2017-11

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『秋、はらむ空』 二章 烙印は指に残される……6

『秋、はらむ空』 各タイトル⇒目次

二章 六話「限定一の偽り」
はやて視点。はやては分かってたんだ。自分がおぼれたらすべてが崩壊してしまうことをね。
がんばった彼女を認め、褒めてあげてほしいと願う。

――フェイトのようになのはのことだけを見ていられれば、ヴィータのように純粋に想っていられれば楽だったのに。



 秋、はらむ空
 二章 ―烙印は指に残される―


 6.限定一の偽り――ANOTHER SIDE

 なのはが好きだったわけではない、とはやては思っていた。なのはの無表情を綺麗なものだと感じてもはやてにとっては客観的な感覚だったし、受け入れてしまったのもただ大事なものを失くしたなのはが可哀想だったからだ。いつのまにか好きになっていただなんて、そんな間抜けなことはない。
 はやては自分の想いを抑制しようとした。自らが泥沼に片足を突っ込んでいたとしても、今なら無事な方の足で戻ることができたから。だというのになのはときたら、自分の気持ちなど無関係に引きずり込もうとする。彼女にそんな意志はないかもしれないのに、その言葉が、行動がはやての心に揺さぶりをかける。
『会えなくて寂しかった』
 なのはの言葉を聞いた瞬間、脳がくらくらとした。笑顔を失っても傷ついていても人を惑わす能力にかけてなのはは一級品だった。注意深く距離をとろうとしてそのことにかまけていたら、知らずなのはのことを考えていたという本末転倒の事態に陥っていたのだ。気付けばなのはのことを考え、想っていた。これまで彼女に対するものとは違う種類の好意を、なのはに向けていた。
 溺れないようにするのが精一杯だった。
 なのはを想うことは許されない。はやてにはしがらみが多すぎた。いっそフェイトのようになのはのことだけを見ていられれば、ヴィータのように純粋に想っていられれば楽だったのに、どうしてもできなかった。部隊長としての責任、ヴィータを見守る主としての役目、ヴィヴィオを追いかけるなのはを止めさせた罪がはやての全身を縛っている。
 だからはやてはなのはの頬にキスをする。唇ではなく頬への口付け。それが今のはやての精一杯だった。
 何もかもが中途半端だとはやては思う。心が壊れてしまいそうだと。
 二度目に部屋を訪れ、なのはを受け入れ続けてから心が徐々に壊されていくような気持がした。なのにはやては一つだけ「誰にも知られてはいけない」と提示して、やっぱりなのはのことを受け入れる。いつしかヴィータへの気後れも忘れかけて、追い目だと、仕方ないと言い訳を考えつつ、なのはを受け入れる心地よさに酔いしれる。始めは義務だった。心配していた。憐憫だった。けれど今はそんな純粋な心などなくなっていた。
『なのはちゃんは大切な友達やから』
 ――嘘つき。はやてはそう自分自身を詰った。
 
 ただそんなことがいつまでも続くはずがなかった。
 幾夜かをなのはと過ごしているうちに心地良さなどすぐになくなった。なのはは優しくはやてに触れたが、彼女の影に誰かが見えない日はなかった。優しい言葉もどれだけ本心か、疑いを持つようにもなってしまった。何故ならなのはは自分を見てもいないのだ。体を抱いていながら、本当は体も心も抱いていないことに気付かされるほど悲しいことはない。想えば想うほどそれは強くなった。
 遠くから見守っていた昔ならまだいい。視線が合うだけの、お茶を飲み交わすだけの穏やかな関係のままであれば自分を見ていないなのはを前にしても耐えられることができた。しかしなのはの瞳を覗けるくらいに近づいてしまえば、曖昧にしか見えなかったものが鮮明になる。それは心の色も同じで、なのはが自分を想っていないということも鮮明に見えてしまうことにもなった。
 大切な人というだけではもう足りない。今はただなのはと体を重ねるのが苦しい。
 ある日の夜、はやてはついになのはを拒んだ。
 はやての自室に訪れたなのはが、いつものように頬に手を添えて唇を重ねようとしたとき、胸が酷い軋みをあげた。地割れのような叫びだった。唇を重ねられた瞬間、今まで懸命に保っていた心の地表が真っ二つに裂けるイメージが湧き上がってきた。
「もう、耐えられへん」
 唇が触れる寸前、はやてはなのはの胸を押し返す。
「もう勘弁してや、これ以上私の中に入ってこんといて。そこまでなのはちゃんを受け入れること、私にはできひんよ」
 普段あまり動かないなのはの表情が、一瞬だけ悲しげにひそめられた。
 一度は逃げ道を用意してくれたのに、部屋を訪れたのは自分だったのに。今になってなのはを拒んだことがどれだけ勝手かは理解していた。けれどもこれ以上は心が壊れてしまう。はやてにはそれが分かった。分かってしまえばもうはやてに続けることはできなかった。
 目からは涙が溢れてくる。
「ごめん、ごめんななのはちゃん。本当に、ごめん」
 止まらない落涙に顔を俯かせたはやての謝罪に、なのはは「いいよ」と言った。
「そこまで追いつめてしまっているなんて思わなかったんだ。わたしのほうこそ謝らないといけない。はやてちゃんの気持ちはわかったよ、だからそれ以上謝らないでいいの。出て行くから、もう来ないから。はやてちゃん」
 いつまでも顔を上げずにいると、なのはがすっと立ち上がった。自らの頭に手が乗せられ、それが今まで撫でられた中で一番優しい手つきだったことに思い当ると、嗚咽はより一層激しさを増した。はやての拒絶になのはが気分を害した様子はない。それどころか当然だと思っているような、そんな顔をして部屋を出て行った。
 なのはが去った部屋で一人、はやては座り込んでいる。最後に頭を撫でられた感触が、あらためてはやてに彼女が好きだということを教えた。

 別に受け入れることが出来ないわけじゃない。受け入れた先にあるのは、己ではなく周りの人を傷つけることだと思ったから。なのはを傷つけると思ったから。たとえなのは自身に傷つく覚悟ができていたとしても、それははやてが許せなかったのだ。
 しかしはやては言わない。
 この想いも偽りも、彼女が気付かなければそれでよかった。

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