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2019-05

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僕のための君の枷

目次⇒陽の中に塗り込めて。

フェイなの、というかフェイト→なのは。時期はStrikerSより前くらい。
続きよりどうぞ。



 僕のための君の枷


 もし君が両足を地に縛りつけてほしいと望むなら、いつだって枷を付けてあげる。
 君の願いはそのまま、私の願いをも叶えることになる。それは、やっぱり君も望んでいることだろう。だけど君はいつだって、自分自身の望みを見せてくれたことはなかった。それは私が頼りがいがないという理由ではなく、単に君が強いから。だから私の願いも、永遠に叶うことはない。
 淡い青を思い浮かべると真っ先に浮かぶのは君だった。でも君は、鋭く尖った金色を浮かべて、そこに私を思い出してくれるだろうか?

 ぼんやりとした始まりの記憶が鎖のように繋ぎ合わされていく。続く、終わりのない小さな輪がいくつも結ばれる。私の大好きな母さんの輪っかは幾つか目で終わった。それからは君が鎖の大部分を占めるようになる。私の記憶はつねに君で彩られていた。
 高町なのは。蒼い、まさに夏空のように澄んだ瞳をしたなのは。しかし春の空のように、たまに霞む青の瞳をもった私の大切な友達。なのはの移ろいやすい瞳に惹きつけられて、私はたまに自分の道を見失った。だがそれは決して悪いことじゃない。有意義とさえ思う。
 ジュエルシード事件を終えて裁判の中、なのはに会わずにいた半年があった。たまに送られてくる映像に焦がれ、写真に想いを注ぐ。名前をはじめて呼んだその日は、プレシア母さんが優しい元の母さんに戻ってくれるようにと願ったのと同じくらい強く、なのはを求めていた。――なんて、それは流石に言いすぎかもしれない。きっとこんなことを言えばなのはは嬉しいよと言いながらも否定するだろうし、自分でも否定出来てしまう。プレシア母さんは私のすべてだった。母さんが私に娘であることを願ってくれるなら何を投げ出してでも彼女を護ろうと決めた覚悟は、紛れもない本当だった。だからこそ否定しよう。それから、付け足してやる。それでもなのはのことを強く求めていると。
 今の自分の中に日ごと編まれていく鎖は、ちゃんと生きている日の分だけ輪を増やしていく。だから、母さんの分の輪が止まっても、なのはの輪は増えていった。
 会えなかった半年間で、なのはへのまだ覚束なかった想いが鮮明なものになった。なのはが危機にさらされて、それから護ろうと間に立ち塞がったとき、鮮明な想いに手が届いた。なのはが私に会えてうれしいと抱き締めてくれたとき、……。
 そうして繋がっていき、私という存在が出来上がる。
 母とリニスと、それからアルフとの思い出は未だ心を震わせる。時の庭園にいて、数か月に一度会えるか会えないかの母を、いつも心の片隅に置きながら訓練と勉強を重ねていた日々のこと。嵐の中、アルフを使い魔にしようと決めたこと。その時に感じた一つの命の膨大なこと。バルディッシュが贈られたこと。リニスがいなくなってから家の中が暗くなったこと。母に使われ、ジュエルシードを求めて出て行ったときのこと。いくら体に傷を刻まれても、心までは折れぬように頑張ってきたこと。
 それらはちゃんとあった。その上になのはがいる。
 なのはは新しい自分を始めるきっかけをくれた。その彼女に、私がしてあげられることを考える。名前を呼んで、危機には駆けつけて行って……だけれどもそれ以上の事が浮かばない。
 今、なのはにしてあげられることが見つからない。
 なのはは、名前を呼んでくれて、一緒にいてくれるだけでいいと言った。「フェイトちゃんの笑顔がわたしを幸せにするんだよ」といかにも自然な表情で言うものだから、私はつい納得してしまったのだ。けれどよくよく考えてみると、なのはの幸せが本当に私の笑顔だけで成り立っているとは思えない。
 君はどうやったら笑うのかな。
 君は、どうしてそんな顔であの子を見つめるのかな。
 それじゃあとても私の笑顔だけで幸せになるなんて、信じられないよ。けれどもきっとなのはは、私の笑顔で幸せにもなってくれるんだろうということを知っている。なのはは幸せであるだろう。私のために。
「ねえなのは。君はどうしたら」
「――うん?」
 こちらを振り返るなのはの、あまりに素敵な笑顔に私は言葉を飲み込む。
 いいや、と首を振った。
「手を繋いでもいいかな?」
「にゃは。もちろんだよ、フェイトちゃん」
 掌が包まれる。しかし彼女の掌をあたたかいとは思わなかった。赤らんだ頬と、亜麻の髪がかかる瞳がこちらに向けられる。惜しみない彼女の視線を、拾えないことが惜しかった。
「少し冷たいね」と私は言った。
「そうかな?」彼女は少しも気分を害した様子ではなく首を傾げる。それからやはり笑ってこう言った。
「たぶんわたしの手が冷たくなったんじゃなくて、フェイトちゃんの手があたたかくなったんだよ」

 なのはの言葉はいつでも私を明るくする。
 しかし同時に、私はおぼろげな不安というものを感じてしまう。
 私の手があたたかくなればなるほど、彼女は私から気持ちが離れていってしまうような気がしてならなかった。あるいは本当は私の手は冷たいままで、彼女の手の温かみが失われているのかもしれないと思う。なのはは人のためなら平然と嘘をつく。その時、私たちはみな騙されて、どうにか見抜けるのはずっとずっと後のことだ。
 嘘によって生まれる彼女の悲しみは二度と行けない場所に取り残され、私たちは救われている。どれだけの嘘をつかていたのかさえ見当もつかなかったが、彼女が嘘をついたとき、見抜けなかった失望と嘘をつかれたことによる己の落胆よりもずっと彼女の方が深く傷つけられていただろうことを、私はやがて知ることになる。だからそのうちに私は、彼女の嘘を信じることにする。信じてしまえば嘘なんてものは存在しないのだ。
 それでも信じられなくなったら、彼女を地面に縛りつければいい。私が望めば、彼女はにっこりと笑って頷いてくれるだろう。
「いいよ、フェイトちゃん」
 偽りさえ見出せぬ笑みに、私はつい顔を赤くしてなのはに夢中になる。
 なのはの笑顔はなのは自身を傷つけはしない。痛ましいと感じるのはまわりだけである。しかしそれも一瞬のこと。彼女が稀につく嘘のように、私たちをちゃんと護った。それに彼女の笑顔は彼女をも護っていた。なのはについて私ができることなんて実は何もない。
 だから結局どれだけ考えを巡らそうとも、なのはのことを考えていればそれが一番良く、他は無駄だった。それでなのはから笑顔以外のすべての表情を奪いつくしたとしても、私のせいじゃなかった。
 アリサとすずかと、はやてとシグナム。リンディ母さんにクロノにエイミィにアルフ。それからなのは。私は既に一人ではなく、とても恵まれている。

 ――そして君は、ごくごく自然に一人だった。
 君は私がつけた覚えのない枷を両足にはめて、勝手に空を想い焦がれているんだ。
 そうだ、勝手に、私のためにね。

 だから君は鋭く尖った金色を見ても、きっと何も思わない。



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魔法少女リリカルなのは二次創作物、主に小説を扱っています。
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なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

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