2017-08

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もっとも不誠実な恋人

結構前に書いたなのティア。
とてつもなく短いけど、時間がたつにつれ公開するのが恥ずかしくなりそうなので今のうちに。
“なのティア”のなのはさんは、不特定多数の女の子を侍らせているのが基本。



 もっとも不誠実な恋人


 ――キスして。
 耳元で、次元一愛しい人の声が囁かれた。
 脳髄まで浸透していくような甘くとろけるようななのはさんの声に、私は背中を振り返った。首にはすでに腕が回されており、耳朶に彼女の唇が触れる。
 ――ずっと、見つめてて。
「……っ」
 声にならない声が、喉の奥に詰まる。
 耳にはまだ残っている。なのはさんの甘い声に乗せた旋律が、耳に再び打たれる。
「ティアナは知ってる? これ私の出身世界の歌なんだけど」
 なのはさんが問いかける。私はじっくりと時間をおいてから首を横に振った。しばらくは思考出来る状態ではなかった。
「今度音源渡すよ。聞いてみて」
「いいですけど、仕事中ですよ、今」
「分かってるけど、この部屋には今二人だけなんだ」
 それに仕事はもう終えたから。
 そう、なのはさんは頬に笑みを浮かべる。艶やかではない、無邪気な笑顔に私は騙されてしまう。彼女が私だけを見てくれている、と。そんなものは一時の錯覚でしかなかった。
 彼女の唇が首筋をついばみながら降下していく。きっちりと締めたはずの首元のネクタイは外されていた。ボタンも。ああいつのまに。彼女は手が早い。
「ティアナの綺麗な瞳をみてたら、我慢ができなくなっちゃった」
 私は頭を抱えたくなった。
 なのはさんにではない、抵抗できない脆弱な意思の持ち主である自分にだ。いつもいつも断れない。こちらには仕事という大義名分があろうとも、なのはさんは構わずに触れてくる。嫌じゃない自分が、また苛ついた。
「愛してるよ」
 耳ざわりで甘美な言葉だった。彼女は誰にでもこの言葉を囁いているに違いないのだ。愛しているときっと周りの多くの人に言っている。片手では足りない、両手でようやく足りる。多くの女性を傍に置いていることを、私は知っている。なのはさんの誘いに私が僅かでも抵抗するのはそれだけが理由だった。
 私だけならいい、と思う。私だけなら、たとえ仕事中でも抵抗なんてしない。受け入れて――そして幸せすぎて堕落しまうのだろう。
「ティアナだけだよ、こんなに夢中になるのは」
 そうやってなのはさんは盛大な嘘をいつも吐き、私もまた彼女に溺れていく。



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