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2019-07

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このまま終わってしまうなんてごめんだ

三代目拍手SS
なのエイミィです。
よろしければ続きよりどうぞ。


 このまま終わってしまうなんてごめんだ


 彼女に会ったのは学校の帰り道、夏日の熱がまだ幾らか残留する夕暮れだった。
 いつも一緒に帰っているフェイトちゃんは任務で、アリサちゃんとすずかちゃんは塾ということで私一人でぽけーっと歩いていた。家に帰ってもこれといった用もなく、両親の経営する翠屋を手伝おうかと曖昧に考えていたところだった。最近訓練は夕食後にすることにしている。疲れて戻ってきても、そのままお風呂に入って眠ることができるから都合がいい。
 自分の目指すもののために、私は鍛錬する。自分の持つ魔法を伝えるために。この手の魔法は大切な人を守れる力、悲しみ撃ち抜く力だから。
 私たちの住む世界でそれが評価されることも賞賛されることもないけど、どこかの世界で教えた力がいつか役に立つ時、ほんの少しだけ報われて、その想いを糧に私はまた己を鍛える。
 しかし今あまり余裕はなく、そういったことを考えられないこともしばしある。まだまだ自分は弱いということをある人に気付かされた。ちょっと強くなったような気がしていただけで、実際は戦い方を知らない子供同然。それでは何も守れない、撃ち抜けない。
 それからがむしゃらに訓練や任務を重ねて、ここのところ疲労が蓄積されていたりもするけれど、はやく強くなりたいから仕方ない。いつか教導隊入りをするために、入ってからのために私は――。
 そんな折りに彼女と出会った。懐かしいというほどでもないけれど、飽きるほど目にしているわけでもない顔が驚きの表情に染まった。が、すぐに柔らかな顔つきに戻る。人懐っこい笑みを目元に浮かべ、彼女はなのはちゃんと呼んだ。
「エイミィさん。お久しぶり、でもないのかな」
 彼女はくすりと微笑み、「そうだね、話してはないけど一昨日会ったもんね」と言った。
 私にとってエイミィさんはあまり会うことのない人物で、話すと初めのうちは緊張もしていたが、実は親しみ深く、ちょっと話せばすぐにいい人だと分かる女性だった。会話の端々でみせる笑顔は、私のそれとは違う何の打算もない無垢なもの。
 私はきっと無意識のうちに、人間関係を円滑にするための言動をとっている。だからエイミィさんと会うと、そういった自分の嫌な部分を見せつけられるようで僅かに心が荒れるが、一方で気が緩む。
「もう帰るの?」
 陽が沈もうという時間なのにじりじりと暑さがアスファルトから湧き出てくるよう。にも関わらず、優しい声で語りかけてくれるエイミィさんに私は頷いた。
 エイミィさんは夏らしく爽快なイメージのする白いノースリーブの服に、デニムのズボンを着けている。ラフな服装だけど、首元や手首など、あちこちに女の子らしい気遣いが見てとれた。家で会ったときよりずっとお洒落な感じで、印象の強い制服とも違い、かなり新鮮だった。
「そっかあ、じゃあ今日はうちに来ないんだ」
 エイミィさんがそう言って笑うと、短い髪が跳ねた。
 彼女の言う“うち”とはもちろん自分の家ではない。ハラオウン家――闇の書事件の最中に海鳴に住居を構えた家族。時空管理局所属リンディ・ハラオウン提督とその息子さんのクロノくん、新たに家族になったフェイトちゃんがあたる。とりあえずのはずだった住居に、にエイミィさんも同居していた。フェイトちゃんの学校の関係で事件後の今も住んでいる。
 私としては嬉しいことだけど、たまに不便ではないかと思うこともある。エイミィさんはフェイトちゃんと特別な関わりがあるわけではないのだ。私はそのことを前に尋ねてみたことがある。
 ――エイミィさんは、どうして今もここに住んでいるんですか?
 責める口調にならないように気をつけて発言する。
 その日私はフェイトちゃんの家に遊びに来ていて、そのフェイトちゃんは任務で呼ばれてしまった。遊び相手がいないのに居ても悪い、と玄関に向かった私の後ろから声をかけてくれたのがエイミィさんだった。彼女は休暇日だったのか家にいて、ソファーでテレビを観賞しつつジュースを飲み、寛いでいた。
 隣においでよと誘われ、でも邪魔をしたら悪いからと断ると、彼女は本当におかしそうに笑った。
「暇なんだ。話し相手になってよ」
 そうして遠慮がちに腰を下ろし、幾らかの雑談を経て、さっきの疑問へとなる。
「エイミィさんはどうしてこの家に?」
「おかしいかな」
「少し、気になってました」
 彼女は少し躊躇いを見せ、「どうしてって聞かれるほど大層な理由でもないんだけどね」と頭を掻いた。珍しく歯切れの悪い回答に私は続けた。
「よければ聞きたいな」
「クロノ君との縁っていうか、リンディ提督のご厚意もあるし、フェイトちゃんは良い子だし。海鳴は素敵なところだから、かなあ」
 理解できるものではあった。でもそれだけで不便を押してまで住むだろうかと考えると、すんなりとは納得できなかった。
「なんとなくだよ、やっぱり」
 でもそれは要領の得ない回答だ。もしかしたら聞いてほしくない理由だったのかもしれないと今更思い当たるけど撤回できない。彼女の口ぶりには何かがひっかかる。
「たしかにそれも理由のうちかもしれないけど」
 私は、「でも他の理由もあるんじゃないですか」と強く言ってしまった。言ってから後悔する。自分でどうしてこれ程気になるのかが分からない。
 エイミィさんはしばらく黙って、首を捻ったり腕を組んだりうなったりして、結局口にしたのは一言だけ。困ったように笑いながら「……内緒だよ」と、さも意味ありげに言っただけだった。

 それからもエイミィさんとは幾度も会って話をしたけど、決して引きずることはなかった。彼女は態度こそ幼く見えるけれどれっきとした大人で、私は我が侭な子供だった。そんな彼女に苦手意識がないとは言わないけど、それだけではない。尊敬を含んだ好意を、確かに自分の胸の内に感じた。
 彼女と会うと動悸がする。少しの息苦しさを抱え、それでも避けようと思えない。
 こうした突然の邂逅も決して嫌ではなかった。
「またなのはちゃんと話せると思ってたから少し残念かな」
 エイミィさんの言葉に首を傾げた。
「ほら、フェイトちゃんちに来ないって」
 ああ、と私は頷く。
「うん、ごめんなさい。今日はフェイトちゃんの家に遊びに行く約束はしてないんです」
「だよね。この通りってよく考えたら道違うし」
 頭をかく彼女に、微かに唇が歪んだ。エイミィさんにとって自分は家族同然の人の友達、またはただの友達なのだろう。
「でもさ、約束してなくても来ちゃいけないってことないだろうし、おいでよ。フェイトちゃんも今回の任務は簡単なものだって話してたから明日には帰ってくると思うんだ。明日は休みだし泊まりにくるといいんじゃないかな」
「いえ、フェイトちゃんもきっと疲れているかと思いますし、それは」
「そ、そっかぁ」
 落胆してしまったエイミィさん。普段大人を感じる人だけに、項垂れた姿がなんだか可愛くてちょっとした意地悪を言いたくなった。
 少しでも気を向けるために慣れた笑顔を作って、彼女の手に触れた。
「でも、エイミィさんに会いに行くかもしれません」
 彼女の頬が朱く染まったのは、それからすぐのことだった。
 ――ふと思う。ハラオウン家への道のりでないなら、なぜ彼女はここにいたのか。この先には彼女が求めるような店は何もないのに。そうだ、出会った時は驚きの表情に見えたけど、単に顔が強張っていただけかもしれない。
 どうして?
「なのは、ちゃん」
 ……気付いた。
 遅すぎて悟った気持ちに、しかし目が逸らせない。
 赤らんだ顔と、呆けたような表情。私を見つめる瞳が微かに潤んで、触れた手が小刻みに震えている。体調が悪いと勘違いするのはもう無理だった。
「……顔が赤いね。大丈夫ですか」
「大丈夫じゃ、ないかも」
「じゃあ、やっぱり家には行かない方がいいですよね」
 私は尋ねてみたけれど、これで否定してくれないならそれでもいいと思っていた。このまま終わってしまっても、私はいつものように諦めることができる。――なんて、そんなのは嘘。本当は否定してほしくて言った。だって私は既に手を伸ばした後だった。
 俯くエイミィさんは、頭をふるふると横に振った。
「……来て」
 私は、彼女の声を耳に入れるのと同時に抱き寄せていた。
 抱く腕に力がこもり過ぎた言い訳を考える。額に汗がじわりと浮かんでくる。何も考えられない。肌から滲み出た汗に触れても、家の近くで誰が通るともしれない道の端でも構う気がしない。今はこの人を感じていられればそれでいい。
 暑く白い陽射しに、背を流れていく汗。生温い腕と痛いくらいに鳴る胸を合わせて、私たちはしばらくそこに立ち尽くしていた。

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なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

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