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2018-12

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幸福の在処 六章

「幸福の在処」六章です。

最終章。ようやく終わりました。
今回は少し長いです。無駄なあとがきも最後に。
フェイトさんがようやくでてきてくれました。

それでは続きからどうぞ。



 幸福の在処 六章


 ヴィータが管理局員に頼みこんで、なのはの子を身ごもった事を知ったのは、つい先ほどのことである。フェイトはその話を聞いたとき、まず嘘だと思い込もうとした。しかし無理だと分かって、その話をなかったことにしようと思った。次に、対象を消し去ろうとした。
 未遂に終わったのは、上官でもあるはやてに呼ばれたから。今思えばそれは救いの手だったのかもしれない。
 どうやって同性で子供を孕んだかなどはしらない。知りたくもない。なのはと他の人の子供なんて考えたくもない。そんなものは、あってはならないのだという思考に至ったのは直ぐのことだった。
 それは一瞬。デバイスを起動させて後から刈り取ればいいのだ。もっともバルディッシュを掌に包み込んだその時にはやての腕に掴まれたから、結局その種は蒔かれたままとなる。
「は、ははは」
 そっか、今も、ヴィータのなかになのはがいるんだ。
 はやてに腕を掴まれながらも、漏れる笑みを押さえる事ができない。
「あはは、おかしいよそれ。なんでヴィータがそんなことになってるの?なのはは私の彼女だよ」
 遠くではやての声がするが、分厚い霧で分断され、はっきりとしない。自らの笑い声で埋め尽くされる。
「今すぐに殺して――っ」
『フェイトちゃん』
 彼女の暴動を止めるには、彼女の大切なものの声で引き戻すしかなかった。今の彼女の表情を目にして、はやてが再生した高町なのはの声を目敏く聞き取って振り向いたのが局内でも有数の美人執務官だと誰が信じるというのだろう。
「なのは」
『大好きだよフェイトちゃん』
 モニターを操作しながら、はやての顎を冷えた汗が伝った。
「うん、私もだよなのは」
 嬉しそうに。録画されたモニターに向かって微笑みを投げ掛けるフェイトを、はやては横目で見る。
 汗が滲んだのは恐怖によるものではない。決してない。胸いっぱいに敷き詰められた悲愴を排除しようと流しただけの汗だ。
 あるいは、かつて自分をなのはに重ねてとはいえ抱き締めてくれた人が、今ではなのはの声にしか反応せず、なのはしか見えていない惨状を目の辺りにすれば誰でもそうなるのかもしれなかった。
 ――こうして。現在目の前にいる本物のなのはを前にしても、フェイトは幾分かの冷静を取り戻していた。はやての日頃培ってきた弁才はないよりは役に立ったようだ。必死の説得により、なのはとの二人だけの話し合いの最中隠れていてもらうことになった。
「なのはちゃんからそれとなく事情聞き出すから、な?」
 旧友の言葉に頷いたフェイトであったがしかし、始まってみれば“それとなく”どころではなかった。それも、なのはの姿を目にしただけで飛びつきそうになったフェイトを押さえ込んできたはやてが、長い時間は無理だろう、と考えてのことだった。
「え、な……んで……」
 ようやくなのはが、この部屋にいるもう一人の人物に気付いた。普段のなのはならば、入った瞬間に気付かなければならないのだ。注意散漫、精神衰弱。これらがなのはを蝕んでいることがとって見受けられる。
「フェイト、……ちゃん」
 今朝方笑顔で送り出してくれた人の顔を、半日も待たずに見ることになるなんて、ほとんどないこと。されどなのはが驚いているのはそれが理由ではなかった。
 フェイトがここにいて。話を聞いていて。二つがどのような結論を導き出すか。理解できないほどになのはの神経はくたびれてはいない。
 きっとそれこそが、最もなのはが悲観すべきことだったのに。

   ◇

「騎士甲冑……?」
 この場に酷くそぐわないはやてちゃんの姿を見たままに呟く。
 口元を歪めるはやてちゃんの顔に、意味もわからず狼狽する。何故、とそればかりが口を突きそうになる。答えは一つしかない。『戦うため』と。だが誰と? 何と?
「なのはちゃんを懲らしめよう思ってな。ああ、許可は貰っとるから気にせんでええで」
「許可って、そんなの。それにはやてちゃん一人じゃ私には」
「心配おおきにな。でも問題ないんや」
 呆けている間に、フェイトちゃんはスーツから白いマントを背負ったバリアジャケットに態を変えて立っていた。
「フェイトちゃんがなのはちゃんと打ち合っとる間にチャージするから」
 バルディッシュを起動し、斧にその形態を変える。さらに光の刃が備わる。
「フェイトちゃんのことは二人のことやって思って何も言わへんかったけど。でもどうしても許せへんのや。ヴィータを、うちの家族を玩具扱いして……」
「違……っ」
 わない。違わなかった。玩具とまではいかないにしろ、私にとってヴィータちゃんはていの良い愛玩動物だった。フェイトちゃんなど、親友であるにもかかわらず、好きな人を独占するために利用しただけ。
 ああ、確かにお仕置きされるには十分な理由かな。
「なのは……ねえ、なのは?」
「……うん、どうしたの」
 力を抜きかけて。だけれども声が聞こえた。いやに感情の抜け落ちた声が。
「なのはは私のこと好きだよね?」
「え、……?」
「私は大好きだよ。愛してる。なのはしかいらないんだ。なのはがいればいいよ」
「フェイトちゃん……?」
「私まだ信じてないから。ヴィータとのことも、はやてから聞いた私に対しての気持ちも」
「フェイ――」
「何でもしてあげるよ」
「っ……!」
「なのはが望むならどんなことでもする。恥ずかしいことも、辛いことも、痛い事だって全然かまわないよ? なのはがそうしてほしいって言うなら、喜んでするから。……好きって一言いってくれれば、何だって出来るよ」
 辛辣な様子の彼女が、なりふり構わず呟く。瞳に光はなく、どこか虚ろにこちらを見詰めている。
 もう嘘はつけなかった。優しさではない、自分がただそんな彼女を見たくなかっただけ。
 なんだこれは。
 これが自分のしたことなのか、と今更胸を撃ち抜かれる。胃の中のものを全て無理矢理吐き出させられるよりも余程気分が悪い。もう楽になれ。吐き出せ。今より辛い未来などどこにあるというのか。
 模索して、掻き分けて。それでも見つからなかった口が呟く。
「私が好きなのは……はやてちゃんなの。フェイトちゃんのことを愛してはあげられない」
 沈黙。次の瞬間に、壁を岩がぶち抜くような衝撃。はやてちゃんが砲撃を放った。
「鳴り響け。――ラグナロク」
 それは終焉の笛。三匹のうちの一匹が、世界の終焉を告げる合図にと鳴き喚く。
 始まりを迎えたラグナロクに巻き込まれるようにして建造物は崩壊し、私自身も瓦礫に体が潰されていく。いくら非殺傷設定でも、実体のある瓦礫に押しつぶされては生きていようがない。
 埋まる自らの体がやけに他人行儀だった。
 目を覆い隠す前髪の隙間から、金色の死神を腕に抱えて飛び去っていく漆黒の天使が飛翔していく様を見た。
 嬉しかった。自分がはやてちゃんに殺される事を、心から嬉しく感じられた。
 最後に二人が手を取って逃げていこうが、その事実だけで私は満たされたのだろう。
 ああ、堕ちて来る。コンクリートの塊を避けることも出来たけれど。目蓋を落としてそれを待つ。最期くらいはやてちゃんの顔を思い浮かべるのも良い。
 燻る思考の中で、そんな想いが静かに渦巻いて私は目を閉じた。
 だがどれだけ時間が経っても落ちてこない。それどころか、体を窮屈に押しつぶさんとする岩も取り除かれていたようで、圧迫感も消えていた。
「駄目だよ」
 肉体の浮遊感と共に、一面、眼下に広がる世界を目にする。青空の下に晒された私の蒼く濁った瞳を、透る真紅の瞳が映し出していた。彼女の両腕が私の背中と脚を支える。
「フェ……イト、ちゃ……」
「私を置いて死んでいったりしないで。そんなことさせないから」
「え……だって、はやてちゃんと脱出したんじゃ」
「戻ってきた」
 彼女はこともなげにさらりと笑った。
 何故笑えるのか、私にはやはり分からなかった。
「ど……して」
「さっき言ったよ。私はなのはがいないと生きていけないんだって」
「でも、私は……」
「なのはがはやてを想っててもいいよ。なのはが私を傍に置いてくれるなら、それでもいいから。せめてなのはの傍にいたいんだ」
 全て彼女は理解しているのだと分かっていて、呟いた。
 視界はぼやけてはっきりとしないというのに、やけに空が青いことが分かってしまったせいだろうか。
「私、死にたかったよ」
 全て無駄だというのに、呟いて。
 虚空に吸い込まれて欲しいのに、目の前のこの人には届いてしまって。
「知ってる……ごめん」
 やっぱり呟く。他にどうすればいいか分からないから。
「酷いよ、フェイトちゃん」
「ごめんね……」
「酷い……」
「ごめん、……泣かないで」
 上体を少し起こし、顔と顔が近づくまで持ち上げられて、そのまま涙を舌ですくいとった。それでもまだ流れる涙を、彼女はまた、拭う代わりに舐めとった。
「フェイトちゃんが、泣かせてるんだよ」
「ごめんなさい」
「ずるい」
「うん、そうだね」
 建物の崩壊する音がこちらにまで届く。今頃きっと騒ぎ立てているだろう。はやてちゃんは大丈夫なのだろうか。許可を貰っているといっていたけれど、まさか建物を壊しても良い許可などあるはずがなくて。
 そこまで考え、この期に及んでもあの人のことを考えている自分がいることに、虚脱した。
 ――虚脱?
 きょだつ。
 浮かび上がった単語に疑問が浮かぶ。今まではやてちゃんのことを考える自分にがっかりしたことなどあっただろうか。
 気付くとフェイトちゃんが再び飛行していた。巻き込まれないようにと移動してくれているのか。
 轟音が遠のく。
 もうずいぶんとに離れた場所に来てしまっていた。
 私はフェイトちゃんの顔を見上げた。寂しげで綺麗な瞳がそこにあった。私が彼女の中の一番好きなところ。友達になりたいと思ったきっかけ。
「……もう、いいよ」
「なの、は?」
 あれほど酷く扱って暴言を吐いたというのに、こんなに、どこまでも優しく名前を呼んでくれる人なんて、きっとどこの次元や世界を探そうとも他にいない。
「これからも、ずっといっしょにいよう。私はフェイトちゃんだけを愛していくから。頑張るよ」
「だって、はやては……」
「フェイトちゃんがそう言ったんだよ?それに……はやてちゃんは、もういいから」
 自身を撃ち抜いたあの人の瞳は、これまでに向けられたどれよりも悲壮な瞳をしていた。私がそれをさせていたのかと考えると、もういいのかな、という気持ちになる。
 すっきりとした気分だった。不純なものを全て撃ち砕いてくれたかのような砲撃だった。
 終焉の笛。終わらせたのは、あの人への気持ちだったのか。
「なのは?」
 彼女を好きになるのには時間が掛かるかもしれない。
 だけど、もともと私は彼女の心も体も好きだった。それなら、きっとこれからも一緒にいられる。
 努力して生まれる愛だって、きっとあるに違いないのだ。
「フェイトちゃん、ちょっと笑ってみて」
「えっと、……こ、こうかな」
「うん、少し顔歪んでる」
「ひ、ひどいな、もう」
 私はそれから、ちいさく笑って息を吐き出した。精一杯の想いをくれた彼女に、できるだけの誠意と気持ちを。
「フェイトちゃん、絶対に好きになるからね。だからもう少しだけ待ってて」
 あの人はくれなかった笑顔を、惜しげもなくくれるこの人ならきっと好きになれるという自信が、今なら持てた。
 だから。彼女の笑顔で心を塗りつぶして。新たに彼女を描いていける。
「……うん、待ってるよ!」
 あの人がいなくても、それは十分に幸せな未来となるだろう。
 フェイトちゃんの笑顔に魅せられながら、私も同様に笑顔を返した。

   ◇

 はやてがその人を腕に抱えた時、すぐにすり抜けられると思っていた。
 理由などない。その人がフェイト・テスタロッサ・ハラオウンだったからである。説明などそれで事足りた。
「以前の私なら、はやてのものになったかもしれない。でもなのはの温度を感じてしまったんだ。例え私を見てくれなくても、なのはが少しでも自分を必要としてくれるならいい。もう私はなのはなしでは息もできないから」
 案の定、フェイトはするりとはやてから離れる。
 フェイトの灼熱の瞳が、鋭くはやてに突き刺さる。それで全てを理解できる自分を、はやては心から嫌悪し、嘆いた。
 はやては眼瞼を落とす。長い睫毛の影が尚更綺麗に彼女の顔を飾ったが、この場に、そしてフェイト相手にはまったく意味を持たなかった。フェイトの瞳は、はやてを正面においてでもただ一人だけを見詰めているのだ。
「だから助けにいくよ」
「フェイトちゃん」
「なのはが望むなら、私はハラオウンじゃなくていい。フェイト・テスタロッサのままでいいんだ」
「……でもそれは」
「辛いっていうのはわかってる。痛いっていうのも。だけどいつかなのはが笑ってくれるなら、私はできるよ」
「フェイトちゃんは……」
 息を呑んだ。
 フェイトは真剣だった。なればこそ、自分も返さなければならない。
 本音を。……隠して。
「もうあの時と違って、もうフェイトちゃんの心を揺るがすことは出来そうもないんやな。それならもう何も言わん。言えへんよ」
「ごめんね、はやて。……ごめん」
「ええよー。ほな、はよなのはちゃんとこ行ってあげんと」
 フェイトは最後に振り返った。
「ありがとう、はやて」
 自分のためだけの、最初で最後の笑顔。はやては焼き付けながら、白いマントを羽織った彼女がぐんぐんと速度をあげて愛しい人のもとへ向かうのを眺めた。
 一人取り残されたはやては、そのまま脱力する。
 黒い羽がばさりと辺りに散りばめられた。
「なのはちゃんはずるいなあ、ほんまに。大切なもの全部奪っていって。でもなんでこんな恨めんのやろ。本当はあの建物消滅させるくらいの力は込めるつもりやったんやけどな」
 ……ああ、そうか。とはやては思い当たる。なのはが好きだから。フェイトに対するのそれとは違うけど、やはりはやてはなのはが好きだったから。だから憎めないのだ。
 滲む目をグローブをはめた手でごしごしと擦りながら、気分を紛らわせるために息を大きく吐き出した。
「さてこの言い訳、どないしようかな。事前に伝えてあったからこの時間の建物には誰もいないものの。拘置所かなあ。よくて始末書数百枚か……」
「部隊長ってのも大変だな」
「……ヴィータ」
「うん」
「今は大丈夫なんか?」
「平気だよ、もう安定してるから」
「そうか。……なあ、後悔してへん?」
「まさか。なのはと一緒に、なんて期待もしてなかったし、する後悔もなにもないよ」
「でも、大変やで」
「……あいつ、危なっかしいんだ」
 唐突に切り替わった話に、しかしはやては尋ねることなく相槌を打つ。
「なのはちゃんが?しっかりしとるように見えるけど」
 違う、とヴィータは頭を振る。
「心が凄く不安定なんだ。なのはって小さい頃父親が入院してたみたいで、家族みんなお見舞いやちょうど活気付いてきたお店の経営やらで一緒にいられる時間がなかったんだって。だから無意識のうちに愛情をもとめている部分があるみたいなんだ。まあそれはフェイトにも言えることなんだけどさ」
「うん」
「普段は驚くほど大人びてて、まあそれはあたしと同じくらいの背のときからそうだったんだけど。でも今はたまに悲しい顔するんだ。それが凄く見てて辛かった」
「分かるわ」
 自分も、なのはの事を思うフェイトの姿を思い浮かべた。フェイトはいつでもどこでもなのはのことを思っていて、それなのに肝心の相手は知りもしない。あるいは知っていても見ないふりをする。聡いフェイトが気付かなかったはずはなかったが、それでもフェイトが投げ出すことはなかった。
 それが見ていて、すごく辛かった。ヴィータと同じように。
「だから少しでもなのはの寂しさってやつを埋めてあげたいと思った。なのはが笑顔でいられるなら、自分なんて喜んで差し出せたよ。それになのはとそうしていられることで、幸せに感じる自分もいたから。だけどなのはの瞳に映っているのはいつだってあたしなんかじゃなかった。いずれ離れていくことも分かってたしな。あたしなんかが留めておけないって。それならせめて一つだけでもなのはのものが欲しかったんだ。酷い我侭だよ」
「それが……その代償?」
「代償なんてものじゃない。たしかにしばらく戦闘や新人たちの訓練にはでられなくなったけど、あたしは幸せだから」
 言葉が終わり、再び沈黙が――とはいかない。いまもどこかで瓦礫が崩れている。空に浮かぶ二人はそれをただ一つの背景として眺めているにすぎない。
 数十秒、いや数分だろうか。はやてはそれだけ経ってようやく言葉を捻り出せた。
 成長した子供の姿に、今のいままで言葉を出せずにいたのだった。
「今日のヴィータは素直やなあ。なのはちゃんの愛にかかったもんはみんな素直になってまうんやろうか」
「はやて……?」
「いや、なんでもないで」
 そっか、とヴィータは俯いた。
「……あたしは、やっぱりなのはを忘れるのは出来ないかもしれない。ずっと、何十年たってもあたしがこの世界に存在する限りなのはの存在は自分の中から消えてなんてくれない」
「私も、フェイトちゃんのこと、きっと忘れられへんわ」
「うん。だけど」
 遠くで自分達と同じように空に漂う二人の魔導士。かつて剣ならぬデバイスを交え戦った人。自分の大好きな人が微笑み合っている。
 それらは今までよりも幾分か幸せそうに、二人の瞳には映った。
「あんななのはとフェイトの姿見ちまったら、もういい加減諦めもつく。だけどそれは想いが消えたことじゃないんだ。残っているからこそ、もうあいつが生きてるだけでいいやって思えてくる」
「ヴィータ」
「ごめん……はやて」
「何がかはなんとなく分かるけど、一応聞いておくわ」
 はやての言葉に、ヴィータはひときわ大きく、肺一杯の酸素を吸い込んだ。そうしなければ、声が震えそうだった。それではいけない。ヴィータには心に固く決めた誓いがあったのだから。
「あたしはなのはの騎士になる。これからもずっと。だからあたしは、やっぱりなのはを護るよ。あいつがなのはの前を護るなら、あたしはなのはの背中を護る。……だから許して欲しいんだ。“主はやて”への誓いを破ること」
「それは、辛いで」
「そんなこと言ったって、もうどうしようもない。それにはやてだってフェイトのこと後方から守るつもりでしょ。なのはを護るフェイトを」
「ああ、……もう、ヴィータは鋭いなあ」
「はやてに敵なわないよ」
 ふふ。ははは。
 お互いにひとしきり笑い合って、不意に止めたはやてが空を仰いだ。蒼く瞬く空は、誰にでも平等に包み込んでくれている。
「ほなあの二人の笑顔を、これからも護っていこか」
「うん、はやて」
 これからもずっと。
 気付かれない想いをしまいこんだまま、ずっと護っていこうと誓い合う。それは決して破られることのない心の支え。
 数百メートル離れたその場所にもいつしか、小さくも確かな幸せが黒い羽根となって舞っていた。




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× あとがき ×
書いてて思ったことといえば、見事なまでになのはのキャラはみんないい子たちばかりだってことですね。
誰も黒くならない。人ことばかり考えて行動する登場人物。その人たちをなんとか悪い方向へもっていかせようとしたら病ませるか、なのはにめろめろにさせるか、しかない。でこんなのになりました。
メインなのは視点だったからどうしてもなのはの心理描写ばかりが目立ち、一番可哀相なキャラ(贔屓目ももちろんある)にみえますが、深層心理を描写させたらいちばん悲惨なのはフェイトだろう。気付いてないとは思えないし。あと気の毒なのがはやて。病んでるのがヴィータ。きっとなのはが一番まともです。そして一番辛い。
一番理性とか保ってくれるから、逆に中途半端で生殺しで。精神がおかしくなってるのが自分で分かるから痛い。最後はなんとか安寧を与えることができました。
なのはがまた繰り返さないとは言い切れない(ヴィータもあんなこといってるけど、結局なのはに誘われれば断れないだろうし、フェイトも「他をみてもいいから傍に居て」っていっちゃってるし、幾らでも破綻の種は残ってる)ところが怖いと言えば怖いけど、でも大丈夫です。なのはなら。
大丈夫ったら大丈夫だ!完全無欠、完璧なハッピーエンドなんでこの世に存在するわけがないよ!
長くなりましたがこれにて。読んでいただいて有り難うございました。

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