FC2ブログ

2019-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

描写する100のお題 004:妹

描写する100のお題に挑戦中。
目次、またはお題について詳しくは上のリンクから。

はやて一人称で語られるリインやヴィータやシグナムやシャマルやザフィーラ。
どんな寒い日にでも暖かな空気を保っている家族――それが八神家。
でも八神家の話なのに、ちょくちょくなのはのことが出てくるのは仕方ないですよね。

よろしければ続きよりどうぞ。



 004:妹


 何度目かに巡ってきた冬の、ある晴れた日の午後だった。
 天気のいい昼間にも関わらず、我が家の末っ子は姿勢悪くソファーに寝そべっている。初めは純白にくるまれた殻の中から顔を出したばかりのようにだったのに、今では甘えと我が侭を覚えた少女はリインフォースツヴァイ。ただいまぐーたらしている。こんな晴れた日には外で遊んできたらと思うものの、姉と引きはがすのも悪いのだが、さてどうやって説こうか。考えつつも私はついこの子はかわいいなあと見守ってしまっていた。
 シグナムは今日もテスタロッサと訓練だ、なんて嬉しそうに口元を綻ばせ――これは家族にしかわからない程かすかな表情筋の移動ではあるがとにかく嬉しそうな顔をして――外へ出て行ったし、シャマルはなのはちゃんの母、高町桃子さんにお菓子づくりを習うとかで昼食を済ませると出かけた。なのはちゃんも家にいるようだから心配はないが、それでも迷惑はかけないだろうかと気になる。私は奇跡を信じ、改めて家の中を見回した。
 二人がいなくなったところで実質騒いでいるのは末っ子とその姉なので賑やかなことに変わりはない。しかし今、その姉妹は大人しくしていた。一人は本を大きく開き、もう一人は瞑想にふけっている。
 ふと足元にザフィーラが来ていた。ちょうど寂しさを感じていたところだったので私は彼の頭を撫でてやる。それから私はザフィーラと一緒に少女たちを眺めることにした。
 我が家の末っ子、リインは小さな体躯をいっぱいに伸ばし腹這いになって本を読んでいるところだった。小さいといっても少女は今フルサイズでおりそれは何年か前の私くらいの大きさで、その頃私が着ていた服を身につけていた。白い長袖のパーカーに、冬の陽だまりがふりそそぐ銀混じりの蒼髪がかかっている。身じろぎするたびに少女のまっすぐな髪はさらさらとこぼれ、さながら穏やかな川の水面を眺めているようだった。
 少女の隣にはもう一人娘がいた。紅い髪の少女はヴィータである。彼女は腕を組み、じっと目を閉じて意識の中にもぐっている。日課のイメージトレーニングらしかった。
 少女と彼女は二人仲良く座っていた。そう、本当に仲良く。
「なあリイン」
「どうしました、ヴィータちゃん」
「いやな、どうしてわざわざあたしの上をまたいで本を読んでいるのかと」
 そうなのだ、リインはヴィータの膝の上にうつ伏せになって寝転んでいる。その体勢は苦しいんじゃないかと思うのだが、リインはヴィータの言わんとすることが理解できないようだった。ヴィータも重いわけじゃなく、ただ単純な疑問をぶつけているにすぎないのだろう。
 腕組みをしたヴィータに、リインははっきりと答えた。
「それはですね、気持ちいいからですよ」
「はあ?」
「ヴィータちゃんのちっちゃい膝はあたたかいのです」
「いやちっちゃいってさ、ほとんど変わらないよな」
「細かいことは気にしないでくださいです」
「それはいいんだが、苦しいだろ。せめて腹じゃなく頭を乗っけたらどうだ」
「え……、いいんです? 邪魔になったりとか」
「そんな体勢でいられるよりはよほどいい」
 途端リインの頬が笑みでいっぱいになった。まってましたと言わんばかりに勢いよく体を起こし、膝に頭を乗せてごろごろと枕の感触を確かめる。
「ヴィータちゃん、だいすきです」
「……なんか最近なのはみたいなことを言うな。いくら良くしてもらってるからって感化されすぎだ」
「えへへ~、それなら嬉しいですよ」
「かんべんしてくれ」
 リインは暇があればなのはちゃんに遊んでもらっている。魔法についても少しだが教わっているようで、それをもちろんヴィータは知っていた。リインはなのはちゃんのことをかなり慕っているから自然、似てきてもおかしくはなかった。
「でもこの膝枕はほんとうに気持ちいいですよー」
「あたしはもしかしてうまいこと乗せられたのかね」
「あははっ、誰がうまいことを言えと言ったーですよ」
「笑ってんじゃねえか」
「だって嬉しいし楽しいです」
 えへへ、と腰に抱きつくリインにヴィータは頭痛がするようで、しかし払いのけることはしなかった。なんだかんだで甘えてくる妹が可愛いらしいというのはヴィータを観察していればよくわかった。
 膝の上にリインの後頭部がぴったりと合う場所を見つけたらしく、少女はそこでまた絵本を開いた。ヴィータは目を閉じてイメージトレーニングを再開する。緩やかな午後が晴れの日の雲のように流れていった。足元のザフィーラはいつの間にか眠り込んでいる。無理もない、幸せで暖かな午後というのはとても眠くなるのだ。

 日が落ちる一刻前になると、シグナムとシャマルが戻ってきた。二人とも手に土産物を下げていた。初めて会ったときより格段に表情豊かになった彼女たちは、夕食の後各々午後からあったことを話してくれた。
「テスタロッサが腕を上げていてな、やはりあいつの太刀筋は澄んでいる。それに遣り合っていて楽しいものがある」
「二人とも限度をわきまえとるしなあ。なのはちゃんとはどっちかが戦闘不能になるまで続くから」
「それでテスタロッサに泣きつかれて中止になったりな。気付かぬ間に訓練が真剣勝負に代わっているんだ。テスタロッサとも真剣という意味では同じだが、訓練という目的を忘れることはないからな。しかしなのはとは何故か血戦になる。おかげであまり付き合ってはくれなくなったが、あれも楽しい時間だった」
 それからシャマルが「我らの将として負けないようにね」と笑ったあと、シグナムの苦い顔を無視して今度は彼女が話し始めた。お菓子作りの講師にはなのはちゃんも加わってくれ、エプロン姿の彼女はとても可愛らしかったと言った。フェイトちゃんがいたら鼻血を出していたわねきっと。
「で、これが今日作ったクッキーなのよ」とごそごそと皿を片した後のテーブルに乗せた。私たちはそろって白や黒のクッキーをつまんでいく。……これは。
 驚いた私が何か言葉にする前に、シグナムが意地悪い目をして「それでお前はもちろん迷惑をかけたんだろうな?」と笑いを噛み殺しながら言った。
「ちゃんとお菓子はおいしくできました。そりゃあちょっと台所を汚しちゃったり失敗もあったけど、みなさん笑ってくれてたもん。お菓子はどうにかおいしく作れたし、ほらほら」
「ああ、そうだな。本当になのはは優しいな」とシグナムは苦い顔でぽりぽりとクッキーを齧る。「まったくどうしたらこんなに焦げるんだろうな」
「ちょ、ちょっと合間に入れてくれたお茶がおいしくて忘れただけで私はちゃんとしたし。それに焦げてない部分だってあるわ。これとかどう?」
「まあ。だがココアも入れてないのにこんなに黒いクッキーでは食べる気も失せてくる」
「……シグナム、あんまりよ」
 本格的にシャマルが落ち込んでしまった。だが私は、シグナムが文句をいいつつもクッキーを食べていたことに気付いていた。溜息を吐きだすと、シグナムはぞんざいな口ぶりで「しかし食べれないことはないがな」と付け加えた。夕食を食べ終えたばかりで決して空腹ではないのに、シグナムは休まずクッキーを口に運んでいた。
「味の方はちゃんと美味しく作れているぞ」
「たしかにあのシャマルがと考えると、ちょっと異常なくらいだしな」とヴィータも言った。私ももちろん同意する。シャマルの声が高く、嬉しげに跳ねた。今日も私たちは笑顔で一日を終わろうとしていた。
 どこにでも転がる一日が自分には愛しい。
 おそらくはどこよりも幸せなこの家族がこれからも一緒にありつづけるよう、冬を通りすがる一陣の風に願った。瞼まで閉じてしまったのは、小枝を揺らす風があの子に見えたからだ。
 賑やかな食卓が今日もあった。にこにことシャマルの作ってくれたクッキーを食べながら、優しいシグナムの珍しい笑い声を聞く。リインとヴィータがなのはちゃんについて優しいとか意地悪だとか口論しているのをザフィーラが諌めていて、私はその光景を眺めていた。
 二度と失われてはいけないこの空間が、私にはどんなものよりも愛しく思われる。
「さあもう遅い時間や。みんな、そろそろお風呂入ろうな」




[ WEB CLAP ]
八神家は本当に素敵な家族です。ザフィーラは無口なので出番が少ないけど、主をさり気無く気遣い寂しくないようにしている。そんなザフィが大好き。
どんな寒い日にでも温かい、それがこの家族だと思う。

● COMMENT FORM ●

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

>コメントくれた方
ほのぼのというのはとても難しいジャンルと思います。いや、自分にとってではあるんですが、起伏というものが少なく、ドラマがない。誰かが「不幸はそれぞれにちがうが、幸せの形はみなにている」といっていました。
けれど八神家はすでにドラマを乗り越えたあと。そのあとに訪れるのは平穏と、幸福であってほしい。形が似ていてもいい、ただほのぼのとした幸せな生活を送ってほしいと思いました。だからこそ書いたんですが、ちと難しかったです。描写ちゃんとできていたならうれしいです。
ヴィータの精神年齢はヴォルケンの中で一番なんじゃないかなと。シグナムはなんだかんだで突撃型だし、頭脳派かなと。そのギャップがたまらんのですがw
はやてはお母さん。みんなの。それが八神家。
八神家はいい家族、それにつきます!


管理者にだけ表示を許可する

あれっすね «  | BLOG TOP |  » StrikerSサウンドステージX

Web Clap

ご意見、ご感想などあればどうぞ。
  

Recent Entries

Categories

Novel List

― Short Story ―
アリサ×なのは
心が君の名前を呼んでいた
違えた道の端  前編 / 後編
すずか×なのは
無想と空想と、紋黄蝶
フェイト×なのは
No title...フェイトver
あなたを想って流した涙は
溶けた灰色の小石
白 -white-
穴の開いた箱
なのはへ。
ヴィータ×なのは
StarDust
21.5話妄想
No title...ヴィータver
大切な Trash Box
誰よりも君に笑ってほしくて
Reinforce
真紅のグラス
Limited Sky
強奪者
蒼い棘
薄氷の上で
摩擦熱
あやふやな星
語ろうとした震え
消えない夕立ち
青と白、それから赤
優しい境界線
はやて×なのは
Sky Tears  SIDE:H / SIDE:N
夜色の羽根
eyes on...
孤島の夢
なのは×リインフォースII
小さな涙
スバル×なのは
君は空しか知らない、僕は大地しか知らない
ティアナ×なのは
月明かりよりも頼りない
貴女の血の味すら
失われた部分と残された部分
命を吹き込まれた落葉
台所で。
求めるままの逃亡
涸れた土
ティアナの適当に幸せな一日
迷子へと示す道標  1 /  /
Don't shake off.
空さえ貴方の前を覆わない  前 /  /
窓を打つ雨みたいな恋
月が堕ちてきた
もっとも不誠実な恋人
世界の終わり
銀朱の残照
僕に重ねて、君は夢をみて
ヴィヴィオ×なのは
掌で心をころがして
擬似家族
小さな声で求めて
蜂蜜
硝子内のひめごと
レイジングハート×なのは
午睡
虚空の紅玉
その他
ヴィヴィなのフェイもどき
SHOUT!  前編 / 後編
猫と主と変質者。
なのはにチョコをプレゼントされたときの台詞
なの!!
雷の憂い

― Long Piece Novel ―
幸福の在処
目次
星たちの休日
 /  /  /
別の世界を願うなら
設定 / 目次 / あとがき
追憶の色に埋もれて
目次 / あとがき
秋、はらむ空
前書き / 目次 / 後書き

― Project Story ―
聖夜 ……目次
拍手SS
一代目 手を伸ばして
二代目 時間
二代目 光の章/夜の幻
描写する100のお題 ……目次
陽の中に塗りこめて。 ……目次
振り返る ……目次

About

魔法少女リリカルなのは二次創作物、主に小説を扱っています。
このブログ内で使用している文及び画像の転載は、例外なくご遠慮下さい。

◇小説の傾向
なのはが絡んでいる百合、修羅場が多め。
なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

◇リンクについて
リンクフリーですが、貼っていただく場合には下の本館にお願いします。
本館:

何かありましたら下まで。
kone6.nanoなのgmail.com(なの⇒@)



Profile

Author:こねろく
リリカルなのはが大好き。
なのはさん溺愛。そしてゆかりさんにめろめろ。
詳しいプロフィールは本館のMYSELFに。

Pixivtwitter

Monthly Archive

11  09  05  04  03  02  01  08  07  04  07  02  06  03  08  07  06  02  01  11  08  07  06  06  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09 

Link

その境界線は。(本館)

Search Area

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。