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2019-07

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過ぎゆく歳月は人を優しくする

二代目拍手SS
ヴィータ×なのはです。
よろしければ続きよりどうぞ。



 過ぎゆく歳月は人を優しくする . . . ヴィータ×なのは


 時間というものが優しいものだと感じる人は、恐らく過去に何らかの不幸なことがあったのかもしれない。もしくは忘れたい出来事があり、それが現在少しずつではあるが昇華されている為ではないかと思う。
 例えば過去に犯した罪が今も変わらず肩にのしかかっているとするならば、時間など解決にもならないと鼻で笑うことだろう。
 時間は優しく残酷である、と誰かが言った。前者と後者の比率を考え前者だというならば、その人は恐らく幸せであろう。――それでは後者は?
 それは問うまでもないことだった。他でもない、自分がそう感じているのだから。


 枯れた桜の木を見上げる。痩せた木は春を望むただそれだけを考えながら、木々の間に身を潜めている。春には人々の注目を一身に集める桜が、今は寂しげで。
 一人の見知らぬ少女がその桜を見上げていた。何か想い出でもあるのだろうか、髪を押え見上げている。あたしは気にとめることなく、桜のことを考える。
 何気なく通りを歩いていたのに、華やぐところのない桜に目をとめてしまったのは、もしかすると春は来ないかもしれないのに、信じて待つ姿に何かしら思うところがあるのかもしれない。春が来ないと、桜は誰にも気をとめてもらない。花をつけたとして長い間ちやほやとされるわけではなく、一年としてみればほんの一瞬なのに、彼らはそれでも春を待つ。
 哀しいな。お互いに。
 なのはのことを想い、あたしは独り灰色の空を仰ぎ見ながら一人ごちる。
 待っている時、時間はちっとも役に立たない。初めはよかった、希望があった。だがそのうちに気を紛らわすことさえ煩わしいものに、それから諦めが湧き上がる。諦めの頂点、一番高い所に到達すると楽になる。しかし寸前で、風船の中の空気あるいはヘリウムが気の抜けた音を立てて抜けていった。穴が開いていた。たぶん、自分の開けた。
 一つ風が吹いた。散らす花びらも葉もなかった木は細い枝を揺らすだけで、じっと何かに耐えている。
「ヴィータちゃーん、そろそろいいですー?」
 背中に声がかかった。リインが、その風に乗って現れたかのように、あたしには聞こえた。
「桜、ですか?」
「おう。ずっと昔、なのはとはやてが植えたやつが、まだ枯れずに残っているんだ」
「枯れて……いるように見えるですよ?」
「そっか」
 片足をひき、桜に背を向ける。
「お前にはそう見えるのか」
 そっけなく返事をする。リインが眉を下げて、どことなく悲しげに俯く。
 ああ、そういう意味じゃないんだ。
 頭を撫でてやり、あたしはそのままリインを通り過ぎた。
「ただこの桜は枯れてないんだ。今こうあるだけなんだよ」
 リインが辛そうに笑ったけれど、あたしはそれ以上の言葉を持っていなかった。

 はやてが逝き、あたしの周りにいるのは古くからの仲間、ヴォルケンリッターのみだ。皆は相変わらず管理局に勤め、今日もあたしは任務に赴く。本当ははやてがいなくなった時点で辞めてもよかったんだけど、ただなんとなく続けている。
 任務の隙間を見つけては、散歩をする。それは、想い出を掘り返すための放浪だった。
 なのはは早くに死んだ。本当に、早くに。呆れてものもいえないくらい、あっさりと逝きやがった。恨み事を、もう何度吐いたか分かりやしない。立派な墓石を、汚い涙で濡らしては、そのたびに自分で水をかけて掃除をした。馬鹿みたいなことを、何十年も繰り返し、そのうちにフェイトが、はやてが逝った。
 シグナムもシャマルもザフィーラも、リインだっていたけれど。あたしはやっぱり一人だった。
 なのはがいなくなって春が終わり夏が訪れた。楽しいことはこれからだったのに。落胆を隠せない自分を元気づけようとしてくれたのははやて。だけどなのはが居なくなった分を必死に補おうとしてくれたはやてさえもいなくなって、秋が駆け足で通り過ぎた。そして今は冬。桜は枯れている。
 あたしの生きていく道には、やっぱりあいつがいないと駄目なんだ。はやてがいなくなってから十数年の時間が経って、そう感じる。だからあたしは、探すことにした。……なのはを。
 人間は、人間である限り生まれ変わる、と言い伝えられている。あたしはそれを信じている。あたし達自身がそうであった。人間でも、生まれ変わるでもないけれど。悪意ある改変のなり果てだったけれど。それでも、希望があるならば信じたい。これ以上失うものなどないのだ。
 それにあたしは、なのはの死に際に誓った。
 鮮血に塗れたあいつの手を握りしめて、濁った瞳を必死にあたしに向けようとしてくれる、そんななのはに叫んだのだ。こんな風になっても泣きごと一つ言わないなのはに、あたしこそが泣きそうになって。
「お前を探してやる」
 悔しかった。
 弱い自分。護るなんて豪語しておきながら、ほら、あっさりと手が滑り落ちていくのを見ているだけ。
「お前がいなくなったって、例え何年も時を越えようと生まれ変わったお前を探し出してやる」
 震える声を無理矢理張り上げた。
「だから心配するな」
 暑い日。頬を滴が伝っている。なのはの前髪は、汗だか泥だか血だか。もう何かわからないもの濡れ、額に張り付いていた。
「あたしはお前の……、騎士なんだから」
「うん、ヴィータちゃん」
 うれしいよ。
 それから任務で異世界にいたフェイトが駆け付けて泣きじゃくり、はやてが背中から抱き締めてくれたんだったか。そのあたりの記憶は酷く曖昧模糊としていて――それから思考は現在に戻る。
 今はもう、その声すら虚ろな幻想の中に霞んでしまった。なのはの泣き顔も、砲撃を放つ時の嬉々とした表情も、あたしの胸を一番揺さぶった笑顔だってよく思い出せない。時間は無常に流れていく。確実に、桜の木を枯らしていく。
 永遠なんてない、とはなのはの言葉。それから変わっていかなきゃいけない、とも。
 ああ、だけど。だけどさ。一つだけ言わせてほしいことがる。
 変わらないものだってあるんだぞ。そう、なのはに言いたい。
 永遠ではないかもしれないけれど、少なくとも自分がこの世に存在している間は、変わらないことがあるんだ。変わってはならない部分がある、そして消えないものも。それだけは否定させない。
 そうだろう。それを否定したら、あたしは今すぐ命を絶ってしまわねばならない。
 その答えは目の前にあった。
 ――枯れた桜の木の前で、片側に結った長い髪を押えながら立つ少女。
 風が彼女の栗色の髪を梳いていく。綺麗に、なびいていく。
 ……なあ、なのは。
 今気付いたよ。なんだよ、声でもかけてくれればよかったのに。
 でも仕方ないよな、きっとお前は、あたしのことを何一つ覚えてないんだろう。名前もたぶん“なのは”なんて名前じゃないかもしれない。
「はじめまして」
 親密な微笑みは、それなのにどこかなのはを思わせて。
「ああ、はじめまして」
 あたしにとって、目の前の少女はまぎれもなく、ずっと探していたなのはだと分かった。分かるんだ。姿形がちがったところで、あいつはやっぱりなのはなんだ。
「悲しいことでもあった?」
「いや、嬉しいことならあった」
「そう、じゃあその涙は、いい涙なんだね、きっと」
「ああ」
「どうしてかな」
「ん?」
「初対面だっていうのに、なんだか頭を撫でたくなっちゃった。でも泣いている子供をあやしたいとかそういうんじゃなくて、何だろう、よくわからないけれど」
「いいよ」
「えっ」
「頭を撫でてもさ、いいんだ」
「うん」
「それとさ、子供じゃないからな」
 ふふ、ごめんね。と笑いを溢して、彼女はあたしの頭を撫でる。優しく丁寧に、あいつみたいに。次々と何かの雫が頬を伝った。俯くと、寒そうな丸裸の地面に次々と沁みていった。点々と落ちていく。止まらない。
 それは自分のものだけではなく、気付けば頭を撫でている彼女のものも交じっていて。視界は歪み、よく見えなかったけれど、確かに彼女は涙を流していた。
「哀しいことがあったのか?」
「ううん、わからないけど、きっとこれはね」
 なのはの泣き顔も、砲撃を放つ時の嬉々とした表情も、あたしの胸を一番揺さぶった笑顔だってよく思い出せない。だけれども頭を撫でる手の感触は、ずっと今でも覚えていたのだ。
 ほら、変わらないもの、消えないものは、ここにある。
「嬉しい涙だよ」
 枯れてしまった桜が細い枝を揺らす。その細い枝に、冬を越えた先で待つ春に咲かせる為の力を蓄えている。どくんと呼吸している。今枯れたように見えたとしても。
 風が運んでくる涙は、時間と共に消えていくのだろう。ただ消えてしまう前に、涙を拭うことができる位置に、今あたしはいる。だから少し背伸びをして、腕を伸ばして。おかしな顔をする彼女の目の畔に沿って、指で拭ってやる。
 問題は机の上に積み上げられた書類ほどに多くある。なぜなら彼女はなのはという名前ではないし、覚えているのは自分だけなのだから。だが、永遠なんてものはない、と他ならぬ彼女が言っていたのだ。
 時間はまだある。たっぷりと。




× あとがき ×
寿命の違い、死への道のりの違い。それは避けることのできないことです。
なのはを失った時のヴィータの心象は想い余る。
生まれ変わりが、もしもあるなら。ヴィータはきっと待ち続ける。

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