2017-06

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優しい境界線

なのヴィです。もう頭の中なのヴィばっかです。
映画みたら違うのかもしれないけど、今はなのヴィです。

なのはとヴィータはお互い好きなのに、どうしても手を伸ばしきれない印象。
いやもう何本なのヴィ書いてるんだって話ですが、最初のころとはキャラや二人のイメージも変わったかなあ。
では続きよりどうぞ。


 優しい境界線


 机の上に雫が落ちた。目の前では赤い髪の少女がアイスを食べていて、口に含む側からぽたり、ぽたりと頬を伝い顎から滴り落ちていく。こちらに関心がないのをいいことにじっと見つめていても、彼女はやはりこちらを向かないままだった。こぼれるのはわたしへの言葉ではなく、ただの独り言。
「暑いなあ、はやてまだ帰ってこないのかな」
「エアコンは十分効いてると思うけど、はやてちゃんはどうだろう?」
「お前に言ってねーよ」
 出会ったばかりの彼女みたいに、素っ気無い。けれど実際にわたしと彼女は出会って数年が経っていた。
「冗談だ。そんな顔すんな。なんか居心地悪くて」
「ごめんね」
「……アイス食っていいよ」
「うん、ありがとう」
 差し出されたアイスは魅力的だったけれど、あっというまに溶けていく氷の向こう側の少女を思うと、なんだかとても受け取れなかった。少女からため息がこぼれる。
「いらないのか。ならあたしが食べる」
 氷を伝う舌の先を目で追う。とても美味しそうに食べている。
 今日も暑い。彼女が居ればここは空調の効かない部屋だった。この暑さも、冷たい水を頭から被れば幾分ましになるのだろうか。
「ところでどうしてヴィータちゃんはここにいるの?」
 居心地が悪いというのに、彼女はわたしと同じ部屋にいる。彼女の部屋に。
「別にな。散歩してたらお前、道端でふらふらしてるから連れてきただけだ」
「ただの散歩だよ。それにわたしもう一人で平気だけど」
「……はやてに頼まれたんだよ。見ててやってくれって。それにあたしも暇だったしな」
 その言葉が本当は嘘だと知っている。彼女は優しい。あの“事故”からもう何年が経っているというのだろう。部隊編成に忙しく走り回るはやてちゃんがわたしに気をかける余裕などないことくらい、わかった。
 いとおしい。お前はほっといたら壊れていそうだと言う彼女こそが、壊れそうで。あれから触れることさえ躊躇われて。隣に座るのがわたしには精一杯だった。
 もうすぐ少女はアイスを食べ終えてしまう。
 このぎこちない時間も終わり、そのうちに彼女の主も帰ってくるだろう。彼女の家族と共に夕食をとり、薄暗い中帰路につく。それが最近の日課。聞きたいことがあっても黙って背を向ける日常。
 それももう限界だった。
 音のない時計の針がかたんと落ちる音を聞くと、わたしはつい口を開いた。
「――」
「なんだ?」
「ヴィータ、ちゃん」
「なのは?」
 言葉が出てこない。問いかけたい言葉は、禁忌だった。わたしの心が限界を超えても、わたしの頭も体も限界を超えないよう抑えてくれる。本当に憎らしくて、涙が滲む。
 それでも褒めてやらなければならなかった。だって訊けない。
 ――なんでヴィータちゃんは一緒にいてくれるの?
『好きだからだよ、お前が』
 思い出して、奥歯が痛む。
 二回もそんな酷い質問、できるはずがなかった。

   ◇

 それほどではない昔、一度だけしてくれた告白があった。
 事故があって、病院で寝るだけの毎日だった。ようやくリハビリも始まったけれど満足に歩くどころか、座ることだって大変だった頃。何もすることがないのに病室を訪ねてくれた少女の姿があった。そんな彼女に馬鹿なわたしは無神経に聞いてしまったのだ。
「どうしてヴィータちゃんは毎日来てくれるの? 仕事だって訓練だってあるのに」
「今更何言ってんだ」
「わたしが自己管理できてなかっただけだから。ヴィータちゃんは何も悪くないよ」
「分かってるよ。お前が普段から無茶していたせいだ」
 吐き出すため息が、病室の冷えすぎた空気に触れて見える。少女の露出した腕に鳥肌が立っていて、私は思わずかける上着を探した。もちろん無い。
「でも、今こうなってるのはお前のせいじゃない。……あれが襲ってこなきゃ、なのははここに居なくてもいいはずだったんだ」
「それでもヴィータちゃんのせいじゃない」
「分かってる」
「じゃあどうして?」
 ここにくる彼女は毎日少しずつやつれて行くようだった。疲れがたまっていたのだろう。顔色の悪いときまで彼女はここに顔を見せに来た。その理由がわからない。わたしと彼女はそこまで仲がいいとはいえなかったのだ。フェイトちゃんとシグナムさんはお互いを高め合い、普段からも親しく話をしていたようだったが、わたしとヴィータちゃんは違った。ただわたしが絡んで、それに彼女が仕方ないと相手をしてくれるだけだった。それだけの関係。
 なのに、あんなにも取り乱すなんて考えもしなかったのだ。
 あの顔は見たことがあった。闇の書事件の最中、はやてちゃんを救おうと必死だった時だった彼女ははやてちゃんに向ける顔を、わたしに向けてくれている。だから続く言葉が嘘だと思わなかった。
「なのはが好きだからだよ」
 彼女の口から出てきたなんて信じられない、愛の言葉。わたしは嬉しくて、飛び上がって喜んで、彼女を思い切り抱きしめてあげたくて、……けれど体は動かなかった。全身包帯だらけで、腕には太い点滴の針が刺さっていた。
 驚くばかりのわたしに何を思ったのか、彼女は苦い顔を崩さずに続けた。
「でもお前は違うって分かってる。だから何も言わなくていい。二度と言わないし、あたしも態度に出さないよ」
「違う、ヴィータちゃん違うよ」
 否定しようとしても、彼女は笑うばかりだった。
「毎日あたしの顔を見ているせいだろ?」
 それで錯覚しているんだ。って。悲しそうに口を歪めて笑った。
「でも言いたかったんだ。どうしても、一度だけ」
 どうしてわたしは違うなんて思ったのか、未だに分からない。だれけども彼女の顔を見るたびに尋ねてはいけないのだと突き放されている気がして聞けなかった。
 どれだけ否定しても彼女は首を横に振った。届かないのだ、わたしの気持ちも言葉も、彼女には。
 わたしも好きだと、もう言えない。
「なんで泣くんだよ。悪かったよこんなこと言って」
 わたしの代わりに涙を拭い、反対の手で頬を撫でる。わたしの体がもし自由なら、言葉の代わりにそうできるのに。そうすれば伝わっただろうか?
「誰にも言わないでくれるか。はやてや、そうだな。特に……フェイトには」
 あいつはいつだってお前のことを見ていたんだから――少女の口から漏れたのは、そんな悲しい言葉だった。何故わたしがそれを悲しいと思ったのか、そのとき解っていたらもっといい言葉が返せただろうか。あるいはこの懸命な少女に向かって、如何にも愚かしいことを口走らなくてすんだかもしれない。
「お願いがあるの」
 ごめんね、ヴィータちゃん。
「なんだ?」
 どうしても、どうしても。
「もう一度聞きたい」
 きっともう二度と聞くことのない言葉を覚えていようと目を閉じた。拭いてくれた涙が又こぼれ落ちる。早く乾いてほしいのに止まらない。ああ、ヴィータちゃんが困った顔をする。ごめんね。
「好きだよ、なのは」

 夏と冬が交互にやってきて、たまに春と秋が足早に過ぎ去った。
 あれから彼女は何年経っても、変わらなかった。二人の距離は前よりはずっと縮まり、居心地の悪さもなくなったし、一緒にいてもはやてちゃんの名前を出すことは少なくなった。けれども指一本触れることに躊躇った。同じ空、私の前は彼女が護っている。
 だけどたまに目の前にいるだけで鼻が熱くなった。今涙を流しても困り果ててしまうだけで、またお互いに距離を置かなくてはならなくなるだろう。
 あの言葉をもう一度聞きたかった。けれどもう尋ねない。あのとき彼女が伝えてくれたみたいに、せめて言葉にする。
「ヴィータちゃん、好きだよ」
「知ってるよ」
「キスしたい」
「ばーか」
「ヴィータちゃん」
「ああ、暑苦しいな」
 ならどうして避けてくれないの。彼女が創った優しい境界線を踏み越えて、抱き締めている。
「ヴィータ、ちゃん」
 愛してる、愛してる、愛してる。
 こんなにも彼女を思っているのに、彼女にだけ伝わらなかった。



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Re: タイトルなし

まだ映画は見てませんよ。
映画もなのヴィとか、もう全力で見たいですね!
けど、田舎なので上映場所までかなり遠いというのが……というのと、家で一人ゆっくりとみたいというのがすこしw
ああでも映画館に行ってしまいそうですw

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