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2019-10

描写する100のお題 005:双子

描写する100のお題に挑戦中。
目次、またはお題について詳しくは上のリンクから。

StrikerSサウンドステージX視聴推薦。
というかSSXのネタばれありで、きいてないとわからない話です。すみません。
イクスがでてきます。ヴィヴィオも。
そしてさりげなくヴィヴィなのを混ぜてやった。もちろん反省はしていない。

それではよろしければ続きよりどうぞ。



 005:双子


 灰色の空に不毛の大地が広がる、たったそれだけの風景がこれまで少女の中に存在していた世界だった。だが今はどうだ、雲ひとつない済んだ空を見上げている。頭上は不自然なほどに青い晴天。
 そしてイクスの心はこの空よりも晴れていた。
 今回の眠りの前に見た世界はどこまでも広がる蒼穹と、同じくらいの青に輝く海原、そして緑の若い草たちだった。その上に少女が最も落ち着けるスバルの膝があり、そこでいつもよりもずっと穏やかな眠りについた。何年後かもわからぬ眠りに――。
 再び目覚めたとき、どれくらい眠っていたのだろうと思った。しかし判るはずもなく、少女は状況判断のためにまず部屋を出て行った。しばらく放浪していると局員たちが驚いて駆けつけてくる。イクスは所在に困る。が、しばらくして小さな背の女性が頭を少女の頭を撫でて言った。
「じっとしていてね、もうじきスバルがやってくるから。スバルのことは覚えてる?」
 少女はもちろん覚えていた。どうやらスバルがまだ生きる時代に目を覚ますことができたようだった。
 やがて女性の言う通りにスバルが現れて少女のことを抱き締めた。身が壊れるほどのきつい抱擁に、少女は「スバル」と呻く。「少し痛いです」
 言いながらもスバルを見た瞬間に仄かな喜びが胸に生まれていた。最後に見た陽だまりの色をした喜びだった。
 スバルは慌てて腕の力を弛めた。目のほとりに浮かぶ涙を、少女はそっと拭う。
「おはようございます、スバル」
「おはようイクス。あのね、良い知らせがあるんだ。すぐそこにヴィヴィオが来ているんですよ」
「陛下……いえ、ヴィヴィオが?」
「はい」
 言うのが早かったか、扉が作動する音とともに、「イクス!」と呼ぶ声が背中から聞こえた。記憶のものより若干大人びてはいたが、それはヴィヴィオだった。何年眠っていたんだろう。少女は未だ涙をこぼしているスバルに尋ねる。
 三年、とスバルは答えた。三年、とイクスは繰り返す。
「随分と早い目覚めだったのですね」
「……ずっと待ってたよ」
 スバルが少女を再び胸に寄せる。温かい涙が肩に落ちた。少女はヴィヴィオを見て、それからスバルの頭を撫でることにした。待ってくれた人がいる幸福に戸惑いながらも、気持ちを溢さぬよう必死に噛みしめつつ少女は立ちつくす。スバルの嗚咽はいかにも心地よく、ヴィヴィオの微笑は穏やかに少女の胸に降り注がれた。

 少女はそれからヴィヴィオに連れられて歩いた。スバルは仕事を抜け出してきていたらしく戻ったが、また今晩にでもそちらに行くと告げて戻ったのである。
 二人はヴィヴィオの家に向かっていた。
 夕間暮れの道を歩きながら、ヴィヴィオは飽くことなく少女に話しかけた。
「覚えてる? 今度会ったら私の家にいこうって」
 眠る前、通信でヴィヴィオと交わした会話を思い返してみる。確かに言っていた。ヴィヴィオが『なのは』という言葉を度々口にしていたことも。あの時ヴィヴィオは「イクス、うちの子になりませんか」と言った。「なのはママのこと、それまでには説得しておくから」
 ヴィヴィオはこの三年の間になのはを毎日説いていたのだった。なのははヴィヴィオ以外を子供にするつもりはなかった。なのはにとって護れるのはヴィヴィオひとりで、もしかしたらそれすら危ういかもしれないと考えていた。手に余るとまではいわないが、護れもしないのに無責任に子供を引き取ることはなのはには出来ない。フェイトのように、引き取った皆を幸せにする自信もない。ヴィヴィオはそう頑なに言うなのはを、繰り返し説得し、ついには納得させてしまった。
「でもイクスとちゃんと会って、それでも私でいいって言ってくれたらだよ」
「大丈夫、なのはママと会って嫌だなんて言う人がいたらそれこそ見てみたい」
「その理屈は一体なんなんだろう」
「とにかくきっと頷くから安心して! それにイクスは絶対なのはママの負担にはならないよ。何かあったら私がちゃんとイクスのこと護るから。もちろんなのはママのこともね」
「負担とは思わないけど。ってあれ、もしかして私の方が子供なの?」
 なのはは渋い顔をした。反してヴィヴィオは満面の笑みをその頬に浮かべて言った。
「ヴィヴィオが全力全開でお守りしますよ? なのはママ」
 そんなやりとりが高町家で交わされたことを当然イクスは知らない。ただヴィヴィオは少女に平気とだけ告げて、向かっていた。きっとなのはに会えば大丈夫だという確信がヴィヴィオにはあったのだ。
「それにしても凄い偶然。いつも忙しいママが今日はおやすみなんだ。もしかしたら何かの運命が働いているのかもね」
「なのは、でしたか」
「そうだよ、私の大好きななのはママ。あ、でもこれは言っちゃだめだからね」
「どうして?」
「……面と向かっていうのは恥ずかしくて」
 イクスはつい小さな笑いをこぼした。ヴィヴィオはぷくうと頬を膨らませる。すみません、と少女が言った。
「っていうかイクスー、なんでまた敬語に戻ってるの?」
「ごめんなさい。癖のようなもので」
「ううん、謝らなくていいよ。よければだけどこれからは、少しずつでいいから普通に接してほしいんだ。私もイクスのこと、王じゃなくて普通の女の子として接するから。いいかな?」
「はい、ヴィヴィオ、これからよろしくね」
「あい。んじゃもう日も暮れるし急ごうか」
 赤い空はいつの間にか紫に、そして徐々に上から暗闇が下りてきていた。二人は足早に急ぐ。
 そして少女は高町家の扉をくぐり抜け、母となる人に会った。
 なのはにいらっしゃい、と柔らかに微笑まれる。スバルともヴィヴィオとも違う柔和な微笑みに、少女は知らず胸をときめかせる。ちょうど食事の支度ができたところで、少女はヴィヴィオとなのはとの三人で夕食を共にした。今夜一晩のこと、明日からは検査でしばらく局に通うようになるということ、イクスの心が決まるまでこの家に泊まらないかという提案などが話題に上った。
 ヴィヴィオがはしゃぎ疲れて眠ってしまってから、少女はテーブルを挟んでなのはと向き合っていた。
「イクスにとって大事なことだと思う。だからよく考えて返事をしてほしいんだ」
 なのはの言葉に、少女は深く頷く。
「私はイクスと家族になりたいと思う。ヴィヴィオもね、姉妹になれるといいなって思ってるみたいだし。けど一番重要なのはイクスの気持ちだから」
「はい」
「それにね、断ってもきっとヴィヴィオはイクスの友達のままだと思うよ。それは安心していい」
「あの子は、とても優しそうで良い子です」
「そうだね」
 なのはは嬉しげに口許を緩ませた。おそらく彼女も優しい人なんだとイクスは思った。
「なのは、ご厚意ありがとうございます。近いうちに必ずお返事しますから、少しの間待ってはくれませんか?」
「もちろん。待ってるよ」
 少女のことを誰もが待っている。
「明日はスバルも休みをとって来てくれるらしいから、また会えるね」
「……ええ。楽しみです」
 言いながらも、少女はひどく眠いような気がした。考え始めればどんどん睡魔に引きずりこまれていく。しかしこの眠りは今までのような長い眠りではない、短い眠りなのだと少女にはわかっていたが、僅かな恐れがあった。次の目覚めが何百年もあとになるのではないかと。そして戦場に立ち、マリアージュを生み出して灰色の空を眺めているのではないかと考えた。それでも少女は意識を手放す。この家の心地よさが少女の恐れをかき消したのだ。
 そんな少女の体をなのはは抱きあげ、寝室へと運ぶ。ヴィヴィオも隣に横たわらせた。
 ベッドには金色の髪の少女が二人。
 なのははヴィヴィオとイクスの寝顔を見て、まるで双子のようだねと呟いた。その呟きは眠る少女の耳に届くことなく、二人の寝息と夜の静けさの中へと消えていった。

      ◇

 ――その後、イクスは正式に高町家の一員となる。
 フェイトとはやて、ヴィータ。スバルが高町家を訪れて祝ったのは随分と後の話だった。

「にしてもスバルの子にならんでなのはちゃんちの子になったんはええことや」
 はやてが言った。まだスバルが来ていない時のことだ。
「一緒に暮らして幼馴染みたいになってしまうと、恋愛には発展しにくうなるからな」
「いやに含みのある言葉だね、はやて」とフェイトが苦笑する。「そして全力で同意させてもらうよ」
 ヴィータがはははと乾いた笑いをこぼす間も、なのはには彼女たちの会話が理解できなかった。
「でもまあイクスはスバル狙いやろ?」
「っていうかなのはママは私が渡さないからね」ヴィヴィオがすかさず付け入る。
「イクスは家族だけど、なのはママの子供はヴィヴィオだけだもん。ね、イクス」
「ヴィヴィオは相変わらずですね」
 そう言ってほほ笑むのはこの会の主役であるイクスだった。
「それじゃあ旦那さんか」
「ち、違うよ絶対違うよ! 何いってるのはやてさん」
「あはは、冗談やて。なのはちゃんの旦那さんは私やったな」
「はやて、少し頭冷やそうか?」とフェイトが首元を掴み上げて言った。
「お、やるんか。ええよ、今日はヴィータもおるから相手になれるで」
「いや、あたし加勢しないからさ……」
「もうみなさん、勝手にやっててください。それと家が壊れるので外でお願いします」
 ヴィヴィオが流石に呆れて溜息をつく。三人を追い出すと、部屋にはイクスとなのは、ヴィヴィオだけになった。始めからこうすればよかったのだ、とヴィヴィオは思った。
 一人増えた高町家の平和な日々が、穏やかに始まろうとしていた。




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