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2019-05

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『秋、はらむ空』 三章 白紙の親子……2

『秋、はらむ空』 各タイトル⇒目次

三章 二話「煙が晴れて」
模擬戦やるよー。まずはヴィヴィオからやろうか。
そんな爽やかなものはこれっぽっちもないけど、ヴィヴィオに罪はない。まったくない。

――「模擬戦をしてください」



 秋、はらむ空
 三章 ―白紙の親子―


 2.煙が晴れて

 耳を塞ぎたくなるような爆音とともに土煙が上がった。視界を覆う埃を腕で防ぎつつ、私はこれを起こした人物の魔力を探る。虹色の光が一条、ふいっと遠くをよぎった。見れば廃棄都市の一角に少女は身を隠している。少女も見つかっていることは分かっているはずだ。今は策を練っているところか。さて、と私は考える。接近戦、やれなくはないがあの古代ベルカの聖王に私が攻撃を入れられるだろうか。
 ヴィヴィオに模擬戦を挑まれたある朝。いつものようにおはよう、と大声を張り上げたところだった。返ってきたのは無言ではなく、相手になってほしいという要望だった。
「私と模擬戦をしてください」
 あれから私はティアナの助言を踏ん切りに、少女に向かって挨拶を欠かさなかった。何度無視をされても冷たい表情を投げ掛けられても、厳しい言葉を返されても私は心を奮起させて向かって行った。自分のどこにそれほどの勇気があったのか驚くほど、少女に対し前向きだった。
 おはよう、今日もいい天気だね。訓練頑張ってる? ヴィータちゃんは厳しいけど教えるのは上手だからね。ザフィーラさんとは話が合うのかな、今度は私も混ざっていい? それじゃあまた明日――。
 ヴィヴィオはたまに返事をしてくれることもあった。余りにしつこく話しかけるものだから少女も失笑をこぼした。
「あなたはどうしてそんなに必死なの」
 顔を顰め、しかし口元だけは綻ばせて少女は尋ねてくる。私は初めてまともに返事をしてくれたことの喜びを抑えつつも「話をしたいからだよ」と言った。「ヴィヴィオと仲良くなりたいんだ」
 少女は溜息をついて去って行ってしまったけど、今まで無視ばかりされていたのに僅かずつではあるが応えてくれるようになったことで、私は希望を持ち始めていた。ヴィヴィオは手の届かない場所にいるわけじゃない、すぐそこに、目の前にいるのだ。私は今度こそ諦めたくなかった。
 今、騎士甲冑を纏う少女に心が揺れる。普段は下ろしていた髪をひとまとめにした様は、あのゆりかごの中での聖王の姿だった。私は教導隊制服から防護服に切り替えながら、手加減はしないよ、と言った。エクシードモードの私の姿を見て、フェイトは眠そうな目を一気に覚まさせた。どうしてという彼女に私は苦笑で返す。手加減はしたくないんだ、と。それにきっとヴィヴィオもされたくはないはずだ。
 フォワードとヴィータ、フェイトの監視の中で私とヴィヴィオは互いを探り合っていた。
 ヴィヴィオが模擬戦を挑んできた理由とは何だろう。力試しならいい。けれどそれなら私ではなく、フォワードメンバーの方が良いだろう。
「このままじゃ頭の中がすっきりしなくて」
 仮初めの戦場に身を置く直前、ヴィヴィオが言った。
 何より私が少女と模擬戦をするには障害があった。まずフェイトが私を止めたし、私自身いつ体の欠陥に気付かれるかという恐れもあった。だが少女が私にまっすぐ向けてくれた想いを撥ね除けることは出来ない。
 出来ないなら受け止めればいい。
 煙にまぎれながらアクセルシューター十六発分を空中にセット、少女の横と後ろに回すと、私はレイジングハートを少女がいるだろう建物に向け、ショートバスターを放った。桜色が視界の向こう側で弾ける。もちろん少女には避けられるが、跳び上がった少女に向けて私は用意してあった魔法球を操り、ぶつけた。そのいくつかを少女は展開したバリアではじく。十六発すべてを処理し終えたヴィヴィオが向かってきたとき、すでに私はエクセリオンバスターを放つための力を溜め終えていた。
 カートリッジロード。発動時間も短く中距離攻撃には最適のそれを私は少女に向かって撃つ。手元から薄紅色の光が弾け、少女の元に向かった。そこで顔面に迫る拳に気付か無ければ鼻がつぶれていただろう。バリアを咄嗟に展開したのがどうにか間に合い、私は少女から距離をとった。息をつく。吐いた息は思った以上に大きかった。それもそうだ、吐いたのは息ではなく咳だった。
 耳に幾つかの声が突き刺さる。自分の名前が叫ばれている。
 咥内に広がる苦い味。身体に攻撃が入れられたのかと思ったが違った。バリアは破られてはいない。ではこの胃の中からせり上がる吐き気はなんだろう。
 喉に絡まる痰は濁った色をしていて、私は抜けていく力を持たせることができなくなって地面に膝をついた。フェイトとヴィータがすぐに飛んでくる。見れば四人も心配そうにこちらを窺っている。弱った部分を見せたくなかったのに、と奥歯を噛み締めるがそれさえ力が入らない。
 私はやせ我慢でどうにか自力で立ち上がると口元を拭う。それから困った顔を隠さないヴィヴィオに向き直った。
「ごめんね、中断しちゃって。実際の戦闘なら致命的な隙だったね。続けようか」
「なのは?」
 ヴィータが信じられないという顔でこちらを見た。
「馬鹿かお前。何考えてる、さっさとシャマルのところへ行け」
「けどまだ終わってないよ」
「終わりだ、これは喧嘩じゃない。まさか自分がティアナに言ったことを忘れてるんじゃないだろうな」
 喧嘩ではないことくらい分かっていた。だからこそ真剣に、少女の気持ちを受け止めようとしただけだった。たとえそれが暴走しかけの理不尽なものだとしても、正体不明ならなおさらだ。私に向けてくれる想いはどんなものでも受け止めてあげたかった。
 けれど傍からみれば無茶をしているふうにしか見えないのだろう。そして心配させてしまうのだ。私はこの時やっと二人きりの状況をつくらなかったことを後悔した。
 私は俯き、ごめんと言った。
「ごめん。わたしの負けだよ、ヴィヴィオ」
 少女が初めて真っ直ぐに向けてくれた想いをこの手で潰してしまった気分だった。私は少女に見せる顔がなく、おとなしく医務室へと歩みを進める。付き添おうとしてくれたフェイトに平気と言い、隊舎の扉をくぐる。情けないと思った。自分の体の不甲斐無さよりも何よりも情けない。ヴィヴィオはどう思っただろう。ようやく繋がりかけたのに、こんな私にはすっかり失望してしまったのではないか。
 ぐるぐると回る思考も満足に動かない体も、自分に纏わりつく何もかもが不快だった。私は人のいる医務室ではなく独居房に近い自室に行き、ベッドになだれ込む。その時ばかりは眠りが救いのように感じられた。私は瞼を落とす。今はもう昏々と眠りたかった。

 目覚めてみれば、最悪な部類の気分だった。仕事を放棄してしまった。フェイトやはやて、ヴィータにかけたであろう迷惑を考えると、そして模擬戦のことを考えると起きるのが億劫だったが、ずっと寝ているわけにもいかない。
 目が覚めると部屋は薄暗くなっていた。時刻を確認して驚いた。午睡というにはほど遠い時間眠っていたらしい。窓の外の夕影は機動六課を過ぎ去り、地上を照らしているのは太陽が沈んだあとの残光ばかりだ。自らの頭に手をやると、解いた覚えのない髪が指に絡まる。ぐしゃぐしゃだ。
 ふと部屋に自分以外の人の気配を感じてみると、枕元にヴィヴィオがいた。うつ伏せで眠っていたせいで気付かなかった。私は少女の頭に手を伸ばすと、無意識に長く伸びた髪を撫でていた。
 少女がここにいる理由を考えるなんていうのは無粋だった。
 押し返すような静寂の中、少女の髪がこぼれる音が私の鼓膜に優しく触れる。湧きあがる感情は愛しさ以外になかった。少女に触れる指も注がれる視線も向けられる想いも、すべてがヴィヴィオへの愛しさでいっぱいだった。この時間が永遠でないことを残念に思う。時間を操れる魔法が使えたら、私は間違いなく今時間を止めていた。空腹も忘れてじっと少女を見詰める。私は少女の細い髪を指で梳いてはこぼした。少女の髪は生まれたての赤ん坊のように柔らかく、触れるだけで満たされた。しかしやがて少女は眠りから立ち上がる。そのとき短い永遠が終わった。
「なのはさん」
 幼子ではなく少女の顔で、ヴィヴィオは私を見上げる。つい視線を合わせてしまうと、紅と深緑色の瞳に吸いこまれていく錯覚が起きる。
 頬に触れる少女の手。
「なのはさん、大丈夫? 顔色はそんなに悪くはないみたいだけど」
 外気にずっと触れて冷たい少女の手にびくりと震える。私の動作に少女は慌てて手を引いた。
 ごめんなさい、とヴィヴィオは言った。
「なのはさんの体のこと。悪くしているなんて知らなかった。それなのに模擬戦挑んだりしちゃったんだ、私」
「言ってなかったんだから知らなくて当然だよ」
「それでも」
「わたしはそんなことより、今ヴィヴィオが傍についていてくれたことの方が嬉しい」
 私はヴィヴィオの頭を再び撫でた。俯く少女はとても可愛らしかった。じっくりと時間をかけてつむじから肩のあたりまで撫でて満足すると、私はベッドから這い出る。以前までの無愛想な顔つきではなく年相応に頬を緩めたヴィヴィオを見て、してあげたいことができた。小型の冷蔵庫にある材料を確認すると私は半身だけ少女を振り返る。
「今からちょっとだけ待っててくれたら良いものを作ってあげる。飲むとすごく身体が温まるんだ」
 ヴィヴィオは頷いた。じゃあ待っててねと言い残すと、私はしばらく使わなかった鍋をとりだした。洗ってから十分に水気を取って砂糖をひき、間に牛乳と水を温めておく。鍋を中火にかけ、砂糖が溶けてくると鍋を揺すり万遍なく溶かした。飛び散らないよう注意を払いながらそこに温めた牛乳と湯を入れ、よく混ぜてから完成となる。キャラメルミルクだった。
 できあがったものをカップに入れると私はヴィヴィオに差し出した。甘い香りが立っている。少女は白いカップに入ったそれに怪しむことなく口をつけた。そこで私はまた少女の初めてを目にする。私に対して微笑んでくれたのだ。ヴィヴィオの笑顔がこれほど自分を幸せにしてくれるなんてあのときはわからなかった。私はヴィヴィオの笑みにつられ、思わず頬を緩ませる。
「美味しい」と少女が言った。
「すごく甘い。なんていう名前の飲み物」
 自然な笑顔が出たのは本当に久しぶりだった。ヴィヴィオの問いに、昔を噛み締めるように答える。
「そう、キャラメルミルクっていうんだ。なんだかすごく、なんていえばいいのか」
 あたたかい――懐かしい。そう何口目かでヴィヴィオは言った。
 昔、一緒に飲んだキャラメルミルクの味を思い出していた。けれどこのとき、向き合って飲んでいなければ味わえないものがあった。言いようのない幸福感。カップを両手で包む少女を眺めていると、いつしか明日からの生活が少しだけ楽しみに思えていた。


 幸せな日々が流れている。
 ヴィヴィオとはまだ幾分ぎこちなかったが、以前に比べるとスムーズに話せるようになっていた。
 模擬戦の後に感じた絶望が嘘のように、少女は私に対しなんの落胆も憤怒も持っていないみたいだった。それどころか私の体のことを心配した。少女は私のことを気にかけてくれていたのだ。例え私に振り分けていた気持ちが百分の一ほどであっても、考えてくれていたことに変わりはない。ひたすらに嫌われるよりはずっといい。私は今まで少女に話しかけていたことが無駄ではないと知り、嬉しくなった。
 お昼に誘っても断ることはなかった。
 一緒に食べようといえば、こくりと頷いてくれた。寒さに赤らんだ頬は柔らかかった。遠くに見える冬などものともしない緩やかな表情をたまにだけど見せてくれるようになって、私はますます幸せな心地がした。
 前のままのヴィヴィオじゃない。その違和感を否定はしない。けれど少女はヴィヴィオで、ヴィヴィオはゆりかごの中の成長した姿だった。だからそれはきっと二週間もすれば馴染むくらいに些細な違和感だろう。
 ――どんな顔をして、君はヴィヴィオに近づいていけるの?
 夢の中の私に言われることがあっても、私は逆らうことができた。ここで引けばすべてが無意味だった。
「なのはさん」
 訓練がひと段落ついた頃、汗を流しに隊舎に向かっていると木陰からヴィヴィオが顔をのぞかせた。片手に持った本を見るに読書でもしていたのだろう。
 ヴィヴィオは本を読むのが好きなようだった。部屋に行けば魔導書や小説があり、哲学書や心理学書なども揃っていた。本は町にある図書館から調達しているらしい。六課隊舎を出て三十分も歩けばそれなりに大きな図書館がある。品揃えは無限書庫に到底及ばないが、それでも少女が一生のうちにとても読み切れないぐらいの量があった。管理局員のカードを出せば二週間は借りられ(カードがなくてももちろん借りられる)、返すときは足を運ばなくても郵送可能なことからその図書館は魔導師に優遇されていた。この前はティアナがヴィヴィオに連れ添い、足を運んでいた。執務官試験に向けて勉強のためだろう。
 隊舎の傍にはちょっとした広場がある。食後の散歩によく歩く道の傍ら、普段踏み入ることのないその場所の地面には、芝に似た短い雑草が敷き詰められている。春のように小さな花が咲いているわけではなく華やかさはない。けれど生える雑草絨毯は秋色に染まることなく青を保っていた。隅にはちょうど陰になる木もあり、日中文字を読んでいても目を傷める心配はない。ほどほどに大きな木なので背もたれにもなるし、雨が降れば流石にあてがわれた部屋で読むのだろうが、晴れていればここは読書をするのに絶好の場所らしかった。
 今日は天気がいい。暖かな陽が枝葉の隙間から差し込み、地面に光を散らしていた。
「これからアイナさんにお茶を淹れてもらうんだけど、来る? よければだけど」
 遠慮がちにではあるが、見かけたら声もかけてくれる。そういう場に誘ってくれることが嬉しい。仕事はあったが三十分くらいなら時間が取れそうだった。
「いいよ」
「うん……、じゃあ行こう」
 そう言い、ヴィヴィオは背を向けて歩き出す。しかし少女はもう私を跳ねのけたりはしない。素っ気なくされることはあっても、そこに流れる一筋の優しさが私には感じられた。あとはたゆたう時間に身を任せていればいい。
 お茶を飲み交わした他にもヴィヴィオとは行動を共にした。
 ある日にはザフィーラと三人で、またある日にはヴィータと遊んだ。同じくらいの年齢のスバル、ティアナとは気が合うのか一緒にいるところをよく見かけて、私もそれに混じった。ただ部屋が同じだった以前とは違い、フェイトと三人でいるというのはなくなってしまった。
 もともと彼女は忙しい人で、このところあちこちに出ていき特に忙しくしていた。夜か早朝を見計らわない限り会うことさえ稀だ。仕方がないとはいえ、少なからず寂しくなった。下手をすれば会う努力をしないぶん、機動六課に入る前より顔を合わせる時間が減っている。フェイトと四六時中一緒だった学生時代を思い返せば湧きあがる寂しさは当然のものなのかもしれない。
 けれどヴィヴィオに記憶はない。いいことなのか悪いことなのか――共ににいられる時間が少ないなら、記憶はないほうがいいかもしれないが――いずれにしても耐えられる程度の寂寥だった。流れる時間というのはひとりひとりに違うものなのだ。だから寂しさの量も感情の振れもおそらく違う。

 私は日々、ヴィヴィオとの仲が再び深まっていくのを実感として受け取っていた。昔と同じようにとはまだいかないけれど、冗談のやりとりができるくらいには仲良くなったと思う。
 あの模擬戦からしばらく経ったある日、丸一日を使った出張任務が私とヴィータに言い渡される。正しくは私に、それに付き添う形でスターズ分隊の副隊長が同行することになった。任務内容はレリックの確保と周囲の探索だ。
 降り立った地は渇いていた。砂漠になるまえの地割れが見られる。辺り一面に終わった世界が広がっていた。私はどこかでこの光景を見たことがあるような気がする。しかし思考はそれ以上先へ進まず、正確な記憶もあちこちに散らばったままだった。拾い上げることは諦めて、私はすぐに目の前の任務に集中する。とりあえずの危険はなさそうだった。いかなる生物も、レリックに集まってくるはずのガジェットさえも見当たらない。
 途中、探索の必要なんてあるのか、とヴィータが漏らした。
「みたところこの世界は終わっている。ロストロギアの回収がすんだあとにすることってなんだ。レリックが発見される場所の常である壊れた研究所もない、ガジェットもいないとなれば、上からの監視じゃ限界のある、入り組んだ場所を歩くくらいだぞ。んなの普通、わざわざエース級魔導師一人投入するか?」
 私も同意しかけるが即座に思いなおして首を振る。
「何か考えがあるんだよ。わたしたちは任務を受けたんだから、それをこなせばいい。できなければ困るのは八神部隊長だからね、そんなのは嫌でしょ」
「まあそうだけどな」
「ごめんね、付き合ってくれてるのに」
「それは別にいい。と、次に行くか」
 話しつつも探索を進めていたヴィータが立ち上がる。彼女はしゃがみ、裂け目から生える折れた草を指先でもて遊ぶ。触れただけで枯れた草はぱらぱらと地面にこぼれた。その間も視線や意識は周囲に配られている。
 私はふと、任務に赴く前に見たヴィヴィオを思い出す。ヘリに乗り込もうとする私の背中に声がかけられた。振り向けばヴィヴィオがいた。ヘリが作り出す風に少女の長い髪が煽られ、少女は髪を片手で押えながら私を見つめている。一瞬、ヴィータに用事かとも思ったが少女は私を見ている。
 どうしたの、と聞いてみるが少女は動かない。
「ヴィヴィオ?」
 乗りかけたヘリから降り、傍に寄って尋ねる。そこでようやく少女は口を開いた。
「一日開けるって聞いて。別になのはさんに会いたかったわけじゃないけど、自分でもよく分からないけど、なんとなく来ないと駄目だって思ったの」
「心配してくれたのかな」
 少女は弱く首を振る。否定されてしまったようだ。けれど私は一度瞼を落とし、ゆっくりと少女の腕に手を添えて微笑んだ。
「ヴィヴィオは会いたかったわけじゃないって言ったけど、わたしは出かける前に少しでもヴィヴィオと会えて嬉しいよ」
 ありがとう。そう言うと、少女が息を呑むのが分かった。
 まるであのときの再現だと私は思う。違うのはヴィヴィオが一人で見送りにきてくれたということだ。たった一日の不在が少女の中に何かしらの不安を持ち込んだのかもしれない。私は申し訳なく思い、また嬉しさが湧き上がった。
「それじゃあ行ってきます」
 私は先に乗り込んだヴィータを追うように、少女に背を向けた。
 一日が過ぎる。レリックの確保も無事完了し、適当に探索を続けこれ以上は見るべきものがなくなると切り上げた。機動六課に戻ると、私は真っ先にヴィヴィオの元に向かう。もちろん今度こそただいまを言うためだった。

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