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追憶の色に埋もれて sixth

昨日は更新できなくてすみません。
また死んでました。夕方くらいまでわりと元気だったのに、、長引いているのかな……。

ともあれ、『追憶の色に埋もれて』六話。
the fifth volumeの続き。
ヴィータのいない三日間について。最終話となってます。

よろしければ続きよりどうぞ。



 追憶の色に埋もれて  the sixth volume


 目が覚めて私が考えたことは、ヴィヴィオを起こしに行くということだった。隣にティアナがいるにもかかわらず、思考は全く日常を外れたものではない。
 呑気なものだなと思う。でも陽気な朝だった。ヴィータちゃんがいないということ以外は。
 さて、と私は服を着替える。
 ティアナはいまだ眠りの中だ。無理もない、昨日は精神的にもずいぶん負荷をかけてしまった。疲れて当然だ。
 私はこのまま寝かせておくことにする。それにまずはヴィヴィオを起こしに行かなければならない。局への休暇願いはその後にしよう。朝食を三人でとって、ヴィヴィオを見送るのだ。それからヴィータちゃんが帰ってくるまでの三日間のことについて考える。一日の計画が早くも決まり、そのことをティアナに伝えた。
 ティアナはヴィヴィオを起こしている間、上司に有給休暇を取っていた。上司とは当然フェイトちゃんのことだ。何故かスクリーンの向こうにいるフェイトちゃんはご機嫌で、私を見つけると爽快な朝の挨拶をしてくれた。「おはよう」とフェイトちゃんが言うとそれは本当に気持ちのいい挨拶になった。
 そしてもちろんフェイトちゃんはティアナの休暇願いを快く受けてくれた。ティアナは優秀な人材だ、それを奪ってしまったことに私は謝罪する。でもフェイトちゃんは一言、気にしないで、と言っただけだった。
 ティアナの素早い対応で、思わぬ時間が空く。私たちが三日間の事について考えるのは、ヴィヴィオを学校に送り届けた後でもよさそうだ。

 ヴィータちゃんのいない三日間について。
 まず私は休みをとった。昨夜から決めていたことだった。多くの人に迷惑をかけてしまうだろうけど、ぐっと目を瞑る。自分のことなら例えヴィータちゃんがいなくなっても休むなんてことはないが、そうではない。ティアナがいる。何よりヴィータちゃんと顔を合わすことなんて出来ない。彼女は家を出て行ったのだ。三日。
 もちろん忙しい職場だし、急なことで休みが取れない可能性も十二分にあった。ところがスムーズに話は進んだ。むしろ身体を休めるにはいい機会だと言われてしまった。働きすぎですよ、たまには何も考えず寝てろ、のんびり過ごせ。などなど。
 嬉しいけれど、どこか複雑な気持ちで通信を切ると、入れ替わりのように通信が入った。はやてちゃんだった。
 フェイトちゃんよりもずっと久し振りに見る親友の顔に、頬が緩む。が、ヴィータちゃんは今は八神家にいることを思い出し、笑顔が崩れそうになった。それをどうにか押しとどめて、どうしたの、と訊いた。何となく、ヴィータちゃんのことだろうと思っていた。
 でも違った。
 はやてちゃんは柔らかな微笑を口元に浮かべる。
 ひさしぶり。元気にしとる? なのはちゃんに会えんで寂しいなあ。こっちは元気やよ。ちょーっと忙しいけどな。肉体的にはそうでもないんやけど、まあ下らん人間が多いからな、しゃあないとはいえ、精神的にきついもんもある。ん、でもなのはちゃんの顔見て元気でたかな、ふふ。おおきにな。
 そんな他愛ない世間話。ヴィータちゃんの事を一言も出さずに。だから、先に口にしたのは私だった。
「もしまだヴィータちゃんが出かけてなかったらでいいんだけど、今日は休むから、でも心配はいらないって伝えてほしいの」
 はやてちゃんは穏やかに私のことを見つめていて、ゆっくりと首を振った。
「もちろん、伝えるよ」、はやてちゃんが言う。
「それとヴィータは、たぶん大丈夫やで。なんたってうちの子やからな」
 私は何も言えなかった。ヴィータちゃんの顔が見たいと思った、だけど今自分に彼女と会う資格などなく、ゆっくりと頷いた。はやてちゃんはまた笑った。何も聞かないはやてちゃんの優しさが私は嬉しかった。何も聞かなくても分かってくれているはやてちゃんが好きだと思った。大切な人。
 ヴィータちゃんやティアナと位置は違っても、大切な人であるということに変わりはない。
「はやてちゃんにはお世話になりっぱなしだね」という私の言葉に、はやてちゃんは、はは、と軽快な笑みをこぼすと、「ほなこれから仕事や」と区切った。
「また近いうちに会えるとええな」
 ――なのはちゃんの親友として、ヴィータの家族として。
 彼女はそう残し、通信を切った。
 宙に映された映像が閉じ、部屋には静寂が蘇る。呑気で陽気な朝。三人で朝ごはんを食べて始まる一日。
 特別なことをしたわけじゃなかった。その日はヴィヴィオを学校に送ってからひたすらに道を歩いた。春の真新しい空気と匂いが勝手に足をはこんでくれた。もうずいぶんこんな風に散歩したことはない。一人でもきっと癒されたことだろう。でも隣にはティアナが居た。ティアナと肩が触れ合う距離で歩いているよりは、物足りなかったはずだ。会話をそれほど多くしたわけではなく、ただ淡々と歩くだけの時間は、しっとりと自分の中に馴染んだ。
 昼は昨夜食べられなかったハンバーグを温めなおし、二人で食べた。冷蔵庫に一晩置いていたとはいえ、ヴィータちゃんが作ってくれたハンバーグが美味しくないわけがなかった。
 ヴィヴィオが帰宅してからは他愛ない雑談を繰り返した。主にティアナとヴィヴィオがよく遊び、話した。ティアナは子供の相手が苦手と言っていたが、ヴィヴィオとはそんなに合わないわけではなさそうで、ふとすれば姉妹にも見える。ヴィヴィオが大人びた思考の持ち主だというのが二人の交流に大いに影響しているのだろうが、それ以上にとても仲が良さそうだった。
 ヴィヴィオも、それにティアナも楽しそうだ。
 ヴィヴィオはお姉ちゃんにするみたいにじゃれついている。ティアナもヴィヴィオに気を使ったり、子守という感覚で相手しているわけではなかった。どうもティアナはスバルに対してするように、ヴィヴィオと接していた。
 ……スバル。昨日はあんなに泣いていた。スバルのは一歩間違えば命を削る仕事だ、支障が出ないといいんだけど。
 いかにも自分勝手な考えに嫌悪する。ため息。落ち込みかけて、しかし立ち返るとヴィヴィオがいた。ヴィヴィオは私の手を引くと、お風呂に入ろうと言った。
 浴室で、私はティアナについて尋ねてみた。ヴィヴィオはティアナをどう思っているか。一緒に暮らすことについて。勝手な母親だと思われていないか。だけどヴィヴィオは迷うことなく「ティアナお姉ちゃんのこと、好きだよ」と言い、私のぎこちない笑みしか浮かべられない顔に思い切り水をかけた。
「ヴィータお姉ちゃんも、もちろんなのはママのこともね!」
 二日目はヴィヴィオの学校が休みで三人で過ごした。どこかに出かけるわけではなく、家でのんびりした一日。夜はもちろん三人で眠る。
 そして三日後の夕方に、ヴィータちゃんは戻ってきた。

 晴れた日の夕方。食事の準備がひと段落つく。
 私は春にあった手料理をヴィータちゃんのために作ろうと思っていた。きっと帰ってきてくれるだろう彼女と、みんなと一緒に食べるご飯は絶対に美味しい。それにお礼もしたかった。花見をした日にヴィータちゃんが作ってくれていたハンバーグはとても美味しかったから。
 だから。早く帰ってきて、ヴィータちゃん。
 ティアナとずっと一緒にいた三日間は、それは楽しかった。幸せだった。局を休んだことで、ヴィヴィオと久し振りにゆったりとした時間もとれた。ただヴィータちゃんがいなかったのだ。そのことは私の心に随分と深い穴をあけた。我が侭……でもそんなことは分かり切っていた。だから今は彼女を待つ。
 食事のしたくを終えると、私は玄関に座って彼女を待った。一時間ほど待ってヴィータちゃんは帰ってきてくれた。少しだけぎこちない笑顔を浮かべて玄関をくぐる彼女は、どこか不機嫌そうな顔をしている。
 だけどちゃんと帰ってきてくれた、抱き締めても逃げないでいてくれた。「おかえり」と「ただいま」があった。それ以外に何が必要だろう?
 この三日間で、考えられることは大方考えてしまった。ヴィータちゃんもきっとそうなのだ、と思う。きっと。そのための三日間に違いなかった。それ以上考えたら――考えるな、心を虚無に放り投げて――いや、考えろ。
 何を言えばいいのか。何を言うべきか。
「おい」
 ヴィータちゃんが指で眉間を小突いた。どうやら皺が寄っていたらしい。難しい変な顔をしているぞ、とヴィータちゃんは言った。うん、ごめん。私は返した。彼女は少し考えるように、首から下げたアイゼンを握る。
 どうしてかその仕草に、ふっと緊張していた会話の糸が解けたように見えた。
「今日はお花見の日だよね。楽しかった?」
 痛む眉間を押さえながら、私は聞いてみる。いい天気で、おそらく花見日和の一日。
「楽しかったよ。はやてのお弁当もうまかった」
「そっか、よかった。きっといいお花見だったんだよね」
 言うと、ヴィータちゃんは私から顔ごと視線を逸らす。それから「なあ、なのは。聞いてくれるか」とヴィータちゃんが言った。
「当り前だよ」
 きちんと彼女に向き直る。どんな話でも、ヴィータちゃんの話なら私は聞きたい。
 私のしっかりとした返事に、ヴィータちゃんは口を開いた。
「ずっと一緒にいたら、なのはがいることが当然になってくるんだ。でもこの三日は家に帰っても、仕事に行ってもなのははいないだろ。何年か前は当たり前だったのに、それが辛いんだ。たった三日だった。なのに、……でもティアナは三年だったんだろう。三年もまともに会わないでいたんだ。今のあたしには考えられない。なあ、気付いたよ。お前を護ろうってあたしがいつも言ってるの、ただあたしがなのはに会えなくなるのが嫌なだけなんだ。怖いんだ。なんでこんな時に気付くんだろうな、まったく」
「寂しかった?」
 私の問いを否定するかとも思ったけど、彼女は頷き、言葉を続けた。
「でも必要だったんだ、三日が」
 三日という時間が長かったのか短かったのか、私にはどうも掴めない。私はいつも曖昧な思考をだらだらと続けていたような気もする。
 なら本当の事は少ししかない。考えなくても口をついて出るものだけだ。
 ――会いたかった。
「さあ、行こう、ヴィータちゃん」
 食卓に向かおう。そこではきっと、ティアナとヴィヴィオが待ってくれている。

     *

 追想が終わることはない。
 色が進む道の先を埋めていく。前も後ろも全部。そうして道は途切れることなく続いていくし、私はそれを望む。終わりは考えても考えなくてもやってくる。
 一年が過ぎ、桜の季節がまたやってきた。幸せなことに、私はまだ誰も失っていない。
 風が桜の花びらを遠くに運んでいく。道の先は極小の点。しかし見えないほど遠い先のどこかに、終わりがあった。せめてそこまで、私は皆と歩いて行きたかった。
 大好きな色の中で。大好きな人がいる世界に包まれて。
 今までよりずっと安らいだ顔をし、時に寝言などを言いつつ眠ってほしいと、私は三人の頬を撫でた。自分が三人にとって最後の安寧の地であることを願いながら――私も隣で目蓋を落とす。



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