2017-10

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蜂蜜

ヴィヴィなのです。なのは視点でかくと、まったくどろどろしない不思議。
わりと幸せな感じです。ようやく幸せな感じです。大事なことなので二回言いました。
うちのなのはさんは恋愛とか一切知らないんだ。

それでは続きより。



 蜂蜜


 君がその白いうさぎを落としたら、きっと私が拾ってみせる。
 そう言うと、少女は振り向いて笑った。

 大切だと思った人はたくさんいるだろう。そのために鍛えてきた自分だったから、確信をもっていると言えた。しかし少女に感じたような気持ちを抱いたことは今までになかった。だからこれほど愛しいと思うなんて、想像もできなかった。知らなければ予想も想像もつかないものであるというのはまったく正しい。
 夜道を連れ添って歩く。自分とヴィヴィオとの足音は心地よく軽快で、私はそれにさえ幸せを感じる。
 眠れない夜がたとえどれだけの時間溢れていても、こうして手をとってヴィヴィオと歩いていれば無駄な時間もすぐに意味を孕む。愛しい人との時間は、言葉を尽くしても説明できない。だからといって意味がないわけじゃない。あまりにたくさんの意味があって生まれる想いが尽きないから、だから説明はできないけど、とても大切な時間だ。
 ヴィヴィオの手はあたたかい。熱が失われ冷たくなった私の手に、再び熱を宿せるほどにあたたかかった。それこそ抱き締めてそのままぐるぐると世界を一周したっていいくらいに。幸福が手の中にぎっしりと詰まっていた。
 そんな愛しい少女との間に生まれる会話は、愛しいがゆえに落ち込んだり滞ったりする。でもいつだって最後には笑顔が見られた。それは往く空の障害物を砲撃で投げ倒して進んだ先に広がる青空のようであると、私は少女の笑顔を見るたびに思った。
 だけど静かな痛みは時折胸を突く。
 少女はいつか成長して、私から離れていく日がくるのだと決まった未来を想像して。
 そしてその姿は、魔法訓練の時に先駆けて見られてしまう。だから私は彼女が聖王の姿になるときは少しだけ具合が悪くなった。精進する姿は胸を熱くもするけれど、焼け落ちたあとにほんの少し、刺すような痛みが残った。そこにあるのは必ず訪れる未来があるからだ。
 彼女だって大切な、護りたい人を見つけて、進むべき空をゆくためにいつか私の元を去っていくのだ。
「私が頑張るのは私自身のためでもあるけど、なのはママを護るためでもあるんだよ」と少女が言ったとしても、それでもやっぱり離れていくだろう。当然のことながら私はそれが寂しくて、最近はあまり訓練について行かなくなった。模擬戦でも予定していない限り、訓練の終わり頃を見計らって迎えに行く。その時にはヴィヴィオはもう本来の姿に戻っている。私は痛まないし、ヴィヴィオも一人のほうが集中できるはずだった。
 夜の訓練場にヴィヴィオを迎えにいき、それから二人で手をつないで歩く。宵に沈みかけた風が、少女の身体を流れる汗の匂いを運んできた。今日も頑張ったんだね、と私は言った。うん、とヴィヴィオは疲れを知らぬ顔で頷く。小さな親子の戯れがほんの僅か、寂寥を洗い落とす。
 広い明るい道を通れば、灯火が少女の紅い頬を照らしだして美しかった。まだ幼い顔も夜の中では大人びて浮かび、私は不意打ちのようにどきりとさせられる。不規則に打つ鼓動の正体を私は知らなかったけれど、残る妙な苦しさが少女の顔から視線を外させた。
 知らなくてもいい感情なれば――知らないままでいい。

 またある日に訓練場へのぞきに行けば、一段と強い光が網膜を刺した。白いジャケットを羽織った少女はその瞬間だけ聖王であり、虹色の魔法光を纏っていた。いったいどうしたんだろうと見ていれば、彼女はこちらに気付いたのかそれまでの険しい表情を崩し、満面の笑みで駆け寄ってきた。
 私はその時、彼女の後ろに宵闇が千切れていく幻想を見る。
「なのはママ。今日は早いね、どうしたの?」
 私は上手い言葉が見つけられず、肩をすくめる。彼女は首をかしげながらも何かを納得し、白い騎士甲冑をひるがえす。大きいままだったから、私は顎を少し上に持ち上げなければ彼女と目線が合わなかった。
 見上げる私に気付いて、ヴィヴィオはすこし微笑む。私は無意識のうちに胸を押さえた。些細な動作がどうしてそんなにも胸を打つんだろう。
 そこで思い当たる。早く来たつもりはなかったけれど、私は思った以上にヴィヴィオに会いたかったのかもしれない。
「あのねあのね、ひとつ技を編み出したんだよ。さっきの強い光。でね、それの力加減をちょっとしてやるとすごく綺麗になるんだ。まるで前になのはママがスターライトブレイカーで花火を模したようにね」
 彼女は両手を大きく開いてどれだけ綺麗かを表現する。多分先ほどの強い光がそうなんだろう。
「見せてくれるの?」
「もちろん!」
 楽しそうに言う彼女に尋ねると、力強く頷いてから背を向けた。少女の体を再び虹色の光りが包み込む。足元から照らし上げる光に私は眩しく思う。
 静かな深呼吸のあと、彼女は空に無数の光を散りばめた。初めは眩しくて見ていられなかったがやがて光は収まりようやく見えはじめると、私はそこにひとつの橋を認めた。まるでそれは――。
「今いるここと星とを繋ぐ道みたいじゃない?」
 それから少女は言った。
「なのはママがもし星みたいに遠くにいっても、私はこうやって橋をつないであなたのもとへ行くよ。夜の中にまぎれてしまったら、無数にある星粒のひとつひとつを残さずに拾い集めて探すから」
 少女の言葉に応えることを忘れ、ただ無防備に眺めてしまう。宵も闇もどこにも見当たらず、暗い夜は彼女の魔法光を美しく見せるための土台でしかなかった。
「だからそんなに不安そうな顔をしないで。私はどこにもいかないよ」
「でもそれは」
 やがて道は時間とともに失われヴィヴィオも騎士甲冑を解いたが、目の奥には先ほどまでの光景が残っていた。頼もしい少女の姿に、このところ感じていた寂しさをまた思い出す。
 でもそれはずっとじゃない、と私は言いかけた。無粋な言葉であると気付いたから飲み込むことができたけれど、ヴィヴィオは不審そうな顔を隠さない。彼女には私が何かを言ったがっていることなんてお見通しらしかった。しかし言えはしない。
 そうして私が黙っていると、少女は私の頬を包んだ。
「ずっと傍にいるよ」
 それは大人が子供にするような手つき。
「比喩なんて使わなければよかったね。ごめんね。ちゃんと考えていたんだけど、やっぱり少し照れちゃった」
 ちっとも悪くないヴィヴィオが、はにかんで続けた。
「つまり、星はなのはママで、私はどんな状況でも必ず道を作り出してそこまでいくんだよって言いたかったの。……もしかして嫌?」
「まさか! 嫌じゃないよ」
「でもやっぱり分かってないのかなあ、なのはママは」
「何が?」
 呟く少女に、私は頬を包まれたまま彼女を見上げた。大きくも凛々しい瞳の輝きに、つい先ほどまでの虹色が流れている錯覚に囚われ、私はますますヴィヴィオから目が離せなかった。
「ママを好きな人はたくさんいると思うんだ。私よりもずっとなのはママのことを想ってる人だっているかもしれない。でもね、それでも私の一番はあなただよ。それは保障にはならないかな」
 不安をぬぐうことはできないだろうか、と少女は笑った。
 笑みの中に滲む真摯な気持ちに対し、否定などできようもない。だってすごく嬉しい。
「嬉しいよ、ヴィヴィオ」
 少女の上等な告白に報いるために、頬にあてがわれていた両手をとって、そのまま額に唇を乗せた。お返しに彼女から頬にキスを貰うと、毎朝の挨拶であるにも関わらず顔が赤くなった。雰囲気がいささか良過ぎたせいかもしれない。ゆっくりと降りてくる唇へのキスを、私は抵抗なく受け入れていた。
 短く、途切れるような口付けを、少女は何度も何度も私の唇に重ねる。
 その行為は識らず、特別なものであることを理解する。同じ唇で触れるということにまったく別の意味が含まれているとして、しかし受け入れることに何の問題もなかった。全く嫌な気持ちでなく、むしろ凍らせかけた心を溶かした。ただそれは良いことではないかもしれない。次に寂しいと思った時にはこれまでよりもずっとひどい勢いで襲ってくるはずだろう。
 そういったことが脳を過る中、私の腕はヴィヴィオの肩に添えられた。――寂しいのが辛いなら耐えればいい。ヴィヴィオを突き放すよりはずっと簡単だ。甘い蜂蜜色をした気持ちを今、振り払うことほど難しくはない。
 一緒にいよう。
 誰の言葉か分からないほどにとけて混ざり合った唇を、声が途切れた瞬間にまたつなぎ合わせる。これが初めての口付けではなく、すでに何度もしてきた口付けのような気がして、私はなんとも心地よかった。

 魔法光がいつの間にか霧散し、宵が再び戻ってくる。街頭の中を少女と連れ添って歩く私は腕にあたたかな温度を感じつつ、星のたくさん浮かんだ空を見上げる。
 ――ああ、愛しい。
 愛しい以外の正確な言葉を思いつけずに、それでもたまらずに思った。




[ WEB CLAP ]
「ずっと一緒にいるよ」 「ありがとう」
こんなやりとりがあっても、なのははずっとなんてないと思っているに違いない。
信じていないわけじゃなく、なのはの中では「ずっと一緒にいられない」なんてのは当たり前のことだった。それでも言ってくれたヴィヴィオに嬉しく思い、ゆだねたくなったんだ。そのあとどんなことが起こっても、自分は処理できるはずだと考えていたから。
そして、彼女なら実際にできるんだろう。

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