2017-06

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小さな声で求めて

クリスマス話は、去年たくさんかいたからいいやーということでかきません(-∀-)*\

ヴィヴィなのです。
まだ付き合ってないから「ヴィヴィオ→←なのは」かな。
なんかひさしぶりに普通の短編を書いた気がします。
きっと自分の精一杯のらぶらぶ?です。
らぶらぶ?と後ろにハテナがつくくらいのらぶらぶだけど。

母が愛しくてしかたない高町ヴィヴィオ14歳。なのはママの気持ちが分かりません。



 小さな声で求めて


 心地よい水音が鼓膜を打っている。私はその音を聞くのがとても好きだった。それは愛しい人が私のために料理をしてくれる音だった。
 私は椅子の背に持たれて彼女の後姿を眺めている。
 きゅっと蛇口を捻ると、彼女はエプロンで手の水気を拭い、私の向かいの席に腰かけた。その口元には笑みが浮かべられている。今すぐに口づけたいと思う。
 不純な心を見抜いたように「あのね」と彼女が言った。私は撥ねる心臓に気付かれぬように表情を取り繕う。完璧な笑顔ができているはずだ。テーブルに乗せられた彼女の手にさりげなく重ねながら、そんなことを考えているなんて彼女は知らなくていい。
「どうしたの?」と彼女は乗せられた手を握り返しながら笑う。
「気にしないで、ちょっと寒くて暖をとってるだけだから」
「変なの。ヴィヴィオの手の方があったかいのに」
「気持ちの問題だよ」
 私が言うと彼女は、そっか、と頷いた。私の言葉に彼女は疑いを持たない。全幅の信頼を寄せてくれている。それにどうやら先ほどから何かを言いたそうにしていた。私は話を変える意味でも促すと、にこやかな笑顔で言ってくれた。
「ヴィヴィオは恋人つくらないの?」
 すでに意外でも何でもない言葉となった問いに、私はしばらくどう返事しようかと迷った。彼女が最近はよく口にしている言葉で、その度に私は辟易した。問いに対する答えは出ているのだが、なんといえば納得させられるのか迷うのだ。
 あなたが好きだから他なんて眼中にありません、なんて言えない。まだ。
 彼女は恋愛事に興味がないのかと思っていた。むしろ彼女に恋人がいる様子もないからその推測は自分のながら当然だろうが、自分よりも娘のことを気にするのはどう考えてもおかしい。しかし万が一恋人ができた日には一晩泣きあかしたあとで家出をし、世界を放浪しながら己を鍛え彼女を攫いに戻る。あるいは恋人に模擬戦を挑み、勝てば官軍負ければ一晩泣きあかしたあとで以下略なのだが。
「質問したいんだけど」
 なあに、と首を傾げる彼女が可愛らしくて、もうどうしよう。挫けかけた自制心に鞭を打ち、表情を引き締める。それから言った。
「なのはママは私に恋人ができてもいいの?」
 彼女はきょとんとしている。よほど意外な質問だったらしい。
「だって、訊いてくるってことはそういうことだよね」
 彼女はしばらく黙ったあとで、苦笑いをこぼす。「嫌かもしれないね」
 呆けるのは、今度は私の番だった。彼女は続ける。
「ヴィヴィオをとられちゃうみたいで。今気付いたんだけど、本当はそれが嫌で気になったからきいたのかもしれない」
「それは娘が嫁にいくときの寂しさみたいなもので?」と私は訊いた。
 彼女は重ねた手が震えていることに気付かないでいてくれるだろうか。
 気付かれたくなければ手を離せばよかったのに、私はつい握ったままでいた。冬だというのに彼女の冷たい手はいかにも離れがたかった。見えない引力が働いているに違いない。そうでなければ彼女が私を求めているかだ。彼女が僅かにでも求めてくれているなら、私はその声を聞き取って全力で与えにいく。自分の中のすべての言葉と想いを掻き集めて彼女を抱き締める。
 なのはさん、と私は思った。「なのはママ」と辛うじて私は言った。
 漏れかけた思考に歯止めをかけるように彼女が首を振る。
「ごめん、わからない」
 曖昧な答えでごめんねと言う彼女の手を持ち上げ、私は指にキスをする。くすぐったいよと笑う彼女に、私も笑う。リビングに再び笑顔が戻る。
 笑いながら私の胸の中は安堵でいっぱいだった。期待は何もなかった。ただ、頷かれなくてよかったと――それだけを考えていた。

 どうすればいいんだろう。
 はやてさんが働く執務室を訪れて、私はそんな呟きを漏らす。
「どうしよう、はやてさん。私そろそろ抑える自信がなくなってきました」
 来客用のソファーに腰をかけると、はやてさんは動かしていた手を止めて「随分と切羽詰まっとるね」と破顔した。
「むしろよく我慢しとると思うよ。なのはちゃんの鈍感さは幼馴染の私らも身に沁みて分かっとるからなあ」
 きっと仕事の邪魔をしているのに、態度にはおくびにも出さず私を迎えてくれた。私の知る限りで一番心が広いのがはやてさんだった。例えそこに黒い想いが渦巻いていようが、こういう時に受け入れてくれるのははやてさん以外にいない。彼女のことで相談できるのも、だ。
 八神家との付き合いは長い。自分が小さな頃には家族で遊んでもらい、特にヴィータお姉ちゃんが私を可愛いがってくれた。何より私ははやてさんを信頼していた。
「いっそ襲ってしまおうかと思うんです。その方がきっとママには伝わるんじゃないかなって。でもやっぱり壊す度胸がなくてしぼんでしまう。なのにママは私の気持ちを知りもしないで、恋人は作らないの、とか言うんですよ。この間は上手く終わらせられたのでもう問われることはないと思いますが……心配かけてしまうんだったら気が重いな」
「なのはちゃんも切羽詰まってるのかもしれへんよ。自覚がないだけで」
 私はかぶりを振る。
「そうは思えません」
 私の前で彼女はいつだって自然だ。
 もしも好きでいてくれるなら、私のように急かされる気持ちを胸に隠しているなら、もっと相応の態度で示してくれてもいいはずだった。私は時折彼女の動揺を誘うようなことをしてみたが、彼女を揺れ動かすことなどできはしなかった。この間は指に唇で触れた。なのに彼女は笑うだけだ。
「けどな、考えてもみい。そもそもヴィヴィオから聞くまで、私はなのはちゃんが人の恋愛に首をつっこむなんて考えられへんかった。相手が娘だからってなのはちゃんは変わらんやろ。それを尋ねるってことは気にしてるってことやないん? ヴィヴィオのことが胸に引っかかって、つい自分でも分からんうちに尋ねてた……なんてのが私の考えやけど、どないかな」
 そんなことを言われても、私には肯定する自信がない。
 会話が滞り、私はやり切れなさに窓の外を見た。そこでようやく夕影が差し込むほどの時間になっていることを知った。いつのまに時間が過ぎていたのか。私は壁に掛けられた時計を見やり、立ち上がる。そろそろ帰らなければならない時間だった。
 私は部屋を出ようとした。が、その時扉がノックされる。こんこん、と胸に響くような叩き方。直感的に、あのひとだ、と思った。
 はやてが入室を許可すると、扉から顔をのぞかせたのは彼女だった。私のあの人を察知する能力も捨てたものではないらしい。
「久しぶり、はやてちゃん。あのね、ヴィヴィオがここにいるって聞いたんだけど」
「ビンゴや」
 ぱちん、とはやてさんは指を彼女の方に向ける。
「よくわからないんだけど?」、彼女がこちらに視線を投げかけるが私は口元をひきつらせることで答えた。彼女はますます困惑した。あなたの話をしてたんだよ、って言ったらどんな表情をするか見てみたい気もしたが、きっと彼女は無邪気に喜ぶだけだろう。それもよかったが、なんだか自分の苦悩が馬鹿らしくなりそうでやめた。
「どしたん、私に会いに来てくれたんかな。それともヴィヴィオをお持ち帰り?」
「はやてちゃんには会いたかったけど、どちらかといえば後者かも」
「それはまた、真っ向からふられたもんやなあ」
「にゃはは、ごめんね。また今度八神家の方にゆっくりと遊びに行くから」
「そういえば仕事は?」と私が聞く。会話に入りたかった。おおかた局に用事があって寄ったのだろうが、そうすると長い時間いられない。そう思うと寂しい。これから家に戻り彼女を待つのはもっと寂しい。
 私の思考が漏れていたわけではないだろうが、彼女はまるで希望をくみ取ったかのように胸を張り、
「もちろん終わらせてきたよ!」
 と言い切った。「愛やなあ」と呟くはやてさんの声に激しい羞恥が湧き上がる。はやてさんには何もかもを知られていた。しかし視線を逃した先には彼女の顔があって、私はますます顔が赤くなってしまう。頬が上気していくのを抑えることに囚われ、次の言葉に無防備だった。
「なのはちゃんはヴィヴィオが大好きみたいやね」
 はやてさんの言葉にも彼女は満面の笑みで頷いた。私にはその笑顔がいつもとは異なったものに見えて、心臓がどくんと鳴る。違う、どきどきさせたいのは自分じゃなくて彼女だ、と訴えたかった。けれど私の口元は一向に動くかずに、あえなく退室することとなる。それにもう日が暮れきっていた。これ以上仕事の邪魔はできない。
 帰り際、はやてさんから一言だけ思念通話が送られた。
(なあヴィヴィオ、悩むことなんてあらへんのやないかな)
 脳に響く優しい声に私ははっと振り返る。しかしはやてさんは既にモニターに向かっていた。私は苦笑する。敵わないなと頬をかくと、私と彼女は部屋を後にした。


 小さな小さな微睡みの中で、私はあなたを求めている。あなたは何も知らない、それでいい。私の脆弱な精神では、まだあなたのことを包んであげられそうにないから。
 ただ木漏れ日を受けるあなたの瞼を撫でるくらいは許してほしいと願っていた。

 いつの間に眠ってしまっていたのか。
 目を覚ますと彼女の顔があった。余りに近かったので咄嗟に身を引くが、彼女は熟睡の中にいた。
 私は彼女の整った顔に触れる。びくびくとした接触は、すぐに穏やかな川の水を掬うような柔らかさを含むようになった。指先で感触を確かめるように頬をなぞる。彼女は目覚めない。
 家に辿り着きご飯を済ませると、私は眠気に襲われてそのままテーブルに突っ伏した。神経を張りつめすぎたのかもしれない。隣で彼女が伏せているのは、眠り込んだ私をベッドまで運んできたあとでそのまま寝てしまったのだろうと想像する。可愛い人だから、きっとそんなこともある。
 彼女の結わえられたままの髪をほどき、指で梳くように撫でた。
 自分がどれだけ想われているのか考えるだけで幸せな気分になる。仕事を切り上げてきてまで会いに来てくれた。こうして一緒に眠っている。安らかな寝顔。至福の時間が穏やかに過ぎていく。
 いつか、とヴィヴィオは心の声に出した。いつか彼女を護れる程心も体も成長したら、想いを伝えよう。今日朝起きた時にはあれだけ悩んでいたのに、今は不思議と上手くいくように思える。
 限りなく近い未来への誓いを、眠り姫の耳朶に落とし、ヴィヴィオは再び瞼を落とした。

 ――誰にも気付かれないほど小さな声で求めて。
 そうすれば私だけはその声を聞き取り、どんなしがらみも振り切ってあなたの元へ行くよ。



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