2017-09

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描写する100のお題 001:雪

描写する100のお題に挑戦中。
目次、またはお題について詳しくは上のリンクから。

なのはさんの話。
これが幸せな話かそうでないかは読者におまかせ。

それでは続きより。



 001:雪


 真夏に降る雪はシロップのように甘い。絶対に溶けない自信のようなものを持ち合わせている。真夏の雪を口に含むと、意外なほど冷たくて驚いた。
 雪は汚いと誰かが言う。空気に含まれる埃や汚染物質が固められているのだと。それは白く純真に見せているからなおさら汚らしい。
 誰が言ったんだろう?
 金色の髪の儚い少女だった気がする。素直じゃないが優しい心をもった少女のような気もする。猫が好きで、海面をたゆたう波のごとき穏やかな幼馴染だったかもしれない。
 誰だったか、彼女はもう覚えてはいない。言葉だけが生命の終わりの淵にいても蘇った。
 雪は考え事をするには最適だから。
 雪はやっぱり綺麗だ、と高町なのはは思う。
 なのはには、自分こそ汚く見えた。今、雪を溶かすこの舌が、幾人の少女の体を這っただろう。なのはは求められるままに動いた。愛の言葉を求めれば熱い視線とともに吐いた。体を求められれば全力で応じた。
 まるで彼女は雪の上に寝転がっている。
 汗をかきながら、寒気を感じている。
「――、ちゃ」
 声にならない声が口から雪を吐き出した。溶けて水になった雪は、本当に自らの唾液よりも汚いのか。
 彼女は世界を想う。海鳴を想う。家族を想う。親友と、親友であった人と。それから教え子と教え子であった人を想う。
「みんな――」
 はたして、自分はいい子でいられただろうか、と。

 この世界には、残念ながらなのはを救える人はいなかった。
 誰も彼女の傷の深さに気付かなかった。

 だからというわけでもなく。
 彼女は次の世界に期待して雪の上に寝転がった。自分に空を飛ぶ翼があるとするなら、それは背中に生えているのだと信じていた頃、そこから体が凍っていけば神経もやがて凍結してくれると考えた。
 だがそんなことはなかった。
 凍結してくれたのは、すでにぼろぼろの彼女の心だけ。羽をもがれた天使さえ目をそらすような傷にまみれた背中から、すべての神経を殺した。それだけである。
 なのははどこにも行かず、帰らない。叫ぶことも泣く事もなく、今は唇は無用の存在。
 ただ、雪の上に寝そべっている。
 彼女は、彼女の中に残っている気力を集めて、たったそれだけのことをした。
 雪の中に埋もれる赤い宝石だけが、彼女の終わりに寄り添って。

 やがて守り切った世界から意識を閉ざした彼女を迎えに来た人がいる。
 親友がいた。教え子がいた。
 皆は今更ながらに叫び、泣いた。彼女の分まで声を上げ、彼女のために泣いた。

 真夏の暑い日。
 雪など降りようもない世界の果てで一人の少女が眠る。
 誰が忘れても、彼女の記憶の中の雪はこの日を忘れない。




[ WEB CLAP ]
なのはさんは孤独。孤立ではなく孤独。
でも孤独はそう悪いものではないと思う。自分だけかもしれないけど。

● COMMENT FORM ●

普通に考えれば、雪=血なんだろうけど、雪は悲しみ・孤独・絶望、、、なんでも合うような気がしますね。
終わりにそれらをすべて吐き出した、と。
彼女の救いの手は死だけだったのかもしれない。
それでも自分は彼女が不幸だったとは思えない。なのはは、みんなが好きでそれを貫けたんだから。

>北海人さん
雪は本当にいろんなものに置き換えられますよね。
この話では特にこれときめていたわけではないので、読んでくれた方が好きなように解釈していただけたらと思います。
死が救いになったなのはさんだけど、でも救いになっただけ、ほんの少し幸せなんじゃないかと自分は思っています。
死さえ選べないことだってあるんです。
なのはは本当にまっすぐで、決めたら貫き通す人だなと改めて考えてしまいました。


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About

魔法少女リリカルなのは二次創作物、主に小説を扱っています。
このブログ内で使用している文及び画像の転載は、例外なくご遠慮下さい。

◇小説の傾向
なのはが絡んでいる百合、修羅場が多め。
なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

◇リンクについて
リンクフリーですが、貼っていただく場合には下の本館にお願いします。
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何かありましたら下まで。
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Author:秋庭加奈
リリカルなのはが大好き。
なのはさん溺愛。そしてゆかりさんにめろめろ。
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