているうちに、何か別のものに変化してしまったような気がする。本当は気づいてはいけない何かに、段々と変わっていっているのではないか。それがティアナは怖い。
何故ならばティアナの中にあるそれは、すでに恋ではなく――。
哀しいことに、ティアナは彼女と会う毎にそれが濃いものになっていく様子を、はっきりと汲み取れた。
しかしそれでもティアナは彼女に会った。何度でも時間を共有し、彼女と手を繋ぎ、彼女の笑顔を受け、彼女と寝たいと思っている。
だからこそ、そこには一つの避けがたいものが存在する。そろそろ見ぬふりをするのは限界に近づいていた。
……好きだと言えば駄目になる。
好きだと言わなければ、ではなく。
ティアナはふと、自らの指に絡めたままの彼女の指を意識した。繋いだ時には冷たかった彼女の手が、今は温かくなっている。
「なのはさんの手はいつも冷たいですよね。繋ぐ前は手袋もしているのに」
「きっとね、ティアナに温めてもらいたくて、この手は冷たくなってるんだよ」
「そうですね、きっと」
「だから、ぎゅってして。絶対に離しちゃ駄目なんだよ。もしティアナの手を見失ったら、私の手は凍えて、腐っちゃうからね」
「……怖いことを」
「冗談だけど、でも真実だよ」
多分そうなんだろうと思った。
機動六課にいた頃は低かった自分の上背が、いつの間にか彼女を追い越していたのを発見した時。自分の魔法を誉めてくれた時。ティアナは抑えがたい喜悦を感じた。いや、特別な事じゃなくていい。日常的に起こる、ほんの些細なことこと――例えば冗談を言って彼女が笑ってくれたとか、そんなことでよかった。そんなことで、ティアナは幸せな気分になれた。でも同時に、そう。口元に指を持っていって笑う彼女の姿を目にした時などには、どうしても手に掴めないあの言葉が浮かび上がってしまったのだ。その度にティアナは混乱し、憔悴する。言えないのに、ほぼ強制的に浮かんでくるなんて、酷な話だ。
ティアナは彼女とデート(と呼んでもいいのか分からないが、他に適当な呼び方がティアナには見つからない)をする度に、そうした二つの相反する気持ちが胸に詰め込まれ、疲れ果てる。これではまるで身を磨り減らすために彼女と会っているのではないか、とティアナは思う。思っても仕方ない。馬鹿な事をしている自覚がティアナにはあったのだから。
だからこれは我が侭の一つ。それでも会いたいというのは、ただの我が侭。
――あの人に会いたくて仕方がなかった。「ティアナ」とあの人が名前を呼んでくれるだけでいい。思いついたように笑顔を向けてくれるだけで、どんな重たいものが胸に詰め込まれようと耐えることができた。だから自分の事はどうでもいいのだとティアナは考える。なら自分にとって重要なのは、自身の方ではなく彼女だ。
彼女は待っている。たった一つの言葉を待っているのだ。ずっと何年も何年も何年も。笑顔が擦り切れるくらい彼女は待っている。そのことをティアナは知っている。
それでもティアナには、確信に近い考えがあった。
――好きだと言えば駄目になる。
そして言わなければ彼女を悲しませる。
「……はは」
ティアナは、自分がどちらを選ぼうとしているのかが分かって、知らず笑いがこぼれた。多分、最初から決まっていたんだと笑った。考えるまでもなく。
「冬があと少し暖かければよかったのに」
ティアナが言う。そうだね、となのはが空を見上げる。
冬がもう少し暖かければこんなにもお互いが近づくことはなく、彼女の切実な訴えを“うっかり”見逃してしまうこともあるのに。
そんな愚痴だか言い訳だか分らないものは、あの虚空の中に投げ込んでしまう。いつもそっちの言い分を聞いているんだから、これくらいいいでしょうと律儀に断わって。
ティアナは空を睨んだ。それから彼女の手を引き、再び歩き始める。
頬に微笑をたたえ、いつも自分を嬉しくさせてくれるなのはさん。その彼女にしてあげられることが分かっていながらそうしない自分に気を腐らせながらも、いつも通り彼女を抱き寄せた。
雪の降らない、だた寒いだけの日。彼女を抱き締めながらティアナが考えていたことといえば、この人を幸せに出来るのはおそらく自分以外の誰かなんだろう、ということだった。
× あとがき ×
書けば書くほど、深まっていく考えがあった。
『なのはとティアナは、付き合うまえの方がずっと幸せなんじゃないか 』
そう考えたらなんだか哀しくなってしまい、つい書いてしまった話です。
「なのはさんのことが好きです」
「うん、私もだよティアナ」
そんな簡単で単純なやり取りが想像できないのはどうしてだろう。
長編がうまくいかないので、少し寄り道をしてみたり。
ティアナが何かふつふつと考えてます。
その「何か」というのは決して明るくないです。むしろ虚空の穴の中にまっしぐら?
タイトルで察してくだされ。
よろしければ、続きよりどうぞ。
涸れた土
――もう何度目の逢瀬になるだろう。
なのはの手に触れながら、ティアナは考えた。
冬の寒い日だった。雪こそ降っていないが、太陽は雲に隠れているし、隙間から差し込む僅かばかりの光など気休めにもならない。寒いのは嫌いだ。手が凍えて動かない。だから寒いのは大嫌い。
だってあの人に触れる口実ができてしまう――。
寒い日でも強張らない彼女の笑顔に、ティアナは目元を歪めて笑う。彼女の前だと、ティアナは上手く笑えない。あの親友の前なら何も考えずに文句を言ったり、殴ったりできるのに、彼女に対してだとうんざりするほど臆病になってしまう。それが彼女には分かっているのか、いつも手を繋ぐのは彼女からだ。
柔和な微笑みがティアナに向けられる。恥ずかしくて、ティアナはふいと顔を背ける。しかしティアナの赤く染まった耳は、手を繋いで歩くこの人にはばれてしまう。彼女は握る手に力を込めてくれる。
胸が温かくなった、――だが一方で、ティアナは喉が凍りつくのを感じる。
ティアナは自身の胸に浮かび上がる想いを、はっきりと言葉にできなかった。『大好きだ』という言葉さえこの想いには当てはまらない気がして、彼女といるとどうしても無口になった。しかし何も話さないでいると彼女は心配する。当然だろう。だからその度にティアナは虚空に腕を突っ込み、何か適当な言葉を探る。手に掴んだ言葉には大抵、埃が付いていて、ティアナはそれを払ってから彼女に見せる。笑ってくれる。ほっとする。
ほっとするのに、ティアナはいつも泣きたくなった。
もう何度目だろう。彼女と会うのは何度目になるのか。もう、何度こうして……。
ティアナは考えて、彼女と会った回数を追えないことに気付いた。数え切れない程の逢瀬を重ねているのに、未だに好きだと言っていない。もちろんそれで彼女が今更不安になったりしないだろう。お互いの気持ちは分かりきっている。それだけの時間を重ねたし、触れ合いがあった。それでも彼女がその言葉を求めているのは、前に進みたいと思っているからだ。
二人の間には大切な言葉だけが欠けていた。腕を穴の中に突っ込んでも、その言葉だけは掴むことを許されていない。そこにあるのだというのは分かるのに、ティアナには指を近づけることさえできなかった。
好きだと言い、彼女の笑顔を見たいという気持ちは嘘ではない。だけどそれを上回る恐怖がティアナの中にある。
怖かった。進みたいというのと同時に、ティアナは怖いと感じていた。自分の中に蠢く感情が、自分の手を離れてどこかへ行ってしまいそうだと思った。今はまだ制御できているが、言葉にした瞬間、それは高い空の向こうに飛んでいき、雲の裏側にまで潜っていきそうな気がするのだ。そこまで逃げられてしまうと、空の飛べない自分ではどうしようもない。飛び去っていく様を茫然と見上げるしかできなくなるだろう。ティアナにはそれらを鮮明に描けた。
好きだという想いが強過ぎて、その想いは長い間胸に巣食っているうちに、何か別のものに変化してしまったような気がする。本当は気づいてはいけない何かに、段々と変わっていっているのではないか。それがティアナは怖い。
何故ならばティアナの中にあるそれは、すでに恋ではなく――。
哀しいことに、ティアナは彼女と会う毎にそれが濃いものになっていく様子を、はっきりと汲み取れた。
しかしそれでもティアナは彼女に会った。何度でも時間を共有し、彼女と手を繋ぎ、彼女の笑顔を受け、彼女と寝たいと思っている。
だからこそ、そこには一つの避けがたいものが存在する。そろそろ見ぬふりをするのは限界に近づいていた。
……好きだと言えば駄目になる。
好きだと言わなければ、ではなく。
ティアナはふと、自らの指に絡めたままの彼女の指を意識した。繋いだ時には冷たかった彼女の手が、今は温かくなっている。
「なのはさんの手はいつも冷たいですよね。繋ぐ前は手袋もしているのに」
「きっとね、ティアナに温めてもらいたくて、この手は冷たくなってるんだよ」
「そうですね、きっと」
「だから、ぎゅってして。絶対に離しちゃ駄目なんだよ。もしティアナの手を見失ったら、私の手は凍えて、腐っちゃうからね」
「……怖いことを」
「冗談だけど、でも真実だよ」
多分そうなんだろうと思った。
機動六課にいた頃は低かった自分の上背が、いつの間にか彼女を追い越していたのを発見した時。自分の魔法を誉めてくれた時。ティアナは抑えがたい喜悦を感じた。いや、特別な事じゃなくていい。日常的に起こる、ほんの些細なことこと――例えば冗談を言って彼女が笑ってくれたとか、そんなことでよかった。そんなことで、ティアナは幸せな気分になれた。でも同時に、そう。口元に指を持っていって笑う彼女の姿を目にした時などには、どうしても手に掴めないあの言葉が浮かび上がってしまったのだ。その度にティアナは混乱し、憔悴する。言えないのに、ほぼ強制的に浮かんでくるなんて、酷な話だ。
ティアナは彼女とデート(と呼んでもいいのか分からないが、他に適当な呼び方がティアナには見つからない)をする度に、そうした二つの相反する気持ちが胸に詰め込まれ、疲れ果てる。これではまるで身を磨り減らすために彼女と会っているのではないか、とティアナは思う。思っても仕方ない。馬鹿な事をしている自覚がティアナにはあったのだから。
だからこれは我が侭の一つ。それでも会いたいというのは、ただの我が侭。
――あの人に会いたくて仕方がなかった。「ティアナ」とあの人が名前を呼んでくれるだけでいい。思いついたように笑顔を向けてくれるだけで、どんな重たいものが胸に詰め込まれようと耐えることができた。だから自分の事はどうでもいいのだとティアナは考える。なら自分にとって重要なのは、自身の方ではなく彼女だ。
彼女は待っている。たった一つの言葉を待っているのだ。ずっと何年も何年も何年も。笑顔が擦り切れるくらい彼女は待っている。そのことをティアナは知っている。
それでもティアナには、確信に近い考えがあった。
――好きだと言えば駄目になる。
そして言わなければ彼女を悲しませる。
「……はは」
ティアナは、自分がどちらを選ぼうとしているのかが分かって、知らず笑いがこぼれた。多分、最初から決まっていたんだと笑った。考えるまでもなく。
「冬があと少し暖かければよかったのに」
ティアナが言う。そうだね、となのはが空を見上げる。
冬がもう少し暖かければこんなにもお互いが近づくことはなく、彼女の切実な訴えを“うっかり”見逃してしまうこともあるのに。
そんな愚痴だか言い訳だか分らないものは、あの虚空の中に投げ込んでしまう。いつもそっちの言い分を聞いているんだから、これくらいいいでしょうと律儀に断わって。
ティアナは空を睨んだ。それから彼女の手を引き、再び歩き始める。
頬に微笑をたたえ、いつも自分を嬉しくさせてくれるなのはさん。その彼女にしてあげられることが分かっていながらそうしない自分に気を腐らせながらも、いつも通り彼女を抱き寄せた。
雪の降らない、だた寒いだけの日。彼女を抱き締めながらティアナが考えていたことといえば、この人を幸せに出来るのはおそらく自分以外の誰かなんだろう、ということだった。
× あとがき ×
書けば書くほど、深まっていく考えがあった。
『なのはとティアナは、付き合うまえの方がずっと幸せなんじゃないか 』
そう考えたらなんだか哀しくなってしまい、つい書いてしまった話です。
「なのはさんのことが好きです」
「うん、私もだよティアナ」
そんな簡単で単純なやり取りが想像できないのはどうしてだろう。
| ホーム |


アリサ×なのは

comments
いつか加奈さんの様な文が書けるかなぁ・・・
そう言っていただけると、かなり嬉しいです。ありがとうございます。
といいますか、、まだ自分は見習われるほどのものが書けている自信はないのですが。。
アドバイスとするなら、やはり本を読むとよいです。
ただ読むんじゃなくて、それらを吸収しようと読むとか。そうして表現力とか、語彙とかを少しずつ増やすとかですね。
あとはたくさん書くしか。。
うむ、、すみません。あまりびしっとしたことがいえなくて(×□×;)
post a comment