2017-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

描写する100のお題 008:闇

描写する100のお題。とても久しぶりだけどリハビリにちょうどいいかなと。
目次、お題についての趣旨などは上のリンクより。

格好良い執務官の姿はどこにもなく、ただ一人なのはさんを思うだけのティアナです。
衝動的な書き殴りのようなもの。そろそろ甘い話が書きたい。七夕だしね。

もしよろしければ続きよりどうぞ。



 008:闇


 高町なのは。私の愛しい人、なのはさん。
 あの人について考え耽っていると、私はどうしようもない悲しみに侵されていることに気がつく。それが愛しさから生まれたものなのか、ただの寂しさからなのかは判断がつかない。けれど私はやはり悲しくなるのだ。瞳の表面に盛り上がるだけで零れない涙が、湧き上がる嗚咽がよりいっそうの悲しみに追い詰められて。
 私はどうしてここまで悲しまなければならないのだろう。誰かが死んだ時だってこれほど悲観的になったことはない。肺の奥が苦しくて呼吸さえ困難になるのは、一体どうして。
 問いかけてみるが本当は考えるよりも前に知っていた。当たり前のことを認めたくなくて、ただ問いかけることで先延ばしにしようとしただけだった。そうしないと頭の中も心の中も空っぽになってしまう。
 だってなのはさんがいない。
 朝起きていくら訓練場を探してもおはようを言う相手がいないのだ。青と白の服を着た人を見つけることもできなければ、いつこちらを振り向くのか予想する楽しみもない。今日もティアナは早起きだね、と不器用に笑う人がいないのだ。彼女こそが早起きだと思っても決して口にできないもどかしさに、同じく苦味を含めて笑うこともない。
「まだ時間じゃないよ」
 はい、と応えれば、彼女の柔らかな笑みが漏れこぼれる。
「ああ、それとも自主訓練かな?」
 目が覚めて一番最初にあなたに会うのが私であるためです。
 いつも用意していた言葉を飲み込んで、笑い合うことが毎朝の楽しみだった。
 それなのに彼女は今、いくら探してもどこにもいなかった。それも当然だろう、私は機動六課のスターズ04、ティアナ・ランスターではなく、事件を追い求めて暗い海を航海している執務官にすぎなかったのだ。
 ここに青空や青芝はなく、次元航空艦の窓を端から端まで見て回ってもすべてが漆黒の闇で溢れていた。たまに輝く光は争いの瞬き、忌むべき光の証だった。私の周りは暗闇で埋もれている。中も外もいっぱいの闇で、進む方角さえ見失いそうな途方もなく広い海のなかにぽつねんと佇んでいるのだ。私はどうしようもない不安を絶えず抱え持っていたが、部下に相談できるはずもなかった。
 なのはさんを上司と呼んだ日々のあとに、私自身が部下に命じる日々がやってきた。それは目指した夢へと確実に近づいている証拠だったというのに、私はやはり漠然とした寂寥感や喪失感に苛まされ続けていた。こんな私の姿をみて、あの人は一体なんと思うのだろう。
 しょうがないなあティアナは。きっと賢いから考えすぎちゃうんだよね、と。そう言うだろうか。それともわざと厳しく顔を歪めて、進むべき道を、歩んできた道を指差してくれるのだろうか。
「もうティアナはあの頃よりすごく強くなった。だから不安になることなんてないんだよ」そんな悲痛な響きと共に指し示してくれるのだろうか?
 できたら何も言わず抱きしめてほしかった。彼女の柔らかだった膝の上に頭をのせて、頬をなでてほしかった。だけどきっともう、叶わない。私は彼女の部下でも教え子でもなくなってしまったのだ。会いに行ったところで困り果てた姿があるだけなのだ。
 夢の先は明るい光で満ちていると、その光の色の華やかさを想像しては訓練に励んでいたのに。ようやく視えたのは青色でも桜色でもない、ただの真っ暗闇だった。これまでにきっと多くの人を助けたけれど、私自身の本当の望みは違ったような気がする。
 悲しいと、私はやっぱり考えた。今度も涙は流れずに嗚咽も外に漏れなかったけれど、ちっとも楽な気分ではなかった。
「いとしい、なのはさん」
 少しでも楽になろうと呟いていれば、狭い廊下ですれ違った部下が振り返る。怪訝な顔つきで、ランスター執務官? と声をかけてきた。どうでもいいのに返事をしなければならない義務が、上司の私にはあった。そういえばあの人は大切な娘をさらわれた直後に、こんな苦痛もこなしていたのか。
 なのはさん、なのはさんなのはさん。止まらずに溢れてくる名前を飲み込むことに必死で、笑顔を向けるのをつい忘れた。
「どうされました?」
「ごめん、なんでもないから」
「けれど顔色が優れませんよ」
「大丈夫よ。だからね」
 ほうっておいて、あの人のことを考えさせて。
 思うだけで言葉にはしなかったのに、なぜか部下は身を震わせて足早に去っていく。あっというまに姿が見えなくなると、その不思議さについて思い返すこともなく、またこれまでの思考に没頭した。
 機動六課で出会ってから今までのことを考えて何周目かで、胸を痛めるだけだというのにあの人の事を考えてしまう理由を不意に理解する。どうして分からなかったのだろう。私は悲しい想いをする以上に、なのはさんを浮かべる事が幸せだったのだ。

 ああ、ごめんなさい、なのはさん。
 あなたがせっかく導いてくれたのに、教えてくれた強さを捻じ曲げてしまった。きっとこの事件が終わったら人を助ける仕事を投げ出して会いに行ってしまうけれど、できれば。
 ――できれば、二度と考えたくなくなるくらい酷く拒絶してください。
 きっとあの人は笑いながら叱るのだろう。優しく怒りながら、それでも休ませてくれる胸を開いてくれるのだろう。それかわかるから、私はいつまでたっても動けなかった。彼女の優しさにあと一度でも浸ってしまえば二度と海にはでれず、彼女を離したくなくなることが分かっているから。

 想えば想うほど全身を悲愴感が貫いていく中で、私は又広がる漆黒に身を埋める。これが一番の幸福だという事実に辿り着くまで、それから数ヶ月ほどかかった。


[ WEB CLAP ]

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

テンプレ変えました «  | BLOG TOP |  » 複雑で簡単なきもちなの

Web Clap

ご意見、ご感想などあればどうぞ。
  

Recent Entries

Categories

Novel List

― Short Story ―
アリサ×なのは
心が君の名前を呼んでいた
違えた道の端  前編 / 後編
すずか×なのは
無想と空想と、紋黄蝶
フェイト×なのは
No title...フェイトver
あなたを想って流した涙は
溶けた灰色の小石
白 -white-
穴の開いた箱
なのはへ。
ヴィータ×なのは
StarDust
21.5話妄想
No title...ヴィータver
大切な Trash Box
誰よりも君に笑ってほしくて
Reinforce
真紅のグラス
Limited Sky
強奪者
蒼い棘
薄氷の上で
摩擦熱
あやふやな星
語ろうとした震え
消えない夕立ち
青と白、それから赤
優しい境界線
はやて×なのは
Sky Tears  SIDE:H / SIDE:N
夜色の羽根
eyes on...
孤島の夢
なのは×リインフォースII
小さな涙
スバル×なのは
君は空しか知らない、僕は大地しか知らない
ティアナ×なのは
月明かりよりも頼りない
貴女の血の味すら
失われた部分と残された部分
命を吹き込まれた落葉
台所で。
求めるままの逃亡
涸れた土
ティアナの適当に幸せな一日
迷子へと示す道標  1 /  /
Don't shake off.
空さえ貴方の前を覆わない  前 /  /
窓を打つ雨みたいな恋
月が堕ちてきた
もっとも不誠実な恋人
世界の終わり
銀朱の残照
僕に重ねて、君は夢をみて
ヴィヴィオ×なのは
掌で心をころがして
擬似家族
小さな声で求めて
蜂蜜
硝子内のひめごと
レイジングハート×なのは
午睡
虚空の紅玉
その他
ヴィヴィなのフェイもどき
SHOUT!  前編 / 後編
猫と主と変質者。
なのはにチョコをプレゼントされたときの台詞
なの!!
雷の憂い

― Long Piece Novel ―
幸福の在処
目次
星たちの休日
 /  /  /
別の世界を願うなら
設定 / 目次 / あとがき
追憶の色に埋もれて
目次 / あとがき
秋、はらむ空
前書き / 目次 / 後書き

― Project Story ―
聖夜 ……目次
拍手SS
一代目 手を伸ばして
二代目 時間
二代目 光の章/夜の幻
描写する100のお題 ……目次
陽の中に塗りこめて。 ……目次
振り返る ……目次

About

魔法少女リリカルなのは二次創作物、主に小説を扱っています。
このブログ内で使用している文及び画像の転載は、例外なくご遠慮下さい。

◇小説の傾向
なのはが絡んでいる百合、修羅場が多め。
なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

◇リンクについて
リンクフリーですが、貼っていただく場合には下の本館にお願いします。
本館:

何かありましたら下まで。
kone6.nanoなのgmail.com(なの⇒@)



Profile

Author:秋庭加奈
リリカルなのはが大好き。
なのはさん溺愛。そしてゆかりさんにめろめろ。
詳しいプロフィールは本館のMYSELFに。

Pixiv

Monthly Archive

08  07  04  07  02  06  03  08  07  06  02  01  11  08  07  06  06  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09 

Link

その境界線は。(本館)

Search Area

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。