2017-08

eyes on ...

A'sを見直したあとの短い殴り書き。
なのはさんがあまりにもはやてを見て何度も切ない顔をしていたので。

なのはさん色々勘違い、すれ違い。
はやて視点はそのうち、今は想像していただければ幸いです。



 eyes on ...


 想いを伝えられたら、せめて側で見ていられれば、と。
 少なくともあの子がうつむくまでは思っていた。

 柔らかな微笑みをいつも浮かべているあの子が心配で気付けば見つめていたことに、視線が合って初めて気がつく。何度も何度も目が合った。どうしてそんなにタイミングよく合ったのだろうと考えたけれど、そのうちに私がいつもあの子のことを見ているからだと理解する。
 時間はそれほどかからなかった。寂しそうで綺麗だった第一印象のフェイトちゃんとは違う、あの白い光で全てを包んでくれそうな優しい子。はやてちゃん。友達の友達という出会い方だったのに、どうしてか惹かれた。
 誰にも、何にも似ていない。私の中で初め出会った子だった。
 はやてちゃんが魔導騎士を目指すと聞いて一番に喜んだのはきっと私だった。友達の友達のままじゃなくて、もっと強い繋がりがほしいと思っていた。
 私はこの事件で教導官を目指すことを決めた。この手の魔法をいろんな人に伝えたかった。一人でも多くの人を救えるように、悲しみを打ち抜けるようにと望んだ。未熟だからたくさん努力しないといけない。そうレイジングハートと笑い合って、そんな将来の話をしながら雪の中をフェイトちゃんと歩いた。
 空から落ちてくる白い雪を眺めながら、私は泣いているあの子のことを浮かべた。全ての雪が溶けそうなほどに頬を濡らして、全身で泣いていたはやてちゃんの姿が今でも胸を締め付ける。痛みと情けなさで手のひらを握りつぶした。行き場のない拳はしばらくほどかれず、掌には爪の痕が残っていた。それでも痛みは消えない。目の前にあの子がいなくて、思い出せるのがあの子の泣き顔ばかりだからだ。そもそも顔をあわせたことも、数えるほどで。
 それからはやてちゃんと二人きりになることはほとんどなかった。初めて二人きりになったときも、彼女は泣いた。ぽろぽろと笑いながら涙を流している彼女を前に、どうしたら優しく抱きしめてあげられるのかと考えて、結局涙を拭うくらいしかできなかった。それでも彼女はありがとう、とお礼を言ってくれた。
「優しいね、なのはちゃんは」
 違うよ、はやてちゃん。優しくなりたいんだ。はやてちゃんがヴィータちゃんたちにするみたいに。
 首を振っても彼女は繰り返した。
「優しいよ、なのはちゃんは」
 その言葉に私は改めて、彼女のことが好きなのだと知った。
 ――それから六年が過ぎ、私は十五歳になっていた。
 道を歩けば桜の散ったあとの青々とした葉が空を覆っていた。太陽が一番高いところにある時間でも汗は滲んでこない。爽やかな快晴だ。こんな日なら、今まで溜めてきた想いが伝えられそうだった。
 愛機を手に取り、語りかけるように向かう。
「今日は今までで一番頑張らないといけない日なんだ。わたし、頑張れるかな」
《マスターならきっと大丈夫です。――聞くまでもなく》
「レイジングハート。うん、ありがとう」
《必要な勇気は既にマスターの心の中にあります》
 それから大事なのは、照れないこと。恥ずかしがって顔をそむけたりしないこと。本気で気持ちを伝えるのに、相手と真っ直ぐに向き合えなくては何も伝わらないのだ。
 私は両手のひらを何度も開いては握った。最後に力強く握る。うん、大丈夫。首に下げたレイジングハートはもう何も言わない。だから、大丈夫だ。
「はやてちゃんが好きです」
 言葉は何もなく、返ってきたのは困ったような、ただ悲しい顔だった。

 そして私は勇気を出したことすら酷く後悔し、二度と彼女や他の誰かに対して強く想いを伝えることをやめた。彼女は優しいから笑って相手をしてくれていたけれど、本当は迷惑だったのだ。そのことを愚かで鈍い私は気付くことができず、勝手な想いで困らせてしまった。
「困らせてごめんね」
 はやてちゃんがいっそう顔を歪めたのはどうしてだろう。私には分からなかった。彼女のことを見つめる権利すら失ったような気分で、視線を空へと逃がす。そこには淡い色の空が広がっていた。逃避を望んでいたのに私は場違いにも愛しいと思ってしまった。彼女のことがその瞬間だけ頭から抜けていたのだ。他に心が動かないくらいに、強く惹き付けられていた。
 私は誰かではなく、魔法を、空を愛していたのだ。私にとっての救いは魔法であり空だった。もっと早く気がつけばよかったのだ。私の手にはようやく見つけた想いがあって、この手の魔法は何よりも大きなものになっていたというのに。そんな自分があの優しい子を抱きしめようなんて、考えなかったのに。
 今が冬で、雪が降っていたらよかった。空も灰色で、目に雪が入るから見上げることもない。そうしたらいろんなことを投げ捨てて、何も考えずに抱きしめられたのだ。
 今そんな考えさえ愚かだと気付いた。本当に遅かった。
 ごめんね、という気持ちで微笑む。彼女の優しい笑顔にできるだけ近づけるように見つめた。想いを込めて彼女のことを見つめるのはこれが最後。
 ――だからはやてちゃん、そんな顔をしないで。
「大丈夫だよ、振り返らないから」
 彼女はもう笑わなかった。私の手をぎゅっと握り締めて、震えながら俯いていた。


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