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2019-07

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『秋、はらむ空』 七章 閉ざされた自身……1

『秋、はらむ空』 各タイトル⇒目次

一話「小さな騎士」
名ばかりの騎士。このとき自分を最も責めたのはヴィータだった。
ヴィータは悪くないよって。言ってあげる人がどこにもいなかったから。

――それはヴィヴィオに願った理想のままの姿だった。



 秋、はらむ空
 七章 ―閉ざされた自身―


 1.小さな騎士――ANOTHER SIDE

 その騎士が動けなかったのは、別に現実から目を逸らしていたからではない。むしろ直視していたからこそ、動かなかった。騎士はすでに、たった一人の騎士である。もともとの主を離れ護る。その対象が別の少女と結びつこうとする場面を見て、騎士は騎士らしく、見守るに近い形を取ったのだ。騎士には一番良い道であるように思えていたから。これまでずっと皆を選んできたなのはが、一人に決めたのだ。手を伸ばしたのは、なのはにとって最愛の人であった。想い合う二人が一緒にいて、それ以上の幸福はあるものか。主の幸福を願うのが騎士の役目だった。だからヴィータは事の成行きのすべてを静観する。
 ただ喉が渇いていた。目の奥が白く、視界が狭い。拳をきつく固めながら騎士はやがて知った。――ああ、自分はなのはに選ばれなかったのだ、と。
 しかし幸福を邪魔する者がいた。フェイトに殺気と憎悪と哀愁と恋慕を込め、詰め寄られるなのはを目にし、ヴィータは無意識に体が動いた。騎士にとっては仲間であり、友人だ。けれど手をかけようとするならば話は違う。凍りついて動かなかった足を溶解させ、すぐに飛びかかろうと構えた。けれど騎士の突撃は元々の主によって阻まれる。大好きな八神はやてがそっと囁く。大丈夫。ヴィータはその声に足を止めた。ヴィータを除く守護騎士に思念通話を通して合図をし、フェイトを止めさせ、なのはを確保した。そしてなのはからヴィヴィオを引き離す。
 まるで悪魔の所業であると騎士は思う。なのはの表情は青白く、すべてを諦めた者のみができる表情をしていた。見たことがあった。昔の自分達の顔だ。はやてに出会うまでの騎士たちがそうであったから、ヴィータにはすぐに分かった。なのはは全身に僅かにだけ残っていた勇気や気力を掻き集め、まとめ上げて、ようやく伸ばした手が触れる直前に引き剥がされたならば当然だろう。なのはの顔を見れば、それは相手のためを思っての行動ではないことなど明快だった。では誰のためだろう。はやての行動は一体誰のためのものなのか。
 あたしだ――。
 はやての言葉を無視し、フェイトを無理やりにでも自分が止めていれば、ヴィヴィオとなのはは離れることがなかったのだ。
 ――あたしはなんてことをしたんだ。
 騎士は深く俯いた。しばらく顔を上げることもはばかられる気分だった。六課隊舎の部屋に連れて行かれるなのはと、腕を引き背中を支えるはやてが陽が暮れる寸前に見た最後の景色である。ヴィータが再び顔を上げたとき、そこにはヴィヴィオしか残っていなかった。
 ヴィヴィオは騎士に対して背を向けていた。ぼんやりとなのはが消えた隊舎を眺めている。夏の、熱が引いていく夜の始まり。
「ここに残るんだろ。もう日も暮れる、冷えるからそろそろ中に入っとけ」
 放っておいたら延々と見送ってそうな少女に、騎士が声をかける。当分二人は会えることもないだろうに、体を壊したら心配する奴がいるんだとつい思ってしまって。
 なのはが手を伸ばしたならば、ヴィヴィオはもう離れてはいかないだろう。少なくとも今日はこのままどこかに行くなんてことはないと確信していた。きっと自分ならそうである。ヴィータなら、なのはが自分を求めてき、それを放り捨てることなどできるはずもない。以前のヴィヴィオならともかく、事件後からのヴィヴィオはなのはに対し様子がどこか違った。気持ちを押し付けず、なのはを最も尊重する。そして気を追わない程度に手を差し伸べてやる優しさと寛容さを持った――それはヴィヴィオに願った理想のままの姿だった。
 ヴィヴィオはちゃんとなのはを連れ出そうとしてくれた。ヴィータにはできない。なのはを縛っているものの一つにヴィータの存在があったのだ。騎士など名ばかりである。傍にいることに目がくらんで、近くで護ることにのみ囚われて、ここから抜け出そうなどと思えなかったのだ。
 振り返っても、少女は佇んだままであった。騎士は名前を呼ぶ。ヴィヴィオ、と言って、なのはの声を思い出した。なのはからその声を奪った自分が憎らしい。
「お前は悪くない。さあ、行くぞ」
 ヴィヴィオは背中のまま無言で頷いた。
 日が暮れる。ヴィヴィオのしな垂れた髪は、月のようには光らなかった。

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