その境界線は。
空を駆け抜ける無口な星に、あの人を見た。
Sky Tears SIDE:N(後編)
2008年 06月 20日 (金)
Sky Tears SIDE:N(前編)の続き。
はやなのと謳いつつ、ほとんどなのはとフェイトばかり。
……だんだん追い詰められてきました。

よろしければ続きよりどうぞ。



 Sky Tears  SIDE:N (後編)


 台風が来ている、と午後一番の授業で知らされた。
 昼食を済ませて教室に戻ると、いつになく騒がしかった。どうやら警報が出ているらしい。そういえば窓を叩く雨風が一層強くなっている気もする。教師が素早く指示をし、全校生徒が放課となり清掃後の帰宅を促された。
 私は騒がしくなった教室の窓際の席から立ち上がらず、頬杖をついて外を眺めていた。強風が雨をガラスに散らしている。がたがたと揺すられる木の枝と葉。山からは何本もの煙が立ち上っていた。雷でも落ちたのだろうか、それとも。
 遠くから聞こえてくる救急車のサイレン。
 私は窓際の前の席に座っていて、まだ黒板を掃除している女の子を特に意味もなく見詰めていた。クラスの中でも小さな背丈の子で、黒板の上の方に腕が届かず精一杯伸びをしていた。何だか微笑ましく感じ、私はなんとなく眺めてしまう。その子は何度かジャンプを試みているうちに、黒板消しを取りこぼしてしまった。紺色の制服が白く汚れ、掃き終えた床にもチョークの粉が散乱した。
 ああ、と世界の終わりのような声を漏らす子に、私は少し苦笑する。見たことのある光景に一瞬の目眩が起こる。
 私は立ち上がって黒板消しを元に戻し、雑巾を水で濡らして床を拭いた。それから慌てるその子の服をはたいてやる。嫌そうでないことを確認し、私は二つある黒板消しの中のもう一つを持った。
「手伝うよ」
 その子は首を十分な時間傾げたあとで大きく頷いた。赤面症なのか、それとも寒さのせいか。その子は頬を染めてありがとうと微笑みを浮かべる。私はその子のそうした様子に、中学の頃のはやてちゃんを重ねないわけにはいかなかった。
 それは日常の中ではありふれた場面であり、埋もれてしまいそうなほど普遍的な出来事なのに、私の脳は間違うことなく該当の記憶を掘り起こす。鮮明すぎるほど鮮明に洗われた姿での突出。一年か三年かの付き合いでは三年のほうが印象強くて当たり前なのに、私は一年のなかにこそ記憶を多く見た。
 ふとした時に現れるはやてちゃんとの記憶。さっきみたいな何でもない一場面で唐突に出てくるから、たちが悪い。
「手伝うよ、なのはちゃん」
 まだ私の身長が今よりも低かった頃、黒板など高いところの清掃ではやてちゃんはよくそう言った。でもどちらかというと彼女より私の方が高くて、手伝ってくれる彼女の方が大変そうにしていた。
「ごめんなあ、かえって邪魔しとるね」
 ぐっと手を伸ばすのだけど、それが懸命すぎて黒板消しを落とし、チョークの粉を床に撒いた彼女が項垂れて言う。頭を撫でたくなるほど可愛いはやてちゃん。でも粉だらけの手で頭は撫でられず、言葉でのみ撫でる。
 邪魔なんて、と私は言った。
「はやてちゃんがいて、そうやって手伝おうとしてくれることが嬉しいの。やる気もでるし、十分なお手伝いになってる。だから絶対に邪魔なんてことはないんだよ?」
 少しの沈黙の後、彼女は私の頬に唇を当てる。思わず教室を見回してしまったが、幸い誰も見ていないようだった。それでも人がいることには変わりなく羞恥でいっぱいになり、頬どころか耳まで赤くなっていくのが自分で分かった。だというのに、手が使えないからその赤さを隠せない。
「おおきにな、なのはちゃん」
 彼女はそう言って、穏やかな笑顔を見せてくれたのだ。
 はやてちゃんは今日の昼休みに見た、あんな不安定な笑い方をするような人じゃなかった。きっと私が――。
 ずきずきと胸が痛む。
 鮮明なのは昔の記憶だけではない、つい先ほどの彼女の自然すぎる笑顔と、難しい表情と、背中。渡り廊下ですれ違ったはやてちゃんの姿も当然瞼の裏側に焼きつけられている。まるで刻印。私にとっては消えない痣みたいなものだった。
 校門を出てから、教室の椅子にかけておいたマフラーを忘れてしまったことに気付いた。取りに戻ろうかとも思ったけど、こんな雨じゃどうせ巻けないからと諦める。それに――。
「帰ろう、なのは」
 傘を持ったまま目の前でじっと佇むフェイトちゃんを、さらに待たせることになるだろうから。
 今日は交わせなかった。そのことすら忘れてしまっていたのだ、私は。こんなにも自分は迂闊だっただろうか。
 なんにしてもフェイトちゃんは私の彼女なのだ。それに傘を忘れてきた自分を待ってくれた彼女に感謝こそすれ、断る理由なんてどこにもなかった。
 耳に入り込んでくる雨音を塞ぐように彼女に笑いかけて、私は彼女の傘の下に入った。

 傘布を打つ雨が少しうるさい。フェイトちゃんは濡れるからと家まで送ってくれた。家の前に着くまで、彼女はずっと話しかけてくれた。私もそれにぽつぽつと返した。楽しい時間が過ぎ、いつの間にか門の前に到着していて、私は立ち止まる。
 じゃあ、と門をくぐるのも気が引けて、私はフェイトちゃんを見送ることにした。別れのキスを額に受け、彼女に手を振る。踵を返す彼女の後姿を私はぼんやりと眺めた。昔は同じくらいだったのに、今は自分より随分と高くなった背に、金色の髪がかかっている。尾を黒いリボンで束ねていて、雨が跳ねる度に金色のそこだけが輝くようだった。彼女が差している明るい色の傘も、彼女自身の色を消すことはなかった。
 隣にいては分からない、こうして後ろを眺めていて初めて分かるフェイトちゃんの美しさ。容姿だけではないことを私は知っている。ずっと求めていたフェイトちゃんの隣の席。自分のために空けてくれたのに、私は今だってはやてちゃんのことを想っている。
 フェイトちゃんと話している時も肩が触れ合った時も、唇を交わしている時だって、私の頭の中にはあの渡り廊下で見たはやてちゃんの姿があった。振り返ってくれた。私を見たのではないかもしれないのに、もしかしたらと密やかな期待が胸に湧く。ふつふつと煮立ち、雨など思考の邪魔にならない。
 私はふらりと歩き出した。傘も差さずにはやてちゃんの家へ向かう。制服も髪も濡れて重くなったけれど構わなかった。そんなに遠くじゃない。考え事をしながら歩いていればすぐの距離だ。鈍色の空の下、夜とそれほど変わらぬ暗さを歩き続け、ついにははやてちゃんの家に辿り着いた。八神家の門の前に立ち、しばらく家を見上げてみる。カーテンの閉められた窓がはやてちゃんの部屋……。
「なのは? 何してんだこんなとこで」
 玄関から出てきたヴィータちゃんが怪訝な顔をしてこちらを睨んでいた。相変わらずの不機嫌そうな様子にほんの僅か、力が抜ける。
「はやてに用か。ならさっさと入れよ、部屋にいるからさ……ってなのは、お前ずぶ濡れだぞ! 早く入れよ」
 ヴィータちゃんが叫ぶ。
「ん、別に用ってわけじゃないんだけど」
「煮え切らないな。風邪引くからとにかく入って……」
 ヴィータちゃんが言いかけて、言葉を中途半端に切った。もともと不機嫌そうだった顔がさらに歪められた。何事かと後ろを向けば、そこには先ほど別れたばかりのフェイトちゃんがいた。微かに息が切れている。
 フェイトちゃんの登場にヴィータちゃんは尚更首を捻った。
「んだよ、お前まで来て。ほんと何かあるのか?」
「ちょっとね。それよりヴィータ、時間じゃないの」
 ああ、と思いだしたようにヴィータちゃんが頬をかく。任務らしい。彼女は相当苛立っているみたいだった。まあ自分の家に意味もなく人が集まっていた苛立ちもするだろう。なんて冷静に判断してみてる自分が一番彼女の怒りを買っているのかもしれなかった。
「悪い、行ってくる。はやては中にいるから、さっさとインターホン押して呼べよな。特になのは。ずぶ濡れで家睨んでたら、不審者だぞ」
「にゃはは……じゃあお仕事頑張ってきてね」
「おう」
 ヴィータちゃんが去ると、その場には二人だけになった。
 頬を雫が次々と流れ、顎を伝って落ちる。もはや雫と呼べないかもしれない。ヴィータちゃんが表現した通り、家からここに来るまでに全身濡れ鼠で、髪も頬や額などあちこちに張り付いていた。空は相変わらず重たげで、隙間なく雲が敷き詰められている。
 私は、どうしてフェイトちゃんがここにいるのだろうと考えてみた。でも雨に打たれぼやけた頭ではろくに考えが纏まらない。ぐるぐると空っぽの思考が回転している。
 だから「どうしてここへ?」と、私に言えたのはそれくらいだったが、フェイトちゃんは律儀に答えてくれた。
「なのはと話し足りない気がしたから戻ったら、こっちへ来るのがわかったから。ぼうっと歩いてたし危ないと思って跡をつけてたんだ」
「話し足りない?」
 私は首を傾げる。帰り道でそれなりに話した気がする。
「あんなの話したうちに入らないよ。それに会いたかった」
「さっきまで会ってたのに」
「好きな人とは別れたすぐにでも会いたいと思うものだよ。なのはだってそうなんだよね。だからここに来たんだ。無意識のうちにでも」
「フェイトちゃん?」
「君ははやてのことが好きだ」
 胸を突き破られるかと思うほど強く、心臓がどくんと鳴った。
「誤魔化せないほど強く想っている。そうでしょ」
「よく……わからない、私の恋人はフェイトちゃんじゃないの?」
 彼女の言っていることを理解しきれずに問う。しかしそれには答えずに、彼女は続けた。
「全部知ってたよ。例えなのはが自分の気持ちに気付いてなくても、はやてを好きで居続けたことは知ってた。そしてはやてと付き合っていたことも。私はそのことを四年間、ずっと隠してたんだ。……知らなかったらよかった、って思うよ。気付いてなかったらって」
 吐き出すべき言葉を見つけられず、私は沈黙する。その間も雨は二人を打ち抜く。いつの間にかフェイトちゃんは傘を落としている。金の髪が濡れて、それでも鈍く光っていた。なのに表情は頭上の空よりもずっと暗い。
「もし知らなかったらもっと強くなのはのことを抱き締められた。引きとめて、向こうに行かないようにって強引にでもできたのに、私はどうして気付くんだろう。でも本当はそんなこと分かってる。一人の時に沢山考えたから分かってるよ。なのはだからだ」
 彼女の言葉が痛い。
「なのはの事だから、私は何でも気付いちゃうし知ってしまう。鈍感だったらどんなに楽か」
「私みたいに?」
 言うと、彼女は小さく笑った。
「なのはは鋭いよ。ただ自分のことに鈍いだけ。自分の価値を低く見過ぎているから、向けられる好意を有り得ないことだと思いこんでしまっている。でも周りの人には……アリサやすずか、はやて。それに私についてだって敏感に察してくれてる」
「そんな、そんなことない。帰りだってフェイトちゃんが待っててくれなかったら一人で帰ってた」
「だから待ってたんだ」
 フェイトちゃんはさらりと言う。まるで当然だと。
「なのははさっき言ったよね。なのはの恋人は私じゃないのかって。私の中ではそうだよ、なのはの恋人のつもりだった。でもなのはは違った。なのはの中では、その場所はずっとはやてのものだったんだ」
 しとどに降る雨が地面を灰色に染めていた。電信柱を伝う雫は水たまりに向かって真っ逆さまに落ちていく。八神家の庭に植えられた木の枝や屋根からも、ぽたぽたと流れる。道を埋めるくらい大量の雨、フェイトちゃんはじっと私を見ていた。母を見送って別れたあとのような哀しい目をしている。
 昔のフェイトちゃん。私が惹かれて、好きになった彼女がそこにいる。
 だというのに、私ははやてちゃんの部屋をつい見上げた。カーテンの向こうにいるはやてちゃんを想像した。部屋にこもって何をしているのか、私のことを少しは考えてくれてはいないだろうか。そんなことを。
 慌ててフェイトちゃんに視線を戻した時には彼女は瞼を落としてしまっていた。俯いた彼女の前髪が目を隠し、表情すら覆っている。
「……ほら。私が目の前にいても、もう君ははやてしか見えていない」
 どんなになのはへの想いを語っても、抱き締めてもキスをしても、なのはは私を見ないんだろうね――フェイトちゃんのくぐもった声が聞こえる。
 これのどこが恋人だって?
 そんな言葉まで聞こえてきそうだ。いや、私の心が言ってるのかもしれない。
 好きな人にこんなことを言わせて、私はなんて人間だろう。今更好きなんていえないし抱きしめても安心させることは到底できそうもない。それに多分出来ない。肩を抱いたところで親愛のようになってしまうに違いなかった。それはフェイトちゃんが求めているのとはかけ離れた形だ。
 出口のない思考を続けていると、彼女はいつの間にか顔を上げていた。頬を伝うのが雨か涙か、判別するには濡れ過ぎている。
「フェイトちゃん」
 私は恐る恐る名前を呼んだ。弾んだ気持ちなど一切ない、ただの言葉。昔はあんなに胸を熱くして呼んでいたのに。なのはと呼ばれたことが嬉しくて、泣いて。フェイトちゃんは抱きとめてくれて。それが嬉しくてまた泣いた。
 何年前だろう。まだはやてちゃんと出会ってない頃だった。
「またはやてのことを考えてる」
 フェイトちゃんが笑った。
「ね、なのは。いつのまにそんな感情を隠すのが下手になったの? 昔はもっと上手く私を誤魔化してくれていたのに。ひどいな」
「フェイトちゃん、それはっ」
「でも。だからといって渡せないんだ」
 ――言い訳を口にする前に、私は息をとめた。
 身動きが取れなかった。フェイトちゃんの声が悲痛過ぎて、ゆっくり近づいてきたのに避けることができなかった。彼女は腕を伸ばし、私を抱き寄せる。力任せじゃない、濡れた制服が肌に張り付いた不快感さえ消えてしまうくらいの優しい抱擁だった。
「渡せるわけがない。こうなるのが嫌で告白したのに、誰のものにもなってほしくないから。だから!」
 感情を昂らせながら、どうしたらこんな怖がるような抱き方ができるのか。彼女の腕の中でいくつものくだらない考えを馳せる。繰り返し繰り返しフェイトちゃんのことを考えるけど、最後にはまたはやてちゃんに辿り着いた。
「嘘でもいい。上手に騙してくれるならいいから、離れていかないで。今日のことなんてなしにして、なのはの気持ちも知らないままでいる。なのはといられるならそれでいいんだ」
「フェイトちゃん」
 私はフェイトちゃんの腕を解く。全く力の込められていない腕はするりと抜けた。彼女の体温であたたまった胸が急速に冷やされていく。
「なのは」
「ごめん、もう」
 私は静かに首を振った。これ以上彼女を自分などが傷つけていい道理はなかった。
「はやてなんていなければよかったんだ」
 始めて聞いた彼女の冷たい声。出会ったころのような無感情な声ではなく、ひたすらに低く 険のある声だった。冷笑さえ浮かんでいる。
「なのは、離れるなんて無理だよ」
 笑って、そのあとで優しい表情をして、愛おしげに私の名前を呼ぶ。
「フェイトちゃん……」
「愛してる。愛してる愛してる愛してる、愛してるよなのは――」
 私はたまらずに彼女を抱きしめた。
 受け入れたわけではなく、言葉を閉ざしたかったわけでもない。見たくないだけ。焦がれたフェイトちゃんが壊れていく姿を見ているのがつらいだけだ。彼女は十分に傷ついていた。もっと早くに気付けば、告白を受けなければフェイトちゃんにこんな顔をさせないですんだのに。自分の心を知るのが遅すぎて、傷つけなくていい人を傷つけた。
 今更はやてちゃんの所に行っても動揺させるだけかもしれないのに。それよりもフェイトちゃんを受けれていれば誰も不幸になんてならないのに。
「なのは……なのは、なのは。……なのは」
 勝手な幸せを選ぼうとしている自分が、嫌いになりそうで。
 いつからこんな我が侭になってしまったんだろう。いつから自分の心を抑えることもできなくなったのか。
 私は彼女からゆっくりと離れた。肌に張り付いたシャツがこれ以上になく気持ち悪かった。雨は好きだけど、でもこの雨は嫌いだと思った。
「酷い事をいうよ」
 ――できれば嫌いになって。
「私ね、フェイトちゃんのことが好きだよ。だけどそれは恋愛じゃなかった。ううん、最初は恋だったかもしれないけど、憧れに近かったんだ。友達としても魔導師としても素敵なフェイトちゃんに、憧れてた」
 私の事なんて見たくもないくらい嫌いに。そして。
「勘違いだったの、全部。フェイトちゃんの言う通り、私が本当に好きだったのははやてちゃんなんだ」
「嘘」
 フェイトちゃん。
「嘘じゃ、ない」
「嘘だよ」
「嘘じゃない」
 フェイトちゃん。
「嘘だ……っ」
 彼女が金の髪を振り乱す。雫が飛び散って、踏みだした足がぱしゃりと音をたてた。
「なのはは私のことが好きなんだ。恋人なんだ。誰にも壊せないくらい強いきずなで結ばれた、二人なんだよ! 手を繋いだ、キスをした。……抱き合ったんだ。なのはは忘れちゃったの」
「忘れてなんかいないよ。でも私がいつも考えていたのはなんだったか、知ってる?」
 彼女は何も言わない。私を見ない。どこも見ない。
 ――嫌って欲しい、と思った。こんな人を好きになったことが無駄な時間だったと思ってほしい。
「手を繋いだ時やキスをしてる時、抱き合っている時でさえ私の頭にあるのはフェイトちゃんのことじゃなかった。ずっとはやてちゃんのことを考えていたの。私は」
 そういう酷い人間なんだ、と納得してくれたら。きっと苦しいのは今だけだ。彼女にはやてちゃんを、友達を恨ませたくない。
 あるいは逃げるいいわけだったのかもしれない。でも偽りでもない。
「ばいばい、フェイトちゃん」
 ぱしゃり、とひと際大きな水音を立てて彼女は走り去っていく。ずぶ濡れのまま一人私は残される。ずっとずっとフェイトちゃんの後姿を見送る。
 ――嫌いになってほしいと思ったんだ。
「でもやっぱり、……きついな」
 大切な人だった。大切に順列は付けられなかったのに、それでもはやてちゃんを想ってしまったこと。フェイトちゃんといるときに感じていた確かな幸せを、嘘だと言ってしまったこと。
『好きだよ、なのは』
 そんな、もったいないくらいの温かい言葉と向けられる愛情を、自ら手放した。
 涙は流さない。権利がない。私は……泣いてはいけなかった。

 頭が十分に冷えるまで門の壁に凭れて、しばらく空を見上げた。鈍色の空、重たげな雲が空を覆い、青などどこにもない。一条の光さえ差し込まない世界で一人佇んでいるような錯覚が湧きあがる。
 でもすぐ近くにははやてちゃんがいるし、フェイトちゃんが立ち去った残骸もそこに散らばっていた。荒れた地面についた足跡。胸に落とされた涙といっぱいの叫び。
 しかし私はやがて背を離し、玄関横の呼び鈴を鳴らす。何気ない顔をしてはやてちゃんに会うのだ。
「えへへ……。こんばんは、はやてちゃん」
 うまく笑えていると彼女にだけは見えるように、私は必死に笑顔をつくった。




× あとがき ×
そしてはやてサイドのあの場面に続く。
バッドエンドではないけど、ハッピーエンドでもない。
フェイトを受け入れなかったなのはは、幸せを求めることができなくなった。はやてに会いたいだけ、会って触れて、それ以上はいらないし求めてはいけないと考える。
そんな話が、ハッピーエンドのはずがない。
でも救いがないこともない……と考えてます。
自分の中で「フェイなの」は幸せな二人というのが信条なんだけど、他CPの話にフェイトさんを出すとこうなってしまいます。なら出さなきゃいいといわれそうですが、……これはそういう話なので。
上手くないですね、なのはさんを幸せにしてあげられない。それどころか追い詰めてしまう。難しいものです。
この話のなのはさんは弱いなのはさんでした。基本は本編とかわりないつもりだけど、やっぱりなのはさんは魔導師として生きているほうが正常な精神を保てるような気がします。魔法とは無印一話でいってたような「やりたいこと、自分にしかできないこと」だから。魔法がなのはさんも幸せにしたんだったらいいな。
こんな話でも、読んで面白かったり、何かしら考えていただけたのなら嬉しいです。

Comment
投稿します。
なのはのゲーム出ないかな、と思っている今日この頃です。

だって、なのはシリーズって、ゲーム、特に格闘ゲームに合いそうな気がするんですよ。皆強いし、皆カッコイイ、熱いセリフも沢山ある、とくれば、ゲームにならない方がおかしいと思うんですよ!

まぁ、そのうち出るだろうな、だって人気があるシリーズだからね、とか考えてます(笑)いつになるか全くわからないですが、気長に待ちますよ。

話は変わりますが、なのはシリーズの中で、なのは、ティアナ以外で好きなキャラをランキングするとしたら、どんなランキングになりますか?ちなみに、自分は、


1位 はやて
2位 なのは、フェイト


3位 スバル、ティアナ


という感じです。結構ダブってますが、皆好きなんだって事で、気にしないで下さい(笑)

でも、最近、色々見たり聞いたりしているうちに、キャロやリインが気になり始めてたりします(汗)

それでは、また来ますね!

PS.なのはのアンソロ、自分も買いました!どれもなかなか面白かったです!ふと立ち寄った本屋で偶然見つけて、即買いでした(笑)

それにしても、自分の住んでる所、アニメ関連のグッズ売っている所少ない・・・。ストライカーズのDVDも4巻までしか持ってない・・・。レンタルって手もあるけど、出来れば自分で買って、保存版にしたいなぁ。
それに、無印もA’sもきになるし、サウンドステージも欲しい・・・。

TSUTAYAとかゲオとか、もう少し品揃え増やしてよ、って愚痴が出てしまいます。

まぁ、こっちも、気長に待つ事にします。
あとがきのつもりが、すごく長くなってしまいましたが、適当に流して下さい(笑)
2008/ 06/ 21 (土) 21: 12: 44 | URL | [ 編集 ]
>凛さん
返信おそくなりまして、すみません。。
ゲームはとらハ関係のこともあってでないのかな〜と勝手に邪推したりしてますが、これだけ人気なんだから出てほしい気持ちはありますね。
格闘ゲーム、たのしそうです。
団体戦だとはやて最強とか。個人戦だとなのは・ヴィータ・シグナム・フェイトがならぶか。ティアナやスバル、エリオとキャロもつよくなってるし、いいかんじになりますよねw
ランキングは、なのははいうまでもなく、次点でティアナ・ヴィータという感じなので。
あとはアリサ、ヴィヴィオ、はやて、リインII、スバル、ヴァイス、ザフィあたりです。順番はその時々によってかわるのではっきりとこれ、とは言えませんが。
なのはキャラはどのキャラも好きなので、選ぶのはむずかしいですねw
アンソロは、一番最初にある「オレンジのダンシング」が大好きです。なのはとティアナの関係が凄くいい。他のも秀逸で買って損はないですよ〜。
それと、DVDを近場の店でみつけられないときは、通販という手もありますよ〜。アマゾンや楽天などさがせばきっとあります。だから無印とA’sも見るべき!サウンドステージもおなじく手に入るかと。
お金に余裕があるなら通販もかんがえてみては?
そしてグッズに手をだしなの破産まっしぐら♪なのですよw
ではでは、コメントありがとうございましたm(_ _)m
2008/ 06/ 25 (水) 01: 36: 09 | URL | 西野加奈 [ 編集 ]
お返事です。
西野さん、お返事ありがとうございます。返信が遅かったことも、あまり気にしてませんよ。そちらの都合もありますからね!大丈夫ですよ!

西野さんは、なのはとヴィータ、ティアナがお気に入りみたいですね。書かれているお話にも、よく登場してますし。

やっぱり、自分の好きなキャラは、どこまでも好きになるんですね。自分もそうだったんですよ。

実は、なのはを見始めたのはつい最近で、まだ途中までしか見てないんです。それでも、このシリーズがとても好きです。

なのはシリーズを見始めた理由は、テレビで紹介されたのがきっかけでした。秋葉原の紹介で、アニメキャラのイラストがプリントされた車の紹介をしていたんですが、それがはやてのイラストだったんです。

その頃、自分はなのはシリーズの事は知っていましたらが、アニメ自体は見てなかったので、そのイラストがすごく気になったんです。

そして、本編を見てから、ますます彼女の事が好きになりました(笑)でも、最近スバルやリイン達が追い上げて来たので、少し心配です。

でも、誰が何と言っても、自分ははやての事が一番好きです。・・・こう書くと、何か恥ずかしいですね(笑)でも、彼女が来てくれたら、どんな状況でも耐えられる自信があります!あ、でも、なのはの砲撃を喰らうのは、正直勘弁ですね。(泣)
2008/ 06/ 25 (水) 22: 37: 25 | URL | [ 編集 ]
>凛さん
コメントありがとうございますm(_ _)m

そうですね、一度ハマるとかなり深くまで言ってしまいますから。
もう好きと言うか愛の領域です、なのはさんは!(自重
できるだけ好きなキャラは……なのはさんと絡ませたくなってしまいます。むしろなのはさんを好きなキャラを好きになりますw
出会いがなかなか劇的ですね。そのイラストを描かれた人に感謝、かな?
うん、はやては可愛い。スバルやリインも好きですよ〜!
むしろ、嫌いになれるようなキャラがいません!
……それにしてもなのはさんの砲撃ですか。
なのはさんの砲撃……、え、それってご褒美じゃないんですか?w
というかご褒美です、自分にとっては!なのはさんへの愛で受け止める!

なんて感じに壊れつつ、このあたりでとめておきますねw
2008/ 06/ 28 (土) 07: 25: 24 | URL | 西野加奈 [ 編集 ]
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