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2019-11

『秋、はらむ空』 六章 その始まりは、あの終わり……6

『秋、はらむ空』 各タイトル⇒目次

六話「永遠の中の一瞬」
このときもう、なのはにはヴィヴィオしか見えていなかったのかもしれない。
その認識を邪魔したのは、なのはの無自覚の遠慮だった。
なのははどこまでも他人から距離を置いているからこそ、他人を気遣っている。

――誰も選ばないという、それが私の出した結論だった。



 秋、はらむ空
 六章 ―その始まりは、あの終わり―


 6.永遠の中の一瞬

 そこが最後で、唯一の逃げ場だった。

 もし本当のことがなければ、嘘というのは間違いなく真実となろう。言ってしまえば嘘にしか真実がないということであり、誠実さの欠片も存在しないことになる。
 私は嘘つきだ。
 私は、私のことを考え私のために生きている、あの子を好きだという気持ちを大事に抱えて持って。皆が大切だというふりをして、心の奥深くにはあの子への気持ちで溢れている。ヴィヴィオは私のすべてなんだろう。空に上がったとき、私はそのことをようやく受け入れられた。けれどいろんなことが遅過ぎてしまった。
 ――もし飛べるようになっていたら。
 夏の、汗が滴るように暑い日だった。夏はいつでも暑い。だから私は秋が好きだった。でも今は夏以外の何物でもない。
 ――ここを出て、教導隊に戻ってもいい。
 朝、はやてが私に言った。一緒にいたいといっても、なのはちゃんの夢を阻むほどではないと彼女なりの優しい口調で言ってくれた。私は彼女の言葉にまだ答えていない。けれど今空にいて、ヴィヴィオが私のすべてだということを理解した上で、既に答えは出ていたのだと分かった。おかしい話だろう。すぐに返事をしなかったのは、ただ口にしたくなかっただけなんて。
 空に上がる直前に向けられたいくつかの視線に気付いていた。きっと彼女たちはこの後の可能性に気付いていたんだろう。
「わたしが出て行ったら、機動六課はどうなるの?」
「それは、もちろん」
 もちろん――時期を見て、解散ということになるだろうと苦笑いをした。はやてが笑わなくてはいけないときに、仕方なく笑う顔だった。私はだけど慰めの言葉をかけることも忘れて、背を向ける。……戻れるはずがなかった。出ていけるはずがないのだ。はやてが本気で言ってくれていたとしても、私に提示された選択肢はゼロだった。
「優しいね、はやてちゃんは」
「皮肉なん?」
「まさか。一緒にいたいと思ってくれてる、それが嬉しくないはずがないじゃない」
「それは本当かもしれへん。けど嘘つきやな、なのはちゃんは」
「まだ答えられない。けれど大丈夫だよ」
 拒絶したいときに使う言葉で私は逃げた。
 そして今、地上に降りたあとで部隊長室に出した結論を提出しにいった。はやては今朝以上に険しい顔つきを無理やりに歪め、それから笑った。彼女が言った言葉は一つ。けれど明日からのことを思えば私にはどうでもよくなっていた。部屋を出、書類仕事に取り掛かる。遠くの席でスバルとティアナが同じく画面を睨んでいて、私はひとたび瞬いたあと、自分の仕事に戻った。
 ガジェットの出現などがなくなったかわり、たまに回されてきたおかしな事件を解決していく他は変わらない日常が繰り返されることになる。危険な仕事も特にない。あったとしても、私にまで回ってはこないようだった。たまに夜、フェイトやヴィータに出動がかかった。でも私は待機任務であり、彼女たちの帰りを待った。傷だらけで帰ってきたこともあるし、何事もなく笑顔を見せながら帰ってきたこともあった。そこには嬉しさなんてものはなかった。不変は望むところだったが、この中はすでに居心地がいいとはとても言えない。しかしそれはただの我が侭だった。かといってしたいことなど何もなかったからだ。
 それに多分、ヴィヴィオがいてくれたらよかった。『なのはさん』と呼んでくれるあの子が笑ったり怒ったり、でも最後には笑ってくれるならいいと思っていた。そういう時間があれば私はどこにだっていられる。フェイトが心配なら傍にいて、ヴィータが護ってくれたなら頭を撫でて、ティアナが頑張っていたら誉めた。そして傍にはヴィヴィオがいる。――そうだ。深く考えてみるまでもない。これ以上の幸せが一体どこにあるというのか。 
 私には誰か一人を、もう選べない。ヴィヴィオを特別に思っていても選んでしまえば大切な人が苦しむし、皆を選べばヴィヴィオが苦しむ。どちらも自分には耐えられない。“自分が耐えられない”。
 誰も選ばないという、それが私の出した結論だった。
 だからヴィヴィオがここを出ると決めたのかもしれない。

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