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2019-11

『秋、はらむ空』 終章 無人の空……1

『秋、はらむ空』 各タイトル⇒目次

一話「秋の空」
秋の空というのはどうしてこうも寂しくなるんだろうね?季節の変わり目というならば春だってそうなのに。自分にとって春はただ苦しいだけだ。
でももしかしたら他の人にとってはそうじゃないのかもしれないな。

――それは彼女の何よりの願いだった。



 秋、はらむ空
 終章 ―無人の空―


 1.秋の空――ANOTHER SIDE

 錆ついた風が吹く。褐色の草葉がささやかに抜けていく風に流れて飛ばされて、ふっと視界を遮る。些細なあれこれが憂愁に染まる季節がやってきた。事件を解決した二年前の夏もこうして終わり、一瞬ここがどこかと見渡せば既に訪れているような秋の日も機動六課は続いている。エースの不在も、秋の訪れには一切関係がない。冬もそうだった。春も、夏も。いろんなものが彼女を通り抜けていったことを、機動六課の何人かは覚えている。
 今は新暦七十七年の秋。
 この一年の間には当然変化があった。なのはの教え子であったティアナ・ランスターは半年ほどの補佐期間を経た後で執務官試験に合格した。今では彼女は優秀な執務官である。身長も随分と伸びて、フェイトには及ばないまでも、なのはの身長はとうに越えただろう。ティアナは六課に居ながらもよく出張で不在だった。フェイトと同じく忙しくし、たまに共同で事件を解決して回っている。もちろん六課に運び込まれた事件は最優先にて取り掛かる。機動六課の信用は実績と共に上昇し、八神はやて部隊長も指揮官として活躍している。機動六課をまとめ上げるのには大層の努力がいるだろうが、そこは有能なはやてである。どんな困難な状況もいつだってこなしてみせた。かつてエースオブエースがそうしたように、はやては機動六課の頂点にてその場所を守っている。出て行ったあの日に放棄しても良かった役目であったのにも関わらずだ。
 部隊長の下を、守護騎士一同が支える。そしてヴィータはなのはの所属だった航空戦技教導隊に入隊した。いつかヴィータは彼女に誘われたことがあった。もう彼女は覚えてはいないだろうし、あのあとは本当に色んなことがあったのだ。ヴィータは今でも騎士だった。ヴィータはずっと騎士でいる。誰よりも高潔で強い騎士として戦場に赴き、薙ぎ払う。ヴィータこそが騎士だった。
 そんな風にして六課の隊員たちは事件を解決していった。平和など遠くにあるものだったが、少なくとも両手で届く範囲の悲しみは減らしていこうとしていた。それは彼女の何よりの願いだった。たった一人、誰よりも護りたい存在を探しに出た高町なのはの心底からの想いである。
 そしてフェイトは菜乃の墓をつくる。自然と厳粛さで囲まれたあのポートフォール・メモリアルガーデンの片隅に一つ拵えた。ナノ・テスタロッサ・ハラオウンの名を刻み、フェイトは両手を合わせる。そうやって僅かな余暇を見つけては少女のもとを訪れた。少女の好きなものをほとんど知らないことにフェイトは気付き愕然ともしたが、今さらである。だから黄色い花を添えるとフェイトは変らぬ近況を少女に語り、今日も元気だよ、と告げた。
 元気だった。それでも、口にはできぬ想いが胸の中に静かに振り積もっていくのをそれぞれに感じていた。秋は哀愁を最も呼ぶ季節である。雪が降る頃には消えてなくなる程度の寂寥に違いない。そんな強がりはしかし、寒さと白い世界に身を置いた昨年に否定してしまっていた。
 別に誰もが笑顔で送り出したわけではない。涙を流さなかったわけでもない。一年以上が経った。いったい君はどこにいるんだろう?
 なのは、と誰かが呟く。それが誰の声であっても不思議ではなかった。

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