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2019-11

廻るだけで、なにひとつとして新しいものなどないのだ

二代目拍手SS
ヴィヴィオ×なのはです。
よろしければ続きよりどうぞ。



 廻るだけで、なにひとつとして新しいものなどないのだ . . . ヴィヴィオ×なのは


 ヴィヴィオは夕食の買い物へと出かける前になると、決まって尋ねた。
「今日はフェイトママ、うちに来るの?」
 ドアの鍵を閉めているなのはの手を握りながら、表情にわずかな影を差したヴィヴィオの瞳が揺れる。なのはがその意図を汲み取ることはないが、それでも感じるものがあるのだろう。ヴィヴィオが見上げてくる度に頭に手を添え、優しく撫でてから丁寧に答える。ヴィヴィオは頭のてっぺんに感じるなのはの手の平の感触に目を伏せながら、しかし思考は別の場所にあった。
 ――今日はなのはママと一緒にいられるのかな。
 返答によっては、二人きりの濃密な親子の時間を過ごせるかどうかが決まる。
 ヴィヴィオはいつも、夕食後の何気ないなのはとの対話を何より大切にしていた。別にフェイトのことを嫌っているわけではなかったけれど、彼女が家にくると当然ながらなのはの意識はそちらに分散され、二人の時よりもあまり会話を持てなくなる。繰り返して言うが、ヴィヴィオはフェイトが決して嫌いではない。むしろよく遊んでくれるし、優しい笑顔を向けてくれるフェイトのことをとてもいい人だと思っている。だけどなのはが彼女と談笑している場面を見ていると、どうにも心が落ち着かなく、気分が悪い。好きな人同士が仲良くしているのに、何故か悪い感情ばかりがヴィヴィオの心に湧き上がってくる。
 これが嫉妬という気持ちなのだと知ったのは、もう随分と前だった。

 ところで“廻る”という言葉には多くの意味、そして読み方がある。これと同じように、人の名前も様々な呼ばれ方をする。同じ名前を呼ぶのでも、呼ぶ人によって名前に含める意味も違うだろう。嫌悪を込めたり、慈しみを込めたり、愛しさを隠したりと、やはり様々だ。
 つまり言葉にはたくさんの意味が込められるわけで。
「今日はフェイトママ、うちにくるの?」というヴィヴィオの言葉を真っ直ぐに受け止めるなら、単に事実を確認するためである。そこにプラスして、感情が込められているとするなら、好意的にとった場合『来てくれるといいな』という意味も含んでいると考える。しかし否定的にとった場合、ヴィヴィオはどんなことを考えているだろう。また、好意的であっても、その中に嫉妬が混じっているならば事態はさらに複雑化する。
 そしてなのはの言葉。眉間に眉を寄せながら、ごめんねと慈しみをそこに含ませてヴィヴィオに囁きかける。
「ごめんね、今日はフェイトちゃん来ないんだ」
 よかった――そう心底から安堵している自分を、ヴィヴィオは嫌悪した。

 買い物を済ませた後、ヴィヴィオは炬燵に潜り込んだ。
 鼠色のテーブルに顎を乗せて料理をする母の背中を眺める。手伝おうか、とも言ったのだが、なのはは「夕食くらいはママが作らないとね」と頑として譲らなかった。最初のうちはもちろんどうにか手伝おうとしたのだけれど、なのはの意思が固いことが分かると、そのうちにヴィヴィオは諦めてしまった。今ではこうして母の背をたまに盗み見ながら、特に興味をひかれることのないテレビを垂れ流してい待った。
 今日はビーフシチューらしい。温かいものが食べたいな、ヴィヴィオが言うと、なのははしばし考えた後に「じゃあシチューにしようか。そうだなあ、いつもクリームだし今晩はビーフにしてみる?」と提案してきたのだ。久しぶりだったこともあり、ヴィヴィオはすぐに賛同した。玉葱とじゃがいもはまだ残っていたから、牛肉と人参を買い物カゴに入れ(その際にヴィヴィオはお菓子を買ってもらった)、ついでに切れていた牛乳も入れて支払いを済ませたのがついさっき。今は鼻を良い匂いが掠めている。カレーとは少し違うけれど、それと似た香り。
 ヴィヴィオはホワイトシチューも好きだったけれど、どちらかといえばビーフシチューの方が好きだったから、嬉しい提案だった。なのはが辛いものは苦手だということをヴィヴィオは知っていたけれど、まあそれとは違うのだろう。ヴィヴィオはなのはに、クリームよりもビーフが好きだということは言っていない。だから自分の為にビーフシチューを選択してくれたというのは自惚れだとヴィヴィオは考えた。
 タレントがくだらない話をしてくだらない番組を盛り上げている。騒音に近い声が、なのはのシチューを煮る、ことことといった温かな音を掻き消して、ヴィヴィオはいつも気分が悪くなる。しかしヴィヴィオがテレビを消すことはない。そうこうしているうちに、いつの間にかうとうととしていた。
「お待たせ、出来たからおいで」
 エプロンの腰のリボンを解きながら、なのはが顔を覗き込んでくる。ぼうっとしていたこともあって、ヴィヴィオは突然の衝撃に慌てて顔を上げた。
「うん、すぐ行くよ、なのはママ」
 なのはは料理が上手だ。もっとも始めから上手だったわけではない。両親が喫茶店を経営しているためか味付けは元々得意だったが、一方で包丁を扱ったりするのは得意ではなかった。だから始めのうち、野菜を切らせれば大きさはばらばらになり、味は良くても、見た目は世辞にも良いとはいえなかった。しかしヴィヴィオと親子関係になり料理を作るようになって、これではいけないと判断した。それからの行動は早かった。昔から刃物の裁きが上手だったフェイトを家に呼んで教わり始めたのは。
 ヴィヴィオはこうした経緯を知っている。なのはは最初隠そうとしていたが、四六時中なのはばかりを見ているヴィヴィオの目を誤魔化すことなど出来る筈がなかった。
 だがヴィヴィオは何も言わなかった。
 そんなことは関係なしに、なのはの作る料理が大好きだったのだ。例えば具がどんなに歪な形でも、口に入ってしまえば同じだったし、なのはが作ってくれる、ということが重要だった。だからフェイトがよく夕食時になると家に来て、なのはと二人、料理をすることをあまり好ましく思わない。自分のために上達しようと努力しているのは分かるけれど、そこには納得し難い感情がどうしても混じった。フェイトは台所に入れるのに、自分のことは入れてくれないことも併せて。
 ただ最近は、フェイトはほとんど家に来なくなった。仕事が忙しいのか、……それともヴィヴィオのそういった気持ちを読み取っているからか。
 目の前の、まるで少女みたいな人。戦いになると途端に恰好良くなる管理局のエースオブエース。眩しくて、多分、拾われた時になのはがその場にいなければ、会話を持つことすら遠慮してしまうくらいに強くて綺麗な優しい人。誰もが憧れる、高町なのは。
「なのはママには好きな人がたくさんいるよね」
「うん、私の周りには素敵な人がいっぱいいるから。私は皆のことが好きだよ」
 さらりと凄いことを言いのけてしまうなのはにヴィヴィオは苦笑しながら、じゃあ、と表情を真剣なものに改めた。
「じゃあ、なのはママが一番好きな人は誰?」
「え、一番……? ううん、一番かあ」
 ヴィヴィオの問いに、何かものを考えるように首をかしげたが、俄かにヴィヴィオのことを真っ直ぐに見詰め、「ヴィヴィオだよ」と答えた。嬉しかった。でもその後に続く言葉がそれをかき消した。
「もちろんフェイトちゃんもヴィータちゃんも、はやてちゃんも大好きだけどね」
 前言を否定する言葉ではなかったが、ヴィヴィオはこっそりと落胆せざるを得なかった。実になのはらしい言葉だった。おそらく本心だろう。
 ――あれ、なんで私苛立っているんだろう。それもなのはママに。
 問いはしたが、ヴィヴィオにはその理由がもちろん分かっていた。
 ヴィヴィオは、自分がなのはにとって一番大切な存在であるということを嬉しく思っている。しかしそのことにはヴィヴィオは大して意味を感じなかった。そうではない。ヴィヴィオが望むのは、一番などではなかった。なのはにとっての一番ではなく、なのはが自分しか見えない状態こそが、ヴィヴィオの求めるものだったのである。
 でも――、それなら。
 浮かび上がった考えをヴィヴィオは慌てて打ち消した。そして幸せそうにビーフシチューを口にするなのはを見て、自分を取り戻す。
 そう、幸せなんだ、自分は。何も深いことを考える必要はない。ただ、この幸せを感じていれば、それでいい。それだけで穏やかな日常が崩れることはないのだから。
 ヴィヴィオが一人頷く。なのはは娘の行動の意味をつかめずに首を捻る。ヴィヴィオがそんな愛らしいなのはの頭を撫でる。逆だよ、と怒る母。なんて仲睦まじい母娘光景なんだろう。ヴィヴィオは再び頷き、残りのシチューをまとめて胃に流し込んだ。
「ごちそうさま、なのはママ。美味しかったよ」
 夕食後、談話の時間が訪れる。
 ただ今日は。あれだけ待ち望んでいた二人きりの時間が、少しだけ怖かった。




× あとがき ×
フェイトとヴィヴィオとなのは、という親子がどうしてもイメージできません。フェイトのことを考えると、またヴィヴィオとなのはを思うととても難しい。
なのはとヴィヴィオの間には何か特別なものがある気がする。またなのはが本当に、みんな同じくらい大切に思っているなかで、一つ抜けて愛しているのはヴィヴィオではないかとStrikerSを見た後でおもってしまったのも原因かもしれません。
でもハッピーエンドが想像できない、、なぜだろう。

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