2017-07

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君を失うには十分すぎる時間が経った

二代目拍手SS
ティアナ×なのはです。
よろしければ続きよりどうぞ。



 君を失うには十分すぎる時間が経った . . . ティアナ×なのは


 空を見上げているのは、いうなれば一つの自嘲にすぎない。
 自分がこれ以上傷つく為には、あの人を思い浮かべること以外にない。


 あれから数年が過ぎ去り、悲しみが消えてしまうくらいの時間はもう十分に経っていた。
 それなのに私は今だにあの人のことを好きでいる。
 しかし、それは考えてみると、とてもおかしいことだったのだ。

 その当時、私は痛みで歩けないほど、ぼろぼろになってしまっていた。
 私は心が弱かった。だから目の前に用意された逃げ道にすがりつくよう彼女から遠ざかることを選んだ。他のことは何一つとして考えられなかった。
 逃げてしまえば、働く部署の違う私と彼女が会う可能性など塵ほどもなくなった。あとは上司から、または噂で彼女のことを聞くぐらいのもの。その度に疼く小さな痛みをこらえてさえいれば、走ることはできなくても、歩くことはできた。
 逃げた当初、私は彼女を忘れるために酷く辛い思いをしたけれど、今思えば、私よりも彼女の方がよほど傷ついていたのかもしれない。そして私は後悔をすることになる。
 私となのはさんが会わなくなってしばらく時間経った後、久方ぶりに連絡をしてきたスバルから、堰を切ったように伝えられた。
「なのはさんが、なのはさんが幼馴染と結婚するために故郷に帰ったんだよ」
 その頃の自分は覇気がなかった。多分意味が理解できなかったんだろう。黙ったままでいると、しびれを切らしたように、スバルが続ける。
「知らなかったの、なんでティア……、なんで、あたし、ティアならいいと思っていたのに」
 勝手な言い草ね、とは後で考えたこと。
 だがその時のスバルは、落ち付いていたとはとても言えない口振りだったけれど、精神力は自分よりも強いんだろうと思った。あれほど慕っていたなのはさんと、もう簡単には、下手をすると二度と会えなくなるというのに、錯乱するほど取り乱してはいなかったのだから。弱かった私はただ、それを聞いても呆けるだけで、言葉が声にならなかったどころか言葉が浮かんですら来なかった。
 会わないとは決めていた。自分から告げた。
 だけれども近くになのはさんがいるというだけで、私はきっとどこか安心していたのだ。もしかしたらまた以前のように話せる時間が訪れるかもしれない、と。時間が経てば……。そんな風に考えていた。今思えば何と自分勝手な考えだったのだろう。

 ――疼痛がする。
 ずきずきと、脳が疼くように痛む。どれだけ時間が経とうとも、私は決してあの人のことを忘れることがない。忘れることができなくなってしまった。愚かしくも時間に頼ろうとしたせいで。
「なのはさん……」
 なあに、ティアナ――。
 もう彼女はそんな優しげな声で名前を呼んではくれない。彼女は、なのはさんは海鳴に帰郷した後、幼馴染だという女性と結婚してしまった。
 名前に聞き覚えはあった。確か一度だけ任務の時に会ったことがある。フェイト執務官よりも濃い金色の髪をした、綺麗な人だった。そういえばなのはさんと親しげに話していたんだったか。
 その頃はあまりなのはさんのことを気にしてはいなかったから、覚えていないけれど、確かその人の前では、あの人は少女のような微笑みを溢していたのだ。自分には決して向けてくれない、笑顔を。
 でも、私にだけ向けてくれる笑顔というものが確かにあった。私にしか見せてくれない表情や言葉もあった。愛してくれている、ということを感じ取れることは何度もあったのに、私は最後までなのはさんを信用することができなかった。
 日常茶飯事的に起こる他の人との親密な戯れに、私は醜い妬みを拭えないでいた。なのはさんが自分以外の人と、笑顔で談話しているというだけで、神経が焼き切れるような思いがしていたのだから、その時の自分はやはり狂っていたのかもしれない。
 第三者から見れば些細な出来事に嫉妬し、狂わされた私は、よくあの人をベッドに押しつけた。嫌だよ、と涙を流すなのはさんを無理やり……。だけど、なのはさんは最後にはいつも受け入れてくれた。涙ながらに、大丈夫だよ、って。ごめんね、悲しませちゃったんだね、ごめんね。そう言って抱き締めてくれた。謝らなければならなかったのは、自分だったのに。
 結局私は、自身の中で獰猛に暴れ狂う、子供じみた嫉妬に耐えきれずに逃げてしまったのだ。
 もう無理です、続けられない。
 そう言った時のなのはさんの表情を、静かに頷いた彼女の悲痛な姿を私は今でも忘れることが出来ない。
 あの時気付くべきだったのだ。本当に辛かったのは自分ではなく、なのはさんであると。

 私は間違えたんだろう。決定的な何かを。


 空を見上げている。まったく気持ちを汲み取ろうとしない、青く澄んだ空だ。
 空を見ていると、あの人を思い出す。だからよく空を見る。苦しいけれど、同時に繋がっている気がするのだ。錯覚に違いないとは理解している。それでも気分だけでもいい、繋がっていたいという気持ちが、視線を空に向けさせている。
 だけど会えないのに繋がっている気がする“だけ”なんて、あまりにも悲しいだろう。
 こんな天気のいい日に雨は降らない。だからもし、雨粒が頬を伝い顎から滴り落ちたとしても、拭うものも、遮るものもない。それにもし雨が降ると知っていたとして、やはり私は防ぐすべをもたない。
「なのはさん」
 傘はあの人が持って行ってしまったから。
 なのはさん――と。唇がいびつな形に歪む。これが自分の出来る最大限の自嘲であり、自傷。
 もちろんこんなことをしても、彼女は帰ってきてはくれないと知っている。最初に戻るけど、そもそも逃げたのは私の方で、“帰る”なんて言葉はおかしい。
 まったく、時間はいつになったら悲しみを感じないくらい忘れさせてくれるのだろう。あの人の笑顔も声も感触も、すべて砂の下に沈んでいくのは一体いつのことになるのか。
 考えて考えて、しかしその時はおそらく自分の命が費えるまで来ないことを、そのうちに私は悟る。砂に溺れていく想い出を引き上げているのは、やはり自分自身だったから。

 今日も空を見上げる。
 そしてまた、予報外れの雨を頬に受けている。




× あとがき ×
病むのを避けたくて逃げたら壊れた。そんなティアナ・ランスター。
なのはの逃げる相手がフェイトではなくアリサだった理由は解説にて。
この設定で書いた短編が『Don't shake off.』となっています。

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

届かなくなった水の底 «  | BLOG TOP |  » 廻るだけで、なにひとつとして新しいものなどないのだ

Web Clap

ご意見、ご感想などあればどうぞ。
  

Recent Entries

Categories

Novel List

― Short Story ―
アリサ×なのは
心が君の名前を呼んでいた
違えた道の端  前編 / 後編
すずか×なのは
無想と空想と、紋黄蝶
フェイト×なのは
No title...フェイトver
あなたを想って流した涙は
溶けた灰色の小石
白 -white-
穴の開いた箱
なのはへ。
ヴィータ×なのは
StarDust
21.5話妄想
No title...ヴィータver
大切な Trash Box
誰よりも君に笑ってほしくて
Reinforce
真紅のグラス
Limited Sky
強奪者
蒼い棘
薄氷の上で
摩擦熱
あやふやな星
語ろうとした震え
消えない夕立ち
青と白、それから赤
優しい境界線
はやて×なのは
Sky Tears  SIDE:H / SIDE:N
夜色の羽根
eyes on...
孤島の夢
なのは×リインフォースII
小さな涙
スバル×なのは
君は空しか知らない、僕は大地しか知らない
ティアナ×なのは
月明かりよりも頼りない
貴女の血の味すら
失われた部分と残された部分
命を吹き込まれた落葉
台所で。
求めるままの逃亡
涸れた土
ティアナの適当に幸せな一日
迷子へと示す道標  1 /  /
Don't shake off.
空さえ貴方の前を覆わない  前 /  /
窓を打つ雨みたいな恋
月が堕ちてきた
もっとも不誠実な恋人
世界の終わり
銀朱の残照
僕に重ねて、君は夢をみて
ヴィヴィオ×なのは
掌で心をころがして
擬似家族
小さな声で求めて
蜂蜜
硝子内のひめごと
レイジングハート×なのは
午睡
虚空の紅玉
その他
ヴィヴィなのフェイもどき
SHOUT!  前編 / 後編
猫と主と変質者。
なのはにチョコをプレゼントされたときの台詞
なの!!
雷の憂い

― Long Piece Novel ―
幸福の在処
目次
星たちの休日
 /  /  /
別の世界を願うなら
設定 / 目次 / あとがき
追憶の色に埋もれて
目次 / あとがき
秋、はらむ空
前書き / 目次 / 後書き

― Project Story ―
聖夜 ……目次
拍手SS
一代目 手を伸ばして
二代目 時間
二代目 光の章/夜の幻
描写する100のお題 ……目次
陽の中に塗りこめて。 ……目次
振り返る ……目次

About

魔法少女リリカルなのは二次創作物、主に小説を扱っています。
このブログ内で使用している文及び画像の転載は、例外なくご遠慮下さい。

◇小説の傾向
なのはが絡んでいる百合、修羅場が多め。
なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

◇リンクについて
リンクフリーですが、貼っていただく場合には下の本館にお願いします。
本館:

何かありましたらメールフォームよりどうぞ。
うまく送信されない場合は、下まで。
kana_nanoなのart.707.to(なの⇒@)



Profile

Author:秋庭加奈
リリカルなのはが大好き。
なのはさん溺愛。そしてゆかりさんにめろめろ。
詳しいプロフィールは本館のMYSELFに。

Pixiv

Monthly Archive

07  04  07  02  06  03  08  07  06  02  01  11  08  07  06  06  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09 

Link

その境界線は。(本館)

Search Area

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。