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2019-07

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幸福の在処 二章

「幸福の在処」二章。
純粋すぎるからこそ、黒くなっていくなのは。
幸福の在処を見つける事が、果たしてできるのか。
それは作者だけが知っているかもしれない。

それでは続きからどうぞです。



 幸福の在処 二章


 二人きりの空間。
 そこに存在する絶え間なく続く吐き出される弱々しい声と、熱のこもった吐息は、すべて私のもの。
「可愛いよ、なのは」
 黄金色の髪を胸元に溢しながら、彼女は妖しく微笑む。私はそれに魅了されることなく、ただ声をあげる。
 彼女はずっと私の名前を呼んでいる。なのは、なのは、と。そればかりを呟いている。綺麗な瞳と、綺麗な顔と、綺麗な髪。それから綺麗な体。きっと他の人ならすぐに参ってしまっているのではないだろうか。だけど私には、想い続けている人がいるから。そして想い続けているからこそ、目の前の彼女に抱かれているのだから。
「……なのは、どうしたの?」
 ふと頬にあてがわれた手が濡れていた。いつの間に涙なんて溢れていたのだろう。私はなんでもない、と頭を振って、首に手を回した。
「フェイトちゃんのが気持ち良過ぎたからかも、ね」
 そんな他愛のない言葉にさえ頬を染める彼女は、客観的に見て凄く可愛い。
 もう何度もそんなやり取りを繰り返した。偶然部屋に二人がいられるときには身体を交え、会えば唇を交わした。その度に一つ、心に波紋が広がる。小石が投げ入れられる。痛む心を押し殺して私は笑う。偽りの愛の言葉と共に――。

「なんや、なのはちゃんやない」
 廊下ではやてちゃんと出会った。思わぬ偶然に心臓が飛び跳ねる。だけどそんな自分を他所に、はやてちゃんはいきなり私の顔を見て溜息をついた。
 疲れているのかな、とも思ったけれど、出会い頭にそんなことをされると流石の私も悲しくなった。仕方なく愛想笑いで誤魔化す。
「そうだよ。はやてちゃんはもう仕事終わったの」
「ん、まだやけど、そやフェイトちゃん見ぃひんかった?」
 ピクリ、と体の中で何かが蠢く。
「どうしたの、何か用とかあった?」
「いや、最近会ってへんからどないしてるんかなって思って」
 仕事以外は、私といるよ。
「そう。じゃあ会ったら言っておくよ」
 ちゃんと、伝えるよ。
 それではやてちゃんに会いに行くかは、分からないけど。
「ほんまに?……悪いなあ」
「んーん。だってはやてちゃんの頼みだもん」
 苦笑するはやてちゃんの左手を両手で握る。
「ん、まあ、おおきにな。ほなちゃちゃっと続きやってくるわ」
「うん、頑張ってねはやてちゃん!」
 仕事の邪魔をして嫌われたくなかったから、名残惜しかったけれど手を放した。それからすっと一歩さがって、手を振る。見えなくなるまでその後姿を見送っていた。
 そんな私の背後に、視線を感じた。覚えのある気配に振り向くと、そこには長い金色を束ねたスーツ姿の彼女がいた。
「フェイトちゃん?」
 小首を傾げてみせる。だけど彼女はそのまま近づいてきた。どうしたのだろう、と動けないままいた。普段と明らかに様子が違う彼女を見ていると、容易に動いてはいけない気がした。
「どうした、の」
 すぐ近くまで距離をつめた彼女が、突然私の腕をとった。そのまま廊下の壁に押し付けられる。衝撃に背中が少し痛んだ。
 小さくうめき声を上げて講義しようと思う間もなく、彼女に唇を奪われる。唇だけではない、強引に歯を抉じ開けられ、舌まで挿入される。
「ぁう……んんっ」
 身をよじろうとも、手首の拘束は外れない。唇も外れない。かといって舌を噛むことも躊躇われる。私に出来ることといえば、鼻で息継ぎをし、目をきつく閉じることだった。
 ここは廊下。開けば人の目があるだろうし。なにより、目の前の彼女を視界に入れる事が怖かった。
 何分かしてようやく解放されると、大きく深呼吸を繰り返した。
「なんでこんなことするの……」
 絶対に誰かに見られた。もしそれが人づてにはやてちゃんに伝わったら。直接言うことはないかもしれないけど、噂を耳にしたら。考えただけで背筋が凍る。
「フェイトちゃんっ!」
「なのはが悪いんだよ」
 やりきれない想いを発散させようとして、フェイトちゃんに怒鳴りつけると、思わぬ言葉が返ってきた。端麗な眉を顰めて寂しそうにこちらに視線を向けている。本当に自分が悪いように思えてくる。
 何が彼女の気に障ったのだろう。考えても分からなくて、問い詰めようとしたら、また唇を塞がれた。
「っ、やだ、フェイトちゃんっ」
 今度は思い切り突き飛ばす。意図せずして彼女の背中は壁に押し付けてしまった。掛ける言葉も見つからない。どうしたらいいのか、何を間違ってしまったのか。自分の何が彼女をこんな風にしてしまったのか――まったく分からなかった。
「……ごめん」
 俯いたままの彼女に、ようやく捻り出せた言葉は謝罪。意味も分からずに謝るほど失礼なことはないと分かっていても、それ以外に喉を通るものは無かったからだ。目の前で大切な人が、しかも自分のせいで悲しんでいるならば、どうにかしたいと思うのは誰でもだろう。
 恋人でなくてもそれは同じ。
「ううん。私の方こそごめん」
「それはいいんだけど、でも何で急に」
 たしか昨晩もしたばかりだったはずだ。欲求不満というのは無いだろう。
「なのはがはやてと……その、手を繋いでいたから」
「へ?」
 何か突拍子もないことを言われた気がして、先ほどの自分の行動を振り返る。確かに自分ははやてちゃんの手を握り締めていた。だけれどそれくらい何でもないはずなのに。今までだって、手どころか抱き締め合ったりもした。
 それなのに何故今更手くらいで、と考えてしまったが。違う、のだろう。以前と今とでは。幾度も、幾度も身体を重ねてしまったのだ。友達だった頃とでは違って当然だった。
「嫉妬しちゃったかな、ごめんね、そんなつもりは全然なかったんだよ。ただのスキンシップだから」
「ほんとう?」
「うん。だから安心して。私にはフェイトちゃんしかいないよ」
「じゃあキスしてもいいかな」
「……もう聞かなくても、いいよ」
 唇が荒々しく、それでいて優しく重ねられる。
 積み重ねられていく些細な嘘は、もう見上げても天井が届かないところまで積み上げられていた。今更崩せない。崩せば自分の身も埋められてしまうから。
 だから。それから私達はほんのしばらく仕事を放棄して、求め合った。

 ヴィータちゃんにたっぷりと叱られてしまったのは紅いカーテンが下りてきた頃だった。
 数十分のはずが、気付けば疲れが溜まっていたこともあって眠ってしまい、慌てて身だしなみを整えて訓練に顔を出したのだが、グラーフアイゼンを片手に仁王立ちをしたヴィータちゃんに怒鳴られたのがほんの数分前。だけど彼女は直ぐに大げさに息を吐いて、私を見上げた。
「最初から言ってくれればあたしがいくらでも新人たちの相手してやったんだ、休むんならもっとゆっくり休めよ。っていうか大丈夫なのか?休んだわりには疲れてるように見えるぞ。早く寝たほうがいいんじゃあ」
「大丈夫だから」
 真紅の髪の隙間から覗く蒼い目。そこから発せられる眼光が私を射抜く。厳しいものではなく、暖かに見詰められて。私は幸せな環境にいるのだと思った。
 だけど同時もぬるま湯のような環境に甘えてばかりいる自分が嫌になって、そっけない対応を返してしまった。
 そんな私達のやりとりを、四人が不安気に眺めていることに気付くと、慌てて顔の前で手を振る。
「今日は本当にごめん。もう終わりにするから、ゆっくり休んでね」
 はいっ、と勢いのいい四人の声。従順で可愛い返事。私は四人を裏切っているのかもしれない。関係がないのに――関係がないはずがない、仕事をさぼって行為に耽っていたのだから――罪悪感ばかりが浮き上がってくる。
 解散させて、私も戻ろうとしたところにヴィータちゃんの声がかかる。
「お、おい。なのはっ」
 だけど私は振り向かずに、手を降るだけで、そのまま足を進めていた。

 部屋に戻ると、力が抜ける。上着とスカートを脱いでシャツだけになるとベッドに寝転んだ。
 天井を見上げる。細かく描かれた天井は、しかし白く何にも無いように感じられる。虚無の時間。魔法をとれば何もない自分。手を伸ばしても届かない愛しい人。
 ――私は何がしたいんだろう。
 ガチャガチャと扉の方で音がして上体を起こすと、先刻見たばかりの顔があった。私は昼間のはやてちゃんの言葉を、約束通りフェイトちゃんに伝えた。当然の如く部屋を出て行こうとする彼女を後から抱き締める。それから少し背伸びをして、首筋に唇をあてた。
「ねえ、今すぐしたいな」
「えっ、でもはやてが」
「嫌?」
「そんなことないよ! ただ、はやてを蔑ろにするなんてこと、なのはがするはずないと思ってたからびっくりした」
 本当、フェイトちゃんはよく見ているよね。
「そう?」
「そうだよ。でも本当にいいの?」
「大丈夫だと思うけど。大切な用事だったら私じゃなくて直接フェイトちゃんに言ってくるよ」
「でも……」
「フェイトちゃんのこと、欲しいんだ」
 部屋の照明に当てられて光る彼女の髪をかき上げて、耳朶を一舐めして囁く。
 顔を離して瞳に視線を差して。髪を梳きながら、昔とは違った意味を含めて名前を呼ぶと、彼女の体が震えた。
「……っ、なのはから求めてくれるなんて、珍しいね」
「そうかな」
「うん……最初の時以外、いつも私からだったし」
「ごめんね、でも嫌なら止めるよ」
 そう言って、身体を離す。ベッドに座り、上体を倒してフェイトちゃんを見上げる。
「それともはやてちゃんの所へ行きたい?」
「……ずるいよ、なのは」
「そう?」
「なのは以外に大切なことなんて何もないって知ってるくせに」
 私はにっこりと微笑んだ。自らのシャツのボタンを外し、前を肌蹴させる。目の前の彼女の喉がごくりと動いたのがわかった。
「私はフェイトちゃんが欲しいだけなんだけどな」
 言葉はそれ以上続かなかった。フェイトちゃんが上にのしかかってくる。両手を耳の横についた体勢で、彼女が呟く。
「ずるいよ、なのは」
 それから抱き締められた。
 これで少しは安心できる。今フェイトちゃんの中には、はやてちゃんよりも私の方が上なんだってことを、ようやく確かめられた。心の中で笑いが零れる。
 ――はやてちゃんは渡さないよ。
 ご褒美に、私は目の前の綺麗な女性を抱き締めることにした。


 ⇒三章

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