誰よりも君に笑ってほしくて
またもやなのヴィです。
カロリーオフさんのイラストに影響され、つい勢いで書いてしまいました。勢いだから短い上に文章荒いです、と言い訳をしてみる。
反省は…してる。でもいいやとも思ってる。
25話のネタバレがあります。
内容にそったストーリーというわけではありませんが、ネタバレがあります。ので見ていない方は、注意。
それでは下よりどうぞ。
誰よりも君に笑ってほしくて
息が切れる。肺に血が絡みつくような感覚。
逆流するものを、もう何度吐き出しただろう。
「アイゼン……大丈夫か」
《Jahow》
頼もしい言葉だった。ぼろぼろの体は自分と同じかそれ以上だというのに、アイゼンはなおもはっきりと応えてくれる。労わってやりたかったが、目の前のアレを壊さなければならない。
義務感ではない。自分がそうしたいのだ。大切な人のために。
「こいつを壊さないと、はやてや、皆……なのはが困るんだ。だから、こんなところで倒れちゃいけねえんだ」
《ja!》
リミットブレイク。鉄の伯爵を頭上に掲げ、思い切り振り下ろす。衝突による光の放流が起こり、傷ついた身体は更に軋んだ。だが引くわけにはいかない。自分には護りたい人がいるんだ。
「だからこんなとこで終われねえ。ぶっ潰せえええっ!」
残り全てのカートリッジをつぎ込み、更に全身に力を込める。ばちばちと煩く音が駆動炉に響き、視界は黄やら赤やら桃やらの光が暴れる。
もう少し、あと少しで壊せる。
壊せる?否。断じて否。壊さなければならないのだ。
そこで、何かが弾けた。小さな自身の体が吹き飛ばされる。
なんとか空中で留まるものの、直ぐにかすかな魔力は途絶え、戦友も砕け散った。当然浮力を失った自らの身体は落ちていく。
包むのは絶望感。自分の身体などどうでもよかった。ただ、駆動炉が壊せなかったことだけが悔しかった。
――ああ、また護れなかったんだ。
涙が。痛くても辛くても、ずっと我慢してきた涙が。
流す権利などあるはずもないのに勝手に溢れ出す。拭う力もない。ただ重力にまかせて落ちるのみ。
「ごめん、はやて。……ごめん、なのは」
落ちていく衝撃と傷みとで意識を手放しかけ――寸前で繋ぎとめられる。
気付けば自分は、酷く心地良い感覚に包まれていた。抱きかかえていると理解できたのは、ずっとあとのことだったが、今はそんなことどうでもよかったのだ。
「謝らなくても、いいよ」
まるで物語のヒーローの如く現れた純白のエースオブエース。桜色の魔法光に包まれながら、微かな思考がなんとか認識する。自分を奮起させ、何度も立ち上がらせてくれた人、高町なのはがそこにいる。
その人の姿を見つけると、瞬間張りつめていた何もかもが弛緩した。
「頑張ったんだよ、ヴィータちゃんは」
「な、のは……でも、あたしは護れなくて」
我慢できずに顎を伝う雫を、払うことなく呟く。恥も外聞もない。誰よりも知られたくなかったのに、今はもう誤魔化す必要もない相手になっていた。
「鉄槌の騎士と鉄の伯爵がこんなに傷だらけになって、それでも護れないものなんでこの世界に存在するはずがないよ」
ふと見上げれば、パキリという音と同時に、ひび割れていくものが視界に飛び込んだ。自分が先ほどまで懸命に壊そうとしていたものだ。
「だからもう、頑張らなくていいんだよ」
「……なの、は」
「よく頑張ったね、ヴィータちゃん」
「……馬鹿、何泣いてんだ」
自分のは拭えなかった指が、ゆっくりと持ち上げられて彼女の目縁をなぞった。
「だって、すごく傷だらけで、血が……っく……うぅ……」
「お前には笑ってほしいんだ」
なのはの顔を見て、ようやくわかった。
ああ、自分はこの人の笑顔がみたくて、頑張っていたのだと。
なのはは不器用に、それでも笑ってくれた。崩れたその笑顔にあたしもいつのまにか笑みを溢しながら、涙が伝うもう片方の頬を拭ってやった。
「うん、ヴィータちゃん……私、笑うよ」
それだけで自分は、世界で一番幸せになれるんだから。
意識が沈下していく。
閉じる世界の向こう側に護りたかった人の笑顔が見えて、あたしは今までのどんな時よりも安らかな心地で目蓋を落とした。
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カロリーオフさんのイラストに影響され、つい勢いで書いてしまいました。勢いだから短い上に文章荒いです、と言い訳をしてみる。
反省は…してる。でもいいやとも思ってる。
25話のネタバレがあります。
内容にそったストーリーというわけではありませんが、ネタバレがあります。ので見ていない方は、注意。
それでは下よりどうぞ。
誰よりも君に笑ってほしくて
息が切れる。肺に血が絡みつくような感覚。
逆流するものを、もう何度吐き出しただろう。
「アイゼン……大丈夫か」
《Jahow》
頼もしい言葉だった。ぼろぼろの体は自分と同じかそれ以上だというのに、アイゼンはなおもはっきりと応えてくれる。労わってやりたかったが、目の前のアレを壊さなければならない。
義務感ではない。自分がそうしたいのだ。大切な人のために。
「こいつを壊さないと、はやてや、皆……なのはが困るんだ。だから、こんなところで倒れちゃいけねえんだ」
《ja!》
リミットブレイク。鉄の伯爵を頭上に掲げ、思い切り振り下ろす。衝突による光の放流が起こり、傷ついた身体は更に軋んだ。だが引くわけにはいかない。自分には護りたい人がいるんだ。
「だからこんなとこで終われねえ。ぶっ潰せえええっ!」
残り全てのカートリッジをつぎ込み、更に全身に力を込める。ばちばちと煩く音が駆動炉に響き、視界は黄やら赤やら桃やらの光が暴れる。
もう少し、あと少しで壊せる。
壊せる?否。断じて否。壊さなければならないのだ。
そこで、何かが弾けた。小さな自身の体が吹き飛ばされる。
なんとか空中で留まるものの、直ぐにかすかな魔力は途絶え、戦友も砕け散った。当然浮力を失った自らの身体は落ちていく。
包むのは絶望感。自分の身体などどうでもよかった。ただ、駆動炉が壊せなかったことだけが悔しかった。
――ああ、また護れなかったんだ。
涙が。痛くても辛くても、ずっと我慢してきた涙が。
流す権利などあるはずもないのに勝手に溢れ出す。拭う力もない。ただ重力にまかせて落ちるのみ。
「ごめん、はやて。……ごめん、なのは」
落ちていく衝撃と傷みとで意識を手放しかけ――寸前で繋ぎとめられる。
気付けば自分は、酷く心地良い感覚に包まれていた。抱きかかえていると理解できたのは、ずっとあとのことだったが、今はそんなことどうでもよかったのだ。
「謝らなくても、いいよ」
まるで物語のヒーローの如く現れた純白のエースオブエース。桜色の魔法光に包まれながら、微かな思考がなんとか認識する。自分を奮起させ、何度も立ち上がらせてくれた人、高町なのはがそこにいる。
その人の姿を見つけると、瞬間張りつめていた何もかもが弛緩した。
「頑張ったんだよ、ヴィータちゃんは」
「な、のは……でも、あたしは護れなくて」
我慢できずに顎を伝う雫を、払うことなく呟く。恥も外聞もない。誰よりも知られたくなかったのに、今はもう誤魔化す必要もない相手になっていた。
「鉄槌の騎士と鉄の伯爵がこんなに傷だらけになって、それでも護れないものなんでこの世界に存在するはずがないよ」
ふと見上げれば、パキリという音と同時に、ひび割れていくものが視界に飛び込んだ。自分が先ほどまで懸命に壊そうとしていたものだ。
「だからもう、頑張らなくていいんだよ」
「……なの、は」
「よく頑張ったね、ヴィータちゃん」
「……馬鹿、何泣いてんだ」
自分のは拭えなかった指が、ゆっくりと持ち上げられて彼女の目縁をなぞった。
「だって、すごく傷だらけで、血が……っく……うぅ……」
「お前には笑ってほしいんだ」
なのはの顔を見て、ようやくわかった。
ああ、自分はこの人の笑顔がみたくて、頑張っていたのだと。
なのはは不器用に、それでも笑ってくれた。崩れたその笑顔にあたしもいつのまにか笑みを溢しながら、涙が伝うもう片方の頬を拭ってやった。
「うん、ヴィータちゃん……私、笑うよ」
それだけで自分は、世界で一番幸せになれるんだから。
意識が沈下していく。
閉じる世界の向こう側に護りたかった人の笑顔が見えて、あたしは今までのどんな時よりも安らかな心地で目蓋を落とした。
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