その境界線は。
高町なのはを全力全開で愛していく。そんな小説を書いてます。
幸福の在処 一章 2007/09/06
「幸福の在処」一章です。
なのはが泥沼に足を踏み込む全ての始まり。
※ささやかながら、性的描写を含みますのでご注意を。
それでは続きよりどうぞ。
幸福の在処 一章
それは些細なやり取り。通りすがりに気づいてしまった、他人の痕。
「はやてちゃん。どうしたの、ここ」
愛しい人が振り返る。どこかわざとらしい仕草に見えてしまう。
誰につけられたの、と私は問う。よくわからない、と彼女が答える。そんなじれったい彼女の体を壁に押し付け、指でその部位をなぞってやった。
「首筋についてるよ」
言えば彼女は、唇を歪めた。苦しそうなのに嬉しそうで。
……はやてちゃん。八神はやての頭には私ではない人がいるのだろう。だから私は何も知らない態度を装って、鮮やかに笑った。
「私が付け直してあげるよ」
翌日に見た彼女の身体には、無数の痕がつけられていた。ずいぶんと子供じみた性格をしている人だと笑ってしまうほどに。でも上手く笑えなかった。胸をなにかが焼いていた。
はやてちゃんの体に刻まれた無数の紅い痕――私はそれを誰がつけたのか、知っている。
思い浮かべるのは、薄暗い部屋の中で流れる金色にはやてちゃんが絡みとられる姿だった。見慣れた二人のシルエットは、見違うはずもない。それにここははやてちゃんの部屋で。
ああ、と、酷く納得をした。
あの時はやてちゃんの首筋につけられていたキスマークも、自分がはやてちゃんにつけたキスマークの上に上書きするようにつけられた多くの刻印も。全部フェイトちゃんのものだったのだ。
私は扉を閉じた。
あの二人が、鍵もかけず行為に耽っていたこと。それだけ周りが見えなくなっていたのだということ。残酷な光景。
フェイトちゃんは私を好きだといった。伝えられる以前から、そうだとも分かっていた。だけど最近は――。
安心していたのかも、しれない。どこかで。
醜い心が浮き上がる。どす黒い煙が焼け跡から出てくる。
「――」
そっと。私は踵を返した。
一人ベッドの上に座っていた。
二人で寝ても十分に余る広いベッド。二人の間に隙間があるのは、隣の人以外を想う私にとってちょうど良くて。
だけどそれを崩さなければならなくなった。
愛しい人を、奪われないために。
「おかえり、フェイトちゃん」
満面の笑みで彼女を迎える。清楚なたたずまいに身を包んだ彼女は、腰までの金色の髪を静かに揺らせて部屋に踏み込む。
普段と変わらぬ動作なのに、空気が変わったように感じたのは、きっと私の心が普段と変わっているから。
いつもと違う眼で、彼女を見ているから。
「遅かったね?」
「うん、ちょっと……」
「そっか」
下手な言い訳をしないところが彼女らしい。それとも私の事がどうでもよくなるくらいに、はやてちゃんに惹かれてきているのだろうか。
そして、それは。
……私が誘っても、変わらないんだろうか?
「先にシャワー浴びてくるよ」
「うん」
彼女はこちらを振り向かないまま、パタンと扉を閉めた。
しばらくして布擦れの音と、水の打つ音が聞こえてくる。
私は立ちあがる。もちろん、身体を纏うものは脱ぎ払って。
「フェイトちゃん」
「え?」
「背中、流してあげるよ」
「……うん。ありがとう、なのは」
よくあること。何度も今までしてきた。
風呂場に踏み込み、腰を落とす。スポンジに手をかけてボディソープを染み込ませると、白く滑らかな肌を撫でた。
「やっぱりフェイトちゃん綺麗だよね〜」
「そ、そんなことないよ」
「ううん、凄く綺麗だと思うよ」
ああ、本当に綺麗な肌だ。これがはやてちゃんを虜にしているのかな。
そう思うと、ちょっと傷の一つや二つ付けたくなったけど、なんとかとどめる。
「本当に、綺麗。ちょっと触ってみてもいい?」
「え……いいけど」
「ありがとう、フェイトちゃん」
了承を耳にいれると、そのまま人差し指を軽く立て、指の腹で背筋を撫でた。
「っ」
つぅーっとお尻のぎりぎりまでおろしていく。
彼女は少し身をよじったようにみえたけど、気付かないふり。
今度は一本ではなく、全ての指を使って撫でることにした。
片方は、背中側、脇の方から腰に下ろし、腹部に回す。
もう片方は、二の腕から肩に、首にもっていく。
「……んっ、う」
まだ、……反応は弱い。
お腹を撫でていた手を、少し降下させ、茂みへと持っていく。手入れをしているのだろうか、手触りはいい。
はやてちゃんにも触らせたのかな。
「な、なのはっ……」
もう少し進めようとしたところで、さすがに声がかかった。
「も、もうそろそろ……いいかな」
「んー、だめ」
だけど分かっていたから、その言葉は切り捨てて指を潜らせた。
「ひゃぁあっ」
突起を一度擦るようにとおり、中心部に到達する。
首筋にあてていた手は、既に彼女の豊満な乳房にあった。後からじゃ見えないけど、きっと鮮やかなピンクをしているだろうそれを、下部にあてがった指を動かしながらも摘み上げる。
びくりと体が震えるのがわかった。そして水以外のものがじわりと、指に零れてくるのも。
「ほんっと、綺麗だよ?フェイトちゃん」
「は、ぁ、……なのは、どうしたの……」
「別に何もないけど。ただ、フェイトちゃんに触れたくなっただけだよ」
言いながら、首筋にキスを落とす。いったん下部にあった手を離し、お腹にまわし抱き込む。胸と腹部を包む自分の手のことを、どう思ってくれているだろう。僅かでも揺らいでくれているだろうか? もちろんそんなことは、耳から首にまで真っ赤に染まっているのをみればわかるけど。
「好きだよ、フェイトちゃん」
きちんと目の前の人に言った。こういうのは、はやてちゃんにとか考えてると気付かれるから。だからこの時はフェイトちゃんだけを考えることにする。
「なのは……?」
「好き、大好き、フェイトちゃん」
力強く抱き締めながら、私は呟く。出来るだけ熱を込めながら言って、うなじに顔を埋める。
「なんで……今頃」
それはフェイトちゃんがはやてちゃんをとろうとするから。
「私のことは、友達にしか、見れないって」
もちろん、今でもそうだよ。大好きな親友。付け加えるなら、“好きな人を奪おうとする”親友。
「だから今まで、一緒にお風呂に入っても、一緒のベッドで寝てても何もしてくれなかったし、しなかったのに」
友達にそんな気分になれないのは当たり前だよ。でも今は違う。
「……なんで?」
ちゃんとフェイトちゃんの身体に欲情出来てる。人間って上手い具合に出来てるものだなと思う。
「もう友達に見れなくなっちゃったの」
私は身体を離し、肩に手を置いて、彼女の体ごと振り向かせてキスをした。
「フェイトちゃんのこと、好きになっちゃったから。今頃、なんて言われても分かんないよ」
「そんな……」
「嫌かな?」
「え……?」
はやてがいるのに、なんて思っているのか。そんなこと思わせないよ。
「嫌、かな。そうだよね。私はフェイトちゃんのこと一度振ったことには変わりないんだし」
瞳をじっと見詰める。よく見れば、否、よく見なくとも綺麗な目をしている。子供の頃のままの、紅い宝石。
「私もこの気持ちに気付いて、駄目だって思った。今更だって。でも……フェイトちゃんは格好よくて。きりっと仕事をするフェイトちゃんも、バリアジャケットのマントを翻しながら敵を倒していくフェイトちゃんも、こうして無防備なフェイトちゃんも格好よくて、綺麗だから……」
「なのは、私は……」
「最近、フェイトちゃんの姿を見ると、まるで子供の頃に戻ったような気分になるの。あの頃の私、フェイトちゃんに、恋してたから。初めて逢ったときも多分一目惚れだった。強くて、でもどこか淋しそうな瞳をしてて。すごく気になってた」
これは本当。ただその気持ちは次第に薄れていって、完全に友達になったのが今。だけどそんなことは、今は放り出してしまえばいい。
「ずっと一緒で、離れることなんかなくて。一緒にいすぎた所為かな……友達にしか思えないっていったけど、本当は気付かなかっただけかも。本当は、ずっと、好きだったんだよ」
「な、……のは……」
もう一度、今度は正面から抱き締めた。
「もう駄目かな。遅い、かな。……他に好きな人できちゃった?」
「っ!」
「……いるの?」
私は腕に込める力を強めた。柔らかな体が感じられる。それは同時に、彼女もそれを感じてくれているということ。
ゆっくりと、彼女の顎が肩口に乗せられた。それから先ほど自分がしたように、首筋にキスをされる。
「……いないよ。私は今でもなのはが好きだから」
「よかった、フェイトちゃん綺麗だから、もう誰かのものになってるかもしれないって思ってた」
「そんなことないよ!大好きだよ……」
――嘘つき。
抱き締め返す彼女の体の感触を感じながら、考える。
――でも、いいよ。
「なのは……」
「ごめんねフェイトちゃん、意地悪しちゃって。大丈夫、信じてるよ」
私も嘘つきだから。
「それじゃあ、ベッドに行く?」
「え、ここじゃ駄目なの?」
「んっと、初めて二人でするんだから、ちゃんとした場所で抱きたいって思ったんだけど……フェイトちゃんはここの方がよかった?」
「っ、そんなことないよ。本当はどこでもいいけど、でも折角だからちゃんとした場所でしたい……」
「ありがとう。じゃ、このままいこっか?」
泡だらけだった身体を洗い流して、背中と膝裏に腕を差し込む。お姫様抱っこだったけれど、鍛えられた腕は人一人くらいどうということはない。そのままゆっくりとベッドに乗せると、赤い顔のままこちらを見詰めてくる。可愛い。綺麗。興奮する。
でも、それだけ。
それだけだけど、きっとフェイトちゃんを抱ける。欲望があれば人間は抱ける。
「なのは……好き」
「うん、私も大好きだよ」
お互いに深くキスをしながら、夜がゆっくりと明けていった。
「え?」
彼女は聞き返した。片方の手は繋いだままだ。
「だから、他の人とはこういうことしないでね」
終わった後、私は空いている方の指を、枕に広がる金色の髪に絡ませながら言った。
「あ、……うん」
「もし襲われてもちゃんと抵抗してね……フェイトちゃん、受け入れちゃいそうで怖いよ……」
「もしかして妬いてくれてるの?なのは」
「う〜、あたりまえだよぉ」
「分かった、絶対になのは以外とはしないよ。する必要なんてないんだよね」
「……そうだよ。これからはいっぱい私がフェイトちゃんを抱くんだから」
だからもう、フェイトちゃんにはやてちゃんは必要ない。
「じゃあなのはも」
「ん?」
「なのはも……私のことだけ、見てくれる?それなら、いい」
「……うん、もちろんだよ」
「なのはっ」
飛びかかってくるフェイトちゃんを抱きとめる。
これでいい。
はやてちゃんはどうせフェイトちゃんしか眼中にないんだ……悲しいけど。だからこれで、はやてちゃんは誰のものになることはない。私がはやてちゃんと結ばれることは無いけど、それだけは保つことが出来るんだ。
フェイトちゃんは、欺瞞をもたれないように適度に戯れて、はやてちゃんともいつも通り。はやてちゃんから迫られても、きっとこれで抵抗してくれるだろう。そうすればはやてちゃんはきっと彼女を抱くことなんて出来ない。
――ごめんね、はやてちゃん。
でもはやてちゃんが、悪いんだから。私のこと、フェイトちゃんの代わりにしかみてくれないはやてちゃんが悪いんだから。私のことを好きになったフェイトちゃんが悪いんだから。
そしてなにより、自分が一番悪いんだから。
胸なんて痛まない。痛めちゃいけないんだ。
「それじゃあフェイトちゃん、行ってくるね」
「うん……」
出かける時、ドアまでわざわざ見送りにきてくれる彼女に笑いかけた。嬉しそうに微笑みながら、どこかつっかえている彼女。そんなフェイトちゃんの頬に、キスをした。
「あ……」
「ふふ、これが足りなかったのかな?」
「な、なのは……っ」
顔を赤らめる彼女。可愛らしい、とは思うけど。
それでもどこかではやてちゃんのこんな姿を思い浮かべようとして、思い浮かべられないことに、ちょっと項垂れて。だけどもちろんそんなこと、表には出せない。全てが終わるから。
「いってきますのキス、だよ」
「なのは……じゃあ」
ん?と笑って見せると、同時に唇が彼女のそれで塞がれる。
「いってらっしゃいの、キス……」
真っ赤になりながらも俯いて、でもまた直ぐに顔を上げて微笑みながら言う彼女。
私は思わず唇を押さえて。――。
「……いってきます」
声が震えていないといいな、と思った。
扉を閉めると、涙がこぼれてきた。どうしようもない、小さな罪悪感と、大きな罪悪感。小さなものは親友のため。大きなものは私の心のため。
酷い人間だと思う。あんな優しくていい子を自分の為に騙して。自分のわがままの為だけに、嘘の幸せを与えて。これでは悪魔といわれても仕方がない。
でも誰が違うといっても、これがまぎれもない私の幸せなの。
⇒二章
なのはが泥沼に足を踏み込む全ての始まり。
※ささやかながら、性的描写を含みますのでご注意を。
それでは続きよりどうぞ。
幸福の在処 一章
それは些細なやり取り。通りすがりに気づいてしまった、他人の痕。
「はやてちゃん。どうしたの、ここ」
愛しい人が振り返る。どこかわざとらしい仕草に見えてしまう。
誰につけられたの、と私は問う。よくわからない、と彼女が答える。そんなじれったい彼女の体を壁に押し付け、指でその部位をなぞってやった。
「首筋についてるよ」
言えば彼女は、唇を歪めた。苦しそうなのに嬉しそうで。
……はやてちゃん。八神はやての頭には私ではない人がいるのだろう。だから私は何も知らない態度を装って、鮮やかに笑った。
「私が付け直してあげるよ」
翌日に見た彼女の身体には、無数の痕がつけられていた。ずいぶんと子供じみた性格をしている人だと笑ってしまうほどに。でも上手く笑えなかった。胸をなにかが焼いていた。
はやてちゃんの体に刻まれた無数の紅い痕――私はそれを誰がつけたのか、知っている。
思い浮かべるのは、薄暗い部屋の中で流れる金色にはやてちゃんが絡みとられる姿だった。見慣れた二人のシルエットは、見違うはずもない。それにここははやてちゃんの部屋で。
ああ、と、酷く納得をした。
あの時はやてちゃんの首筋につけられていたキスマークも、自分がはやてちゃんにつけたキスマークの上に上書きするようにつけられた多くの刻印も。全部フェイトちゃんのものだったのだ。
私は扉を閉じた。
あの二人が、鍵もかけず行為に耽っていたこと。それだけ周りが見えなくなっていたのだということ。残酷な光景。
フェイトちゃんは私を好きだといった。伝えられる以前から、そうだとも分かっていた。だけど最近は――。
安心していたのかも、しれない。どこかで。
醜い心が浮き上がる。どす黒い煙が焼け跡から出てくる。
「――」
そっと。私は踵を返した。
一人ベッドの上に座っていた。
二人で寝ても十分に余る広いベッド。二人の間に隙間があるのは、隣の人以外を想う私にとってちょうど良くて。
だけどそれを崩さなければならなくなった。
愛しい人を、奪われないために。
「おかえり、フェイトちゃん」
満面の笑みで彼女を迎える。清楚なたたずまいに身を包んだ彼女は、腰までの金色の髪を静かに揺らせて部屋に踏み込む。
普段と変わらぬ動作なのに、空気が変わったように感じたのは、きっと私の心が普段と変わっているから。
いつもと違う眼で、彼女を見ているから。
「遅かったね?」
「うん、ちょっと……」
「そっか」
下手な言い訳をしないところが彼女らしい。それとも私の事がどうでもよくなるくらいに、はやてちゃんに惹かれてきているのだろうか。
そして、それは。
……私が誘っても、変わらないんだろうか?
「先にシャワー浴びてくるよ」
「うん」
彼女はこちらを振り向かないまま、パタンと扉を閉めた。
しばらくして布擦れの音と、水の打つ音が聞こえてくる。
私は立ちあがる。もちろん、身体を纏うものは脱ぎ払って。
「フェイトちゃん」
「え?」
「背中、流してあげるよ」
「……うん。ありがとう、なのは」
よくあること。何度も今までしてきた。
風呂場に踏み込み、腰を落とす。スポンジに手をかけてボディソープを染み込ませると、白く滑らかな肌を撫でた。
「やっぱりフェイトちゃん綺麗だよね〜」
「そ、そんなことないよ」
「ううん、凄く綺麗だと思うよ」
ああ、本当に綺麗な肌だ。これがはやてちゃんを虜にしているのかな。
そう思うと、ちょっと傷の一つや二つ付けたくなったけど、なんとかとどめる。
「本当に、綺麗。ちょっと触ってみてもいい?」
「え……いいけど」
「ありがとう、フェイトちゃん」
了承を耳にいれると、そのまま人差し指を軽く立て、指の腹で背筋を撫でた。
「っ」
つぅーっとお尻のぎりぎりまでおろしていく。
彼女は少し身をよじったようにみえたけど、気付かないふり。
今度は一本ではなく、全ての指を使って撫でることにした。
片方は、背中側、脇の方から腰に下ろし、腹部に回す。
もう片方は、二の腕から肩に、首にもっていく。
「……んっ、う」
まだ、……反応は弱い。
お腹を撫でていた手を、少し降下させ、茂みへと持っていく。手入れをしているのだろうか、手触りはいい。
はやてちゃんにも触らせたのかな。
「な、なのはっ……」
もう少し進めようとしたところで、さすがに声がかかった。
「も、もうそろそろ……いいかな」
「んー、だめ」
だけど分かっていたから、その言葉は切り捨てて指を潜らせた。
「ひゃぁあっ」
突起を一度擦るようにとおり、中心部に到達する。
首筋にあてていた手は、既に彼女の豊満な乳房にあった。後からじゃ見えないけど、きっと鮮やかなピンクをしているだろうそれを、下部にあてがった指を動かしながらも摘み上げる。
びくりと体が震えるのがわかった。そして水以外のものがじわりと、指に零れてくるのも。
「ほんっと、綺麗だよ?フェイトちゃん」
「は、ぁ、……なのは、どうしたの……」
「別に何もないけど。ただ、フェイトちゃんに触れたくなっただけだよ」
言いながら、首筋にキスを落とす。いったん下部にあった手を離し、お腹にまわし抱き込む。胸と腹部を包む自分の手のことを、どう思ってくれているだろう。僅かでも揺らいでくれているだろうか? もちろんそんなことは、耳から首にまで真っ赤に染まっているのをみればわかるけど。
「好きだよ、フェイトちゃん」
きちんと目の前の人に言った。こういうのは、はやてちゃんにとか考えてると気付かれるから。だからこの時はフェイトちゃんだけを考えることにする。
「なのは……?」
「好き、大好き、フェイトちゃん」
力強く抱き締めながら、私は呟く。出来るだけ熱を込めながら言って、うなじに顔を埋める。
「なんで……今頃」
それはフェイトちゃんがはやてちゃんをとろうとするから。
「私のことは、友達にしか、見れないって」
もちろん、今でもそうだよ。大好きな親友。付け加えるなら、“好きな人を奪おうとする”親友。
「だから今まで、一緒にお風呂に入っても、一緒のベッドで寝てても何もしてくれなかったし、しなかったのに」
友達にそんな気分になれないのは当たり前だよ。でも今は違う。
「……なんで?」
ちゃんとフェイトちゃんの身体に欲情出来てる。人間って上手い具合に出来てるものだなと思う。
「もう友達に見れなくなっちゃったの」
私は身体を離し、肩に手を置いて、彼女の体ごと振り向かせてキスをした。
「フェイトちゃんのこと、好きになっちゃったから。今頃、なんて言われても分かんないよ」
「そんな……」
「嫌かな?」
「え……?」
はやてがいるのに、なんて思っているのか。そんなこと思わせないよ。
「嫌、かな。そうだよね。私はフェイトちゃんのこと一度振ったことには変わりないんだし」
瞳をじっと見詰める。よく見れば、否、よく見なくとも綺麗な目をしている。子供の頃のままの、紅い宝石。
「私もこの気持ちに気付いて、駄目だって思った。今更だって。でも……フェイトちゃんは格好よくて。きりっと仕事をするフェイトちゃんも、バリアジャケットのマントを翻しながら敵を倒していくフェイトちゃんも、こうして無防備なフェイトちゃんも格好よくて、綺麗だから……」
「なのは、私は……」
「最近、フェイトちゃんの姿を見ると、まるで子供の頃に戻ったような気分になるの。あの頃の私、フェイトちゃんに、恋してたから。初めて逢ったときも多分一目惚れだった。強くて、でもどこか淋しそうな瞳をしてて。すごく気になってた」
これは本当。ただその気持ちは次第に薄れていって、完全に友達になったのが今。だけどそんなことは、今は放り出してしまえばいい。
「ずっと一緒で、離れることなんかなくて。一緒にいすぎた所為かな……友達にしか思えないっていったけど、本当は気付かなかっただけかも。本当は、ずっと、好きだったんだよ」
「な、……のは……」
もう一度、今度は正面から抱き締めた。
「もう駄目かな。遅い、かな。……他に好きな人できちゃった?」
「っ!」
「……いるの?」
私は腕に込める力を強めた。柔らかな体が感じられる。それは同時に、彼女もそれを感じてくれているということ。
ゆっくりと、彼女の顎が肩口に乗せられた。それから先ほど自分がしたように、首筋にキスをされる。
「……いないよ。私は今でもなのはが好きだから」
「よかった、フェイトちゃん綺麗だから、もう誰かのものになってるかもしれないって思ってた」
「そんなことないよ!大好きだよ……」
――嘘つき。
抱き締め返す彼女の体の感触を感じながら、考える。
――でも、いいよ。
「なのは……」
「ごめんねフェイトちゃん、意地悪しちゃって。大丈夫、信じてるよ」
私も嘘つきだから。
「それじゃあ、ベッドに行く?」
「え、ここじゃ駄目なの?」
「んっと、初めて二人でするんだから、ちゃんとした場所で抱きたいって思ったんだけど……フェイトちゃんはここの方がよかった?」
「っ、そんなことないよ。本当はどこでもいいけど、でも折角だからちゃんとした場所でしたい……」
「ありがとう。じゃ、このままいこっか?」
泡だらけだった身体を洗い流して、背中と膝裏に腕を差し込む。お姫様抱っこだったけれど、鍛えられた腕は人一人くらいどうということはない。そのままゆっくりとベッドに乗せると、赤い顔のままこちらを見詰めてくる。可愛い。綺麗。興奮する。
でも、それだけ。
それだけだけど、きっとフェイトちゃんを抱ける。欲望があれば人間は抱ける。
「なのは……好き」
「うん、私も大好きだよ」
お互いに深くキスをしながら、夜がゆっくりと明けていった。
「え?」
彼女は聞き返した。片方の手は繋いだままだ。
「だから、他の人とはこういうことしないでね」
終わった後、私は空いている方の指を、枕に広がる金色の髪に絡ませながら言った。
「あ、……うん」
「もし襲われてもちゃんと抵抗してね……フェイトちゃん、受け入れちゃいそうで怖いよ……」
「もしかして妬いてくれてるの?なのは」
「う〜、あたりまえだよぉ」
「分かった、絶対になのは以外とはしないよ。する必要なんてないんだよね」
「……そうだよ。これからはいっぱい私がフェイトちゃんを抱くんだから」
だからもう、フェイトちゃんにはやてちゃんは必要ない。
「じゃあなのはも」
「ん?」
「なのはも……私のことだけ、見てくれる?それなら、いい」
「……うん、もちろんだよ」
「なのはっ」
飛びかかってくるフェイトちゃんを抱きとめる。
これでいい。
はやてちゃんはどうせフェイトちゃんしか眼中にないんだ……悲しいけど。だからこれで、はやてちゃんは誰のものになることはない。私がはやてちゃんと結ばれることは無いけど、それだけは保つことが出来るんだ。
フェイトちゃんは、欺瞞をもたれないように適度に戯れて、はやてちゃんともいつも通り。はやてちゃんから迫られても、きっとこれで抵抗してくれるだろう。そうすればはやてちゃんはきっと彼女を抱くことなんて出来ない。
――ごめんね、はやてちゃん。
でもはやてちゃんが、悪いんだから。私のこと、フェイトちゃんの代わりにしかみてくれないはやてちゃんが悪いんだから。私のことを好きになったフェイトちゃんが悪いんだから。
そしてなにより、自分が一番悪いんだから。
胸なんて痛まない。痛めちゃいけないんだ。
「それじゃあフェイトちゃん、行ってくるね」
「うん……」
出かける時、ドアまでわざわざ見送りにきてくれる彼女に笑いかけた。嬉しそうに微笑みながら、どこかつっかえている彼女。そんなフェイトちゃんの頬に、キスをした。
「あ……」
「ふふ、これが足りなかったのかな?」
「な、なのは……っ」
顔を赤らめる彼女。可愛らしい、とは思うけど。
それでもどこかではやてちゃんのこんな姿を思い浮かべようとして、思い浮かべられないことに、ちょっと項垂れて。だけどもちろんそんなこと、表には出せない。全てが終わるから。
「いってきますのキス、だよ」
「なのは……じゃあ」
ん?と笑って見せると、同時に唇が彼女のそれで塞がれる。
「いってらっしゃいの、キス……」
真っ赤になりながらも俯いて、でもまた直ぐに顔を上げて微笑みながら言う彼女。
私は思わず唇を押さえて。――。
「……いってきます」
声が震えていないといいな、と思った。
扉を閉めると、涙がこぼれてきた。どうしようもない、小さな罪悪感と、大きな罪悪感。小さなものは親友のため。大きなものは私の心のため。
酷い人間だと思う。あんな優しくていい子を自分の為に騙して。自分のわがままの為だけに、嘘の幸せを与えて。これでは悪魔といわれても仕方がない。
でも誰が違うといっても、これがまぎれもない私の幸せなの。
⇒二章
| ホーム |


アリサ×なのは

comments
post a comment