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2019-11

描写する100のお題 003:白

描写する100のお題に挑戦中。
目次、またはお題について詳しくは上のリンクから。

スバルとティアナの話。スバル視点ぽい三人称。
ティアナはやっぱりなのはさんで悩んでます。

それでは続きよりどぞ。



 003:白


 白は色だ。
 純粋で清く澄んだ白でも薄汚れた灰のような白でも、それは白であり色だ。
 色ではない色というのは、目に見えない。だから色ではない色を私たちは感じることができない。おそらくはそうだ。そもそんなことを普通に生きていれば考えはしない。
 ただ彼女――スバル――は考えてしまった。普通に生きていたはずの彼女は、色について考えを巡らす。あの人に出会う前はなんでもない色だったのに。

 白というのは、人を狂わせる色でもあった。長時間見つめれば、人の神経などは容易に崩壊するものだ。
 今、彼女は白というと真っ先に一人を思い浮かべる。その人は彼女の上司であり教導官だ。名前は高町なのは。
 高潔な色としても浮かべるのはそのせいでもある。
 なのはは彼女にとって気高い。上っても登っても先の見えない階段を上がりきった先に、それでもまだ雲を飛び越えて空に上がらなければたどり着けない存在である。
 彼女は最近考える。親友のこと。盲目的になのはへと堕ちていく親友のことが彼女には気にかかる。三年ちかくパートナーを務めたその人は、決して自分のことを親友と認めないが、信頼してくれてはいる。その彼女が最近見つめているのはなのはだった。
『高町教導官は美しい。凛々しく、それは勇敢な戦士のようだ。あれほど優れた魔導師もなかなかいないだろうな』
 局の廊下を通りがかったとき、彼女はそんな褒め言葉を耳にした。彼女の隣にいた親友、ティアナは複雑な顔をする。どうしてだろう。自分達の尊敬する隊長、そして教官がほめられているのだ。嬉しくないはずがない。いや、嬉しいはずだ。
 彼女は問おうとし、しかしとどまった。
 なのはとは別種の美麗さをもった横顔が、呟いた局員の背中を睨んでいたからだ。
「ティア?」
 彼女は親友の腕を引っぱる。
「……ティア、どしたの?」
 引きよせたのだから、何か言わなければならない。
 彼女は恐る恐る尋ねてみた。
 ティアナは引き攣ったままの顔で不機嫌さを隠さず、彼女を振り返る。
「なによ」
 親友は知らない顔をしていた。
 不機嫌なのはいつものことだった。でも今回彼女は何もしておらず、さっきの言葉だって褒めるものだった。なのにどうして?
 彼女にはわからなかった。それもそのはず、ティアナ自身にもわかっていなかったのだ。
「さっきの人、なのはさんのこと褒めてくれてたよ。どうしてそんな顔」
「そんな顔って」
「ふくれっつら……?」
 そこでティアナは、自分がいま初めて表情を歪めていることに気付いたようだった。
 ティアナは立ち止まり、盛大な溜息を吐き出す。怒気も一緒に吐き出しているようで、何度か繰り返すと首を振った。彼女は不安げにティアナを見ている。疑問が、不安が湧き上がる。
「大丈夫?」
「別に。ただなんとなく嫌になっただけよ」
「なのはさんが褒められることが?」
「それもある」
「よくわかんないな、それ。でも、じゃああとは……」
「あーもうほら時間よ。立ち止まってる時間が惜しいし、さっさと行きましょ」
 書類を腕に抱えたまま小走りに駆けていくティアナの後ろを、彼女は慌てて追いかける。それ以上は聞けなかった。時間も機会もなかったし、何より怒ったティアナの顔がほんの少しだけ悲しみに彩られていたから。踏み込んではいけない場所なのだ、と彼女は直感的に理解した。
 ふくれっつら、とさっき彼女は表現した。だが咄嗟ににそんな言葉しか出てこなかっただけで、感じ取ったものとは違っていた。
 なんというのだろう、あれは――。
 彼女は思案を重ねる。
 そう――あれは、白。
 蒼白な顔をして、怒りさえ滲ませて。もしかしたら瞳の奥に、見えぬ涙が流れていたのかもしれない。彼女にはわからないことが多すぎる。
 だが親友はたしかに怒っていた。彼女には聞こえなかった局員の言葉を聞いて、そして。
「おまえは見たかよ、高町教導官さ。格好良いよなあ。ああいう人を恋人にできたら死んでもいいよ」
「戦場であの人を護って、か?」
「ああ。まああの人のほうが強いだろうけどな。やっぱ憧れるぜ」
「でもさ、あの人付き合ってる人がいるんだろ。あの人を護るって人もな、いるぞ」
「げ、そうなのか。誰だよそいつ。俺ちょっと行って宣戦布告してくる」
「お前本気なの? 無理だと思うぞ、その方達は強いしなのはさんと力は拮抗してるっていうし。お前は否定するかもしれないが、高町教導官に引けを取らないくらい容姿も整っているからな。さらに」
「まだあるのかよ」
「さっき言っただろ、あの人を護ってるって。つまり騎士だ、それも恰好だけじゃなく実力の伴うな。片方は正真正銘の騎士だが、これを体の騎士としよう。そうするともう片方は……まあなんだ、恋敵になりそうな相手は徹底的に排除する心の騎士というか。黒焦げになったやつもいるらしいな。蘇生はできたらしいが、それ以前にただの噂だろう」
「ああ、まさかだろ。そんなことをすれば罰則を受けないはずはないって」
「だが噂は抑止力にはなる。そういうわけで、普通の人なら割り込むどころか、あの人に近づくのさえ困難ってわけさ。何の下心もなければ大丈夫なんだけど、少しでもそういう気持ちがあるならその人はすぐに見破るだろうな。高町教導官にかけては鋭い方達だから。幼馴染の親友さえ遠慮するくらいだとも聞くし」
「……なあ、わかってきたよ。それもしかしてヴィータ三尉と」
「ああ、ハラオ――」

『ティア、どうしたの?』

 救いのように彼女の声が親友の耳に入り込む。でも、少し遅かった。
 それはティアナだけに聞こえたティアナを傷つける会話。彼女だって聞こえていれば傷ついたかもしれない、でもティアナはすでになのはのところに堕ちていた。
 どうして分からなかったのだろう。どうしてティアナだけが聞こえたのだろう。
 それは、意識が選り分けたからだ。
 彼女が会話を聞いていたからと言って、落胆こそしてもティアナのような蒼白な顔にはならないだろう。
 そんなティアナのことが、だから心配だった。だから気にかけていた。

 彼女は親友が寝静まった後、二段ベッドを下りて顔を覗き込む。今は穏やかに呼吸している。呼吸だけは穏やかだ。表情に反して。
 ――そんな顔をしないで。
 ――苦しいのは、ティアだけじゃないよ。でもティアのほうが苦しそうだよね。何倍も何倍も苦しそうだ。
 彼女は、眠りながらもシワをきざむティアナの眉間を指でなぞる。
 かなわない恋に喘ぎ、それでもやめない親友をいたわろうとする。だがティアナは彼女の手を拒んだ。眠りながら払いのけ、布団を頭からかぶる。彼女は緩く奥歯を噛んだ。……ティアナはわかっているのだ。彼女が、なのはを憧れでなく想っていることを。
 でもいくら親友を想う彼女でも、好きだという気持ちを簡単に消すことなどできはしない。握りつぶしたくなるほど、憎らしい心。
 ――ねえ、あたし、あの人のことは好きだけど、ティアのことも大切なんだよ。
 ――だから、最後には頼ってくれるよね?
 望みの薄い期待にしか、彼女はすがるものがない。
 食事のときの幸せそうななのはの顔を見ては、慰める方法が一つずつ消えていった昼間。自分はいいが、この親友だけは明るいままでいてほしいのだ。彼女は心から願っていた。
 憧れと尊敬と僅かな恋心を思い出す白を見て、せめて泣きたくはないから。




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事実は、直接聞くより人づてに聞いたほうが辛いこともある。

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