その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
WILDERNESS―1.独房 2007/09/30
なのは×アリサ前提のフェイト×なのは。
なんだけど、どちらかといえば「フェイト⇒なのは→←アリサ」です。
なのはとフェイトはそれでも恋人同士。アリサとなのははお互い片想い。おいなのは、というつっこみはやめてくださいwそのうち語られるはず。
ついでにバーニングアリサ出現。だけど主人公はなのは、になってるといいな!
フェイト好きさんは、もし読んでいただけるなら覚悟の程をお願いします。
設定からしてアレだから、辛くなるかもしれないです。
長編なので、かなり長い話になりますが、出来れば気長につきあってやってください。
WILDERNESS 1.独房です。
まだバーニングのバの字もでてないんだけど。
それは2話のアリサ視点からということで。
おっけー来いやあ!という方は、続きからどうぞ。
WILDERNESS
1.独房
あるとき私は気付いた。
自分の立つ場所には最果てが際限なく広がっていて、何歩踏み出そうが、無限に広がっていく。どこまで進んでも途切れる事がない荒れ果てた地面はいつ見てもモノクロに彩られている。
そんなとき私はふっと自分の今いる場所を見失ってしまう。自分がどこにいるのか、本当にここに存在しているのかさえ危うい。地面がぐらつく、というのではない。希薄でもない。ただ実体がないだけ。
無彩色の空は遠くて近い。気を抜いた瞬間に遠ざかったり近づいたりした。
私はそんな不安定な空を飛ぶのが好きだった。不安定な中に身を置けば、不思議と自分が確かなものに思えてきた。
そんな自分だから、以前に親友でもあり戦闘でのパートナーでもある少女に尋ねられたことがある。お前は孤独なのか、と。もちろん私は首を振る。孤独であるはずがない。私の周りには笑顔を向けてくれる友達が、その少女も含めてたくさん居たのだった。更に幸せなことにこんなくだらない自分を好きだと言ってくれる人もいる。(これは自慢)
彼女は綺麗で可憐な笑顔をしていて、強くて優しくて。なによりも私の傍にずっと居てくれる。学校でも戦場でも、彼女は笑顔で隣にいてくれてる。その度に、無限に広がった荒地に水が浸透していっては、自分は幸せなのだと感じた。
フェイト・テスタロッサは出逢ってからいまも隣にいて、微笑をたたえていた。それを受けている自分はやはり幸せなのだと思う。
毎時間鳴る授業の開始と終了の合図が静寂な教室に響くと、教卓に立つ教師は挨拶をしてそのまま出ていった。直後何人かの生徒が席を立ち騒ぎ始める。そのあとも疎らに立ち始めるクラスメイトの中で、私は未だにノートをとり続けていた。この授業で黒板に書かれたものではない。学校を休みがちな自分にと友人がとってくれていたノートだった。今更無駄なんだろうと分かってはいたが、何もしないわけにもいかない。義務教育はあと三年近く残っているのだ。
かくして私は腕が釣りそうになりならもペンを走らせている。おそらく今頃後ろの方の席では自分と同じ境遇の二人もせっせとノートに文字を走らせているだろう。
気付けば机に影が落とされていた。顔を上げると、向日葵の花に赤をほんの少しだけ混ぜ合わせたようなサンフラワーの色をした髪を、頭の上の方でちょこんと結った少女がノートを覗き込んでいた。学校でいる数少ない友人の一人、アリサ・バニングスであった。
少女は机に両手をつき、顔を覗きこんでくる。どうしたのかと首を傾げると、大げさに溜息をついた。意味も分からず、更に首を捻る。
「あんたも大変ね」
初めは分からなかった言葉の意味を理解し、意図せずして苦笑が漏れた。対して少女は、眉間に皺を寄せてはいたが、漏れる微笑みは誤魔化せてはいなかった。機嫌は良好のようだ。また自分の顔からも苦味がとれ、隠し通せずに甘味を増した笑顔が表にでてくる。
「久し振り、なのは」
「うん、久し振りだね、アリサちゃん」
その少女と最後に会ったのは、もうずいぶんと前のことだったのだ。
管理局の仕事に本格的に身を打ち込み始めたのは、ここ一年ほどのことだ。陸士訓練校を三ヶ月という短期間で卒業し、局では貴重な空戦魔導士として、また戦技教導隊入りを目指す候補生として、時間などいくらあっても足りなかった。そうなれば必然的に私事にとれる時間が削られるのは当然のことであろう。もっとも訓練に多く時間を割いていることもその原因だった。
同じくして、保護観察の待遇だったの八神はやてはそれを解かれてレアスキル持ちということで相応の待遇を与えられ、捜査官としても働き始めていた。毎日のように局に来ていても顔を合わせることなど殆どない。ヴォルケンリッターも同じ。
だが一人だけ、そんなぎしぎしに詰められた時間の中も会いにきてくれる人もいた。自分も忙しいだろうに、彼女は毎日のように私に会いに来てくれる。スーツ姿に身を包み、長く綺麗な黄金の髪を下のほうで一つに束ねた彼女は、息を切らせながら名前を呼び、抱き締めるのだ。彼女のライトニングイエローの髪はどこに居ても良く目立つ。当然遠くに居ても、視界に入ってさえいれば私はその姿を見つける事が出来た。
私は訓練場でレイジングハートとともに自己を鍛えていたところだった。手を止めるわけにもいかず、念話を送る。
(フェイトちゃん、仕事はもう?)
(もちろん終わらせてきたよ。なのはは)
(私はあと少しかな。仕事って言うか、訓練だけど。もう少しで終わらせる予定)
(分かった。それじゃあ表で待ってるよ)
その間も苦手な近接戦闘を同程度のランクの人に相手をしてもらっていた。といっても、私は魔導士ランク昇級試験をSランクまでしか受けていない。その理由には時間と大人の事情が絡んであるのだが、この場合それは関係なかった。一方相手はAAランク。苦手な近接戦闘の相手としては申し分なかった。シグナムさんやフェイトちゃんとまではいかなくとも、その人はなかなかの実力で、いい訓練になっていることが肌で感じられる。それから数分後、レイジングハートが相手へのヒットを告げたところで、その日の訓練は終了した。
その後フェイトちゃんと合流し、久方ぶりに学校へ行けることが伝えられた。はやてちゃんもその日に合わせてくれたという。もちろん私は人目があるというのにはしゃいでしまった。その様子に彼女はくすりと笑い嬉しそうにした。
第97管理外世界である地球。海鳴にある高町家に戻った私と彼女は、ベッドに寝転び何をするでもなく天井を見上げていた。
「しばらくまたこの世界に戻れることになったのは嬉しいけど、なんで?」
「明日一日は休暇という意味もあるみたいだけど、その本質は任務だよ。これははやてからも伝えられたんだけど、どうやらロストロギアが絡んでいるらしいんだ。それも第一級捜索指定の」
「ロストロギアって……ジュエルシードや闇の書みたいな」
「そう。私達が選ばれたのは、条件に合う人が他に居なかったみたい。皆出払ってるみたいだったから」
「あはは、大丈夫なのかな」
問いには二つの意味があった。第一級捜索指定ロストロギアであるのに、私のような未熟者でいいのか。それほど重要な任務に少人数しか割り当てられない管理局は大丈夫なのか、という意味だ。後者は私が心配するところではないが。
クロノくんやはやてちゃんはどう考えているのだろう。
「わからないけど、とにかくやるだけだよ」
「そうだね」
「明日にははやてやシグナム達もこっちへ来るよ」
「嬉しいな」
「でもなのはが嬉しいのは、他にも理由があるんじゃないかな」
「フェイトちゃんは鋭いね」
「鋭いのは、なのはのことだからだよ」
「うん、はやてちゃんには悪いけど、やっぱり一番嬉しいのは学校に行けることかな。二人にはしばらく会っていないし」
彼女と指を絡ませながら、しかしこっそりと思い描く人がいた。
――アリサちゃん、元気かな。
どれだけ時間が経とうが、距離が離れていようが、私にとってアリサ・バニングスという人物が記憶から剥がれることはなかった。
少女は机から手を離したかと思えば、唐突に頬を引っ張った。
「なあに辛気臭い顔してんのよ。せっかくあたしと会えたっていうんだからもっと喜びを最大限に表してもいいんじゃない?」
冗談めかしで笑うが、私はそれどことではなかった。頬が痛い。それに熱い。心臓も凄かった。フェイトちゃんと触れ合ったときですらこんな音は立てない。フェイトちゃんは隣にいて当然、いないと不安、という域まで達していたから大丈夫であるが、目の前のこの少女はそうはいかない。久し振りであることに加え、相変わらず端整な顔を近づけられたら、顔を赤くしても仕方なかった。
そんな私の気持ちなど露ほども知らないであろうアリサちゃんは、からからと笑った。
「嬉しいよ、すごく」
笑顔には笑顔を。昔からの自分の信条をもって、彼女に返す。その途端ついぞ今まで摘まれていた頬が解放される。ひりひりとした痛みは残るものの、意識はそこではなくずっとその人に向けていた。態度の変化に疑問が湧き上がる、が問い詰める間もなく、介入者が現れた。少し残念に思ったということは、表に出さない。介入者はノートをとっているはずのフェイトちゃんだったからだ。
「何を話してるのかな」
「おはよう、フェイト」
「うん、おはようアリサ」
「久し振りに逢ったね、って話だよ」と私が言う。
フェイトちゃんは一瞬苦い顔をしたように見えたが。それも気のせいだ。今はもうアリサちゃんに向き直っている。
「元気にしてた?仕事大変そうだけど」
「ほどほどにね。仕事もまあ大丈夫」
「そう、あんたたちはほっとくとすぐ無茶するからね。すずかと二人で心配してた」
「心配してくれるの?アリサちゃん」
「はぁっ?ベ、別にそんなわけじゃないわよ。っていうかいつそんな話になったの」
「え、だって今言って……」
「空耳よ」
「えー」
「そ・ら・み・み。分かった?」
ぐいっと、再び頬を横に引っ張られる。今度は両方な上、かなり伸ばされる。正直かなり痛いが、口が横に広げられすぎてまともに言葉も発せられない。
「わ、わかりまひた」
「よろしい」
解放される頬をさすりながら、軽く睨む。といっても戦場で向ける視線ほどきついはずはなく、悪戯っ子をしかるような軽いものではある。生涯で彼女を本気で睨みつけたことなど、たった一度しかない。
「ふへ……痛ひよアリサちゃん。顔歪んじゃうよ」
「自業自得よ。ご所望ならもう一度してあげる」
「アリサ、その辺でやめよう。なのはは顔が歪んでも全然可愛いけど、もうすぐチャイムも鳴るし」
優しく微笑む天使の助言により、その休み時間はなんとかそれ以上顔や、そして胸がひどいことにはならなかった。心臓が落ち着いた頃にようやくチャイムが鳴り始める。そうして私たちは再び席についた。
ふとアリサちゃんを眺める。斜め前に着席する少女の背中は、真っ白の制服が陽を浴び尚更眩しく見えていた。
屋上に集まったのは五人であった。幸い他に人はいない。小学三年生からの長い付き合いで、学内の誰よりも気心の知れた友人達だった。私の隣にフェイトちゃん、正面にアリサちゃん。その横にすずかちゃんとはやてちゃんが慎ましく座している。
まず開くのは久し振りの母特製のお弁当だ。手を煩わせたくないこともあり自分で作ろうとしていたところ、どうしてもと母が譲らなかった。申し訳ない気持ちもあったが、こうして食べる段になると素直に嬉しく感じる。配色もよく考えられていて食欲もそそられた。
ウインナーを頬張りつつ隣のフェイトちゃんと他愛ない話をしていると、視線を感じた。正面を向くと何故か顔を背けられ、そのまますずかちゃんと会話を始めた。初めてのことではなく、ほぼ毎度のやりとりとはいえ、やはり悲しいものがある。嫌われているわけではないだろうけれど――。
「なのは、どうかしたの」
こう尋ねられるのも、毎度のこと。その度になんでもないと返す。フェイトちゃんも分かっているだろうに、どうしてだろう。疎ましくは思わないが、むしろ向こうが面倒だと思う。答えの分かっている質問を何故するのか。私はやはり分からない。
「そうだ、今日は家に来る?」
微笑を崩さずに首を傾げながらフェイトちゃんが言った。耐性がなければ顔の一つや二つ染めてもおかしくはないほど可愛らしい仕草だ。私も思わず笑顔で返した。
「うん、それでそっちがよければ泊まっていきたいかな」
「ほんとう?実は誘おうと思ってた」
「にゃは、嬉しいな」
返しながらちらり、と正面に視線をやる。そこにあったのは、呆れながら箸をもった手の平を空に、溜息をつくコバルトの瞳をした少女の姿。
「まったくあんたたちは」
それはほぼ透徹した無関心さで。
「いちゃつくなら他所でやりなさい」
合わせただけの反応に、仕方ないとはいえ、一つ心に穴が開いた。それからすぐにすずかちゃんと親密な視線を交し合ったことにも、笑いを切らせないのが精一杯だった。だがもちろん悪いのは、彼女ではない。勝手に試すような事をし、期待した反応が予想と寸分違わず玉砕しただけに過ぎなかった。
そして食べ終わった五人は弁当を片付けて立ち上がる。
扉に向かう途中で、しかしふらついた。今日までの無理が、安堵とともに襲ってきたせいだろうか、そのまま近場の段につまづき、アリサちゃんの胸に飛び込んでしまう。
「なのは!」
フェイトちゃんの声が遠くで響く。だが霞の向こうに沈んでいって、何を言っているかは分からなかった。ただ顔を埋めた胸が、酷く心地良く、安心したことだけは覚えている。
× あとがき ×
うへえ、サブタイトルからして影があるよ。
一応なのはの心象というか、状況というか。です。
ちなみにこのなのはとフェイト、まだ体の関係とかないです(ぁ
この話を考えて改めておもいましたがフェイトは薄幸がすごく似合うんだなあ。
なんだけど、どちらかといえば「フェイト⇒なのは→←アリサ」です。
なのはとフェイトはそれでも恋人同士。アリサとなのははお互い片想い。おいなのは、というつっこみはやめてくださいwそのうち語られるはず。
ついでにバーニングアリサ出現。だけど主人公はなのは、になってるといいな!
フェイト好きさんは、もし読んでいただけるなら覚悟の程をお願いします。
設定からしてアレだから、辛くなるかもしれないです。
長編なので、かなり長い話になりますが、出来れば気長につきあってやってください。
WILDERNESS 1.独房です。
まだバーニングのバの字もでてないんだけど。
それは2話のアリサ視点からということで。
おっけー来いやあ!という方は、続きからどうぞ。
WILDERNESS
1.独房
あるとき私は気付いた。
自分の立つ場所には最果てが際限なく広がっていて、何歩踏み出そうが、無限に広がっていく。どこまで進んでも途切れる事がない荒れ果てた地面はいつ見てもモノクロに彩られている。
そんなとき私はふっと自分の今いる場所を見失ってしまう。自分がどこにいるのか、本当にここに存在しているのかさえ危うい。地面がぐらつく、というのではない。希薄でもない。ただ実体がないだけ。
無彩色の空は遠くて近い。気を抜いた瞬間に遠ざかったり近づいたりした。
私はそんな不安定な空を飛ぶのが好きだった。不安定な中に身を置けば、不思議と自分が確かなものに思えてきた。
そんな自分だから、以前に親友でもあり戦闘でのパートナーでもある少女に尋ねられたことがある。お前は孤独なのか、と。もちろん私は首を振る。孤独であるはずがない。私の周りには笑顔を向けてくれる友達が、その少女も含めてたくさん居たのだった。更に幸せなことにこんなくだらない自分を好きだと言ってくれる人もいる。(これは自慢)
彼女は綺麗で可憐な笑顔をしていて、強くて優しくて。なによりも私の傍にずっと居てくれる。学校でも戦場でも、彼女は笑顔で隣にいてくれてる。その度に、無限に広がった荒地に水が浸透していっては、自分は幸せなのだと感じた。
フェイト・テスタロッサは出逢ってからいまも隣にいて、微笑をたたえていた。それを受けている自分はやはり幸せなのだと思う。
毎時間鳴る授業の開始と終了の合図が静寂な教室に響くと、教卓に立つ教師は挨拶をしてそのまま出ていった。直後何人かの生徒が席を立ち騒ぎ始める。そのあとも疎らに立ち始めるクラスメイトの中で、私は未だにノートをとり続けていた。この授業で黒板に書かれたものではない。学校を休みがちな自分にと友人がとってくれていたノートだった。今更無駄なんだろうと分かってはいたが、何もしないわけにもいかない。義務教育はあと三年近く残っているのだ。
かくして私は腕が釣りそうになりならもペンを走らせている。おそらく今頃後ろの方の席では自分と同じ境遇の二人もせっせとノートに文字を走らせているだろう。
気付けば机に影が落とされていた。顔を上げると、向日葵の花に赤をほんの少しだけ混ぜ合わせたようなサンフラワーの色をした髪を、頭の上の方でちょこんと結った少女がノートを覗き込んでいた。学校でいる数少ない友人の一人、アリサ・バニングスであった。
少女は机に両手をつき、顔を覗きこんでくる。どうしたのかと首を傾げると、大げさに溜息をついた。意味も分からず、更に首を捻る。
「あんたも大変ね」
初めは分からなかった言葉の意味を理解し、意図せずして苦笑が漏れた。対して少女は、眉間に皺を寄せてはいたが、漏れる微笑みは誤魔化せてはいなかった。機嫌は良好のようだ。また自分の顔からも苦味がとれ、隠し通せずに甘味を増した笑顔が表にでてくる。
「久し振り、なのは」
「うん、久し振りだね、アリサちゃん」
その少女と最後に会ったのは、もうずいぶんと前のことだったのだ。
管理局の仕事に本格的に身を打ち込み始めたのは、ここ一年ほどのことだ。陸士訓練校を三ヶ月という短期間で卒業し、局では貴重な空戦魔導士として、また戦技教導隊入りを目指す候補生として、時間などいくらあっても足りなかった。そうなれば必然的に私事にとれる時間が削られるのは当然のことであろう。もっとも訓練に多く時間を割いていることもその原因だった。
同じくして、保護観察の待遇だったの八神はやてはそれを解かれてレアスキル持ちということで相応の待遇を与えられ、捜査官としても働き始めていた。毎日のように局に来ていても顔を合わせることなど殆どない。ヴォルケンリッターも同じ。
だが一人だけ、そんなぎしぎしに詰められた時間の中も会いにきてくれる人もいた。自分も忙しいだろうに、彼女は毎日のように私に会いに来てくれる。スーツ姿に身を包み、長く綺麗な黄金の髪を下のほうで一つに束ねた彼女は、息を切らせながら名前を呼び、抱き締めるのだ。彼女のライトニングイエローの髪はどこに居ても良く目立つ。当然遠くに居ても、視界に入ってさえいれば私はその姿を見つける事が出来た。
私は訓練場でレイジングハートとともに自己を鍛えていたところだった。手を止めるわけにもいかず、念話を送る。
(フェイトちゃん、仕事はもう?)
(もちろん終わらせてきたよ。なのはは)
(私はあと少しかな。仕事って言うか、訓練だけど。もう少しで終わらせる予定)
(分かった。それじゃあ表で待ってるよ)
その間も苦手な近接戦闘を同程度のランクの人に相手をしてもらっていた。といっても、私は魔導士ランク昇級試験をSランクまでしか受けていない。その理由には時間と大人の事情が絡んであるのだが、この場合それは関係なかった。一方相手はAAランク。苦手な近接戦闘の相手としては申し分なかった。シグナムさんやフェイトちゃんとまではいかなくとも、その人はなかなかの実力で、いい訓練になっていることが肌で感じられる。それから数分後、レイジングハートが相手へのヒットを告げたところで、その日の訓練は終了した。
その後フェイトちゃんと合流し、久方ぶりに学校へ行けることが伝えられた。はやてちゃんもその日に合わせてくれたという。もちろん私は人目があるというのにはしゃいでしまった。その様子に彼女はくすりと笑い嬉しそうにした。
第97管理外世界である地球。海鳴にある高町家に戻った私と彼女は、ベッドに寝転び何をするでもなく天井を見上げていた。
「しばらくまたこの世界に戻れることになったのは嬉しいけど、なんで?」
「明日一日は休暇という意味もあるみたいだけど、その本質は任務だよ。これははやてからも伝えられたんだけど、どうやらロストロギアが絡んでいるらしいんだ。それも第一級捜索指定の」
「ロストロギアって……ジュエルシードや闇の書みたいな」
「そう。私達が選ばれたのは、条件に合う人が他に居なかったみたい。皆出払ってるみたいだったから」
「あはは、大丈夫なのかな」
問いには二つの意味があった。第一級捜索指定ロストロギアであるのに、私のような未熟者でいいのか。それほど重要な任務に少人数しか割り当てられない管理局は大丈夫なのか、という意味だ。後者は私が心配するところではないが。
クロノくんやはやてちゃんはどう考えているのだろう。
「わからないけど、とにかくやるだけだよ」
「そうだね」
「明日にははやてやシグナム達もこっちへ来るよ」
「嬉しいな」
「でもなのはが嬉しいのは、他にも理由があるんじゃないかな」
「フェイトちゃんは鋭いね」
「鋭いのは、なのはのことだからだよ」
「うん、はやてちゃんには悪いけど、やっぱり一番嬉しいのは学校に行けることかな。二人にはしばらく会っていないし」
彼女と指を絡ませながら、しかしこっそりと思い描く人がいた。
――アリサちゃん、元気かな。
どれだけ時間が経とうが、距離が離れていようが、私にとってアリサ・バニングスという人物が記憶から剥がれることはなかった。
少女は机から手を離したかと思えば、唐突に頬を引っ張った。
「なあに辛気臭い顔してんのよ。せっかくあたしと会えたっていうんだからもっと喜びを最大限に表してもいいんじゃない?」
冗談めかしで笑うが、私はそれどことではなかった。頬が痛い。それに熱い。心臓も凄かった。フェイトちゃんと触れ合ったときですらこんな音は立てない。フェイトちゃんは隣にいて当然、いないと不安、という域まで達していたから大丈夫であるが、目の前のこの少女はそうはいかない。久し振りであることに加え、相変わらず端整な顔を近づけられたら、顔を赤くしても仕方なかった。
そんな私の気持ちなど露ほども知らないであろうアリサちゃんは、からからと笑った。
「嬉しいよ、すごく」
笑顔には笑顔を。昔からの自分の信条をもって、彼女に返す。その途端ついぞ今まで摘まれていた頬が解放される。ひりひりとした痛みは残るものの、意識はそこではなくずっとその人に向けていた。態度の変化に疑問が湧き上がる、が問い詰める間もなく、介入者が現れた。少し残念に思ったということは、表に出さない。介入者はノートをとっているはずのフェイトちゃんだったからだ。
「何を話してるのかな」
「おはよう、フェイト」
「うん、おはようアリサ」
「久し振りに逢ったね、って話だよ」と私が言う。
フェイトちゃんは一瞬苦い顔をしたように見えたが。それも気のせいだ。今はもうアリサちゃんに向き直っている。
「元気にしてた?仕事大変そうだけど」
「ほどほどにね。仕事もまあ大丈夫」
「そう、あんたたちはほっとくとすぐ無茶するからね。すずかと二人で心配してた」
「心配してくれるの?アリサちゃん」
「はぁっ?ベ、別にそんなわけじゃないわよ。っていうかいつそんな話になったの」
「え、だって今言って……」
「空耳よ」
「えー」
「そ・ら・み・み。分かった?」
ぐいっと、再び頬を横に引っ張られる。今度は両方な上、かなり伸ばされる。正直かなり痛いが、口が横に広げられすぎてまともに言葉も発せられない。
「わ、わかりまひた」
「よろしい」
解放される頬をさすりながら、軽く睨む。といっても戦場で向ける視線ほどきついはずはなく、悪戯っ子をしかるような軽いものではある。生涯で彼女を本気で睨みつけたことなど、たった一度しかない。
「ふへ……痛ひよアリサちゃん。顔歪んじゃうよ」
「自業自得よ。ご所望ならもう一度してあげる」
「アリサ、その辺でやめよう。なのはは顔が歪んでも全然可愛いけど、もうすぐチャイムも鳴るし」
優しく微笑む天使の助言により、その休み時間はなんとかそれ以上顔や、そして胸がひどいことにはならなかった。心臓が落ち着いた頃にようやくチャイムが鳴り始める。そうして私たちは再び席についた。
ふとアリサちゃんを眺める。斜め前に着席する少女の背中は、真っ白の制服が陽を浴び尚更眩しく見えていた。
屋上に集まったのは五人であった。幸い他に人はいない。小学三年生からの長い付き合いで、学内の誰よりも気心の知れた友人達だった。私の隣にフェイトちゃん、正面にアリサちゃん。その横にすずかちゃんとはやてちゃんが慎ましく座している。
まず開くのは久し振りの母特製のお弁当だ。手を煩わせたくないこともあり自分で作ろうとしていたところ、どうしてもと母が譲らなかった。申し訳ない気持ちもあったが、こうして食べる段になると素直に嬉しく感じる。配色もよく考えられていて食欲もそそられた。
ウインナーを頬張りつつ隣のフェイトちゃんと他愛ない話をしていると、視線を感じた。正面を向くと何故か顔を背けられ、そのまますずかちゃんと会話を始めた。初めてのことではなく、ほぼ毎度のやりとりとはいえ、やはり悲しいものがある。嫌われているわけではないだろうけれど――。
「なのは、どうかしたの」
こう尋ねられるのも、毎度のこと。その度になんでもないと返す。フェイトちゃんも分かっているだろうに、どうしてだろう。疎ましくは思わないが、むしろ向こうが面倒だと思う。答えの分かっている質問を何故するのか。私はやはり分からない。
「そうだ、今日は家に来る?」
微笑を崩さずに首を傾げながらフェイトちゃんが言った。耐性がなければ顔の一つや二つ染めてもおかしくはないほど可愛らしい仕草だ。私も思わず笑顔で返した。
「うん、それでそっちがよければ泊まっていきたいかな」
「ほんとう?実は誘おうと思ってた」
「にゃは、嬉しいな」
返しながらちらり、と正面に視線をやる。そこにあったのは、呆れながら箸をもった手の平を空に、溜息をつくコバルトの瞳をした少女の姿。
「まったくあんたたちは」
それはほぼ透徹した無関心さで。
「いちゃつくなら他所でやりなさい」
合わせただけの反応に、仕方ないとはいえ、一つ心に穴が開いた。それからすぐにすずかちゃんと親密な視線を交し合ったことにも、笑いを切らせないのが精一杯だった。だがもちろん悪いのは、彼女ではない。勝手に試すような事をし、期待した反応が予想と寸分違わず玉砕しただけに過ぎなかった。
そして食べ終わった五人は弁当を片付けて立ち上がる。
扉に向かう途中で、しかしふらついた。今日までの無理が、安堵とともに襲ってきたせいだろうか、そのまま近場の段につまづき、アリサちゃんの胸に飛び込んでしまう。
「なのは!」
フェイトちゃんの声が遠くで響く。だが霞の向こうに沈んでいって、何を言っているかは分からなかった。ただ顔を埋めた胸が、酷く心地良く、安心したことだけは覚えている。
× あとがき ×
うへえ、サブタイトルからして影があるよ。
一応なのはの心象というか、状況というか。です。
ちなみにこのなのはとフェイト、まだ体の関係とかないです(ぁ
この話を考えて改めておもいましたがフェイトは薄幸がすごく似合うんだなあ。
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アリサ×なのは

comments
またどツボに入ってます。
なのはがアリサに視線を向けてるときにフェイトもなのはを見てるんだろうな、と妄想しました。笑
三角関係大好きです!ていうか
フェイト→なのは←?、ってのがたまんないです♪
連載がんばってくださいね!応援してます
それ(フェイト→なのは←なのは)は私の大好物です。かなり修羅場スキーですwNice boatはやりすぎ(ヤンデレとしてみるならよし)ですが、原作の方は好きw
なのははね、もう修羅場に会いすぎると思う!なのはさん一歩間違えたらそれこそドロドロですよ。なのはは器量もよく配慮やフォローを欠かさないので惨事はおきませんが。
そこをあえておこすのが二次創作小説!(長いよ
応援有り難うございます。頑張ります♪
>まるさん
なのアリですぞー!なのアリは密かにかきたいと思ってたカプです。世のバーニングアリサとはちと違うのですが、精進しますゆえ、気長にみてやってくださいm(_ _)m
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