2017-06

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語ろうとした震え

ヴィータ×なのはで、なのはさんがちょっと?な感じの話。
本当は拍手SS用に書いたものだけど、お題から逸れすぎてたのでやめた。ある意味没?
場面が夜なのはその名残です。
ヴィータとなのはは、フェイトとなのはみたいに目に見えてラブラブじゃなくていいけど、なんだかんだでお互いを想い合っているといいな。

よろしければ続きよりどうぞ。



 語ろうとした震え


 愛の言葉は綺麗で耳ざわりがいい。
 だから私はよく好きだという言葉を口にした。簡単にでもないけれど、頻繁に、それなりの想いをこめて告げた。友人にも多く言ったけれど、そのほとんどはヴィータちゃんに向けられた。ヴィータちゃんから好きだといわれたことはないけれど、態度で表してくれるから私は満足だった。それが小学生の頃。
 中学に上がって仕事が忙しくなり、以前よりもヴィータちゃんと遊べる時間が少なくなった。不定期に飛び込んでくる任務だけではない、自らの訓練にかける時間も少なくない。合間を縫ってヴィータちゃんの家に遊びに行ったりするけれど、それだけというわけにはいかない。
 私には見守ってくれる二人の友達と、同じくらい大切な友達がいた。すずかちゃんとアリサちゃん、それにフェイトちゃんとはやてちゃん。彼女たちと持つ時間は大切で、楽しい時間。
 ミッドチルダに移住してからも、ヴィータちゃんは時間が空いたのを見計らっては家に来てくれた。そのころには恋人同士と呼べるような関係になっていて、特に会いに来る言い訳を見つけなくてもいい。会いたいといえば納得できたし、またそれが嬉しくもあった。でもやっぱりヴィータちゃんの口から「会いたい」とも「好き」だとも聞いたことがなかった。付き合いだしたのだって、なりゆきみたいなものだったかもしれない。
 私がいつものようにヴィータちゃんにじゃれついて、彼女は面倒くさがりながらも払いのけないでくれた。
「なのは、この、いい加減に……っ」
 苛立った彼女が腕を上げ、バランスを崩してしまう。私たちは足をもつれさせてそのまま倒れた。
 ヴィータちゃんが私の上に乗る。胸がどくんどくんと、ばらばらなリズムを刻む。
 不意に重なったヴィータちゃんの小さな体が愛おしくなった。
 肘をつき、身体を持ち上げようとするヴィータちゃんの背に腕をまわして引きとめる。頬が染まり、前髪の隙間から覗く瞳が震えている。もしかすると私もなのかもしれない。
 私達は唇を合わせた。
 それからはもつれあうような性的な行為があっただけ。名前は呼び合ったけれど、好きだと何度も言ったけど、ヴィータちゃんが私のことを好きだとはついに言ってくれなかった。でも、幸せだった。
「後悔してる?」
 そんな馬鹿な問いに、彼女は大真面目に「後悔なんかしない」と答えてくれた。そのことだけで、私は幸せになれた。
 だけどやっぱりどこかで不安だったのかもしれない。

 ジェイル・スカリエッティ事件を経て、機動六課一年の試験運用期間が無事に終了すると、部隊は解散となった。
 会えない日々が続く。しかしそんな中でも、時間を見つけたヴィータちゃんが部屋に遊びに来てくれた。今日は日常の中のある意味特別な日だった。
 小さな彼女の背中を見送る。
「……」
 玄関に近づくにつれて笑顔が消えていくのが分かった。
 また会えなくなる時間を考えると、途端、送り出すのが嫌で仕方がなくなった。教導隊に入ってくれただけで、昔よりはずっと顔を見られるようになったのに、機動六課でなまじ同じ時間を長く過ごしてしまったために離れがたくなってしまった。
 ヴィータちゃんははやてちゃん達の家で暮らしている。いつまでも私の家にいるわけにはいかない。当然といえば当然で、しかし理不尽な事。
 さっきまで笑い合って、ふざけていた。ヴィヴィオと遊ぶヴィータちゃんを見つめたり、遊び疲れて眠るヴィヴィオの隣の部屋で触れあったりした。短い時間を精一杯楽しんだあとで訪れる別れの時間を考えないようにして過ごしていた。
 でもやっぱりやってくる。
 玄関の電気をつけ、扉を開けながら平然と別れの言葉を口にする彼女を引き留めたくなった。
 彼女はどうして平気でいられるのだろう?
 もっと執着してほしい。実際にされたらこまるかもしれないけど、でもこんな風に背中を向けられるよりずっと良かった。それなら最初から絡み合わない方がよかったと思ってしまう。
 馬鹿な話だ、先に手を伸ばしたのは私の方なのに――。
「帰らないで」
 自分の家に戻る彼女の手を引いて、つい言った。
 背後に広がるのは満天の星空。気持ち悪くなるほどの美しい情景に、しかし不釣り合いなことばが響く。私が吐き出した言葉だ。
 何をしているのか。はやてちゃんたち家族の待つ家に帰してあげなければならないのに。美味しいご飯と食後のアイスが待っていると、部屋で楽しそうに話していたのに。私はどうして彼女の手を、今、引いてしまっているのか。
 情けなくみっともない。こんな自分を私は知らない。
 否定したいのに、彼女を掴んでいる手はまぎれもない自分自身のものだ。否定出来るはずもない。
「帰りたい、なんて一度でも言ったことがあるか?」
「……ヴィータちゃん、いつもはやてちゃんといる方が楽しいって言ってるもん」
 口が勝手に吐き出す、言葉と言葉以外の何か。
「別にそんなこと言ってねー。お前よりはやての方が楽しいなんていつ言ったんだよ。癪だけど、あたしはお前といるのも、もちろんはやてといるのも楽しいよ。でないと疲れてんのにお前に誘われたからって、来るわけないだろ?」
「ヴィータちゃん優しいから、断らないし」
「馬鹿か。それはあたしがなのはのことを……ってなんで分からないんだよ。もう。本当に帰りたかったら、とっくの昔に腕振り払ってるぞ」
「そんなの基本的にはどうだっていいんだもん。私は今ヴィータちゃんに帰ってほしくないだけなの。それだけ。なのにヴィータちゃん、なんでそんな怒ってるの」
 溜息をついた。私ではなく彼女が。
「お前がなんにも分からずに喚いてるからだろ」
 ああ、呆れられてる。自分でも呆れているんだから仕方ないけれど。やっぱり哀しくなった。
 好きな人につかれる溜息は自業自得としても寂しい。怒らせていることも我が侭を言っていることも自覚していながら正せない自分に心底嫌悪する。
 もっとスマートにできたらいいのに。そうしたらもっとヴィータちゃんと仲良くできて、私にも甘えてくれるようになるかもしれない。今ではずいぶん素直に表現してくれるようになったし甘えさせてもくれるけど、あまり彼女からというのはなかった。はやてちゃんにはあんなに心を許し、甘え切っているのに。考えていると、自分の方がずっと好きなような気もしてくる。嫌いではないかもしれない、でも私の方がヴィータちゃんのことを好きだとも思う。
 それを言うと彼女は元々吊り目がちな目を、さらにきつく吊り上げた。
「何も分かってない。何も分かってないよ、お前は。なのはがあたしよりも、あたしの事を好きなんてどうして思う。どうしてそんなことが言える。あたし、あたしは……」
 次第に萎んでいく声に手を添えることもできず、茫然と立ちつくした。腕は振り払われないまま、二人、玄関の前にいる。指に力が入り過ぎていたかもしれない。今更ながら思い当り彼女の腕を放そうとすると、その手を止められた。
 彼女の手によって、離れかけた手が再びそこに押し付けられる。ヴィータちゃんの蒼い目が揺らぐ。炎に焙られたような真の青を、宵の中に紛れさせることなく、彼女は私を睨みつける。どこか弱々しい炯眼に、私はようやく自分の失言に気がついた。
「帰りたいわけないだろ。いつだって玄関の扉を開けられることが怖くて、その時間が永遠に来てほしくないと思っているんだ」
 彼女は続ける。閉じていた想いを話してくれている。私が分からないといけなかったことを、一つ一つ丁寧に。そうして私は、自らの愚かさを知ることになる。
 重ねられたヴィータちゃんの掌が熱かった。昼に降ってくる灼熱の日差しなんかよりもずっと身を焦がす。
「なのはがどんな想いで言ったかは分からない。でもあたしはなのはよりもなのはのことを想っている。それだけは譲れない。どんな風に表現してくれても、好きだって言ってくれても変わらねーよ。絶対だ。毎日気が狂いそうになるほど会いたい、訓練室の前を通りがかる度、いるはずもないのにもしかしてこのドアの向こうになのはがいるかもって考えたら、先の予定なんて無視して開けたくなる。それでも開けないのは、時間の関係でも自制がきいてるわけでもない。いなかったときが怖いからだ。今帰りたくないって言わないのも、迷惑かけるんじゃないかって思うからだ。なのははそんなの表にも出さないだろうし、誤魔化そうと思えば簡単に誤魔化し切れるだろう。そんで、あたしは内心で馬鹿みたいに喜ぶ。帰る時の苦しさを味わわないでいいんだって。……でもそんなのは嘘だ」
 星が一つ二つ、雲に覆われ消えていく。少しだけ冷えてきた。
 時間が過ぎていっているのだと感ずる。
「いつか帰らなきゃならない。この家をでないといけないなら、もう来ないでいようと思うほどだ。帰りの事を考えると吐き気がする。弱さを突き付けられるようで、そんな弱いあたしのことをなのははいつか鬱陶しく思うんじゃないかって気が気じゃない。甘えないのも、つっぱねるのもその所為だ。言わなきゃ伝わらない? 言葉にしないと駄目。……かんべんしてくれよ。ちょっとでもあたしのこと好きだったら、見てたら分かるはずだ、だってなのはにとってあたしは分かり易いらしいから。なあ、この腕を掴んでて気付かなかったか?」
 ――震えている、と。悟ったのは、きっと彼女を随分と傷つけてしまった後。
 私は修繕の追いつかない傷を彼女に負わせてしまっていた。不用意な言葉で、幾度も切りつけて。私以上に不安な彼女の心を、ボロボロにしていったのかもしれない。自分が不安なことを押し付けて、彼女の心を顧みなかったせいだ。
 代償として見せてくれた彼女の心の深さに打ちのめされる。酷い自己嫌悪が襲いかかってき、今すぐ部屋に飛び込んで頭を抱えてしまいたくなった。だけどそれは彼女の今までの言葉と、弱く添えられた手が許さなかった。
 このままヴィータちゃんを放って閉じこもるなんて選択はあり得ない。何よりここで終わってしまうなんて嫌だ。ヴィータちゃんが、私は。
「ヴィータちゃん」
 震えていた腕にキスをした。そして頬を包み、そこにも口づける。拙い私の行為に、少しでも癒されて。伝えてくれた思いが嬉しいのだと分かって欲しい。
 確かに私はヴィータちゃんが思うほど、彼女のことを想っていないのかもしれない。それは分からない。でも彼女が好きなことは確かだ。好きだと言っているのは彼女だけじゃないけど、そこに込める想いは明らかに違った。
 こんな風に想いを告げられて、嬉しい人なんて他にいない。
「ヴィータちゃん、ヴィータちゃん」
 顔中に唇で触れた。いつもみたいに抵抗しないのをいいことに、何度も何度も触れてみた。想いが注ぎ込まれますように、と願いを込めて私は彼女の顔にキスをする。
「だいすき、ヴィータちゃん」
 謝罪と愛の言葉をないまぜにして、名前を呼んだ。離したくない。
 ここで部屋に引きこもるのは簡単だ。恥ずかしさと後悔の念を胸に押し込めて延々と沈んでいるのは楽だ。やがては一人でいるのも耐えられるようになってくるだろう。でも、選ばない。恥ずかしさなんてどうにでもなるし、後悔して幸せになるのは誰でもないんだ。
 何よりも、今離れたくない――。
 ヴィータちゃんは泣きそうな声で、初めて返してくれた。
「馬鹿なのは。あたしのほうがずっと好きだよ……」
 愛の言葉は綺麗で耳に心地良い。だからこそ沢山言いたくなるし、聞きたくなる。けれど本当に想いがこもった言葉は、一度きりで胸に沁みてくる。
 ヴィータちゃんの好きは、私の何百倍もの重さをもって降り注いできた。私はそれを受け止める。嬉しい重みだから、抱き締めて離さない。
 我が侭言ってごめんね、と、落ち着いたら言おうか。甘えるのも我慢するよ、と。でもその代り受け止めてと言うんだ。他の人には言えない、ヴィータちゃんにだけ言える言葉。彼女しか受け止められない気持ちの重さを胸に溜める。
「今日は帰らなくても、いいか」
 こんな私を受け止めてくれるなんてヴィータちゃんだけでいい、と。そう思ったのは出会ってから十二年目の夏。背後で星の落ちる音がした夜だった。



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