2017-08

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小さな涙

うぐ、日付かわっちゃいました。。
なのは×リインフォースIIです。でも実質はリインII→なのは。
だいたい19話あたりです。SS03視聴推薦ですが、聴いてなくても大丈夫です。聴いてるといいかな、という程度。

よければ続きよりどうぞです。



 小さな涙


 泣いた時、貴方の声が聞こえた――。


 六課壊滅後、リインフォースIIはずっと眠っていた。
 深い夢を見ていた。
 音を通さない水泡に包まれたような沈黙の中に静かに記憶がもぐりこんでいって。……そして目を覚ます。言われるその瞬間まで、泣いていたことにも気付かずに、ただ一点だけを見詰めて。
 悲しい夢だったような気がした。殆ど内容を覚えてはいないけれど、それだけは確かな事として胸の底に残っていた。誰かの強い想いの残滓みたいなものとリインは理由も無く捉えていた。見果てぬ夢である。
 深く悲しい夢の中から抜け出すと、家族が笑顔で迎えてくれ、止まっていたはずの涙が再び溢れる。自分の涙ではなく、誰かのものだったような朧げな余情に囚われて、リインは身動きが取れなくなった。顔も知らないはずの人の想いが突き刺さるように、そして自身を包み込むように残っていた。なにかちりちりと焼かれるようで。
 マイスターはやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの、それぞれの優しさが、嬉しくて切ない。胸が痛かった。
 リインは部屋を抜け出した。
 呼吸は荒かった。だけど急激な運動のせいではないことも分かっていた。そうしてどうにか息を整え顔をあげれば、自分の指針であり憧れでもある高町なのはの姿を見つけた。
 なのはさん、と声をだしかけて口を手で覆う。いつも気丈で明るさを絶やさないなのはの表情が暗く沈んでいるように見え、思わず声を掛けることは躊躇われた。がすぐに向こうが気付いて、リインは苦笑しながら飛んでいった。
「リイン」
 気鬱だったなのはの表情は既に取り繕われていた。持て余すように、なのはさん、と呟いて所在なげにぷかぷか浮いていると、そっと肩にいざなわれた。
 こうしてリインがなのはの肩に乗るのは六課設立以来のことだった。フォワードメンバーの訓練やそのためのメニュー作りなどで、多忙過ぎる日々を送っていた彼女と接する機会がそもそも無かった。顔を一度も見ない日もあったくらいだ。こうして廊下でばったり、なんていうのは殆ど期待できない状況であった。六課の宿舎が襲撃を受け、アースラに拠点を移動してからこういう機会を持てたのは皮肉としか言いようがない。リインはなのはの顔を見る事が出来て、小さな歓喜が胸に広がっていた。
「リインは幸せものなんです」
 辛くても悲しくても、支えてくれる人が居る。温かい微笑を向けてくれる人が居る。
「えへへ、自慢です」
「そうだね、リインも、そして私も幸せものだよね」
「はやてちゃ……、マイスターはやても、ヴィータちゃんも、みんなが支えてくれる。ふと凄い幸せなんだなって思いました」
 そして今自分が乗っている人も。
 なのはは聞きながら歩き、艦内の空き部屋に踏み込んだ。いいのかな、とも考えたが、使っていないのならいいのだろう。なのははリインを出来る限りそっと卓上に乗せた。
 誰もいない仄暗い部屋で、リインはなのはと二人でいた。今までは誰かしら傍にいたものだったが、こうして二人が、二人きりでいることは初めてだった。そのことに胸をときめかせる余裕は、残念ながらリインにはない。
 そんな自分を解きほぐすようになのはは、「はやてちゃんでいいのに」なんて、小さな笑みを溢した。
「リインは可愛いね。だけどちょっと固くなりすぎるかな。こういった場面では崩してもいいんだよ、あまり気を張りつめていると壊れちゃうからね」
「それはなのはさんの方です」
「うん?」
「なのはさんにこそ言いたいです。もっと力を抜いてくださいです。見ていて、……壊れそうです」
「私は大丈夫だよ。一度墜ちて学んだから」
「でも見ている方は心配なんです! ブラスターモードのことだってあるし、それはきっと私だけじゃなくフェイトさんもヴィータちゃんも心配してるです」
「リイン?」
「なのはさんがそう、教えてきたんですよ。無茶をしちゃ駄目だって、そう。なのになのはさんが無茶しちゃ駄目です……」
 居なくなってしまって一番悲しいのは周りの人だ。はやては未だにあの人――リインフォースの事を忘れてはいないし、ふとした時にアルバムを引き出しては自分の知らない『あの頃』を眺めている。『あの頃』は短すぎる時間だったらしいけれど、確かにあの人はいたのだ。顔も知らないあの人が消えてしまったから、自分は存在していられる。リインフォースの事を想うと、言葉に出来ない靄のような感情がいつも胸中に渦巻いた。
 先ほど見た夢が甦っていく。黒だった写真にじわりと絵が広がっていくように、あの人の声と顔が現像されていく。不自然なほど鮮明に、脳裏に映し出される。
「もっと成長したいです」
 夢を思い出したからか、リインは唐突にそんな事を口にした。だがリインにとって唐突ではなかった。
「今のなのはさんは、凄く悲しそうです。上手く言えないですけど、なのはさんが私の前で涙を流してくれるようになるくらい、強くなりたい」
「リインは強いよ。私なんかより全然」
「じゃあなんで泣いてくれないんですか?」
 我が侭だった。
「ヴィヴィオが攫われて、悲しくないはずなんてないんです。リインなんかに言えたことではないですが、私はなのはさんにもっと感情を吐き出して欲しいです」
 そうなったところで支えてなどあげられないだろう。それどころか受け止めてすらあげられないかもしれない。それでもリインは言わずにはいられなかった。内に全てを溜め込んでしまうなのはを支えてあげたい。――気持ちだけではどうにもならないことは分かっていても、やはりそう思う。
 リインの小さな頭を、なのはは優しすぎる手つきで撫でた。暖かい、はやてと同じくらい大好きな手だ。
「十分だよリイン。リインのその優しさには、十二分に支えられているよ」
「なのはさん」
「今日リインがいてくれてよかった」
 掌で包み込むようにしてくれる。心地良さにリインが力を抜いて身を委ねると、瞬く間に眠気が襲ってくる。
 ――おかしいな、さっき眠ったばかりなのに。
 思いながらもリインは再び夢の中へと没入していく。
「おやすみ、リイン」
 優しい羽のようななのはの声を受けながら、今度は安らかなる眠りへと旅立った。


 遥か遠くへ、想いを届ける風になりたい。
 一度も道を交えることのなかったあの人の名前を貰って、リインは無意識のうちに考えるようになった。祝福の風という名に相応しくなりたい。今はまだ未熟者で、半人前以下だけれど、いつしかそんな事を考え始めた。
 怪我をしてからというもの、幾度となく繰り返される悲しい夢を見ていた。夢の中では第三者の視点でいて、目が覚めれば泣いている。さめざめと頬を伝う冷たい涙が襟首を濡らし、その度に胸が熱くなった。
 そんな風にリインが悲壮に濡れて泣いた時、なのはの声を聞いた。
 リインが教えを乞い、慕っているのがなのはだった。これはリインも薄っすらとしか認識できていないが、恋をしてもいた。はやてだけがこっそりと気付くような、自分すら気付かない淡い恋ではあったけれど、それは確かに恋だった。さっきだって思いがけずなのはと出会うことができ、胸が踊るような気分だったのだ。リインはまだその感情を知らない。それは嬉しくて、少しだけ切ない気持ち。あの人やはやてに対するのとはまた違った気持ちだった。
 ――それは決して叶わない想いなれば。
 なのはの声は優しかった。どこまでも深く浸透するような温かさがあって、リインの冷えた心は酷く安心した。
 『なのはさん』
 声もなく名前を呼ぶ。

 あの悲しい夢はもう見なかった。
 けれども代わりに、夢の中でなのはが笑っていた。悲しく。

 再び目が覚めた時、眠る前と変わらずになのはが傍にいてくれた。
 真っ直ぐな前髪に隠れる大きな瞳は今は閉じられていて、リインはその前髪に触れる。つい今しがた見ていた悲しげななのはの表情が思い出され、リインは酷く苦しい想いに駆られた。夢だと分かっているのに、その情感は強引に押し寄せてきて、思わずそっと顔を覗き込んだ。
「……なのはさん」
 目の淵に溜まった涙が、名前を呼んだ瞬間に零れた。
「リインじゃ頼りになりませんか……?」
 自分自身そう思っている。だが現実にも、夢と同じように悲しい顔をされれば。
 奥歯をきつく噛み締めて、リインは俯く。涙は堪えることが出来たが、声は震えていた。
「頼りなくて、ごめんなさいです……」
 リインは元の大きさに戻る。それでも百三十センチメートルばかりの小さな身体だったけれど、なのはの頬を冷やしている涙くらいは拭える。
 そうして掬い取った涙に口付けた。跪き、なのはの頬にも軽く唇を当てる。
 どうしてそうしたくなったのか、理由はやはり分からないけれど――。
 なのはからゆっくりと離れると、リインは元の姿に戻った。なのはの傍にいるには、自分はまだ未熟すぎた。

 いつか貴女に頼られるように。
 祝福の風の名に恥じない騎士になるため、リインフォースIIは仲間と共に空を駆ける。



[ WEB CLAP ]

● COMMENT FORM ●

叶わない思いかもしれないけど、それでも思う気持ちは止められなくて。
凄い感動しました~!!(泣)純粋な想いをまっすぐぶつけることしかできないリインと、周りの人達のことを純粋に思うためにまっすぐな感情を出せないなのは。
お互いの優しさが伝わってきました。

リインⅡが可愛すぎます。
普段はしっかり者がこういう一面を見せると、なんだか新鮮です。
新たな世界へのチケット、ありがとうございます。

>sohassさん
ありがとうございます。
リインの真っ直ぐな気持ちは、きっと痛いほどになのはさんに伝わってることかと思います。だから受け止める。……だけど受け止めるしかできない、今のなのは。
そこまでリインは考えてはいないけど、きっと直感的に気付いていたのかもしれません。
だからなのはさんの心に掛かる負担を減らそうと。
リインとなのはは応援したくなります。

>ユリかもめさん
リインIIはかわいいですよね!それこそ抱き締めたくなるくらい。
実際にどこまで大きくなれるかよく分かっていないのですが〈小学校低学年くらい?)、いつかなのはさんに抱きとめてもらえるといいな。きっとはやてとは違う心地良さを味わえることかと。
いつもはしっかりしてるリインだけど、たまにこんなふうに揺れてしまう。そんなのが好きです。
さあなのリインマスターへの旅に飛び立ってくださいw


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なのはさんをめためたに愛し、いじめていきます。

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リリカルなのはが大好き。
なのはさん溺愛。そしてゆかりさんにめろめろ。
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